高市総裁「一方的に離脱伝えられた」 公明との連立政権めぐる協議で

 公明党斉藤鉄夫代表が自民党高市早苗総裁に対し、連立政権からの離脱を伝えました。高市氏は、公明から連立離脱を「一方的に」伝えられたと、記者団に語りました。各党議員の反応は。随時速報します。

高市総裁「一方的に離脱伝えられた」

 自民党の高市早苗総裁は、公明党の斉藤鉄夫代表との会談後、党本部で記者団の取材に応じた。

 高市氏は冒頭発言で、会談について、「何かを決めるとかではなく、(公明側の)地方の声を伝えるのが今日の議題だった」とし、「しかしながら、一方的に連立政権からの離脱を伝えられた」と語った。

 高市氏は、政治改革をめぐって、会談では公明側から改革案の提示を受けたと説明。「この場で賛否を示すように」と求められたが、「党内手続きが必要であり、この場でお答えできるものではなく、党に持ち帰って対応したい」と回答したと述べた。

 高市氏は、来週にもう一度協議を開く方針を示していたが、「先方からはそれは具体的な回答でないとのことで、一方的に連立政権からの離脱を伝えられた」とした。

 高市氏は、公明党の斉藤鉄夫代表との会談で政治改革案の提示を受けたものの「きょう私がひとりで、もしくは私と幹事長だけで政治資金規正法の細部にいたるまで決めて帰ったら、それはまさに独裁でございます。それは私はいたしません」と語った。

 続けて「やはり党内の手続きをきちっと踏まなければ、他党と協議するにしても責任ある自民党の姿勢は示せません。特に、政治資金規正法の企業・団体献金の受け手をどこにするかは私ひとりで決めてはいけないし、決められることではない」と述べた。

公明・斉藤代表「連立関係いったん白紙」

 公明党の斉藤鉄夫代表は、自民党の高市早苗総裁との会談後、記者会見に臨んだ。「自公の連立関係は、いったん白紙」と述べ、自公の連立関係を解消する方針を明らかにした。

 斉藤氏は、公明が求めていた企業・団体献金の改革などについて、自民党から十分な回答が得られなかったことを説明。連立関係を解消し、今後の自民との選挙協力の解消も明言した。

 衆院小選挙区について、「我が党候補への自民党からの推薦は求めません。自民党候補への推薦も行いません」とし、臨時国会での首相指名選挙では、高市氏に投票しないことも明らかにした。

 斉藤氏は「公明党は26年にわたり、自民党と共に様々な難題を乗りこえてきた」とし、「自民党の皆さまに心から感謝を申し上げたい」と謝意を示した。その上で、「政治に対しての国民の信頼がなければ、何ひとつ政治を前に進め、課題を解決することができない。国民の政治への信頼を回復すべく、公明党はこれからも先頭に立って頑張っていきたい」と語った。

 公明党の斉藤鉄夫代表は記者会見で続けて、「自民党と協議を継続する選択肢はなかったのか」と問われた。斉藤氏は「企業・団体献金の規制強化案を公明党は1年以上前からずっと主張してきたが、自民党はいつも『検討する』『検討する』『検討する』と。こういう過去の経緯を含めて『決断いただきたい』と申し上げたが、今回の回答も『これから検討する。地方議員の声も聞かなきゃいけない』とおっしゃる。1年前から何も行われていない」と、連立離脱方針を伝えた理由を説明した。

政界の反応

◆石破首相「申し上げる立場にない」

 石破茂首相(自民党前総裁)が首相官邸で記者団の取材に応じた。

 自公連立の解消について「自身の責任は」と記者に問われ、石破氏は「いま私自身、自民党の総裁ではございませんので、党と党の話について申し上げる立場にはございません」と述べた。

 そのうえで、公明党の斉藤鉄夫代表が連立解消の理由に政治とカネの問題を挙げたことについて「企業・団体献金については『禁止より公開』とずっと申し上げ、いかに透明性、公開性を高めるかの議論を続けていた。国民の皆さまにもご理解いただけるよう、解を見いだしていくことは我が党の責任ではあるが、『禁止より公開』は私自身、申し上げてきた」と強調した。

◆小泉農水相「人物本位での関係性は続くだろう」

 小泉進次郎農林水産相は臨時会見で、「この26年間、自公という枠組みの中で、様々な政策実現にご尽力ご努力をいただいた。そのことに対する感謝と敬意を表すべきだと思う」と述べた。臨時会見は、農水省の作物統計調査の発表に合わせて始まる予定だったが、公明党の斉藤鉄夫代表の会見終了後の開始となった。

 小泉農水相は、自民党神奈川県連会長として地方での協力のあり方について問われると、「現場現場、地域地域での判断がこれから出てくるのではないか」と語った。その上で「今後も連立の仮に外であったとしても、人物本位での関係性は続いていくところは、続いていくだろう」とした。

 農政への影響については「公明党に限らず、多くの政党と基本的な方向性は一致をみていると、現場にも届けて安心していただきたい」と述べた。

◆自民・萩生田幹事長代行「私を使ってくれた新総裁の決断に…」

 自民党の萩生田光一幹事長代行は自らのメールマガジンを配信し、「残念ですが、公明党が連立離脱をする事となりました。高市執行部としては厳しい船出となりますが、踏ん張ります」と書き込んだ。

 「党役員人事が発表され、幹事長代行を拝命した」とも報告。「一部の批判を覚悟で処分後の私を使ってくれた新総裁の決断に何としても仕事で応えていく決意です。先頭は風当たりがきついのは承知しておりますが、仲間の為(ため)にも耐えて頑張ります」「最大の信頼回復は人目を避け、自粛を続けて時間が過ぎるのを待つのではなく、批判に晒(さら)されても仕事をもって信頼を取り戻す事が残された唯一の道と信じ職責を果たしてまいります」としている。

◆立憲・安住幹事長「政権交代の可能性が出てきた」

 立憲民主党安住淳幹事長が、国会内で記者団の取材に応じた。

 臨時国会の首相指名選挙について、安住氏は「決選投票の組み合わせいかんによっては、十分政権交代の可能性が出てきた」と述べた。その際の連携について、公明党とは「意見交換していきたい」とし、「与野党に分かれているが、公明党と一番考え方が近いのは我が党だ」と語った。そのうえで、臨時国会の召集日が決まっていないことに関し「そんな無責任なことをやっているんだったら、政権を渡してもらった方がいいかもしれない」と述べた。

◆維新・吉村代表「遠慮なく高市さんらしさを」

 日本維新の会吉村洋文代表(大阪府知事)は民放の番組に出演し、公明党の連立離脱について「(自民党と公明は)政策理念が根本的に違う」と指摘。「遠慮することなく、高市さんらしさをこれからどんどん出していけばいい。そして、それを有権者が選択する政治の方が健全だ」と語った。

 また、首相指名選挙が決選投票にもつれ込んだ場合に与野党と連携する可能性について問われ、「副首都(構想)や社会保障改革を実現することを軸として考え、最も実現性が高い選択肢を選ぶ」と述べた。

◆国民民主・玉木代表「総理大臣を務める覚悟あります」

 国民民主党玉木雄一郎代表が国会内で記者団の取材に応じた。

 公明党が連立を離脱した後の自民党との連立について問われ、「公明党が抜けたということで、我々が仮に加わっても過半数にいかないので、あまり意味のない議論になってきている」と指摘。一方で「自民党との向き合い方は変わらない」とも述べ、政策本位で協力する考えを改めて示した。

 公明党の連立離脱の決断については「政治とカネの問題に終止符を打ちたいという強い意思の表れで、その覚悟、決意に大変共感する。政治資金の問題が、国民の信頼回復につながっていないことについて、懸念を共有する」と語った。臨時国会の首相指名選挙については「私自身は公党の代表として、内閣総理大臣を務める覚悟はあります」と何度も繰り返した。

◆共産・田村委員長「自民、まさに破綻」

 共産党の田村智子委員長は国会内で記者団に「公明党はこれまで長年にわたって自民党とともに悪政の数々を遂行してきた」と述べたうえで、「そういう公明党であっても連立の維持がもうできない。ここまで自民党の腐敗と劣化が進んでいて、まさに破綻(はたん)というところまで来ている。自民党政治を終わらせることがいよいよ求められてきている」と語った。

◆参政党・神谷代表「驚いている」

 参政党の神谷宗幣代表は、公明党が自民党との連立から離脱したことを受け、「想定していなかった事態であり驚いている」とのコメントを発表した。

 一方で「政権の枠組みが変化することは良いことだ」とも指摘。「党の基本的スタンスに変化はないが、党内で対応を協議し、臨時国会の早急な開会と臨時経済対策の実現に向けて努力する」とした。

 神谷氏は8日に自民党の高市早苗総裁と面会した。ともにスパイ防止法の制定や外国人政策の厳格化を掲げていることから、神谷氏は面会後、記者団に「高市さんと本当に政策で共通している部分がある」と強調。是々非々としつつ、「政策が近いものは協力できる」と述べた。

自民党内の反応

◆「選挙しんどくなる」@大阪

 公明党と協力関係にある自民党大阪府連には動揺が広がった。連立離脱方針を知った府連の幹部は取材に対し、「話がでかすぎて、まだ整理がついていない」と述べた。

 これまでの衆院選では、大阪を本拠地とする日本維新の会を相手に公明とともに対峙(たいじ)してきた。府連幹部は、公明との協力関係が終われば「現実的には選挙でこれまで以上にしんどくなる。田舎で盤石な選挙をしている(自民の)幹部には理解できないくらいの衝撃だ」と話す。

 その上で、「政治とカネ」の問題を理由に公明が連立から離脱したことについても、「『政治とカネ』は国民の政治不信につながっている問題。その問題で連立を離脱されたとなると印象が悪い」と肩を落とした。

◆「再度協議申し入れるべき」@茨城

 自民党茨城県連会長の海野透県議は県議会終了後に報道陣の取材に対応し、「公明と連立できないと高市さんは総理になれないだろう。連立できる相手は公明しか思い浮かばない。再度、協議を申し入れるべきだ」と述べた。政治とカネについて「自民党総裁選でも全然議論になっていなかった。自民党員から見ても不満があった」と指摘。「県連としては、公明県本部とこれまで通りの付き合いを続けていきたい」と話した。

◆「上はどう考えているのか」@静岡

 「上はどう考えているのか」。静岡6区の勝俣孝明衆院議員(比例復活)は10日夕、地元に戻る新幹線の中で公明党の連立離脱を知り、党執行部の対応に驚きと戸惑いを隠さなかった。

 勝俣氏が自民党の公募に応募して初当選したのは2012年のことだ。立憲民主党候補が強い地盤で、これまで臨んだ5回の衆院選で小選挙区で勝ったのは21年の1回だけだ。政治家人生のすべてを公明党と協力しながら歩んできた勝俣氏は、「これまで築いてきた信頼関係でこれから協力できたら」と話した。

公明党内の反応

◆公明・中野国交相「一致団結して進む」

 公明党による、自民党との連立政権の解消表明を受け、公明党で唯一の閣僚である中野洋昌・国土交通相は10日、「斉藤代表が出した結論を受け止めて、公明党として一致団結して進んでいく」と述べた。国交省内で報道陣の取材に応じた。

 国交相のポストは2012年から公明議員が5人連続して就任してきた。中野氏は「白紙ということでございますので、政策ごとの連携をしていくということになるのかなと思います」と話した。

 中野氏は昨年11月の第2次石破政権の誕生時に国交相に就任した。やり残した点について問われ、「着任してから、それぞれの課題に沿って全力で取り組んで参りました。そういう意味では残された期間、最後までやりきることだと思っています」と話した。

◆「整理できていない」@大阪

 公明党にとって「発祥の地」とも言われる大阪。1956年の参院選で初めて選挙区で議席を得たことを機に「常勝関西」とも呼ばれる一大勢力を築きあげた。自民党との連立政権の解消表明を受け、藤村昌隆・公明府議団幹事長は取材に「いままさに聞いた段階で具体のことは何もわかっていないというのが現状だ」と語った。

 「26年間続いてきた自公連立がいったん白紙になったことについてまだぼくも整理ができていない」としつつ、「党員の方とか、支持者の方にしっかり説明しないといけない。これがやっぱり第一だろう」と話した。

◆「我慢の限界だった」@東京

 6月の東京都議選で36年ぶりに全員当選を逃した公明党東京都本部の関係者は、連立離脱が決まり、「もう我慢の限界だった」と話した。自民党では複数の派閥に続いて、都議会の会派でも裏金問題が発覚。「東京の支持者はとくに裏金問題に厳しく、支持も離れていった」。支持者の反発を抑えながら協力関係を維持しようと努めてきたが、高市早苗総裁の自民党執行部の人事をみて、「我々と対話できる人もいないし、政治資金の問題を解決する姿勢もみえない」と批判を口にした。

◆「苦渋の決断だったのだろう」@茨城

 公明党茨城県本部代表代行の高崎進県議は、「党本部も苦渋の決断だったのだろう」と、連立政権からの離脱を決めた斉藤鉄夫代表をおもんぱかった。県内から山口那津男元代表らを輩出してきた茨城県。「先輩議員は安全保障やPKO(国連平和維持活動)など、党を二分するようなことも知恵を出して、苦労しながらやってきた。苦しいこともあったが、自民党とは26年やってきたので、残念だ」と話した。

◆「選挙協力は白紙」@埼玉

 参院選で自民党が公明党候補を推薦する代わりに、衆院選や統一地方選で公明が自民候補を支援する「埼玉方式」について、公明党埼玉県本部代表代行の宮崎勝参院議員は「白紙になる」と述べた。「党対党の選挙協力は白紙になる。衆議院の小選挙区について、自民党には公明党への推薦は求めないし、公明党としても推薦はしないということだ」と説明した。

◆「早急に協議しなければ」@北海道

 北海道では9月、衆院の北海道4区を自公の選挙協力の象徴区として、公明党候補を立てることを合同記者会見で発表したばかりだった。阿知良寛美・公明党道本部幹事長は取材に、「道4区の自公連携については、この時点で答えが出ているというわけではないが、中央が『いったん白紙』とした以上は、早急に自民党道連と協議しなければならない」と答えた。

経済界の反応

経団連会長「誠に残念」

 経団連の筒井義信会長は「内外に解決が急がれる政策課題が山積し、重要な外交日程が迫る中、政治の安定は不可欠である。こうした中、公明党が今般の表明に至ったことは誠に残念であり、政治の不安定化を憂慮している。政策を着実かつ迅速に推進していく『政策本位の政治』の実現に向けて、安定した政治の態勢が確立されることを強く求めたい」とのコメントを出した。

◆日商会頭「安定した政治を」

 日本商工会議所の小林健会頭は10日、都内で報道陣の取材に対応し、「(自公が)安定政権をつくってきたことは多とする。しかし、制度疲労というか、長年やっていれば、いろんなことがある。巡り合わせでこうなったのではないか」との見方を示した。

 経済界としては、「国政に遅滞がでることは困る。政治空白を短くしてもらいたい。安定した政治を一日も早く取り戻してほしい」と言及。政権の枠組みについては「どのシナリオがベストかは申し上げない」としつつ「経済界としては自民党を中心にした政体になじみがある。経済を早く回して正のスパイラルに入ることでは近道だろう。さはさりながら、政治は政治。3連休を使ってすみやかに(安定政権の枠組みづくりを)やってもらいたい」と述べた。

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    境家史郎
    (政治学者・東京大学大学院教授)
    2025年10月10日16時13分 投稿
    【解説】

    自公連立は、1999年10月発足の小渕恵三第2次改造内閣から始まり、四半世紀以上続いた。今回の公明党の離脱は歴史的出来事といっていい。 高市自民党はただちに新しい連立相手を探すことになる。公明党のくびきが外れたことで、維新の会や国民民主党との交渉自体は進めやすくなりそうだが、どう決着するかはまったく予断を許さない。決着するのかどうか自体、分からない。

    …続きを読む
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    大川千寿
    (神奈川大学教授=政治過程論)
    2025年10月10日17時23分 投稿
    【視点】

    ​公明党が自民党との連立を解消・離脱するという、境家先生もおっしゃる通りのまさに歴史的な日となりました。 公明党は一部で取りざたされていた閣外協力をも否定し、自民党との選挙協力解消についても言及しました。 これまでの両党の政権と選挙を通じた強い結びつきを考えると、自民党だけでなく公明党にとっても大きな痛手であるはずですが、それをも超える信頼関係の喪失があったということなのでしょう。 斉藤代表は、近く行われるはずの首班指名選挙に向け、「斉藤と書く(高市とは書かない)」と明言したことで、高市政権の誕生はますます不透明となりました。 首班指名にあたっては、今回公明党が離脱の理由とした、政治とカネの問題をはじめとする政治改革が重要な論点となる可能性があります。 斉藤代表はきょうの会見で決選投票での投票先について明言を避けました。中道改革勢力の軸としてとの西田幹事長の発言もありましたが、自民党、そして立憲民主党をはじめとする野党各党がそれぞれどう多数派を形成するか、首班指名に向けて重大かつきわめて緊張感のある局面が続くことになるものと思われます。

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