看護師不足に直面する珠洲市総合病院=珠洲市野々江町

  ●4公立病院で2割減

  ●応募あるが採用1割…、給与低下ネック

 能登半島地震で甚大な被害を受けた奥能登の4公立病院で看護師の退職が相次ぎ、深刻な人手不足に陥っている。地震前後の比較では全体で約2割(計69人)減少し、うち珠洲は31人減の危機的状況。石川県看護協会は能登勤務を希望する看護師を県内外から募って仲介する事業を始めたものの、採用は希望者の1割にとどまる。給与水準の低下が就業を阻む主な要因で、関係者からは「病棟、診療の縮小は避けられそうにない」と切迫した声が漏れる。

 奥能登の4公立病院(珠洲市総合、市立輪島、公立宇出津総合、公立穴水総合)では、震災で自宅に住めなくなったり、子どもの教育のため引っ越したりしたことで、地震前に計379人いた看護師が、現在は計310人(18・2%減)に落ち込んでいる。

 珠洲では119人いた看護師が88人に。減少率は26%と4カ所で最も大きく、現在は稼働させる病棟を3から2、使用する病床数も163から115に制限している。今年度も既に3人が退職し、石井和公事務局長は「看護師がいなければ病棟は回せない。1病棟になる可能性がある」と頭を悩ませる。患者が少ない診療科の外来は開設日を絞ることも想定されるという。

 看護師が25人減った市立輪島病院の担当者は「離職のたびに人事異動の必要があり、現場のストレスも増している」と、退職が次の退職につながる「負のスパイラル」を危惧する。

  ●県内外から238人応募

 奥能登の医療体制をどうにか維持できないかと、県看護協会は地震後、能登の医療機関や福祉施設に県内外の看護師を仲介する「能登プロジェクト」を開始。これまでに238人の応募があった。

 しかし、実際に勤務を始めたのは25人のみ。協会によると、能登の施設より賃金が高い病院で働いている人が大半のため、給与が目減りする生活をためらうケースが多い。賃貸物件が少なく、住居探しも課題となっているという。

 新たな担い手の確保も停滞している。奥能登の4公立病院にはもともと、看護学生に月額10万円を奨学金として貸与し、卒業後に奥能登で一定期間勤務すれば返還を免除する制度があるが、珠洲では近年4~5人いた利用者が今年は1人だけとなった。

 看護師不足は8日に金沢市で開かれた県の「ミライカイギ」でも取り上げられ、珠洲市総合病院の出島彰宏内科医長が「金沢などの病院に在籍したまま奥能登に派遣できるようにしてほしい」と訴えた。馳浩知事は「人材を獲得、ローテーションさせる仕組みを県で調整したい」とした。

 県は能登空港周辺に4病院の機能を統合・強化した新病院を設置する方針だが、それまで持ちこたえられるか。奥能登の地域医療を巡る環境は厳しさを増している。

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