最推しの羽川翼と付き合いたい 作:羽川翼はヤベー奴
嫌なものを見せられて鬱々とした気分のまま一夜が明け、それなりに早く登校してみると珍しい女生徒がそこにいた。
「あら、只野くん。よくその不景気な顔を私に見せてくれたものね。さあ、私に即金で賠償金を払って貰おうかしら」
違った。女生徒ではなく女王様だったみたいだ。
「……出会い頭にジャブ感覚で毒舌吐けるのお前くらいだよ戦場ヶ原さん。しかも即金でとかどう見ても無理だろ」
今の所持金は数千円だ。
「払えない?なら、実刑判決を言い渡すわ。死刑に処すわね」
「ガチの女王様じゃねえか!?誰か俺に弁護士をつけてくれッ!?」
原作から知っていたがこの女とことんまでイカレた奴である。
「阿良々木の奴と登校とかしないのか?カップルなんだろ?」
まよいマイマイが終わり、既に付き合っている二人だ。それぐらいしてもおかしくない。
「……」
「ほわあッ!?コンパスの針を無言で刺しにくるなよ!?」
紙一重で避けたが今のは割りとガチだった。幾ら武道をやっていて容赦をしなさすぎである。実戦空手じゃなかったら死んでた。
「フンッ、これに懲りたら二度と私を茶化そうだなんて思わないことね」
「ウス……」
よくこれで「深窓の令嬢」だと思われていたものだ。超危険人物のツンドラ女王様はそのまま立ち去らず、続けて話し掛けてきた。
「あなたが勝手にしたことではあるけど、中学のときは助かったわ」
一瞬だけなんのことかと思ったが、すぐに思い至る。
「ああ、悪徳宗教のあれか。そういうのの対処法とか難しいから、取り敢えずそいつらが調子に乗ったところをカメラで撮った物的証拠があれば、何かしらの助けになるかなって思っただけ。
戦場ヶ原は美人だから、後ろ暗い奴に身体目的で襲われる可能性もあったし、念のためビデオカメラ渡しておいただけだ。
それこそ、スタンガンとか用意できればよかったけど俺には無理だったしさ」
究極的には羽川と付き合えれば他はどうでもいいが、助けられるならそれなりに助けたいと思ってる。
八九寺?世界が滅ぶ可能性があるので助けません。羽川がグールになるとか許せない。
「(まあ、そもそも家の場所が分からないし、当時の俺じゃ原作知識があっても助けようがないけどな)」
幼稚園児がブラブラ気軽に町を出歩けるわけもないのだから当然である。
「あなたのカメラのお陰でお父さんとお母さんの離婚がすんなりと進んだわ。確かに、私を救ったのは阿良々木君だけれど、あなたにはそれなりに感謝しているわ」
ホッチキスを頬に打ち込まれそうになったのも、無駄ではないようだ。
「そうかい。どうぞ御幸せに」
「……彼も報われないわね」
私は教室へ向かっていく彼、
「羽川さんに中学の終わりに告白して振られてしまうなんて。それでも、そこから友人として仲良くできるその精神力の高さには驚いたけれど」
恋愛で振った振られたの関係性で、まさか友人関係が継続できるケースがあるなんて思ってなかった。
そして人の恋愛にどうこう言える立場ではないけれど、羽川さんが好きになる人が分からないわね。
「文武両道、顔も悪くないし背丈でいえば阿良々木君はもちろん男子の平均よりも上。それで幼馴染みときて恋愛感情が湧かないなんてことがあるのね」
そして、阿良々木君の唯一の男友達。あの二人は似たところがあるから付き合いが続いているのだろう。
無駄にお節介なところとか。
「まあ、いいわ。あなたが男色になって私の阿良々木君に手を出すなら、その瞬間に殺すというだけだもの」
恩を仇で返すことも辞さないのが私という女よ。
お節介なところは阿良々木のムーブをパクってるからです