作戦翌日。
第08観測基地。
──臨時の会議室には、重厚な楕円形の会議机を囲み、
軍本部の幹部たちと技術部顧問が揃っていた。
艶消しの濃緑の壁、机上に整然と積まれた分厚い報告ファイル、
端末の待機画面が醸す静けさは、場の緊張をいや増す。
基地側の席はただ一つ。
セルゲイ司令官は姿勢を崩さず、
眼前の上席を黙して見据えている。
最初に口を開いたのは、議長席に座る軍本部の作戦部長。
背筋を伸ばし、年季の入った低く硬い声が会議室を切り裂く。
「まず、現状を確認する。
──レイヴン少尉の着任以降、基地の統制は急速に低下。
規律は乱れ、指揮系統は崩壊寸前との報告が上がっている」
紙をめくる音が短く響く。
「昨日の戦果は大いに評価する。
だが、このまま放置すれば、更なる混乱は避けられない」
続けて口を挟んだのは、痩せた中年の作戦参謀。
深く刻まれた目尻の皺が、長年の現場経験を物語る。
「現場のニケが上官の命令を軽視し、
独断行動を取る例が増加している。
原因は、少尉が主導する高機動訓練にあると見ている……
……だが」
視線を鋭くし、セルゲイを真っ直ぐに見据えた。
「私にはどうにも、
基地の指導および管理体制に問題があると感じざるを得ん」
セルゲイは微動だにせず聞き続ける。
作戦参謀はさらに声を低く落とした。
「昨日、作戦完了後に兵器庫や警備担当から事情を聴いた。
少尉は受け答えも行動も規律的で、傍若無人という印象はない。
確かに、点呼や座学を欠席し、集団行動を取らないのは
軍人として問題だ。だが、それは軍本部自らが
“ある程度の自由を与える”と許可した結果だ。
今さら咎めるべき性質ではあるまい」
セルゲイ司令官が眉をひそめる。
「つまり、基地側の指導により今回の一件が発生した可能性がある
──そう言いたいのですか?」
会議室の空気が冷え込む。
軍という組織では上下関係や規律による理不尽は避けられない。
だが、結果がすべてというのもまた軍の現実だ。
作戦参謀がわずかに口角を上げる。
「まあ、そういうことだ。この場に上官共を呼ばないのが、
何よりの証左であろう」
「よせ」
低く諫めたのは、白髪をオールバックにした技術部顧問。
鋭い目つきの奥に、現場データを何百回と解析してきた者だけが
持つ冷徹な光が宿る。
続け様に本部長が付け足す。
「その可能性も事実だが、いずれにせよ結果だ。
実験的配属の名の通り、
どのような影響を及ぼすかも調査目的の一つだった。
むしろ崩壊せず持ちこたえたセルゲイ司令官は称賛に値する」
セルゲイは深く一礼する。
「ありがとうございます」
顧問は資料を整え、声の調子を改めた。
「しかし……現状の基地を立て直すにしても、
所属上官では手に余るのも事実だな?」
セルゲイは一拍置き、低く答えた。
「はい。
お察しの通り、この場に上官達を呼ばなかったのは、
彼らが少尉に対して私情とも取れる言動を繰り返し、
今の精神状態では会議に耐えられないと判断したためです」
その発言に、財務監査官の壮年女性が鼻で笑った。
黒縁眼鏡の奥から、計算式を弾くような冷たい視線を送る。
「ならば、上官は異動か左遷が妥当ね。
実験対象はあくまで少尉。
軍人が私情を挟むことは許されないわ。
効率を考えても、感情で動く人材は損失にしかならない」
冷徹な意見に、室内の視線が一斉に沈黙で頷いた。
本部長が話題を切り替える。
「……さて、問題は後任だ」
本部長の低い声が会議室の空気をわずかに震わせる。
長机の上には分厚い資料の束と、映し出された作戦データ。
蛍光灯の白い光が、幹部たちの硬い表情を
浮かび上がらせていた。
「異動や左遷で穴を空けるだけでは、基地の指揮系統は回らん」
書類を整えた本部長の視線が、セルゲイ司令官へ向けられる。
作戦参謀が、腕を組みながら眉を寄せた。
「少尉の統制方法は、従来の人間上官では難しい。
……同じニケ同士のほうが、現場の反発も少なく、
迅速な判断が下せる。
そうだったな、セルゲイ司令官」
「概ねは、おっしゃる通りでございます」
セルゲイの声は淡々としているが、端々に慎重な響きがある。
「教官や上官は実戦経験などを考慮して選抜されますが、
ニケに関してはその土台すら整っておりません。
少尉の言葉を借りますと
──やはり実戦経験のあるニケを上官として配置するのが
得策かと愚考いたします」
「ニケの上官を置く、か……」
顎に手をやった白髪の技術部顧問が、静かに言葉を選ぶ。
「……確かに、高機動戦術を体系化するなら、
同じニケが指導にあたるのが最も効果的だ。
だが──現状、ニケがニケを指導するなど前代未聞だ」
財務監査官が書類をめくりながら渋い声を出す。
「上官教育の基盤すらないし、教官に回せる戦力的余裕もない。
人員配置のコストも馬鹿にならない」
「それでもやるしかあるまい」
作戦参謀が短く吐き捨てる。
「セルゲイ司令官の言う通り、
人間の上官ではあの基地のニケたちを統率できん。
候補は限られる。少尉の行動に振り回されず、
現場の士気も落とさない……そんな人材だ」
「適任者は?」
本部長の一言で、技術部側の視線が自然とある人物に集まった。
白髪の顧問が資料を繰りながら低く告げる。
「……基地における高機動型の運用比率は七割を超えている。
これは明らかに少尉の訓練方針が浸透した結果だ」
「指導能力だけを見れば、上官兼教官に据えるのが最も効果的だ」
顧問がうなずく。
「現場の動きは確実に統一される」
だが財務監査官が即座に首を振った。
「不可能よ。レイヴン少尉は唯一の主戦力。
教官に回すなんて、自分の首を絞めるようなもの」
セルゲイも静かに同意する。
「レイヴン少尉を戦場から引き離せば、
基地防衛は著しく低下いたします。
現状では、指導と実戦の両立は不可能です」
本部長が資料を閉じ、指で机を軽く叩く。
「……つまり、高機動型の増加は把握しているが、
制御する“同格の上官”を用意できないということだな」
会議室に短い沈黙。
やがて本部長は息を吐き、結論を下す。
「ならば、ひとまずレイヴン少尉に“指導役”と“主戦力”の双方を
担ってもらうしかない」
「二足の草鞋……負担が大きすぎる」
作戦参謀が渋い顔をする。
「幸い、当面は遠方派遣はない」
本部長が首を振る。
「今この時期しか両立はできまい」
セルゲイが頷く。
「……承知しました。ただし訓練は可能な限り実戦形式とし、
少尉の戦力を削がぬよう配慮いたします」
だが、その声色がわずかに低くなる。
「……ですが、問題は少尉が納得するかどうか、です」
「どういうこと?」
財務監査官が目を細める。
セルゲイは一拍置き、淡々と続けた。
「少尉は正義感や善意では動きません。
行動するのは、何らかの成功報酬があるときだけです」
会議机の向こうで白髪の顧問が低く咳払いをする。
「──率直に言えば、軍と傭兵を混同している。
能力は確かだが、動機が私的契約や報酬に依存する以上、
軍規との相性は極めて悪い」
議長が重々しくうなずく。
「……となれば、行動原理に合わせる他ないな。
報酬や成果によるインセンティブを与え、任務を遂行させる」
「特別昇級か、特別装備の貸与だな」
作戦参謀が即答する。
「金じゃない、本人が価値を見出すものだ」
セルゲイはわずかに表情を緩めた。
「……それなら、少尉も納得するでしょう」
議長が場を見渡し、結論を下す。
「暫定的に
──レイヴン少尉を上官役兼主戦力とし、報酬制度で管理する。
異論は?」
誰も声を上げなかった。
そして、会議は次の問題へと移る
──「その少尉を誰が指導するのか」
議長の言葉に、作戦参謀が静かに腕を組む。
「現状、この基地には該当者はいない」
白髪の技術部顧問が首をかしげる。
「……指導役そのものが不要という見方もあるな」
財務監査官が眉をひそめる。
「どういう意味?」
顧問は淡々と答えた。
「懸念は理解している。
しかし、現場のニケたちが少尉を信頼しきっている状況で、
彼女の頭上にさらに“指導役”を置くほうが
混乱を招く可能性が高い」
作戦参謀が低く相槌を打つ。
「確かに。
少尉は力を持ちながらも傲慢にならず、他のニケを率いている。
こちらから裏切らない限り、牙をむくことはないだろう」
だが、年配の幹部が鋭く切り込む。
「……我々への攻撃の機会をうかがっているだけかもしれん」
「それこそ杞憂だ」
顧問が即座に否定する。
「信用に値する者には、彼女は分け隔てなく接している。
もっと言うなら、少尉はそんな回りくどい事はせんだろう」
そこで、作戦参謀がふと思い出したように
セルゲイに視線を向ける。
「そういえば司令官、先ほど“唯一の主戦力”と仰ったが
──本部の解析班の報告では、
少尉の訓練を受けた部隊も実戦投入可能と判断されている。
だが本人が拒否しているそうだな?」
議長が興味深げに目を細める。
「理由は?」
会議室の空気がわずかに張り詰める。
セルゲイは一瞬、言いづらそうに視線を落とし、低く告げた。
「──軍が使い潰そうとしても、生存できるように
……とのことです」
一瞬、重い沈黙が落ちた。
誰もすぐには言葉を継がず、資料をめくる音すら止まる。
やがて、年配の幹部が組んでいた手をほどき、
探るような視線をセルゲイに投げた。
「……少尉は軍について随分と詳しいな。
まるで実際に体験したような口ぶりだ」
セルゲイは短く息を吐き、
机上の書類に視線を落としたまま答えを返さない。
議長も無理には追及せず、ゆっくりと資料を閉じる。
財務監査官が、ため息をひとつ落とした。
「……いずれにせよ、彼女は従来の規律で縛るのは難しい。
管理というより、条件を整えて動かす形が現実的でしょう」
白髪の顧問がうなずく。
「報酬による契約的な運用、というわけだな」
議長が全員を見渡し、静かに結論を下した。
「方針は決まった。レイヴン少尉は上官役と主戦力を兼務。
報酬制度をもって行動を管理する。当面、指導役は置かない」
セルゲイが深く一礼する。
「……承知いたしました」
議長は資料を束ね、会議を締める一言を落とした。
「──これで、基地は彼女の双肩に乗る。支える準備を怠るな」
重苦しい沈黙の中、椅子の軋む音だけが会議室に響いた。
そして、その場にいた誰もが、
この決定が新たな波乱の火種になることを直感していた。
──後日。
軍本部から新たな通達が届いた。
内容は3つ。
ひとつ、レイヴン少尉を中尉に昇進させること。
もうひとつ、第08観測基地において彼女を
「高機動戦術教官」として任命すること。
そして基地に配属されていた上官達の異動であった。
通達が読み上げられた瞬間のレイヴン中尉の第一声は、
「えぇー……」
と、あからさまに嫌そうな声だった。
しかし、続けて説明された付帯事項──
「教官任務の実績に応じ、特別装備の支給」
の一文を聞いた途端、態度は一変。
「……やります」
即答だった。
こうして、
軍史上初となる“ニケによるニケへの座学指導”が始まった。
第08観測基地・講義室。
普段は半分以上が空席のこの場所が、
今日は珍しく隙間なく埋まっていた。
並んだ椅子にはすべてニケが座り、全員がわずかに前のめり。
期待を抑えきれず、瞳がきらきらと輝いている。
「やっと座学だ! あの中尉の話が聞けるなんて!」
「どんな訓練の理論してるんだろうなー!」
「もしかして、
あの高機動回避のコツとか教えてくれるんじゃない?」
囁き声は小学生の遠足前の教室のように弾み、
笑いが次々と弾けていく。
熱を帯びた空気に、講義室全体がわずかにざわめいていた。
だが、その輪の中で一人だけ浮いている影があった。
フェリー。
背筋をまっすぐに伸ばし、両手で机の端を握ったまま、
視線は机上から動かない。
──あの人の“やり方”を、座学で……?
いやいや、絶対ロクなことにならない……。
明るい声が飛び交う中、
フェリーの胸の奥には冷たい予感がじわじわと広がっていた。
あの高機動戦法を間近で見てきた自分だからこそ、良くわかる。
あれは、言葉で説明していい類のものじゃない。
むしろ──真似しちゃいけない部類の戦い方。
それなのに、どういうわけか中尉が教えると出来てしまうのだ。
実戦投入はまだだが、シミュレーションでの成績は軒並み高得点。
天才肌の者が凡人に教えるのは難しい。
大抵は感覚頼りになるからだ。
しかし、あの人にはそれがない。
教えるのが上手いというより、
相手ごとに異なる最適解を引き出す
──そんな厄介さを持っている。
……そんな人が座学で何を語るのか、気になる。
すごく気になる。
ガラリ、と扉が開く。
瞬間、室内の視線が一斉にそちらへ向いた。
黒い軍服のレイヴン中尉が無表情のまま入室し、
静かな足取りで教壇へ向かう。
片手には資料ファイル、もう片方にはチョーク。
歩調は一定、音もほとんど響かない。
「……全員、揃ってるね」
低く、抑えた声。
その響きと同時に、先ほどまでのざわめきはぴたりと途絶えた。
レイヴンは黒板の前に立ち、チョークの先で板を軽く叩く。
白い粉が舞い、彼女は深く息を吸い込むと──
「じゃあ、始めるよ。座学!」
ドヤ顔。
一瞬で空気が和らぎ、生徒たちの目がさらに輝きを増す。
……ただ一人、フェリーだけは机の下でそっとため息を吐いた。
「はい、じゃあまず──」
チョークが黒板を走る。勢いよく大きく書かれた文字に、
前列のニケが声を漏らした。
【軍は信用するな】
「……えぇ……?」
思わず口に出した彼女の隣で、フェリーは額に手を当てた。
レイヴンは振り返り、きょとんとした顔のまま淡々と続ける。
「あれ? 座学でも戦闘時の対応について学ぶと思った?
しないしない。
戦闘時の対応なんて、訓練時に教える方が効率的だからね」
フェリーがすっと手を上げる。
「おっ! フェリー! 早速質問かな?」
「いえ、質問ではないのですが……その危険な発言は何ですか」
「だってさー、軍って合理主義とか言われるけど、
実際メンツとか政治の都合で動くこともあるの」
「いえ、そういう事では──」
「じゃ説明するよー」
「聞けよ」
フェリーの制止を軽く受け流し、
レイヴンはチョークを指先で回しながら話し始めた。
「そもそも、ラプチャーがいない平常時で、
まだ勝てる見込みがあるとき
──それが、みんなが想像する“合理主義”の動き。
でも今は違う。
勝ち目が薄くなってるこの時期は、
ほとんど意味のない作戦ばっかやらされる」
ひらひらと手を振り、まるで当たり前のことを述べるように。
その軽さとは裏腹に、言葉の芯は妙に重かった。
レイヴンはチョークをくるくる回しながら、話を続ける。
「こういう時期はね、兵士もニケも“捨て駒”扱いされやすい。
戦術的価値よりも、政治的・心理的効果を狙った作戦に
回されるんだよ」
前列のニケが眉をひそめる。
「心理的効果……って、敵にですか?」
「いや、味方にだよ」
レイヴンの声色は淡々としているが、
瞳は一瞬だけ鋭く細められる。
「味方の士気を保つために、派手な“勝ち戦”を見せる。
でもその裏で、犠牲前提の部隊が組まれてる」
教室に、ざわ……と小さな波紋が広がる。
フェリーは机の下で拳を握った。
──やっぱり、この人は平気な顔で軍の裏側を口にする。
「でも、それって──」
と誰かが声を上げかけた瞬間、レイヴンは軽く手を上げて遮る。
「誤解しないで。私はそういう作戦を全否定してるわけじゃない。
戦争ってのは汚いもんだし、勝つためにはそういう場面もある。
……ただし、やる側は犠牲となる部隊に対して律儀に
『君たちは犠牲となる部隊だよ』なんて言わない」
彼女は黒板に二つの円を描き、
片方に【作戦目的】、もう片方に【生存】と書き込む。
そして、その間に矢印を引きながら言った。
「この二つを両立できない時、人間の上官は“目的”を優先する。
でも私は“生存”を優先する」
その一言に、場が静まった。
数秒の間をおいて、後列から誰かが小さく呟く。
「……だから、あの訓練は回避最優先なんだ」
レイヴンは肩をすくめ、少しだけ口元を緩めた。
「そう。目的を果たすためには生き残らなきゃ意味がない。
死んだら次はない。生きて帰れば次の一手を打てる」
フェリーは内心でため息をつきながらも、
その理屈の正しさを否定できなかった。
ただ、それを全員が実行したら……軍規はどうなるのか。
「じゃあ、今日から教えるのは──」
レイヴンは黒板に新たな文字を書き足す。
【死なないための戦い方】
「……はい?」とフェリーの声が裏返る。
その横で他のニケたちは目を輝かせていた。
レイヴンは口角を上げ、
まるで遊びのルールを説明するかのような軽さで言い放った。
「敵を倒すのは二の次! 回避、退避、撹乱、それから──」
チョークが黒板を叩く音が響く。
「自分が一番長く生き残る方法を考えろ」
場の空気が熱を帯びていく中、フェリーだけが冷や汗を流し、
心の中で叫んでいた。
──やっぱり、この人に講義させちゃダメだって……!
レイヴンは黒板の端に新しい行を走らせ、振り返った。
白い粉の付いた指先でチョークをくるくると回しながら、
口角をわずかに上げる。
「──ということで。
今日からは“軍を利用して自分を守る方法”を教えるよ」
その言葉に、後ろの席で「おぉ……」と低いどよめき。
フェリーだけは机の下でため息をついていた。
この流れ、嫌な予感しかしない。
レイヴンは黒板に大きく殴り書きする。
『使い潰されない方法』
そして人差し指を立てて、順に書き足した。
その1 舐められるな
「舐められたら終わり。
危ないとこに回されるし、盾役にされるのがオチ」
その2 利用価値を見せつつ、利用しにくさも出す
「“便利”と思われたら便利屋コース直行。
“使えるけど面倒”ぐらいがちょうどいい」
その3 簡単な任務ほど疑え
「“楽勝”なんて言葉は、裏がある時にしか使われない」
前列のニケが手を挙げる。
「つまり、全部全力でやれってことですか?」
「違う違う」
レイヴンはチョークを机にトンと当て、
目だけで教室を見渡した。
「私が言いたいのは、
体のいい理由を付けて見捨てられたり切り捨てされる時にも
よくこの言葉を使われるから」
「不測の事態を想定するのは前提。
でもね、“楽勝”の裏で切り捨てられることもある。
そういう時に動ける準備をしとけってこと」
その言葉に、教室の空気が僅かに重くなる。
「人間は保身に走る。軍でも企業でも同じ。
負けが込めば足掻くし、もっと追い詰められれば
味方を蹴落とす」
レイヴンは深呼吸をひとつ置き、黒板に太い文字を加えた。
『軍を離脱しても問題ない力をつける』
「軍なんて、必要なくなれば切ってくる。
だったらこっちも“おさらばしても平気”なくらい強くなるべき」
「それって……脱走推奨ですか?」と、前列のニケ。
「推奨じゃなくて選択肢。
敵が周りにいても、無線一本でクビ切られることだってある。
その場を生き残る力は必要でしょ?」
フェリーは机に肘をつき、うつむいたまま小声で呟く。
「……言いたいことは分かる……言い方をもう少し……」」
そんな中また別のニケが手を上げる
「も、もし仮に……仮にではありますが、
そうなった場合、どう生き残れば……」
そう、軍の後ろ盾なくしてラプチャーには勝てない。
弾薬、修繕費どれを取っても個人ではどうすることもできない。
レイヴンはその質問にしばし考えボソッと
「傭兵になってみるのもありかも?」と言った。
その回答に周囲のニケ達に? が浮かぶ。
「私だったら、切ってきた基地に直談判して猛抗議だろうね。
ダメなら【別の方法】で対応するしかないけど」
その別の方法が気になるところだが、知らぬが仏という事だろう
……誰も聞くことはなかった。
そして気を取り直してレイヴンは話を続ける。
レイヴンはさらに「企業」と書き加え、丸で囲む。
「軍は面子と政治。企業は金と利益。
どっちも中身は変わらない。だから──」
『まずいと思ったら逃げろ』
『命大事に』
「でもね、逃げられるのは“力”があってこそ。
足が速い、弾を避けられる、一撃で潰せる
……そういう生き残る力」
後方で「力あってこそ……」と呟く声。
フェリーはますます眉間に皺を寄せた。
黒板にもう一行──『目標をつける』
「この人を倒せたら大丈夫、っていう基準を作る。
もちろん私でもOK」
ざわっと場が沸く中、「挑戦するなら受けて立つよ」と笑う。
「で、あとは実戦と訓練の繰り返しだねぇ。
訓練で基礎を作って、実戦で試して、また訓練に戻る
……これが最強への近道!」
レイヴンは黒板をポンポン叩きながら、
まるで子供が秘密の遊びを教えるかのような調子で言い切った。
そして、さらっと爆弾を落とした。
「……で、まぁ。私ひとりが教官役だと、
この人数はさすがに回せないから……
何人かは“後任”として先に実戦投入する予定だから、
そのつもりでいてね」
ざわっと空気が動き、後ろの方で「え、誰になるんだろ……」と
ひそひそ声が飛び交う。
すると、真面目そうなニケが手を挙げて口を開いた。
「では、その後任を選出するのは
……どのように決めるんですか!?」
レイヴンはチョークを黒板にトントンと当てながら、
あっけらかんと答える。
「まぁ、大体は実力とか適性で決めるよ。でもね……」
そこで、ふっと口角を上げて教室の中央を見やる。
「ひとりはもう決まってるんだよね〜」
その視線はフェリーへ。
「……え?」
立ち上がった彼女は必死に手を振る。
「むりむりむり! 無理ですって!
私、そういうタイプじゃないですから!」
「向き不向きはやってみてから判断」
無邪気な笑みに、フェリーは憎々しげな視線を返す。
前列のニケたちから
「へぇ〜」
「やっぱフェリーすごいんだ」と囁き声が広がる。
フェリーはさらに顔を真っ赤にして、
レイヴンに向かって必死に手を振った。
その姿にいたずらっぽく笑うレイヴン。
その顔を見てフェリーが憎らしいものを見る様に……
「私が断りずらい性格なのを知っていて……恨みますよ……」
教室が笑い声で満たされる中、レイヴンは締めくくった。
「じゃ、今日から実戦も座学もフル稼働で!」
元気な「おーっ!」の声。
フェリーだけは机に突っ伏し、「なんで私……」とぼやく。
それを聞き逃さなかった周囲のニケたちは、
口元を隠しながらニヤニヤ。
「先生に選ばれるなんて光栄じゃん!」
「フェリー先輩、がんばってくださいね〜」
冷やかしと笑い声が広がり、フェリーは更に小さくなった。
そうしてレイヴンの初授業は好評につき終了した。
レイヴンは、みんなが退席する前に先に部屋を出て
シミュレーションルームに足を運ぶ
その肩越しに、エアの落ち着いた声が響いた。
《フェリーが妥当なのは……認めます。彼女が一番の適任です》
『でしょ?』
レイヴンは得意げに頷く。
『エアが実体化してくれれば、
エアを教官にしてもいいんだけどねぇ〜』
《私自身の人格を別に移すことは出来ますよ?》
『……え、マジ?』
レイヴンが目を丸くする。
《はい。ただ、コーラルで駆動するニケの器が要りますが……》
レイヴンは足を止めてため息をつく。
『じゃあ無理じゃん』
◇◇◇◇◇◇
講義の翌日から、第08観測基地は妙な熱気に包まれていた。
いつもは淡々と進む訓練場に、
妙なざわめきと張り詰めた空気が同居している。
その原因は──レイヴン中尉が率先して行う、
軍の教本には一切載っていない特殊訓練だった。
内容は至って単純にして苛烈。
生き残るための動き方だけを、徹底的に叩き込む。
軍規や既存マニュアルは一切考慮しない。
目的は“撃破”ではなく“生存”だ。
射撃訓練では、遮蔽物を無視して走り回り、
回避運動を続けながらも射撃精度を維持する。
シミュレーションでは、常にブースト回避を強制され、
立ち止まった瞬間にAI判定で撃墜扱いとなる。
傍から見れば狂気じみた光景だ。
銃弾を避けながら正確に撃つなど、常人の感覚では到底不可能
──正気の沙汰ではない。
だが、訓練に参加する80名の軍所属ニケ達は、
すでに一定の基礎を備えていたため、
誰一人脱落する者はいなかった。
とはいえ、フェリーを筆頭に少数の者だけが余裕を見せ、
大半は息も絶え絶えで足を引きずりながら訓練を続けていた。
そして最終日──いよいよ“選抜試験”が行われる。
条件はただ一つ。
学習型AIが模したレイヴンと模擬戦を行い、
撃破するか、戦闘不能にならずに制限時間を迎えること。
ルールは単純だが、その難易度は地獄級だった。
レイヴンを知らない兵士なら
「たった一人のニケを相手にするだけ」と
軽く考えるかもしれない。
だが、日頃から彼女の戦闘を見てきた基地のニケ達は違った。
彼女を模したAIが、単なる模造品では済まないことを、
骨身に染みて理解していた。
試験開始と同時に、シミュレーションルームに電子音が鳴り響き、
空気を裂くブーストの咆哮が轟く。
AIレイヴンは実際の動きを忠実に再現し
容赦なく間合いを詰めてくる。
人間離れ──いや、兵器離れした加速と旋回。
常識外れの回避術。
信じがたい角度から繰り出される射撃、
そして人を狙うとは思えないほど冷酷な命中精度。
距離を詰めればブレードが閃き、
離れすぎれば異様な精度で狙撃が飛んでくる。
挑戦者は常に絶妙な間合いを維持しつつ、
レイヴン本体と銃口の向き、
さらに四方から飛来するガンビットまでも
意識しなければならなかった。
「撃破」狙いは自殺行為に近い。
そのため、ほとんどの挑戦者は
「逃げ切るだけなら」と参戦する。
だが、AIはわずかな隙を逃さず食い込み、
次々と撃破していく。
模擬戦場から退出する者の数は、
時間が経つにつれて加速度的に増えていった。
数時間後──生き残ったのは、フェリーを含むわずか5名だった。
全員、汗まみれで息を荒げながらも、
膝をつくことなく立ち続けている。
肩で息をしながらも、
その視線はまっすぐAIの消えた空間を睨みつけていた。
訓練開始から今日までの苛烈な日々を思えば、
今この瞬間の立っている自分たちが信じられない。
「AIとはいえ、私から逃げ切れるなら
──どこに行っても生きていける」
レイヴンは淡々と告げ、無表情のまま頷いた。
その瞳には、確かに“後任”としての確かな評価と、
わずかな誇らしさが宿っていた。
◇◇◇◇◇
後任5人が選出されてから、わずか3日後。
第08観測基地に緊急出撃命令が下る。
出現位置は前線都市の外縁部。
中規模ラプチャー群──従来なら二個中隊を動員する規模だ。
しかし今回、現場に向かうのはわずか6名。
指揮官はレイヴン中尉。
部隊としても、彼女が指揮を執るのも初陣だった。
作戦領域上空。
輸送ヘリのエンジン音が金属の腹に反響し、
機内の床が微かに震える。
後任の5人は、それぞれ武器のチャージや残弾確認を
黙々と行っていた。
フェリーは落ち着かない様子で
腰のブーストユニットを何度も確認し、
別の隊員は膝を軽く上下させながら呼吸を整える。
息遣いは抑えているが、初陣特有の緊張が機内に充満していた。
「──いくよ。命、大事にね」
レイヴンの短い一言が、場の空気を一変させる。
無駄な説明はない。
誰も返事はしないが、5人全員が頷き、視線を前に向けた。
輸送ヘリの扉が開く。
爆風と砂塵が一気に流れ込み、
遠くからラプチャーの金属を軋ませる音が響く。
地面に降り立った瞬間、レイヴンは手を挙げて指示を出した。
「散開! 射線切って!」
5人は即座に左右へ跳び、
瓦礫や構造物を利用して敵の視界と射線を分断する。
この瞬間から、敵の動きは分断され、
主力への攻撃集中が不可能になる。
その間にレイヴン自身が敵の主力を潰す
──軍教本には存在しない、彼女独自の理論だった。
開始30秒。
前衛を塞ぐタンク型ラプチャーの装甲が、
コーラル粒子ビームで焼き抜かれ、一瞬遅れて爆散する。
衝撃波と破片が周囲をかすめるが、
後任の1人がその隙を逃さず滑り込み、
中型機を至近距離から撃ち抜いた。
「ナイスー! 左側行くよ!」
「了解!」
通信は短く、的確。
フェリーは得意のブースト操作でビルの壁面を蹴り上がり、
真上から火力支援。
別の隊員は路地に飛び込み、
狙撃型の射線を切りながら敵を追い詰める。
全員が、模擬戦で叩き込まれた“回避と間合い”を体に染み込ませ、
レイヴンの攻撃に合わせて敵数を確実に削っていく。
模擬戦のAIレイヴンと比べれば、
ここのラプチャーは案山子同然──だが誰も油断しない。
訓練で嫌というほど教え込まれた、油断した瞬間の不意打ち。
航空戦力がない現状では敵の残存数も掴めず、
何が潜んでいるか分からない。
ここで慢心するニケは一人もいなかった。
戦場は常に動き続ける。
散開しては合流し、敵を翻弄する。
正攻法からは程遠い、だが理不尽なまでに安全な遠距離射撃。
感情を持たぬ機械相手に、処理能力の限界まで負荷をかける
──これがレイヴン式だった。
そして──作戦開始からわずか5分後。
金属の悲鳴も、弾丸の風切り音も消え、戦場は静寂を取り戻す。
その沈黙は、ミッション完了を意味していた。
損害はゼロ。
軍本部の記録では、
同規模戦闘での最速殲滅タイムを更新していた。
しかし当の本人は、あくまで淡々としている。
レイヴンは戦場を一瞥し、粒子ビームの排熱を切った。
「お疲れ様~。仕事終わり! 帰るよー」
その声に、5人は息を整えながらも互いに目を合わせ、
無言で頷いた。
初陣にして完全勝利
──その実感は、まだ全員の胸にじんわりと広がっていた。
◇◇◇◇◇◇
今回の戦闘は、単なる一勝では終わらなかった。
ニケがニケを育て、しかもその部隊が全員高機動型
──軍史に例を見ない編成である。
さらに異常なのは、その完成までの速度だ。
わずか二ヶ月足らずで、五つの部隊が完全編成に至った。
本来なら倍以上、半年近くを要する育成工程を、
半分以下の期間で踏破。
成果と速度、その両面で既存の記録を塗り替えた事実は、
軍本部に衝撃を与えた。
しかし歓喜は一瞬だった。
この異例の成功が、今後どのような影響をもたらすのか──
その答えを知る者はいない。だが、不安は確実に広がっていた。
軍本部会議室
硬質な蛍光灯の白光が、
艶消しの楕円形テーブルを均一に照らしていた。
中央に置かれた分厚い資料束には、
黒々と「功績評価報告書」の文字が踊る。
ページの縁は使い込まれた軍手帳のように硬く、
どの席からもそれがただの定例報告ではないことが伝わった。
セルゲイ司令官が最後のページを閉じ、静かに告げる。
「──以上が、レイヴン中尉による高機動部隊育成と、
初陣における戦果の概要です」
背後のスクリーンには、二ヶ月で完成した五つの部隊の編成表と、
初陣における被弾率ゼロの戦績データが並んでいた。
静まり返った室内に、端末のファンが低く唸る音だけが響く。
最初に声を発したのは、白髪をきっちり撫でつけた技術部顧問。
皺の刻まれた指で資料の数値をなぞり、低く呟く。
「……異常な速度だな。
通常、この規模の部隊新設には最低半年はかかる。
それを二ヶ月とは……やはり、あの女は“異常”だ」
隣の席で、
痩せ型の作戦参謀が腕を組み、資料から視線を上げる。
鋭い目尻の皺が、長年現場を渡り歩いた重みを物語っていた。
「しかも被弾ゼロ……高機動型とはいえ、戦死者も重傷者も無し。
偶然では到底説明できませんな」
パラ、と資料を繰る音。
黒縁眼鏡を掛けた財務監査官の壮年女性が淡々と挟み込む。
「コスト面でも特筆すべきです。
被害ゼロは修繕費ゼロを意味する
……珍しく予算が浮きましたよ」
机の端で、軍務局長が顎を撫でながら場を見渡した。
「以上の功績を踏まえ、
レイヴン中尉を──大尉へ昇進させる案を提示する」
わずかな沈黙の後、空気が揺れた。
白髪の顧問がすぐさま眉を寄せる。
「早すぎる。
功績は認めるが、一年以内で二階級昇進は異例中の異例だ。
部下がついて来られなくなる」
作戦参謀も慎重な声を重ねた。
「同感です。
指揮権の拡大はそのまま影響力の拡大につながる。
彼女は規律を重んじるタイプではない……」
財務監査官は視線を落としながら、ゆっくりとページを閉じた。
「ですが、現場の信頼と実績は既に揃っています。
ここで抑え込めば、むしろ士気低下の要因になりかねません」
セルゲイ司令官が姿勢を正し、明確に言い切った。
「私から言わせてもらえば──大尉への昇進は妥当です。
確かに彼女は自己の利益で動く面もある。
ですが、それ以上に“生存率”を何より重視している。
結果として、彼女の下では誰も死なない。
それは、どの戦略よりも価値があるかと」
軍務局長はしばし顎に手を当て、やがて低く頷いた。
「……よし。功績は功績として正当に評価する。
レイヴン中尉を──大尉に昇進させる」
白髪の顧問は渋々肩をすくめ、作戦参謀は短く息をつく。
財務監査官だけが無言で頷き、セルゲイは僅かに目を細めた。
会議が終わり、セルゲイ司令官が退室すると、
重い扉の閉まる音が室内に鈍く響いた。
残ったのは軍上層部幹部と軍務局長だけ。
分厚い資料束のページを繰る音が、
蛍光灯の下で乾いた響きを立てる。
軍務局長が視線を落としたまま口を開いた。
「……第08観測基地の教官として、
現在の高機動部隊の各リーダーをあてがう」
その言葉に、会議室の空気が一瞬固まる。
痩せた作戦参謀が腕を組み、静かに問いかけた。
「そうなると──中尉は……」
局長は机上の資料を揃えながら、淡々と答える。
「あぁ。こちら側が軍各所への工作をする必要もなくなった」
短く間を置き、書類の一枚を指先で軽く叩く。
「レイヴン中尉は、
基地配属から今日に至るまでに、軍への献身を示した」
白髪の技術部顧問が、低くうなずく。
「……確かに、表向きは適任でしょうな」
その隣で、財務監査官が眼鏡の位置を直し、
書類をめくりながら口元に皮肉を浮かべる。
「表向きは、ね。
実際には……あの突出したイレギュラーを現場に置き続ければ、
そのカリスマ性を武器に謀反を企てられる可能性がある。
監視下に置き、なおかつ戦力として使える場に送る
──それが最も安全だという判断でしょう」
痩せた作戦参謀も、わずかに目を細めながら同意を示す。
「戦場の英雄は、時に軍の脅威となる
……歴史が、それを証明してきましたな」
「……我々がラプチャー共に攻勢を行うには、
それに伴う爆薬が必要だ。
総司令もそこは理解しておられる。
だが実際は、政治的側面が非常に強く、
根回しに時間がかかると見ていた」
軍務局長が苦々しい顔をする。
「こんな時でも世論重視とは……笑わせる」
吐き捨てるような言葉だったが、
反論する者は誰一人いなかった。
軍にとって、政治家は最も忌々しい存在だ。
緊急を要する局面でさえ、政治家連中の了承と顔色伺いが必須
──それが現実だった。
局長は手元の資料を閉じ、低く言い切った。
「だが……これでいい。
突出したイレギュラーを放置するより、監視下に置き、
同時に戦力として活用する。
これをもって
──レイヴン中尉を、ゴッテス部隊へ正式に配属させる」
室内の空気が僅かに重く沈む。
それが彼女への栄誉なのか、それとも鎖なのか
──誰も口には出さなかった。
8話にしてやっと!!
やっと!時間軸が進む!w
戦闘描写ももっと書きたいのですが、長すぎるとダレちゃうのでねw
しょっぱなから言っていますが、会議シーンが一番書きやすいw
容易に想像できますのでねw
アンケート結果…戦闘描写はゴッテス部隊配属後に大量に書いていこうかな…
そして最新話投稿からお気に入り登録が500を突破いたしました!!
私が一番びびびっくりしてますよw
そして誤字の訂正感謝いたします。
結構大量にあってそこでもびっくりしましたw
毎度のことですが、感想ありがとうございます!
一日5件しかいいねができないのが悔やまれる…
高評価もありがとうございます!
ニケ知ってる?AC知ってる?
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ニケ知っている!ACも分かる!
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エンター――テイメント!!(AC知らぬ)
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地上?…汚染されてるもんね(ニケ知らない