ここ最近､特に大きな事もなく平和な日々が続いている｡

最近と言えどもビナーをﾇｯｺﾛしてから三日ほどであり､その更に前の日はやっていた色々なことから解放されたのもあるが｡

ブラックマーケットはあの日ワカモに巡回させたからかトラブルが更に減少*1し､私の周囲でもそんな巻き込まれたりなんて事はほぼなく*2｡

軽い巡回を終えた私は近くのたい焼き屋でおやつを頬張っていた｡

たっぷりのカスタードがサクサクの生地とのギャップを生み出していてとても美味しい｡

ストーリーで先生達が食べていただけあるものだ｡

少しばかり休憩しながら､脳内掲示板でもしようかな､と私は書き込みをした｡

811.刈り取るさん

平和も平和､ブラックマーケットのトラブルが無くって私は安心です

813.名無しの転生者

イッチ！イッチじゃないか！

814.名無しの転生者

ビナーの事とかがあったからねぇ

色々あればそりゃ多少は大人しくなるよ

815.名無しの転生者

イッチ今何してるの？

816.刈り取るさん

軽く巡回を終えてアビドス生が食べてたたい焼き屋に居る

817.名無しの転生者

ええやん

何味派？ワイはつぶあん

818.名無しの転生者

こしあん

819.名無しの転生者

お？やるか？

820.名無しの転生者

戦争か？戦争だな？

822.名無しの転生者

カスタード味居ないの……？

824.刈り取るさん

私もカスタード派だなぁ

つぶあんとこしあんはどっちかって言うと御饅頭で食べたい

825.名無しの転生者

人には人の好みがあるよな！

826.名無しの転生者

頭ごなしに否定しちゃダメだな！うん！

827.名無しの転生者

この素早い変わり身､お前ら戦争しようとしてた奴等だな？

828.名無しの転生者

そそそそんなこととなななないよよよ

829.名無しの転生者

だだだだれがイッチのカスタード発言にビビったって！！？

830.刈り取るさん

いや私は別に自分の好みの味でどうこうとかはしないけども

自分が好きならそれで良いじゃんとは思うよ？

831.名無しの転生者

まぁそんなもんだよな

832.名無しの転生者

抹茶あんことか好きな人も居るし千差万別よな

833.名無しの転生者

冷やしたい焼きとか学校の文化祭であったわ

834.名無しの転生者

あーなつかしそれ

めっちゃ冷たいんだよね

835,刈り取るさん

文化祭が夏の終わりだから暑くて冷やしたい焼き食べてたらお腹冷やしたりとかね

836.名無しの転生者

あるある

837.名無しの転生者

よくやったわ

838.名無しの転生者

バニラアイス入りとか珍しかったよな

839.名無しの転生者

すっごく懐かしい気分や

たい焼き食べたくなってきたし板金開発しよ

840.名無しの転生者

≫839の居る世界は無いの？

841.839

ゴリゴリの異世界ファンタジーでなろうに侵食されてないからまだそういうのは全くない

俺今鍛冶屋やってるし丁度良いかなって

842.名無しの転生者

ええやん

そういう思いつきもここならではやな

844.刈り取るさん

http://xxxxxxxxxx/mp4

たっぷりカスタードがﾑﾆｭｳって出てくる瞬間

845.名無しの転生者

うわああああああああああああああああああああああ

846.名無しの転生者

最高のASMRやんうまそ

847.839

やべぇ腹減ってくるわ

848.名無しの転生者

これ一個で満足するやつ

849.刈り取るさん

いやー家でワカモと食べる用に買ったけど少なくしといて良かったわ

こんなボリュームじゃ二個とかそんなすぐ入らないよ

850.名無しの転生者

ゆっくりお食べ

ワイも今たい焼きの屋台みっけたから即買いしたわ

851.名無しの転生者

このスレが空前のたい焼きブームに入るとはこの李白の以下略

852.名無しの転生者

李白節穴定期

855.刈り取るさん

お､先生から連絡

「今からアビドス高等学校に来れますか」だってさ

856.名無しの転生者

突然やな

なんだろ､カイザー全滅させたから説教とか？

857.名無しの転生者

それがないとは言い難いのが…

858.刈り取るさん

この歳になって説教とかやだなぁ

859.名無しの転生者

この歳って

イッチ一体幾つなんだよ

861.刈り取るさん

もー仮にも女性なんだからそういうの簡単に言っちゃダメだよ？

862.名無しの転生者

すまん､流石に今のはノンデリすぎたわ

864.刈り取るさん

まぁ生前は享年28だったけど

865.名無しの転生者

言うんかい

866.名無しの転生者

言っとるやないかい

867.名無しの転生者

そこは言わない流れでしょうが

869.刈り取るさん

いやぁ私なんかの年齢聞いてどうすんのさ

仮にもアラサー手前なんだよ？

こんなの好きになる奴居ても本気にはならないよ本当に

870.名無しの転生者

悲しいこと言うの止めてくれる？？

連絡を受けた私は､閉塞ネットワークを使用してアビドス高校の正門にある箱から出てきた｡

先生から聞いたところ､「この暑い中歩かせるのも良くないから､箱移動で直接来ても大丈夫」とのこと｡

正直暑さはブフ系の魔法でどうにかなるが､それでも暑いのは嫌だしありがたいものだ｡

じゃらじゃら鎖を鳴らしながら､私はそんなことを考えていた｡

「……来た､よ」

"お､いらっしゃい｡いきなり呼び出してごめんね"

「気に､しないで」

対策委員会本部を尋ねると､全員がそこに集合して思い思いの事をしていたことが伺える｡

「うへ､おつかれ〜」

「こんにちは〜☆」

「こんにちは､『死神』さん！」

「ん､こんにちは」

「いらっしゃい､自由に座って良いわよ」

ノノミがホシノを膝枕していたり､一年組(セリカとアヤネ)が書類の整理をしていたり｡

空いてる席に座ると､寝転がっていたホシノも一年組もそそくさと席に戻る｡

"さて､全員揃ったね"

「はい､では本日の会議を始めましょう！」

アヤネが音頭を取り､まばらな拍手と共に定例会議が始まった｡

……ちょっとだけ視線が多い気がするが｡

「まず直近の件ですが､3000%まで上げられていた利子が元に戻っていつもの支払い金額へと戻り､更に不正とされていた金額分借金が減少したことを確認しました」

そういえばアビドスは毎月700万程を返済していたんだな､と考える｡

……なんだか皆よくこっちを見るね？

「そして､あの後もう一度色々調べていたら…なんとブラックマーケットに存在していた闇銀行がカイザーの系列から外れていました！」

"まぁそれに関しては死神が言ってたね"

「はい､なのでこれに関しては軽く流してもらって大丈夫です｡なぜなら次がもっと大きな問題ですから」

おっかなびっくり､という表情をすぐに引っ込めたアヤネは､じいっと私の方を見て言う｡

「…………死神さん､どうしてカイザーを皆殺しにしたんですか？」

六人の視線を直に受ける｡

そんな中で私は徐に立ち上がった｡

「これ､を見て欲しい」

袖の中からカイザーとの契約書を出す｡

「私､とカイザー…は､ブラックマーケット､では……不干渉｡とある一定の…場所を､境界､とした」

「ん､聞いたことある｡ブラックマーケットは死神の領域が一番安全」

それに目を閉じて頷く｡

「私は､それを守り…移動､も制限して……いた｡然し､奴等は……領域内への…侵略と､戦闘をし…契約を､破る」

紙の下の方に指を差す｡

「明記も､した」

「ふむ……『カイザー社と死神は､この契約書の明記事項に外れた行為をして領域に危害を加えた場合､この契約を破棄したものと見做す｡その際被害者には容疑者に対し罰を執行する義務を持つ』｡つまり死神の領域で悪さしたから罰を受けるって事だよね〜」

「あぁ｡そして…シャーレ､との契約」

もう一枚､シャーレとの契約書を出した｡

『シャーレ担当顧問「先生」及びシャーレ所属､又はシャーレが許可し指揮下に置いた生徒に生命の危機またはそれに準ずる事態が発生した際､『死神』にはその時点で発生した事態の原因を根絶させる義務が存在する』

「セリカの､誘拐…も､カウント内……だったが」

"それは私達で解決できたからね"

「…だから､外したが｡ホシノ､の方は…明確な､アウト」

うへ､と隣から小さい鳴き声が聞こえたが無視｡

「既に､契約を…破棄､されている上｡契約相手への､純粋な…犯罪｡今までの､行動も…踏まえ､このキヴォトスから……カイザーを､文字通り､消した」

「……その､大丈夫なんですか？生(・)徒(・)で(・)殺(・)人(・)って､それってむしろ犯罪では……」

ノノミが少し苦しそうな顔で聞くが､根本から違う｡

「私は……今年で､29…なんだが」

……この発言が､彼女らにとって今日一番の驚愕だった｡

「……良い？」

「ご､ごめん……驚き過ぎて､ちょっと」

少し経って復活した六人に､更に続ける｡

「大人､だから…なんでも､という訳では……無い｡大人同士…の契約､だからこそ……違反の､責任……は､重い」

ブラックマーケットの侵略行為では､私が治癒したものの生徒ではない住民も被害を被った｡

ホシノ誘拐は､一学校の生徒である彼女の身柄を不当に拘束した｡

「責任が､重くなりすぎた……それは､死でのみ､償われる」

私が話すのをやめ､皆からの反応を待つ｡

"……多分､この結果は私のせいなんだよね"

発したのは､先生だった｡

"最初に契約したとき､『根絶の程度は死神に一任する』って私が言っちゃったから……"

「それ､先生が原因じゃない！？」

何してんのよあんたら､と言われるが何故私まで？？

「ちょ､そんなわからない顔してんじゃないわよ！あんたら纏めて今から説教よ説教！！先生はあたしが､他は死神に行って！！」

「りょうか〜い」

セリカのその一声で､委員会がざっと総起立｡

「え､ちょ､待」

「は〜い行きますよ〜☆」

事態を把握できない私は､ひょい､とノノミに軽々と俵持ちされ､隣の部屋へ連行｡

会議はほぼお開きとなってしまい､私はこの歳にもなって四人から懇々と説教をされる事になってしまった｡

良いじゃないか､契約違反の罰則なんだし｡

「良くないです！！」

ゔっ｡