宝箱からコンニチハ‼︎なんてしない   作:珱瑠 耀

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タイトルが10割


とある日の刈り取るさんのおはなし


日常編なんてしない
寝坊なんてしnz


その日は朝から夢現で、とても眠かった。

 

多分つい先日までの会社経営や「ロア」達の依頼中*1に起きた別件のトラブル解決やそれ以前のエデン条約のあれこれでまともに休めてなかった無理が祟ったのだろう。

 

「あら、おはようございます」

 

「…………ぉ、はよ」

 

珍しく昼前になって目が覚めた。

 

ワカモの声に辛うじて返し、ぽやぽやとする視界の中でぐいっと身体ごと振り向く。

 

「……?あ、危な」

 

 

ゴンッ

 

 

お"ぅ"っ"*2

 

側頭部を(したた)かに打ち付け重く鈍い音が室内に響き、そのまま身体の力が抜けて私は(多分)後ろに倒れた*3

 

「あっ、ちょ!?」

 

その倒れた先には移動用に使う空箱があって。

 

 

ドシャッ

 

 

バタンッ!

 

 

重力に従って落ちていく私の身体は、その中へとホールインワン。

 

引き上げようとしたワカモを置いて衝撃で蓋が閉じ、そのまま沈黙してしまった。

 

「……え、と…『死神』、さん?」

 

たっぷり数秒の沈黙の後、漸く復活したワカモが恐る恐るその箱を開けると。

 

「———これは、先生に連絡しないとですね」

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、モモイ、ミドリ!……どうしたのですか?」

 

ミレニアムサイエンススクール、その中のゲーム開発部である天童アリスは中々部室に入らない才羽姉妹と花岡ユズを見て首を傾げた。

 

「あっ、アリス!どうしよう、知らない人が部室に居るの!」

 

「うぅ……ロッカーを開けたら、いきなり倒れてきて……」

 

「???……よく分からないので、アリスも見てきます!」

 

「あっ、アリスちゃん!?」

 

狼狽える三人を他所にアリスが部室の扉を開ける。

 

豆電球の淡い明かりで照らされる広すぎる訳ではない部室、その壁に置いてあるロッカー。

 

いつもは部長のユズが引き篭もっているロッカーは乱雑に開け放たれており、そこから這い出るように白いシャツと短パンを履いた女性がすやすやと眠っていた。

 

「????どなたでしょう……?おはようございます、起きられますか?」

 

ゆさゆさと体を揺すっても、眠りが深くて反応しない。

 

よく見れば、その女性の目元には深い隈があるのを見つけた。

 

「……?……!わかりました!この人は状態異常「過度な疲労」ですね!」

 

以前目の隈を消す事なく仕事をしていた早瀬ユウカやゲーム開発部の皆を見たことがあり、その際に生塩ノアから軽い説明を貰ったのを覚えている。

 

『疲れて眠れない人は、目元に隈が出来てしまう。それは「しっかり休みなさい」というサインだ』

 

それを聞いたアリスはユウカを軽々持ち上げてアリスと添い寝をした、というストーリーがあるのだが今はそれは良いだろう。

 

「モモイ、ミドリ、ユズ!この人は状態異常「過度な疲労」です!ゆっくり休ませましょう!」

 

つったかたー、と部室から出てきて開口一番、アリスは三人にそう言い放つ。

 

「え、で、でも…運んでる途中で起きたりしない?」

 

「揺すっても起きませんでした!」

 

「それなら良いけど……どうしよう、ここから仮眠室って少し遠いよね……アリスなら持ち上げられそうだけど、アリスだけに力仕事させるのもなんか……」

 

部室の前で四人がうーん、と首を傾げる。

 

「……!お姉ちゃん、この前買った棺桶型寝袋があるじゃん!」

 

「!!ナイスアイデア、ミドリ!」

 

とあるRPGのグラフィックの参考にと安く買えた棺桶型寝袋、実際には寝返りが打てずにやや不評らしいが寝返りすら打たない『死神』には好都合だろう*4

 

奥の山から若干物入れと化していた棺桶を掃除し、アリスと協力してその中に『死神』を優しく寝かせる。

 

「……ごめん、ちょっとだけ写真撮っていい?なんか普通に良い素材になりそうなんだけど」

 

「お姉ちゃん?」

 

「ミドリ、一枚だけ……!一枚だけだから……!」

 

「…………はぁ、起きたらちゃんと本人に言ってよ?」

 

ありがとー、と言いながら棺桶型寝袋in『死神』の写真を撮ったモモイが、あーよかったと言いながら蓋を優しく閉める。

 

「一旦はこれでいいかな…アリス、持ち上げてくれてありがとうね」

 

「いえ、大丈夫です!ノアからも休ませてあげようと言われていたので!」

 

「過度な、疲労……ってことは、凄いお疲れだったんだ……でも、なんで私のロッカーに……?」

 

「……わかんないけど、起きたら聞けば良いんじゃないかな?」

 

 

 

……そこまで話してから、モモイが枕を忘れたと言ってもう一度開いた時に中が空っぽになっていた事に気付いた四人が、恐怖でユウカとノアから離れなくなってしまうのだが、それはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———子ウサギ公園には、かつて連邦生徒会長が管理していた「SRT特殊学園」の一年生で構成されたRABBIT小隊がキャンプをしていた。

 

ほんの以前まで先生と敵対していたりドラム缶を回収したり、ヴァルキューレのリベートを暴いたりなどと濃い日々だったのが現在はかなり落ち着き、エンジェル24からの廃棄依頼などをしながらキャンプ生活を続けている。

 

戦闘もほぼなく自主的な訓練を続けていた小隊に、唐突に連絡が入る。

 

『こ、こちらRABBIT4……えっと、その……とりあえず、誰か来て貰っても…いいかな……?その……言語化、しづらい……うぅ……』

 

気弱なこの声はRABBIT4こと霞沢ミユ。

 

希薄な存在感とかなりの視力というスナイパーとしての才能を持った小隊のスナイパーであり、そのスキルは折り紙つきである。

 

「……?こちらRABBIT1、すみませんが出来る限り言語化してもらっていいですか?」

 

連絡を受けたRABBIT1———月雪ミヤコがそう返すと、しどろもどろになりながらもミユはこう答えた。

 

 

『え、えっとぉ……部屋着の女の人が、ゴミ箱の中から出てきました……』

 

 

「「「????????」」」

 

 

哀しき哉、RABBIT小隊にはその言葉の意味が全く分からなかった。

 

 

 

 

 

指定された場所に向かったミヤコと空井サキ(RABBIT2)*5は、しゃがんでおろおろしているミユとその前で寝ている女性———『死神』を見て一瞬だけ固まる。

 

「……これは、どういうことだ?」

 

「わ、わからないよぅ……」

 

首を傾げたサキとミユが話す中、ミヤコだけは『死神』に近付いて首元に手を当てたり鼻息を確認していた。

 

そして目元の隈を見て、確信する。

 

「……恐らく、極度の疲労によって深い眠りについているのだと思われます。危険性はありませんが、どうして此処に……?」

 

「それが……一回通った時は、気配も何もなかったんだけど……戻ってきて、入ろうと思ったら……ゴミ箱が倒れて、出てきて……」

 

「居る事に気が付かなかったのか?」

 

サキの問いに頷いたミユを見て、三人は更に混乱した。

 

「……取り敢えず、ここで放置するのは不味いですね。日向とはいえ、今日は若干気温が高そうですので……一応、キャンプに運んで休ませましょう」

 

「えぇ……良いのか?起きてすぐに反抗、なんて事もあり得るぞ?」

 

「その線もありますが……それでしたら、今すぐに起きて私達を制圧してしまえば良いだけのことです。しかし、この深い隈と起きない現状がそうでない事を指しています。どこの誰かは知りませんが、SRTとしてこのまま放置なんて事はさせません」

 

そこまで話し切ったミヤコに、サキは深く考えて頷く。

 

「……なら、そうするか。———RABBIT3、寝袋の用意を頼む」

 

『おっけー、運ぶのは大丈夫?』

 

「はい、大丈夫です。交代で背負って行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たっぷり四時間後、『死神』は目を覚ました。

 

「……その、すまない……助かった」

 

陽も沈み始めた頃に起き上がった彼女の下に、ミヤコが駆け寄る。

 

「いえ、お気になさらず。体調はどうですか?」

 

「問題は、ない」

 

良かったです、と言うミヤコを見て、『死神』はもぞもぞと寝袋から出———

 

「……服、が」

 

「あ、服は替えないようにしていましたが…大丈夫でしたか?」

 

「……いや、大丈夫」

 

部屋着のままこんな所まで、と内心凹みながらも寝袋を返して、四人の側に座った。

 

ミユから弁当を貰い、手を合わせて早速———

 

「ところで、どうしてあのゴミ箱に居たんだ?」

 

「……私は、ゴミ箱の…中に、居たのか……」

 

「ちょっとサキ、何してんのー?もっと凹んじゃったじゃん」

 

あ"っ!?いや、その……す、すまない」

 

「いや、気に…しないで……だぃじょぅぶ、だ」

 

「サキ……」

 

「サキちゃん……」

 

 

 

「だっ、だから!その……ぅ、私がっ、悪かったってぇ!!」

 

 

 

*1
イベント「進んでみるなら、まずは」のこと。帰ってきた「ロア」は全員ホクホク顔だったので楽しめたのだろう

*2
「おぅっ」と言えば艦隊これくしょんの島風であるが、残念ながら刈り取るさんにとっての島風はアズールレーンの方が若干記憶に濃い

*3
(多分)なのはその日のことをあまり思い出せなかったから

*4
なお『死神』は基本どこでも寝れるし、寝返りも基本打たない。寝息もうるさくないのですっごく静かだが、嫌な予感がすると眠気に負けない限りすぐに目覚められる。今回は眠気に負けた

*5
風倉モエ(RABBIT3)はキャンプRABBITという事で待機している




この後刈り取るさんは先生と一緒に(ワカモが持たせた服に着替えてから)無事に帰宅し、翌日ゆっくりと休暇を取ったところいつもの元気な刈り取るさんに戻りました


なお、後日先生は刈り取るさんの事をRABBIT小隊に話したところ、そんなに険悪な感じではなかったようです(仮にもブラックマーケットの治安を守っているからそんなに印象は悪くない)



「コワイ…」「ユウカ…」「ブルブルブルブル」「アリス、怖かったです……!」
「……ノア、どうしよう」
「あらあら…丁度良いですし、休憩にしましょうか♪」



リクエスト内容「ユズのロッカーに先回りして欲しい」から着想を得てこの話を作りました
リクエストして頂きありがとうございます

刈り取るさんはこういう極度の疲労があると
死にかけの頭で仕事に行こうとする→座標がズレる→寝落ちる
という経路を経てこの話みたいな事が起こります
まぁ仕事いっぱいだったからね!しょうがないね!()



エピソードの最初にデータベースもありますので、是非こちらもご覧下さい↓
https://syosetu.org/novel/349213/1.html


なんか刈り取るさんにして欲しい事を書き込む活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=315528&uid=276197
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