[ オピニオン ]

産業春秋/ノーベル賞と国籍

(2017/10/9 05:00)

1986年にノーベル化学賞を受賞した李遠哲博士は、戦前の36年(昭11)に日本統治下の台湾で生まれた。受賞時は台湾と米国の二重国籍だが、出生時は日本国籍だった。

2008年の物理学賞の南部陽一郎博士、14年の物理学賞の中村修二博士は、ともに米国籍で受賞したことで知られる。ただ日本で業績を上げたこともあり、普通は日本人受賞者としてカウントする。

今年の文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏は日本人の両親を持ち、生まれは長崎。5歳で渡英し、作家デビューの翌年に国籍取得した日系英国人とされる。ところが賞を授与するノーベル財団の見解は異なり、出生地主義をとる。つまり文学賞は川端康成氏、大江健三郎氏に続いて3人目。各賞合計の日本の受賞者は25人とウェブサイトに明示している。

台湾の李博士がもし戦前、内地で生まれていれば日本人に数えていたわけだ。やや不自然な感もするが、欧州は歴史的に国の盛衰や国境線変更を繰り返し、今も移民や二重国籍が珍しくない。出生地によるカウントは一つの知恵なのだろう。

今夜は最後の経済学賞。「日本人何人目」にこだわりすぎず、世界的に優れた業績を上げた偉人をたたえる気持ちで発表を待ちたい。

(2017/10/9 05:00)

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