鈴木馨祐法相は12日の参院決算委員会で、外国人が日本国籍を持たずに日本に住み続ける永住権の取得と日本国籍を取得する帰化の要件の違いについて「永住権よりも帰化の方が容易だという状況は明らかにおかしいし、断じてあってはならない」と述べた。どちらも厳格に審査をしているとしたうえで「制度の齟齬(そご)があるとすれば見直すことも考えなければならない」と語った。日本維新の会の柳ケ瀬裕文氏への答弁。
柳ケ瀬氏「とりあえず帰化、ゆゆしき事態だ」
柳ケ瀬氏は「永住は厳しいからとりあえず帰化を取っておくという人が非常に増えている。由々しき事態だ」と述べた。永住権取得には原則として10年間の日本国内の在留が必要だが帰化は5年間であることなどが背景にある。柳ケ瀬氏は「帰化は永住権プラス参政権も含まれるし、世界1位といわれている日本のパスポートを持って日本人として各国を飛び回ることができる。極めて大きな権利を付与するものだ。日本人として生きていくという極めて重たい決断が伴う」と指摘した。永住よりも帰化のほうが効果が大きいのに要件が緩いという逆転現象が起きているとの問題意識がある。
鈴木氏は「それぞれの法律で定められている要件ごとに厳格な審査を行っていると思う」とした一方で、「帰化は極めて重いというのはその通りだ」と言及。帰化のほうが永住権取得よりも容易であるということがあるとすれば「強い違和感」を覚えるとして、どちらにも厳格な審査が必要だと強調した。
柳ケ瀬氏は「明らかにおかしい。法務省内でも永住権は出入国在留管理庁、帰化は民事局ということでお互い知らないという縦割りで別個の制度としてできて、整合性について考えてこなかった。制度が分離しているのは明らかにおかしい」と批判。「米国、豪州、ドイツ、韓国では帰化の前に永住権を取得する。重さを比較すればそれが正しいと誰もが思うと思う」と述べた。
鈴木氏「厳格に判断」
鈴木氏は「永住権よりも帰化が容易という状況は明らかにおかしい。断じてあってはならない」と答えた。「それぞれの要件を最低限のものとしたうえで厳格に判断していると受け止めている」としたが「大きな意味での法の整合はどうなのかという指摘は受け止める必要がある」と述べた。柳ケ瀬氏は「煮え切らない答弁だ」と苦笑いした。
続けて柳ケ瀬氏は永住権や帰化を申請してきた外国人の納税状況や犯罪歴について、どのくらいの期間をさかのぼって調べるかを尋ねたが、法務省は回答しなかった。これに柳ケ瀬氏は「明らかに馬鹿にしている。帰化は税や社会保険料納付は過去1年分を調べている。永住権に関しては税金は過去5年、社会保険料は過去2年の確認を行っているとレク(事前説明)でもそう答えている。答えられないのは極めておかしい」と自ら説明し、「ここでも逆転をしている。永住権のほうがトータルでみている。要件の逆転を是正するべきだ」と訴えた。鈴木氏は「どちらについても厳格に見ていくということに尽きる」と述べるにとどめた。
要件変更は
これを受け、柳ケ瀬氏は「実際に帰化のほうが易しいから帰化に流れるということが、今起きている立法事実だ。だから要件を変える必要があるんじゃないかと言っている。帰化の方が5年の住居要件で構わないという緩い条件になっているのは明らかなので、少なくとも変更するべきだ」と迫った。鈴木氏は「制度の齟齬があるとすれば、見直すことも考えていかなければいけない。同時に、運用で厳格な対応も行わなければならない。両方をしっかりと検討していきたい」と答えた。