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米倉涼子、50代の扉。仕事や病気との付き合い方を語る

休息を経て、しなやかに動き出した俳優・米倉涼子。今夏50歳を迎える彼女に、エイジング論を語ってもらった。本誌掲載のインタビューを全文公開。
米倉涼子、50代の扉。仕事や病気との付き合い方を語る

人生においての、ラグジュアリーな休息とは?

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軽やかに、都内のスタジオへと入ってくる。キャップとアライアのカジュアルなセットアップという姿で、〝ほとんどの国民が知る〞俳優、米倉涼子は気負いなく登場した。しかし、ひとたびカメラの前に立つと空気は一変。その強さと優雅さが入り交じった特殊なオーラに、誰もが惹きつけられた。「すごい」とスタッフが口にすると、彼女は「全然ですよ」と手振りをつけて全力で否定する。

年齢には逆らえないです。体の中の水分もどんどん減ってきますし。いくら良い姿勢を保っていても、人は必然的に何ミリ、何センチと縮んでいくわけですから。そこに対抗しようとすると、おかしな方向に行ってしまうと感じているので、気をつけなくてはいけないなと思っています。ただ、強いて言えば今回この撮影があるということで、『ゆるんだ体をどうにかしよう』と思い、1週間腹筋マシンをつけたりもしましたが、効果があったのかどうか、よく分からないです」と、笑いながら答えてくれた。その飾らない表情の奥には、どんなフィロソフィーがあるのだろうか。

抗って、受け入れて、抱きしめる。〝スローエイジング〞という思想

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俳優としてデビューした20代には松本清張原作のドラマ『黒革の手帖』で悲しみに満ちたレジスタンスを演じ、30代にはミュージカル『CHICAGO』でブロードウェイデビュー、40代にかけては『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』で誰もが知る役を構築させ、年代ごとに挑戦を重ね、代表作を更新し続けてきた。自然体で魅了し、飾らない言葉で自分らしい生き方を貫く米倉涼子は、今夏、50歳を迎える。しかし、〝大門未知子〞というキャラクターとともに駆け抜けてきたこの10年、40代は、独立、そして難病との闘いと、決して平たんな道のりではなかった。

米倉は2019年に、「脳脊髄液減少症」という難病を患っていることを公表。脳脊髄液が漏れてしまう病のため、ミュージカル『CHICAGO』の降板をはじめ、仕事の制限を余儀なくされる。これによって、彼女の考え方には大きな変化が表れた。「今までできていたことを諦めなくてはいけなくなったり、自分が努力をしてもできないことが増えてしまいました。世の中にはそういう思いをしている方々がたくさんいるのだなとか、病気を経験してから、それまで考えが及ばなかった気づきを得るようになりました。それが思いやりにつながるのかどうかは分かりませんが、視点や考え方はだいぶ変わりました。仕事に対する向き合い方もそうです。私はある意味で貧乏症なので、『ここまでしかできない』と思っても、いざやるとなったらオーバーワークをしてしまうんです。でも、今は足を止めなくてはいけない時期にある。私の性格上、これ以上に体を壊さないためにも良いきっかけになったのかなと思っています。迎える50代は、更年期だったり、さまざまな体の変化が起きる時期なので、来るべき変化に向けて、いい意味での準備体操をしたなという感じですね

“アンチ”ではなく“スローエイジング”という考え方

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人は誰しも年齢を重ねることに抗いたいと思う一方で、自然の流れに任せたいとも思う。特に外見が仕事に大きな影響を与える職業を生業にしている俳優にとって、年齢の重ね方は難しいはずだ。「みんな平気で『劣化した』とか言ってきますからね」。そんな彼女の口から更年期というワードが出たので、白髪や肌の衰えといった、誰にも平等に訪れるエイジグについて問うてみたところ、「上手につき合っていくしかない。私はなるべく〝アンチエイジング〞というよりも、時間の流れ を受け入れながら〝スローエイジング〞をしていきたいなと思っています」という返事が返ってきた。続けて、笑顔でこう語る。

実は、隣の芝生が青く見えるタイプ。 なので、『みんながこうやっているんだったら、こうやった方がいいのかな』とか、周りにものすごく影響されやすいんです。踊りに例えるなら、隣の人が自分とは違うダンススタイルで踊っていたら、その人の踊りの方がいいのかもしれないと感じてしまう。だけど、その人になれるわけではないので自分を見失わないようにと気をつけています。あと過去の自分がキレイとか、そういうふうにも思っていないんです。ただ、今日みたいに撮影でアップになった自分の顔を見ると、当然〝過去〞よりも変化していることに気づく。それを、ちょっとだけスローにする方法はないかな? なんて考えたりすることはあります

例えば、21時のアイスクリーム。「欲」を遮らない、ヘルシーなマインド

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多忙な日々の中で、自分をオフにするスイッチは、あるのだろうか。「オンとオフをつくりたいと思うんですけど、とにかくすごくせっかちなので、自分ではあえてつくっていません。ただ、海外に旅行に行ったりしたときに、友人たちから『日本で会っているときと顔が違う。力が抜けているね』と言われて『そうなのか!』と気づくことがあります。仕事に限らず、常に頭の中で何か考えが錯綜しているんですね。だから、寝ないといけないときに寝るのも難しかったりして。最近お医者さんから、寝るのにもものすごくエネルギーが必要だという話を聞き、それには糖分摂取が大事だったりもするようなので、ウェルネスドリンクを試したりもしています

質の高い睡眠を大切にするために、できる限り脳内をリラックスさせる方法を模索中だというが、体づくりに話が及ぶと、「特別なことはしていません」と、ひと言。「病中は動けない体だったので、動いてもいいという許可がでてからは、日常生活を過ごせるようにリハビリをしたり、水中を歩いたり。 最近は、8月に控えているショーRYOKO YONEKURA -DISFRUTA DISFRUTA-のために少しずつ踊りを増やしてもいます。食事制限もしていないですし、タンパク質をより多く摂取するということさえもしていないです」と話すが、米倉のヘルシーなボディは、我々の目には眩しいほどに美しく映る。そんな彼女の生活のバランスを保ち、エネルギーをチャージしてくれているひとつが、家族としてともに暮らす2匹の愛犬の存在だ。「かれらには常に優しく接していたい」。そして、「欲望的には食欲。食事 制限が本当にできなくて、昨日も 21 時 までには飲食はやめようと思いながらも、アイスを食べてしまい、私って意志弱っ! と思っています

「夢見る少女ではないです(笑)。とても現実的です」

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充実したキャリアを考えると、目標に向かってさぞかしアグレッシブに行動をしてきたのかと思いきや、実際は目標を持ったり、夢を描いたことはこれまでに数回しかないという。「私の会社名『DESAFÍO』はスペイン語で挑戦を意味します。今やれる目の前のことに向けて100%できる限 りの挑戦はしますが、見えない未来に対しての期待や目標みたいなものを立てることはしません。夢を見る……と言うんですかね? 夢見る少女ではないです(笑)。とても現実的です」。

彼女はこう言うが、新しい挑戦が可能なのは現実を深く理解しているからこそ。来る50代ではどんな新しい表現を見せてくれるのか。私たちは、俳優、そして、表現者である米倉涼子の勇まし き挑戦を見守り続ける。

RYOKO YONEKURA
モデルとして活動後、1999年、俳優へ転身。国民的ヒット作のドラマ『ドクタ ーX~外科医・大門未知子~』シリーズ(2012~2022)のほか、Netflix『新聞記者』(2022)、NHK『エンジェルフラ イト 国際霊柩送還士』(2023~2024) など多数の作品に主演。ミュージカル『CHICAGO』で、3度N.Y.ブロードウ ェイ公演を行う。2025年8月2日、3日には自身のスペシャルステージ「DISFRUTA DISFRUTA」を東京・恵比寿で開催予定。

問い合わせ先/アレキサンダー・マックイーン クライアントサービス 0120-992-297
エドストローム オフィス(COURRÈGES) 03-6427-5901
グラフダイヤモンズジャパン クライアントサービス 0120-667-687
ステラ マッカートニー カスタマーサービス 03-4540-1906
リシュモン ジャパン アライア 03-4572-4500

Photo: Jun Yasui Styling: Miyuki Uesugi Makeup: Yumi Endo Hair: Kenichi Prop Styling: Takashi Imayoshi Movement Director: Chikako Takemoto Interview & Text: Rieko Shibazaki Editors: Kyoko Muramatsu, Toru Mitani