慶応義塾大学事件(東京高判令7・2・12) 外国語非常勤講師が無期転換に必要な期間は? 任期法を適用して「10年超」
薬学部で語学を担当する非常勤講師の契約期間は任期法の10年に満たないとして、無期転換を認めず雇止めを有効とした事案の控訴審。東京高裁は、任期法の「教育研究組織の職」の意義を殊更厳格に解するのは相当でないとして、法の適用を認めて地位確認等の請求を棄却した。労働契約の内容は長期的、安定的な労働の継続を予定していたとはいえず、更新期待を否定した。
教育研究に当たる 満了で雇止め有効
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、大学において、平成26年度から契約期間を1年とする有期労働契約を締結・更新し、大学薬学部におけるフランス語の非常勤講師として勤務してきた。令和3年度末の時点で契約の通算期間は8年となっていた。
甲は薬学部におけるカリキュラム編成上、同4年度は選択科目のフランス語の授業を開講しないことなどを理由に次年度の更新を拒否された。甲は通算契約期間が5年超となっていたため、無期労働契約への転換申込みを行ったが、大学は任期法7条1項に基づき無期転換権発生までの通算期間が10年であり、甲は要件を満たしていないとして雇止めにした。甲はこれを不服として訴えを提起した。
甲は、大学に対し、主位的に甲と大学間の労働契約は、無期転換申込権の行使によって期間の定めのない労働契約に転換しているとして、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあること、予備的に大学による雇止めの意思表示は労働契約法19条2号に基づいて無効となり、甲と大学間の労働契約は更新されていることを主張して、(期間の定めのある)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めたものである。一審(横浜地判令6・3・12)は請求を棄却したため、甲が控訴した。
判決のポイント
(1)甲に任期法7条1項が適用されるか否か
任期法7条1項が適用されるには、…
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