透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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ベアトリーチェって誰?

「なるほどな……ヒフミが覆面水着団の首領だったのか……補習授業部に入れられるのも納得だ。銀行強盗は流石にノースティリス適性が高すぎる」

 

裏切り者を探しているナギサにその事がバレているなら疑われるのもおかしくない。

 

「アビドスの事情は私も知るところだから何とも言えないが、あれが無ければ疑われる事はなかったかもしれないだろうに」

 

「ごめんねヒフミ。私があの時ヒフミは巻き込まないようにしておけば……」

 

ほんとだよ。せめて他校の子に銀行強盗などさせるな。先生だろ。

 

「い、いえ……。助けて頂いた恩もありましたから……」

 

「覆面水着団……存在していたんですね。それにヒフミちゃんがリーダーだなんて、流石ですね♡」

 

「でもみなさんにはバレたくありませんでした……!」

 

すまんヒフミ。大人二人掛かりで何の罪も無い(?)生徒の秘密を暴いてしまった。

 

「そういえばハナコにも聞きたい事がある。セイアは君にどこまで話した?――あぁ、私とのアレは抜きでな」

 

「うふふ♡そうですね、貴方との会話とセイアちゃんの知る予知夢の内容はあらかた聞いています」

 

どうやらセイアは私と同じように夢の中でハナコに接触したらしい。そして二人で情報を共有し、セイアはミカをぶん殴るため、ハナコはオイタをしたナギサにちょっとした仕返しをする為に協力する事になったらしい。セイアによるとナギサの襲撃の日にミカも黒幕よろしく登場してくるとの事だったので、その時に行動を起こす算段だったとの事。

 

「でもセイアちゃんも随分変わりましたね。前はもう少し、厭世的で……全てを知っているが故に諦めてしまった子だったはずなのですが……」

 

「うん。私が助言を貰いに行った時もそんな感じだった。とても自分から行動を起こすとは思えない。私も何度も意味の無い事だと忠告された」

 

あー何かそういえばそんな事を言っていたような気もするな。足掻くだけどうたらこうたらと。まぁ結局私のティリス式メンタルケアによっておかしな方向に捻じ曲がったようだが。

 

「それほどまでに衝撃的だったのでしょうね――貴方の調教は♡」

 

「「「「――え?」」」」

 

「ちょ、調教!?」

 

言外に言うなって伝えたよね……?ついさっき要約すると自分が優秀すぎるが故に群がるハエ共に嫌気が差して補習授業部に来る事になったって言ってたよな?なら通じていたよな?そのニコニコ顔をやめろ。絶対わざとじゃないか。同じ目に遭わすぞ。

 

「調教、って――!?えっちなのはダメ!死刑!」

 

「えっちな事じゃありませんよコハルちゃん♡ただちょっと女の子に無理やり薬を飲ませて産ませた後に手籠めにしただけですから♡」

 

「全然えっちな事してるからぁ!私達にはまだ早いもん!」

 

全然えっちな事はしていない。ただ卵を産ませただけなのだから。

 

「つまりセイアは出産したのか?めでたい事だな。今度会った時にお祝いしよう」

 

「そ、そういう問題ではないような気がしますが……」

 

「君はセイアにもあんな事をしたの?え、なんで……?」

 

突然夢の中に現れたら警戒するに決まっている。なのでとりあえず有無を言わさず絞首台に吊るして調教しておいたのだ。相手の領域に引きずり込まれた以上こちらにどんな不利益があるか分からない。故に相手に主導権を与えるわけにはいかなかった。つまり、私は無実であり正当防衛だ。

 

「相変わらず正論並び立てるのが上手いなぁ!?」

 

「まぁそんな事は措いておいてナギサへの襲撃の件だが――」

 

「措いておけるわけないでしょ!?そんなえっちな事をティーパーティーの偉い人にするなんて、許されないんだから!死刑よ!」

 

「ふむ、死刑は困るな。だが君の事も一方的にではあるが知っているぞ、コハル」

 

「ひっ!?わ、私も無理やりあんな事やこんな事をする気なの……!?」

 

髪色と同じく脳内までピンクかこの子は。

 

「そうではない。コハルと同じ正義実現委員会のイチカとは面識があってな。後輩が補習授業部に入った事を聞かされていたんだ。君の事を心配していたよ」

 

「イ、イチカ先輩が?私の事心配してくれてたの?――ほ、ほんとに?」

 

「あぁ。随分可愛がられているようだな」

 

「えへへ……そ、そうなんだ。じゃあ頑張って早く正実に戻らないと!」

 

「そうだな。早く安心させてあげるといい。きっとコハルの帰りを待っているからな」

 

「う、うん……!」

 

よし、共通の知り合いの名前を出す事で警戒心を下げつつ話を逸らせたな。作戦成功だ。

 

「これが大人の処世術……参考になる」

 

「アズサちゃんにこういった事はあまり覚えて欲しくないですね……なんというか、これはどちらかと言えば狡賢いやり方ですから……」

 

「ゲヘナ側の君が正実の子といつ知り合いになってたの?なんだかんだゲヘナだけじゃなくて色んなところに知り合い作ってるよね」

 

「エデン条約の話し合いでヒナと一緒にトリニティへ一度来たことがあってな。その時に私の応対をしてくれたのがイチカだったんだ」

 

確かに三大校にアビドスとだいぶ知り合いが増えてきた。そろそろ新しい自治区へも行ってみたいと思っているので、エデン条約が片付いたらロイテルとファリスにゲヘナを案内した後は私も知らない自治区へ旅行のような形で二人を連れて行こうと思っている。どうやらミフとネフの里に雰囲気の似た自治区が存在しているらしく、そこを候補として考えている。そこでも知り合いが増えるかもしれない。あわよくば優秀なペットも欲しい。

 

「では話の続きだが、そもそもアリウスにテロリストとしての活動を行わせるわけにはいかないというのが先生の意向だから、アリウスに何か行動を起こさせるつもりはない」

 

なので調印式の襲撃はおろか、ナギサへの襲撃もさせる事はない。その前に片をつける。これを阻止出来なければアリウスは例え今回の件を解決したとして、その後の戦後処理において苦しい立場に置かれる事は間違いない。アリウスは昔トリニティに排斥されたらしいが、今回の件で同じ惨劇が起こる可能性がある。だからトリニティとアリウスで直接の戦闘行動を起こさせないようにするのが私と先生の勝利条件だ。

 

「それは……流石に今のトリニティであればそこまでの事はしないと思いますが」

 

「私もそんな事をさせるつもりはないよ」

 

「だが断言出来ない時点で可能性はある。憂慮はすべきだ。――そこでアズサに聞きたい事がある。これが私にとって本命の質問だ。アリウスへはどうやって行ける?そして、ゲマトリアのゴルコンダの居場所も教えて欲しい」

 

この質問に辿り着くまでに随分と長い時間をかけてしまったような気がする。後は道のりを聞いて私がそこに乗り込んでゴルコンダを始末すれば終わりだ。

 

「――ゲマトリアとはなんだ?ゴルコンダという名前も聞いたことが無い。それと……私はアリウスへの帰り方を知らない。……ごめん、役に立てそうにない」

 

「何?疑うわけではないが、ゲマトリアはともかく帰り方を知らないとはどういう事だ?」

 

「アリウスへは地下のカタコンベを通って行く必要がある。だがそこは不思議な力で守られていて、道が定期的に暗号のように入れ替わったりするんだ。私はその暗号を知らないから帰り方が分からない」

 

普段の任務であれば出口の載った地図を渡されたりしていたらしいが、今回の任務では貰っていないとの事。今回は長期に渡る任務だから帰る必要は無いだろうし納得ではある。

――しかしそうか。子犬の洞窟のような構造をしているのかカタコンベとやらは。定期的に内部の構造が入れ替わる場所はノースティリスにも存在するが、まさかキヴォトスにも同じような場所が存在していたとは予想外だ。

 

「ゲマトリアなる組織はセイアちゃんから私も聞いていますが、具体的な事はセイアちゃんにも教えてませんでしたよね?一体どういう存在なんですか?」

 

私は先生に確認を取るように見やるが、先生もあまり教える事に肯定的ではないようだ。

 

「うーん、みんなにはあまりゲマトリアには深入りして欲しくないんだよね。ただ、ゴルコンダっていうのはヘイローを破壊する爆弾を作った人、らしいよ」

 

「なるほど……それが確かなら先生達がゲマトリアから私たちを遠ざけるのも納得ですね」

 

「そっか。マダムはヘイローを破壊する爆弾を作ったわけじゃなくて、そのゴルコンダって奴から渡されてたのか」

 

ここに来て知らない名前が出てきたな。マコトとセイアの予知夢の情報にも出てこなかった人物となると、今まで表には一切出てきていないはず。改めて私達の持つ情報は一部でしかない事を思い知らされる。やはり情報は大切だな。

 

「マダムとは一体誰だ。そいつがアリウスの首魁か?」

 

「うん。大人の――多分女性だと思う。異形だから確かな事は分からない。私も今まで直接見たのは数回しかない。自分をマダムと呼ばせていて、確か名前は……ベアトリーチェ」

 

彼女は長く続いていたアリウスの内乱を鎮め、その後統治者としてアリウスに長らく君臨しているらしい。ベアトリーチェから学んだ事はほとんど無いに等しく、教えられたのは人を効率的に殺す方法と、「vanitas vanitatum. et omnia vanitas.」などという実にくだらない考え方だけだったようだ。生活環境も劣悪でトリニティに来た時にその生活レベルの高さに驚いたとかようだ。そんな環境である事を聞かされた先生の機嫌は最高潮だ。拳を強く握って小さく震えながら怒りを表している。

 

「――知ってる?」

 

怒りを抑えながら先生がそう訊ねてくるが、私には心当たりがないので首を横に振る。しかし異形の大人の女性か。黒服の姿もあれは異形と言えるか?そう捉えるならそのベアトリーチェとやらも――

 

「ゲマトリア、なのだろうな」

 

「多分、そうだね。やっぱりアリウスはゲマトリアに支配されてるって事か……」

 

先生が今まで見たことも無い程に怒りを滲ませている。これ私が居なくても先生が友誼を結んだ生徒を総動員してベアトリーチェを始末しにかかりそうな怒り具合だ。

 

――そう考えたところでふと気になる事が浮かんだ。黒服についてだ。

彼は私にヘイローを破壊する爆弾の存在を教えてきた。それは何故だ?あの時私から質問したのはホシノを使って何の実験をしようとしているか、という質問だけだった。それに対し黒服は面白い物を見られたお礼としてそれを教えてくれた。

つまり、黒服の持つ情報は基本的に対価ありきのものだ。しかしその後の話で彼からヘイローを破壊する爆弾の話をされた。あの時はただの雑談だと思って流していたが、こうして考えてみると彼にも何か意図があったように思う。

 

ゴルコンダとマエストロは私に会いたがっていると言っていた。それが本当ならば、私の不興を買うであろうヘイローを破壊する爆弾を使おうとするだろうか。例え風紀委員会に使っていなくとも、エデン条約というゲヘナが深く関わる件で使うのは悪手にすぎる。

 

黒服の事を好意的に捉えるなら、あの情報は遠回しにヘイローを破壊する爆弾はゴルコンダの意思によって使われるものでは無い事を伝えたかったのではないだろうか。ベアトリーチェが同じゲマトリアならば、ヘイローを破壊する爆弾を使う事、あるいは使った事を私に教えればベアトリーチェへの裏切りとなる。だが、作成者を伝えるだけならばベアトリーチェへの裏切りにはならない。現に私はアズサから聞かされるまでベアトリーチェなどという存在は知らなかった。

 

この推測が正しければ、私の始末するべき人物はゴルコンダではなく、ベアトリーチェ一人だけという事になる。

 

「という訳で、この情報で先生のするべき事は変わってはいないが、私は目標を切り替える必要がありそうだ。――私はベアトリーチェを始末する。ゴルコンダは保留だな」

 

まぁただ作っただけならば咎める理由も無いので保留というより普通に見逃すつもりだ。私としてもヘイローを破壊する爆弾自体には興味があるし、話は聞いてみたかったからな。

 

「――始末って、随分穏やかじゃないね?元からそのつもりだったの?」

 

先生含め補習授業部の子達も私の発言に驚きを隠せていない。まぁ殺しを忌避するキヴォトスでいきなりこんな事を宣言されたら困惑するのは当然か。

 

「あぁ。ヘイローを破壊する爆弾の使用を躊躇わない奴を見逃す程、私は甘くはない。これに関しては先生が止めようと必ず殺す。そも生徒ではないのだから約束の範囲外だ」

 

「それもそうだね。じゃあ、私は何も聞いていなかったって事で」

 

「私も何か話した覚えはないな。アリウスを止める。ただそれだけだ」

 

アリウスの現状を知ったせいか先生があっさりと知らない振りをした。

憐れベアトリーチェ。お前の死はここに確定したぞ。

 

「その、一つ聞いていいか?」

 

「どうしたアズサ?」

 

「――人殺しになる事に、躊躇いは無いのか?えっと、勘違いして欲しくないんだけど責めてるわけじゃない」

 

ふむ、そういえばアズサはベアトリーチェに殺人を犯す命令を下されていたな。しかもキヴォトスは殺人を忌避している。その辺りが気になるのも当然か。

 

「端的に言えば、無い。――私はキヴォトスの外から来た人種だ。それも先生とはまた違う世界からのな。ノースティリスはキヴォトスほど優しい世界じゃない。基本的に殺人は犯罪ではあるものの、人や年齢によってはそれを殺しても犯罪にならなかったりする」

 

ノースティリスでは強盗はいくら殺しても犯罪にならない。相手が犯罪者ならいくら殺してもお咎めなしだ。そしてもっと凄いのは、子供と老人もいくら殺したところで犯罪にはならないのがノースティリスなのだ。他に殺しても犯罪にならない人種はいくつか存在する。

 

「そんな世界だからな。元より数えた事は無いが、既に私は数えきれない程に人を殺している。今更殺した人数が一人増えたところで何も変わりはしない」

 

それに私自身何度も殺されているので統計で言えばプラスと言っていいだろう。実際カルマはプラスなので何も問題は無い。

 

「もしかすると君は、殺人者たれと訓練され生きてきただろうから、その境遇を気にしているのかもしれない」

 

「――うん」

 

「断言しよう。些事だ。例え過去にそうあれと育てられようと、今の君は違う。そうだろう?実際に殺人の命令を受けたのに拘わらず背いているしな」

 

これは実際驚嘆すべき事だろう。知識というのはいくらあっても困らない宝だが、持つ知識の量が少ないと逆に己の視野を狭めやすくなる。だというのにアリウスの環境下の中でロクな知識も無い中で、アズサは殺人を犯さない判断が出来た。

 

「――そう、かな」

 

「あぁ、そうだとも。それに君は些か感情が表情にですぎるきらいがある。信頼する先生が近くにいたとはいえ、私に核心に触れられてすぐに動揺していたしな。そんな君に汚れ役は似合わんよ」

 

「そ、それは……!私の鍛錬不足だ。もっと訓練しないと」

 

「ポーカーフェイスくらいの練習はしてもいいかもな。今度友達とトランプを使ったゲームでもして練習するといい」

 

ババ抜きでもポーカーでも何でも良い。ポーカーフェイスの練習も出来るし、友達と遊べばアズサが余計な事を考える機会も減るだろう。

 

「じゃあ補習や今回の色んな事が終わったらみんなで沢山遊びましょうね!アズサちゃん!」

 

「――うん、楽しみにしてる」

 

「もっと自信を持てアズサ。君はあの――なんだっけか。……そう、ばにたすなんたらかんたらなどと教えられていた環境の中でも前を向けた心の強い持ち主だ。そんな君ならばきっと、前の環境の事などすぐに忘れられるさ」

 

「――ありがとう。それと、vanitas vanitatum. et omnia vanitas.だ」

 

「そのくだらん考えはさっさとゴミ箱にでもダンクしておけ」

 

あいにくと私はそのような悲観主義だか虚無主義のような考え方から縁遠いものだからくそほどどうでもいい。ベアトリーチェはアリウスを私兵として使っているのだろうが、こんな考え方を浸透させたところでまともな戦力になるとは思えないが、何を考えているのだろうか。まぁ元より戦力に期待などしていないからどうでもいいか。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

アズサのちょっとしたメンタルケアが終わりしばらくして、アズサが思い出したかのように声をあげた。

 

「あ、そうだ。私は道を知らないけど、知ってる人ならいる」

 

「ほう?誰だ?」

 

「私と同じアリウスの錠前サオリ。私はいつも夜遅くに彼女にナギサの襲撃に関して嘘の報告をしてるから、彼女から聞き出す事が出来ればアリウスに侵入出来るかもしれない」

 

ただアリウスは皆拷問の訓練を受けているから口を割るのは難しいかもしれないとのこと。そして彼女はアズサに戦闘技術を教えた人物でもあるらしい。人に教えられるだけの立場にいるのなら、カタコンベの道だけではなくアズサや私も知らない情報を握っているかもな。

 

「ふむ、まぁ拷問云々はどうとでもなるだろう。もし口を割らなくても一応対策はあると言えばあるしな」

 

「そうなのか?」

 

アズサにカタコンベとやらの入り口にさえ案内してもらえれば、後はこちらでメテオでも降らせて更地にしながら進めば問題ない。それだけの迷路ならアリウスの生徒が駐在している事もないだろうし、巻き込む可能性は少ないだろう。――万が一巻き込んだら蘇生すればいい。先生にはバレないようにする必要はあるが。

 

「だがせっかくの情報源だ。次の定期連絡の時は私がアズサの近くで潜伏する形を取ろう。そして背後から私が奇襲をかけて錠前サオリを尋問する。次の定期連絡はいつだ?」

 

「基本的に毎日しているから、今夜からでも始められる」

 

そうか。ならばアリウスの方は問題なさそうだな。夜を待って錠前サオリを捕まえ尋問してベアトリーチェを殺して終わりだ。

後は、ミカとナギサか?しかしこの二人に関しては私が出る幕でも無いような気がするんだよな。恩を着せてマコトを喜ばせてあげたいところだが、ゲヘナ側である私が二人に接近するのは無用な混乱を与えそうだ。特にエデン条約反対派であると思われるミカがどう動くか分からない。

 

「というわけでアリウスは私に任せてもらえればどうとでもなるが、ミカとナギサはどうする?」

 

「そうですねぇ。セイアちゃんとはナギサさんの襲撃のタイミングで動く事を前提にしていましたから……」

 

そういえばそうだった。私がトリニティに来たことで二人の目論見は崩れている。それなりのフォローを入れるべきか。

 

「それは悪い事をしたな。ハナコ、君からセイアに連絡は取れるか?私は夢の中でしか面識が無いから連絡先を知らなくてな」

 

「大丈夫です。こんな事もあろうかと貴方がここに居る事を把握した時にセイアちゃんにモモトークで貴方が来ている事をお知らせしておきましたので」

 

「ありがとう、流石だな」

 

セイアはミカをどうにかしたいのだろうし、私が直接ミカをどうこうするよりも、セイアのお膳立てをする方向で動いてみようか。せっかく新しくペットになったのだし、ここいらで一緒に行動しながら親交を深めるのがいいか。となれば後はセイアからの連絡を待ってお互いの行動の擦り合わせを行うだけか。

 

「ところで、君はアリウスには一人で行くつもりなの?さっきの言い方だとそう感じるけど」

 

考え事をしていたら先生にそんな事を聞かれた。むしろ私以外に人が来る事の方が問題だ。アリウスの抵抗がどの程度激しくなるか予想がつかないうえに、ヘイローを破壊する爆弾を持っている手合いだ。生徒を連れていくにはリスクが高い。破れかぶれになってこちらに巡航ミサイルを撃ってくる可能性も否定出来ない。であるならば私が一人で向かいベアトリーチェを始末した後に先生にアリウスへ来てもらって、生徒達の統率を取ってもらうのが一番安全な策だ。

 

「君の強さはよく知っているし、確かに戦力に期待してこっちに呼んだけど、流石にそこまで任せるのはこちらとしても気が引けるんだけどね……」

 

「そうは言っても代替案があるわけでもないだろう?これが確実だ」

 

「で、でもそれはあまりに貴方の負担が大きすぎます。私たちにも何か出来る事があれば協力させて欲しいです」

 

「ただ者じゃないとは思ってたけど、アリウス全員を一人で相手にするのは流石に無謀だ」

 

ヒフミとアズサがこちらを心配してくれるが、本当に問題ないから気にしないで欲しい。もちろん心配してくれるのはありがたい事ではあるのだが。

 

「――やぁ。お話合いの最中失礼するよ」

 

ここで聞こえる筈の無い声が聞こえ、全員でそちらに顔を向ける。そこには身を隠すように羽織られた大き目のロングコートと、黒いサングラスをかけたセイアがそこに居た。恐らく変装のつもりなのだろうが、コートのサイズが大きすぎて地面に引きずっていたり、真っ黒なサングラスをかけているせいで逆に目立ってしまっている。あと獣耳も隠す努力はした方がいい。狐耳の生徒はキヴォトスにそう多くは存在しないだろうに。セイア以外未だに見たことないぞ。

 

「それにしても、私は一日千秋の思いで君と会う日を待ち続けていたというのに、まさかトリニティへ来て私ではなく他の女の所へ行くとは。私にも嫉妬する心は持ち合わせているのだがね」

 

そんな私の心中を察する事もなくセイアは言葉を続ける。

 

「さて、君にはどう埋め合わせをしてもらおうか」




ようやくティリス民がベアトリーチェの存在を知り、ゴルコンダは巻き添えを回避しました。良かったね。でもフランシスは死のうね。まぁアズサがベアトリーチェを原作で知ってるのかってちょっと微妙な気がするけど、ままええわ。

前準備だけで2話続いてる!早くベアトリーチェ殺したいのに!
でもあともうちょっとだけ続くんじゃ!嫌になるねぇ!
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