マガダンの英雄、先生になる   作:コルディアムに脳を焼かれた阿慈谷ヒフミ

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しれっと湧いてきたオリキャラの名前をアイラからモイラに変えました。
以下理由↓
コルヒフ:(アイラってモイラ(太平洋連邦の大都市)に似てるな...せや、変えたろ!!)

Project Wingmanでは具体的な所在が明かされていないモイラですが、PW Wikiに則りここではオセアニアの都市とします。


Protocol 1-7: Assignment

尋問から解放された俺は、ウィングマン達に無事再会することに成功した。

 

「ブッキー、大丈夫だったか?」

「ああ、ドライバー。可愛い子だったから1つ口説いてやろうと思ったんだが...結果は察してくれ」

「いつも通りでむしろ安心した」

 

ブッキーは...意外と女の子をいつも口説いてそうに見えて慣れてないからな。きっと名前も聞き出せなかっただろう。勇気は評価できるが。

 

「ドライバー、ブッキー。先に出てきてたのか」

「お、ブリック。帰ってこれたか」

 

次に帰ってきたのはブリックだった。若干やつれた顔をしている。ご老体にはこの状況は厳しいってか。

 

「ただでさえ短い余命が縮んだか、ブリック?」

「黙れ小僧...と言いたいところだが否定はできんな、ブッキー。考えてみろ、息子と同じか少し上くらいの女の子だと思ったら、とんでもない形相で尋問してくるんだぞ。老い先短い老人には厳しい話だ」

「老い先ね。あんたはしぶとく100歳くらいまで生きてそうだけど」

 

俺たちの会話に高い声が混じる。コブだった。

 

「コブか。俺の余命を評価してくれるのはいいが、そっちこそ大丈夫か?」

「ああ。あんたら男衆と違って、あたしは年頃の女の子の扱い方を心得てるんだ。和やかにお話できたよ」

「和やか、ね。小うるさい説教でもしてたんじゃないのか?」

「ははっ、あんたにしてやろうかい、カジノ小僧?」

 

コブのあまりの剣幕にブッキーが縮こまる。母は強しってとこかい。

 

「そのくらいにしとけ、コブ。さて...そういえば、俺達のAWACSが居ないな?」

 

俺の言葉に全員があ、という顔をする。さてはこいつら忘れてたな。ヴィータに対して随分と薄情な奴らである。

 

「誰か、あいつの居場所を知らないのか?」

「さあね。しれっと反カスカディア思想でもくっちゃべって詰められてるんじゃないか?」

「そもそもここはどこだよ。学園都市キヴォトス?なんだそりゃ。カスカディアにも連邦にもそんな都市があるなんて聞いたことないぞ」

「あたしはティーンの時の社会の成績はいい方だったけど、そんな場所聞いたことないね」

UKA(統一カーンエウロパ同盟)か?それともWAC(西アフリカ協定)なのか?」

「そのどれでもないぞ、ヘルハウンド」

 

聞き慣れた声の方を全員で振り返る。そこに居たのは我らが空の目にして管制官、ヴィータ...だけではなかった。その隣に、メガネをかけた女性がいる。青色のインナーカラーの長髪と、尖った耳──大厄災前のヨーロッパの伝承にあったらしい妖精は、こんな耳をしていたらしい。大厄災前な以上、どこまで正しいか分からんが──が特徴的だった。

 

「なんだ、ヴィータ。帰ってくるのが遅いと思ったらそんな可愛い子を引っ掛けてたのか?へい、そこの君、そんなオセアニアのしかめっ面なオッサンよりこのアンドレイ・カスパーと遊ば──」

 

──こいつは懲りない奴だ。尋問官を引っ掛けようとして失敗したばかりなのに。鉄拳制裁をコブから食らったブッキーが蹲る。ブリックの方は...目を覆ってる。俺も見てられんわ、こんなもん。他の連邦治安維持軍が見たらどう思うんだ、これ。

 

「...これが、連邦生徒会長が呼んだ先生方...?」

 

目の前の彼女が俺たちをまとめて虫を見るような目で見てくるのが刺さるが、それよりも気になるワードがある。先生?

 

「これがヘルハウンド隊だ。残念ながら」

「...その働きをもって証明してくださると期待しています」

 

おい、ヴィータもそっち側かよ。だいたいお前もヘルハウンドだろうが。仲間を見捨てんな、仲間を。

 

「ほら、いい加減立ちな、カジノ小僧。女の子の前であんまりみっともない姿は見せるもんじゃない」

「ってて...あんたのせいだろうが、コブ」

「自分の蒔いた種ってやつだ、ブッキー。諦めることだ」

 

こっちの方はブリックにさえ見捨てられたブッキー、恐ろしいことに全く同情が湧かない。自業自得ってやつである。

 

「うちのブッキーがすまない。こういう奴だが、やる時はやるんだ。俺に免じて許してやってくれ」

 

まだ顔を合わせたのは初めてのはずなのに、俺に免じて、なんて変な話だが。いっそ変な顔でもされるかと思っていたが、目の前の彼女はどちらかといえば、やれやれといった感じの表情をしていた。

 

「先生がそう仰られるのなら仕方ありません」

 

まただ。なんだ、先生って。そもそも俺達のことを知ってそうな口ぶりなのが気になる。

 

「俺達のことを知っているのか?」

「はい。連邦生徒会長からあなた方の事は伺っています」

 

そこで彼女は申し遅れました、と自己紹介をする。

 

「連邦生徒会首席行政官、七神リン。現在は連邦生徒会長代行を務めております」

 

そう言った彼女が身につけていた腕章には、確かに「代行」の2文字が刻まれていた。なるほど、この子が例のモイラちゃんが言ってた連邦生徒会長代行なのか。

 

「代行ってことは...本当の連邦生徒会長はどこだ?」

 

ブリックの疑問に彼女が顔を俯かせながら答える。

 

「...本来その立場にあるべき連邦生徒会長は、今いません。これは対外的には隠匿している事項なのですが...彼女は今、失踪しています。そして、あなた達が呼ばれたのはその事にも関連しているのです」

 

彼女は顔を上げると、俺達についてくるように言った。

 

「今、キヴォトスは危機的状況にあります。あなた達がこの状況を覆すキーパーソンなのです」

 

キーパーソン、ねぇ。つい1時間くらい前までただの治安維持軍パイロットだったのに。気がついたら学園都市の命運を握ることになっちまった。俺、今日が命日なのかね。1日でいろいろ起きすぎだ。

 

走馬灯のように流れていた俺の人生のハイライト・スライドは隣にいる男に肩を叩かれたことで終了した。

 

「何やってんだ、ドライバー」

「ああ、なんでもないさ、ブッキー。ただ、今日起こっていることを考えると死んでもおかしくねぇと思って、セルフ走馬灯を流してただけだ」

「縁起悪いことしてんじゃねぇ。どうやら今から早速仕事らしいぞ」

「マジかよ」

 

思わず言葉を漏らす。こっちは状況もよく分かってないのに仕事をしろなんて酷い話である。しかし俺も社会人だ、理不尽だのなんだのに文句を付けたくてもやらないといけない事があるのはよく知っている。とりあえず気を取り直して仕事内容を聞いてみる。

 

「...で、仕事内容は?」

「先程、連邦生徒会長がいないと言いましたね。その影響で、連邦生徒会本部──サンクトゥムタワーの管理者が不在となり、各種機能が不全状態に陥っています」

「あたし達にそれをどうこうしろってのかい?ラリードライバーにカジノスタッフ、靴屋とレンガ積みに出来るなんて思えないけど」

「ええ、先生方ならできるはずです」

 

余程の自信があるらしい。彼女の顔に、俺達が出来ないなどという疑いの顔をこれっぽっちもなかった。

 

「そのサンクトゥムタワーってのはどこだ?」

「ここからおよそ30kmほど離れた場所にあります。本来だったら電車を使うところですが...」

「なんか不都合でもあんのか?」

 

そのブリックの問いに彼女がこめかみを押さえる。

 

「サンクトゥムタワーの機能不全の影響で、公共交通にも影響が出ています。現場の努力で最小限に被害は抑えられていますが...」

「待て待て。じゃあリンちゃん、どうやってここまで来たんだ?」

「リンちゃん呼びはやめてください、ロマンスキー先生。サンクトゥムタワーには、連邦生徒会長が失踪直前に作った滑走路があります。そしてヘリポートも。小型ヘリをチャーターしてここまで来たのですが...先生達を乗せるほど余裕があるものではありません」

 

タワー1個のために市街地に滑走路なんて随分と豪華なもんだ──そう思った俺に1つのアイデアが浮かぶ。

 

「リンちゃん、滑走路の長さは?」

「...はぁ。確か、2500m程だと記憶しています」

「十分だ。天候もよく晴れてる。VFR(有視界飛行)で問題ないな。フライトプランは出さなくていいだろう」

 

俺はヘルハウンド隊全員に呼びかける。

 

「──出発準備を整えろ。空に上がるぞ」




VX-23VTLの兵装について
VX-23VTLは通常型のVX-23の兵装に加え、複数の実験的兵装の搭載が可能。
太平洋連邦の兵装搭載システムでは、機体に標準搭載の機関砲と標準ミサイルに加え、最大3種類の追加兵装の搭載を可能としている。最大三種類に限定されるのは主に操縦時の兵装使用の簡略化の為とも言われるが、真相は定かでは無い。

第1ハードポイント(スロット数2)
・MGP(機関砲ポッド)
・MLAA(マルチロック対空ミサイル)
・MLAA-2(マルチロック対空ミサイル・デュアルボレー)
・SAA(セミアクティブ対空ミサイル)
・JMLA-4(統合操作マルチロック対空ミサイル・クアッドボレー)

第2ハードポイント(スロット数2)
・MLAA
・SAA
・JMLA
・UGBL(大型無誘導爆弾)

第3ハードポイント(スロット数2)
・MLAA-3
・UGBL
・MLAG-2(マルチロック対地ミサイル・デュアルボレー)
・JMLA-3
・MLSM-6(マルチロック標準ミサイル・ヘキサボレー)

マルチボレーミサイルは、1スロット分の兵装発射操作で同時に複数発のミサイル発射が可能なミサイル。
統合操作マルチロックミサイルは、既存のマルチロックミサイルが同時発射数の違いで別れていた兵装使用操作を統合することを目的に製作されたミサイルで、VX-23VTLの場合JMLA-4、JMLA、JMLA-3の懸架により、最大16発斉射を可能とする。
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