メス堕ち化するオタク産業

4コマ漫画作品である「ぼっち・ざ・ろっく!」をアニメ化する際に、思想がかなり強い脚本家が「ヒットさせる為にエロ描写などをナーフした」とインタビューで答え、ちょっとした炎上になっている。

この脚本家自体に言いたい事は沢山あるのだが、とりあえず客観的に語るならアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」は大成功したという他なく、Google AIによれば作漫画が累計300万部を突破し(2024年1月時点)、劇場総集編が興行収入10億円を突破、劇中バンド「結束バンド」のアルバムが初週売上7.3万枚を記録し、今でも国内外問わずイベントが開かれている。そして残念ながらヒットを狙うなら、男性向けジャンルであれど女性受けをある程度意識しなければならない…というのも正論だ。何故なら男女平等国家において、男性が使える金や暇は女性と比して滅茶苦茶少なく、男性にターゲットを絞ったところで数字は全く取れないからだ。

と言うと、恐らく政治的に正しい方々は真っ先にこのように反論することだろう。「いやいや、日本においては男性の方が女性より金を稼いでいる。例えば令和6年の賃金構造基本統計調査によれば、男性の平均月額賃金が36万3100円であるのに対し女性は27万5300円…女性は男性の76%程度しか稼げてない」と。この言説自体に嘘はない。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/dl/14.pdf

しかしながら賃金格差とは裏腹に、消費の現場では全く異なる様相が展開されている。総務省統計局の令和6年「家計調査」は、特に個人の消費性向を分離して見るために単身勤労者世帯のデータに注目すると、女性が支出を主導していることを明確に示しているのだ。まず1人暮らし男女別生活費(消費支出)は男性が17万5664円で女性が19万3448円である。

更に示唆的なのは34歳以下の若年層のデータだ。この層において単身勤労女性の月平均消費支出は20万9962円に達し、同条件の男性の15万1119円を大幅に上回っている。その差は約6万円にも及び、女性の方が男性より約40%多く消費しているのだ。

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https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330019&tclass3=000000330020&stat_infid=000040246660&result_back=1&tclass4val=0

ご覧の通り支出の優位性は、ほぼ全ての主要費目で見られる。この中で男性が女性を上回るのは食料費のみであり、しかもその差は800円だ。そして特に顕著な差が見られるのが家賃と「教養娯楽費: 女性(3万1349円)対 男性(1万8854円)」と「その他…交際理美容等…の消費支出: 女性(3万128円)対 男性(1万7638円)」である。コレがナニを意味するか?は説明する間でもないだろう。

因みにこの差は「男性の方が金を貯金に回すから」でもない。2019年の家計調査では平均貯蓄額は30代男性は4415000円だが女性は4079000円であり、その差は30万円程度しかなく、そして30歳未満においては男性1566000円に対し女性1867000円であり貯金額も女性の方が高い

https://www.stat.go.jp/data/zenkokukakei/2019/pdf/gaiyou0518.pdf

この様にデータは男性が賃金では女性を上回る1方で、(特に若年の単身)女性が総支出額および裁量的支出において男性を凌駕するというパラドクスを明確に裏付けている。恐らく私のnoteの読者でも「女性の方が男性より購買力は上」という話を聞いた際は、「既婚世帯においては小遣い制なりで妻が事実上夫の所得の処分権を有しているので、それにより購買力の男女格差が生じるのだろう」と思った方多いはずだ。実際それもかなり大きな要因だ。しかし単身世帯のデータは、この仮説だけでは説明しきれない何かを示している。単身者は自身の収入から支出しているにもかかわらず、平均的により収入の低い女性が男性をこれほど大きく上回って消費しているという事実はナニを意味しているのだろうか?

またこの不可解な現象は男女平等国家共通現象であり、例えば米国では総消費支出の85%を女性が占める…のはいいとして、平均的な独身女性は税引き後の収入の117%を消費してることが明らかになっている。因みに男性の消費は税引き後収入の98%である。この女性の追加の17%の購買力は1体どこから来るのだろうか?

結論から言えば、1番大きな原因は「子供部屋おばさん(親から家賃等負担して貰ってるのも含む)」である。良い悪いも子供部屋おばさんという生活様式は、家賃、光熱費、食費といった成人生活における最大の固定費を事実上消滅させ、比較的控えめな給与を、裁量的支出に特化した強力な購買力へと変貌させるメカニズムとして機能するのだ。

(親からの経済援助における社会人男女のデータはないが、カードローンの巨匠調査による大学生の仕送り額においては男子学生の平均が約8万円だったのに対し女子学生は約11万円と、3万円もの差が開いている。この性差は社会人になっても継続すると考える方が自然だろう)

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https://dime.jp/genre/770533/

不動産ポータル「LIFULL HOME’S」の調査によると、20代の約4割(37.7%)が実家で暮らしており、これは1人暮らしの割合(17%)を上回っている。特に18歳から34歳の未婚女性に焦点を当てると、国勢調査によれば子供部屋おばさんの割合は6割から7割に達するというデータもある。良い悪いは別に子供部屋おばさんは未婚女性の生活様式としてはマジョリティの分類されるだろう。

https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon3/pdf/gaiyou.pdf

https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon3/pdf/gaiyou.pdf

実家暮らしがもたらす経済的恩恵は絶大だ。社会人として家計に1定額を入れるケースは多いものの、その金額は20代で平均月3万円、30代で4万円程度に留まっている(家計調査)。これは1人暮らしで必要となる家賃や生活費の合計額とは比較にならないほど少ない。結果として実家暮らしの社会人は1人暮らしに比べて単純計算で月に5万円から9万円もの余剰資金を生み出すことが可能となり、この差額が可処分所得の莫大な格差を生んでいるのだ。 

実家暮らしによって節約された生活費は単なる「貯蓄」以上の意味を持つ。それは税金も労働も伴わない「幻の第2所得」として機能し、そのほぼ全額が裁量的支出へと振り向けられる。それにより額面上の給与は低くとも、若年女性の実質的な購買力は生活費の全負担を背負う高所得の男性に匹敵、あるいはそれを凌駕するレベルにまで引き上げられているのだ。

このメカニズムを具体的に見てみよう。上述した通り消費支出のデータでは、34歳以下の単身勤労女性の月平均消費支出が約21万円であるのに対し、男性は約15万円と、約6万円の差が存在する。この差額は男性の1人暮らしにかかる家賃や光熱費、食費といった基礎的な生活コストとほぼ1致している(男性のソレは食費4万円、家賃3万円、光熱費1万円)。これは実家暮らしによって基礎生活費用負担から解放された女性は、浮いた資金をそのまま「教養娯楽費」や「その他の消費支出」といった非必須項目に投入している事を意味している。

結果、マーケティングの観点からは、極めて特異な消費者層が生まれる。彼女達は自身の給与所得だけでは到底到達し得ないような、はるかに裕福な個人の消費プロファイルを持つことになる。この「幻の第2所得」を源泉とする巨大な消費力こそが、エンターテインメント市場が無視出来ない、そして積極的に取り込みを目指すターゲットとなっているのである。高給レストラン、ブティック、宝飾、旅行…これらの全てのサービスが概ね女性向けである理由でもある。

若年女性が持つこの余剰購買力の源泉を特定した今、次に問われるべきは、その資金が具体的にどこへ向かっているのか?だ。それこそがキモオタク市場である。彼女達の支出の優先順位を詳細に分析することで、エンターテインメントの作り手たちが応答している市場の力学が明確になる…というか、何処の経済紙もコンサルもマーケターも口を揃えて叫んでいるのが「推し活」だ。

「推し活」は、もはやニッチな趣味ではなく、巨大な経済圏を形成している。その市場規模は野村證券が行った矢野経済研究所のインタビューによれば1兆円規模に達し、アニメやアイドルがその中心を占めているという。そして博報堂の分析によれば経済の変動に左右されにくい強靭さを持ち、尚かつ特に経済力のある20代以上は高価な限定品やライブイベントへの参加に資金を投じるとのことだ。これは景気悪くなると家庭ではパパ関連の支出から真っ先に削られる「父ちゃんの立場指数」とは真逆の傾向だ。そして勿論推し活人口の圧倒的多数が女性である。男性オタクはともかく女性オタクは間違いなく経済を回してる。

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https://www.nomura.co.jp/wealthstyle/article/0392/

https://www.hakuhodo.co.jp/humanomics-studio/assets/pdf/OSHINOMICS_Report.pdf

更に言えば女性は男性に比して暇がある。特に日本においては就業時間の男女差が大きく、ILO調査では平均して女性が男性より月の労働時間が40時間短い。この格差はコンテンツ飽和時代でユーザーの可処分時間を奪い合う娯楽産業において、重要な意味を持つ事は想像に難くない。雑に言えば、使える金がないうえに暇もない男性は娯楽産業にとってはあまり歓迎出来るお客様ではないのだ。

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA19B3I0Z11C22A0000000/

伝統的に「男性向け」とされてきたジャンルに、巨大な女性オーディエンスが形成されている現状は決して偶然の産物ではない。例えば「Fate」は元々男性向けのエロゲーであったが、現在は「Fate Grand Order」というソーシャルゲームをメインにシリーズが展開され、女性ファンからも熱狂的な支持を確保している。2024年のSensor Towerによれば、そのユーザーの男女比は6:4ということだ。最も多少詳しい方なら「Fateは前作の月姫の成功である程度の女性ファンを獲得していた云々」と語り始めるかもしれないが、それでもこの男女比はFate Stay Night発売前の当時のファンに言っても信じて貰えないだろう。そしてFateもこうした展開するにあたってエロはナーフした。こういうと「いやFate Stay Nightのエロは元々桜ルート以外は無くても問題なかったやんけ」と突っ込む方もいそうだが、とにかくナーフされている。

https://sensortower.com/ja/blog/fgo-9th-anniversary

この文脈に照らし合わせると「ぼっち・ざ・ろっく!」の脚本家による改変は、脚本家の普段の言動を見る限り間違いなくポリコレ検閲によるものに他ならないが、こういった時代性とマッチしてしまっている。「ぼっち・ざ・ろっく!」を原作のままやりエロを混ぜたら、ごちうさ難民(原作再現+エロでヒット)やニッチな男性層は取り込めただろうが、それらの男性層は残念ながら金と暇はなく、より金と暇を持つ女性層を遠ざけることになったかもしれない。

SNS上で観測された反発 は、旧来のオーディエンス(男性オタク)が自らの嗜好が主流から外れていくことに対して感じる摩擦を象徴している。しかし上述でも触れた通り「ぼっち・ざ・ろっく!」の圧倒的な商業的成功は、その戦略の正しさを証明している。

本記事ではデータで裏打ち出来る「子供部屋おばさん」を主に取り上げたが、女性の購買力はデータに出ない面でも支えられている。例えば脱税がデフォルトな性風俗産業従事だったり、男性と食事等に行く際の奢りだったり、そして行政からの金銭や食料援助だ。これらの統計には出ない数字は、規模は断定出来ないが女性達の購買力を更にブーストさせていることは確かだろう。

参考までに数字を述べると株式会社ネクストレベルにおける調査では、デートの負担額は男性8339円で女性3361円で男性は女性の約2.5倍デート代を負担しているうえに、女性の10%がそもそもデート代を1切負担しない。

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000162.000032757.html

また街コン調べによると20代独身女性の12%がパパ活を経験しているという。


こうしたある種の地下経済(筆者的にはコチラの方が影響デカいと予想してる)と子供部屋おばさんに由来する若年女性の優れた裁量的支出能力は、彼女達をエンターテインメント産業における商業的成功の事実上の決定権者へと押し上げた。そして先進国における若年女性は年々思想を強くさせている事が確認されている。具体的には被害者意識が強く、男性に対して憎しみを抱き、遵法精神が乏しく、男性に暴力を振るうことに抵抗がなく、男性以上にセクハラその他性加害を行い、そして不満や鬱憤を抱えている…というのが客観的データで見た先進国の若年女性の傾向だ。

私は筑波大学出身なので、これからのオタクがどのような末路を辿るか?には詳しい。女性が参加し始めたキモオタクコミュニティの辿る道はいつも同じだ。最初は女性が参加したことでコミュニティ全体が活況するが、そのうち女性は気に入らない男性…不細工だったり空気を読めなかったりする…を嫌がるようになり、やがてデリカシーがないことを理由に周囲に彼等への不満を漏らすようになる。するとオタクの中では女性受けがマシな方…と自認している男性オタク達がイキりだし、色々と女性に気を遣い女性が快くいられるようコミュニティの自治を始めていく。こうしてコミュニティはギスギスしだし、そして女性が立場が弱くなったオタク達を指してエッチな目で見られたとかセクハラされたとかの性的被害を主張しだす。そしてゴタゴタの末、最終的にキモオタクコミュニティからキモオタクは排除される。

「ぼっち・ざ・ろっく!」にまつわるアレコレは、購買力と暇の男女差という性的権力の拡大と共に、オタク市場全体がこのフェーズに入り始めたということだ。我々が目の当たりにしているのは、単なる娯楽の嗜好の変化ではない。それは「可処分所得と可処分時間」という資源配分の歪みがもたらした、文化における権力移行である。

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666

個人的にものすごく多いと感じているのが、「遠隔子供部屋おばさん」ですね。 離婚後に一人暮らしで大して働きもしないのに余裕ある生活をしている人、しょっちゅう無職期間があるのに一人暮らしが破綻しない謎の独身おば、どっちも複数知っていますが、すべて「実家からの援助」がありました。 数年…

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いぬい

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