「それでマコト。結局エデン条約は結ぶつもりはあるのか?今のまま行くと確実に調印式までは無事に進む事になると思うが」
あれからイブキ成分を補充出来たマコトは満足したのか私の膝元から離れ、イロハとイブキは戦車室の方へ下がって行った。
「正直興味は無いな。しかし今更こちらから取り下げる様な真似をすればマコト様の権威が確実に落ちる。受け入れる他無いだろうな」
「一応、エデン条約を破棄する方法が無くはないぞ」
「――なに?」
「簡単な話だ。マコトがアリウスと組んで調印式での襲撃に乗じようとしていた事を話してしまえばいい。そうすれば向こうは何がなんでも条約を取り消すだろうよ」
「出来るかぁ!!!それこそマコト様の権威が本気で地の底に落ちるわ!エデン条約はキヴォトス中が注目しているんだからバラされたら堪ったものではないわ!」
だろうな。ダメ元で聞いてみたがやはり無理そうだ。
「それに今ならばエデン条約もそれ程悪くは無いだろう。お前がトリニティで暴れて向こうに貸しを作ってくれればそれだけで向こうは勝手にこのマコト様にひれ伏すだろうからな。キキキッ」
まぁひれ伏すかどうかはさておき、本来はトリニティの問題であるアリウスの件を私が片付ければ確かにトリニティに貸しを作れるか?そういう事ならば本当はアズサ達から情報を抜いたらさっさとゴルコンダを殺してこっちへ戻るつもりだったが、もう少しトリニティに目を掛けて大きな貸しを作るように意識して動いてもいい、か?――まぁその辺は向こうに行ってから考えよう。
「そんな事より納得いかないのはお前が風紀委員会に居る事だ。今からでも万魔殿へ来るべきだ。そもそもとしてお前は治安維持をするような行儀の良い性格ではないだろう?」
「否定はしない。だが今まで自由に生きてきたからこそ治安維持という活動が楽しく感じられる事もある」
温泉開発部や美食研究会を捕まえる度に思う事がある。あぁ、ガードはこんな感じで毎度毎度必死こいて私を捕まえようとしていたのだな、と。そう考えるとガード達の事がより一層愛おしく感じられ、次に暴れる時はどうやってガード達で遊ぶか。それを考えるだけでわくわくしてくるのだ。
「キキキッ!なるほど、そういう考え方もあるか。やはりお前がゲヘナへ来たのは正解だったな。ますます風紀委員会に置いておくには惜しい」
「そういえば一度聞いてみたかったんだが、何故そこまでヒナを敵視しているんだ?」
「……まぁ、お前ならば良いか。――あいつは強い。ただでさえ強いあいつをお前が更に育てたおかげで、今となってはあいつに勝てる者を探すのも難しい程にな」
ほう、まさかいきなり誉め言葉から始まるとは思わなかったな。しかしヒナの能力自体は認めている訳か。となれば――
「ゲヘナで唯一マコトの地位を脅かす可能性があるから、か?確かに力もあり風紀委員長という立場に居て求心力もあると言える。あの子が本気でトップを目指したら確かに万魔殿を出し抜ける可能性はあるかもしれないな」
まぁ肝心のヒナ本人にはその気は微塵もないだろうが。マコトの身に何かあって万魔殿が不在となり他にトップに立ちそうな者が他におらず、周りから推薦され最初は断るも、結局押し切られて渋々務める事になる、というような状況にでもならない限りはヒナがトップに立つ事はないだろう。
「そうだ。それだけはなんとしてでも防ぎたかった。だからこそアリウスと結託しヒナとトリニティ諸共潰すつもりだったが――お前が来てご破算だ」
最後の言葉はジト目と共に頂戴してしまったが、そこは運が悪かったと諦めてもらう他ない。しかしそうか。そういった理由か。私が感じた印象としてはマコトはヒナに対する劣等感を感じているようにも見える。議長にまで登り詰めたはしたが結局ヒナはいつでも自分の首を狩れる位置にいるのが怖かったのかもしれないな。
「――存外かわいらしいところもあるじゃないか。別に前は可愛くないとか思っていたわけではないが」
「んなっ!?いきなり何を言い出す!?このマコト様を篭絡しようなど百年早いぞ!」
そういうところがまさにかわいらしいところなのだが、まぁこれ以上はやめておくか。
「はぁ……お前と話していると調子が狂う。いいか、くれぐれも今回話したことは他言してくれるなよ」
「無論だとも。では私はそろそろトリニティへ向かうよ」
「あぁ、無用な心配だろうが気を付けて行け。奴らはこのマコト様をもってしても実態を掴めなかった。そして何より――お前は私のパートナーとなるのだから犬死してもらっては困るからな!キキキ!」
なる気は特に無いが心配はありがたく受け取っておこう。
マコトとの会話を終えた私は改めてトリニティへ向かう事にした。
**********
透明化の魔法を唱え隠密を駆使しながらトリニティの中を進む。こうしてコソコソと隠れながら街中を歩くのは中々に新鮮だ。だが結局私が見つかりそうになる展開も特に無く無事に先生と補習授業部の居る建物まで辿り着いてしまった。――もう少し何かハプニングが欲しかったな。
そう思いながら建物の中に入ろうと試みたところ、何故か周りには罠が張り巡らされていた。外部の者を入れないようにするための処置か?余程この建物には人を入れたくないらしい。こんなに罠を置かれてしまっては私の罠解体スキルが疼いてしまうというもの。目についた罠は全て解体しつつ建物の中を進んでいく事にした。
「ふぅ、これで大体の罠は片付けたか。しかし作動させると爆発するような危険物ばかりだったな。これ万が一先生が踏んだら大変な事になってないか?先生はこの罠を把握しているのだろうか」
まぁ私みたいに変なところから侵入しようとしているわけではないだろうから大丈夫か?流石に正面玄関にはこういった物は置いていないだろう。そうして先生の居る部屋まで辿り着き、ノックして部屋に入ると先生と白髪の生徒がそこに居た。この子が白洲アズサか。
「失礼する。待たせてしまったか?少し万魔殿の生徒と話が弾んでしまってな。すまない」
「大丈夫だよ。先に紹介するね。この子が白洲アズサ。――アズサ、この人はきっと君の味方をしてくれるから、大丈夫だよ」
「わ、分かった。でも私も突然呼び出されたからあまり状況を理解しきれていない。味方、とはどういう意味だ?」
「それはこれから話すよ」
概要くらいはそっちで話してあるかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。変に話して警戒されて逃げられる事を考慮したか?あるいは二人で一緒に聞いた方が効率的と判断したか。――先生の事だし後者か。
「とりあえず初めましてアズサ。味方となるかは君次第だが、少しの間よろしく頼む」
「――分かった。こちらこそよろしく」
「あまり不安を煽る言い方しないであげて。きっとアズサなら大丈夫だから」
「すまない。――ところでここへ来るときかなりの罠が仕掛けられていたんだが、先生はあの罠をちゃんと把握しているのか?」
「え?あー、多分それはアズサが設置してる罠じゃないかな」
「うん。この前はマリーが犠牲になってしまったけど、襲撃への対策は必要だ。でも、あの罠を掻い潜るなんてただ者じゃない」
そうか、君か……。これはどういう意図で罠を設置していたんだ……?ここに襲撃が来る事を予め知っていたりするのだろうか。
「悪いが見えた罠は全て解体させてもらった。ちなみに何故あれだけの罠を設置していたんだ?」
「――?さっきも言った通り万が一にも襲撃があった時の為の備えだ」
――なるほど?きょとんとした顔でこうも真面目に答えられてしまうと反応に困るな。多分これは本気で言ってる。
「一応確認なんだが、ここに襲撃が来るという情報を以前に掴んでいたりは――」
「いや、そのような情報は持っていない。あくまであれは保険だ」
そっかぁ。じゃあいいや。
「分かった。では本題へ入ろう。――先生、私が主導で聴取を行っても良いか?」
「構わないよ。だけど何回でも言うけど実力行使は無しだからね?」
「善処しよう。――白洲アズサ。君がアリウス校出身なのは知っている。その上で聞きたい事が幾らかある。答えてもらうぞ」
「――!?それは……」
「抵抗するならば好きなだけしてくれていい。だが、私は先生ほど優しくはない事を先に言っておく」
「先生は……知っていたのか?私がアリウスの出身だと」
「うん、ミカから聞いてね。それと、エデン条約の調印式にアリウスが巡航ミサイルを会場に撃って襲撃してくる事も知ってる」
「……え?アリウスが?なんで……?巡航ミサイルなんてそんなものアリウスが持ってるはずがない」
「アズサは知らなかったのかい?」
今までの会話の中で何となく察していたがかなり素直な子だ。純粋と言い換えても良い。反応からして襲撃の件は本当に知らなかったのだろう。なぜここまで純粋な子をトリニティに紛れ込ませたんだ?どう考えてもスパイ向きではない。突然アズサの素性を目の前でバラしたとはいえ、表情に出過ぎだ。
「襲撃の件を知らないのは不思議ではあるまい。スパイ活動に不必要な情報を持たせる意味は無いからな。こうして尋問されて情報を吐かれでもしたら厄介だ」
「――っ」
ふむ、スパイという言葉を出すと表情が硬くなった。スパイ活動をしている事に後ろめたさすら感じているようだ。ますますスパイ向きじゃない。――先生の言う通り、補習授業を楽しんでいるというのは本当なのかもしれない。これは厳しく問い詰めるより懐柔する方向性に切り替えた方が上手くいくだろうか。
「アズサ、私はその襲撃を止めたいと思っている。無論先生もな。しかもアリウスはヘイローを破壊する爆弾などという危険極まりない代物を扱う。到底放置は出来ない」
「ヘイローを破壊する爆弾も知ってるのか……」
それは知ってるのか。――なぜ?いや、この場合考えられるのは。
「もしや、セイアの襲撃犯は――君か?」
「えっ?」
「――そうだ。私が百合園セイアを襲った」
なるほど。順番的にはアリウスがミカに接触し、そこでアリウスがセイアの情報を聞き出し襲撃犯に選ばれたのがアズサ。その後トリニティへスパイとして編入してきた。という感じになるだろうか。
「そうか、分かった。まぁそこはどうでもいいので省くが――」
「どうでもよくはないよ!?」
「う、うん。自分で言うのもなんだけど、これをスルーするのはどうかと思う」
別にセイアは生きているのだし問題ないだろう。それにアズサが襲撃してくれたおかげで私は予知夢持ちという激レアペットを手に入れる事が出来た。個人的な感情としてはむしろ感謝しているくらいだ。
「結果論としてセイアは生きているのだから気にする必要あるまいて。――それでアズサ。改めて問うが、君の持ちうる情報の全てを話すつもりはないか?」
「どうして生きている事も知ってるんだ……?分かった、正直に話す。ただ、一つだけお願いしたい事がある」
「なんだ?並大抵の事であれば聞き入れられると思うが」
「他の補習授業部にはこれから話す事は内緒にしておいて欲しい。こんな事にみんなを巻き込みたくない。いずれ私の罪が明るみになろうとも、そうなる前にみんなには私の口から直接話したいから」
「アズサ……」
なるほどな。それほどアズサにとって補習授業部は大切な場所になっているわけか。
「それくらいならお安い御用――と言いたいところだが、それは難しいかもしれない」
「な、なぜ……?」
そう言いながら私は扉の方へ向かい、扉を勢いよく引く。すると扉に張り付いて盗み聞きしていた補習授業部の子達が勢いよくこちらに倒れてきた。
「「「――きゃあ!?」」」
「え……?みんな、どうして」
「いたた……。まさかバレていたなんて……というか重いです……」
「うぅ……ちょっと!?ハナコ重い!早くどいて!」
「あらあら、女の子にそんな事を言うなんてひどいですよコハルちゃん」
「いいから早くどいてってば!ヒフミもつぶれちゃうから!」
何とも騒がしい子達だ。盗み聞きしている時は頑張って息を潜めていたようだが、それでも丸分かりだったしな。普段からこんな感じの元気な子達なのだろう。
「えっと、みんなどうしてここにいるの?」
「あ、あはは……アズサちゃんが先生とお話しがあるって聞いて、どんな事話すのかなーって気になっちゃって興味本位で……つい」
「そうしたら何だかとっても大事なお話をしていたので、入るに入れなくてこうして聞き耳を立てていたんです」
「わ、私は先生がアズサに変な事をしてないか監視してただけ!」
「あらコハルちゃん。変な事とは一体なんでしょう?」
「う、うっさい!」
この桃色の髪の子がコハルか。イチカから正実からも補習授業を受ける子がいるとモモトークで聞いてはいたが、髪色が黒じゃないのはなんだか意外だ。
「み、みんな……その……」
「えっと、ごめんねアズサちゃん。正直突然の事すぎて話にはあまりついていけていないのですが……」
「わ、私はアリウスとかよく分かんないんだけど……」
「私からも、ごめんなさいアズサちゃん。盗み聞きしてしまった事も、アズサちゃんが大きな事を抱えている事も知っていました」
知ってた?ハナコが具体的に何を知っていたのかを名言していないから何とも言えないが少し気になるな。後で聞いてみるか。
「そうか……。じゃあ、今から全部話す」
「――いいのかい?アズサ」
「うん、遅かれ早かれ話すつもりだったし、それが少し早まっただけだ」
そうしてアズサはぽつぽつと語りだした。自分がアリウス校から送られてきた裏切り者であり、トリニティへ編入してきた目的はなんとナギサのヘイローを破壊する為。アリウスがミカを騙す形でトリニティへ編入した事。今はまだ詳しい日程は決まっていないが、決行の時にはアリウス分校の生徒がトリニティへ潜入してナギサを始末しに来ることを教えてくれた。そしてアズサ自身はナギサを始末するつもりは無く、守るつもりであるという事だった。
「ごめん。みんながこうして補習授業部として集められたのは私が原因だ。恨んでくれていい」
そう言って頭を下げるアズサ。他のメンツは考え事をしたり話を聞いても理解しきれていなかったりと反応は様々だ。
「待って……?どうしてそこで補習授業部の話が出てくるの……?私達は関係なくない?」
「――元々補習授業部はトリニティの裏切り者の疑いがある人達が集められた部活だったんです」
「――えっ?えぇ!?私何もしてないのに!なんで!?」
「コハルちゃんは――まぁ、普通に成績不振ですね♡最近は模試でもちゃんと点数が取れるようになりましたが」
ヒフミとハナコはこの部活の実態を知っていたようだな。コハルは自分の行いに心当たりは一切無いようだが、この部活に集められた子達はどういう基準で集められたのだろう。ナギサに疑われるだけの事をしたという事だとは思うが……。ぱっと見ではアズサ含めそんな事をするような人物には見えない。
「そしてナギサさんの襲撃に加えて調印式での襲撃ですか……。なんだか話の規模がちょっと大きくなってしまいましたね」
「ちょっとどころじゃないわよ!?それにアズサもアズサでどうしてティーパーティーを守ろうとしてるの?やっつけに来たんでしょ?」
「アズサちゃん自身は、最初からその目的でトリニティへ来た。そうではありませんか?」
「……」
「ふむ、確かにアズサがセイアの襲撃犯と聞いて少し引っかかっていた事がある」
セイアは体が病弱との事だった。私はその威力を知らないが、そんな子がヘイローを破壊する爆弾を耐えうるものだろうか。セイア自身も私に襲撃犯の事を教えたりはしていなかった。つまりセイアの中で襲撃犯に対する優先度は低いという事だろう。
「アズサはセイアの襲撃自体まともに行っていなかったんじゃないか?」
「――そうだ。私は、セイアに助言を聞く為に襲撃に志願した」
セイアの予知夢の力を知ったアズサはアリウスの凶行を何とかする為に動いていたらしい。ナギサが居なくなり、エデン条約が瓦解してしまえばキヴォトスの混乱は大きくなる。その時にアリウスの様な学園がまた生まれないとは限らないから、とアズサは語る。
「そのせいで皆を巻き込んで、みんなを退学の危機に晒してしまった。本当にごめん」
「アズサちゃん……」
「――え?退学ってどういうこと?疑われるのも意味わかんないのに退学ってなに!?」
「えーっと……実は補習授業部は裏切り者を集められただけではなくて、その候補達もまとめてみんな退学させる為に作られたものなんです……」
「――ふぇ?た、退学……?私が……?どうして……」
「で、でもきっと大丈夫ですよ!試験にさえ合格すれば元通りですから!」
「そ、そうよね!合格すれば……!合格……してみせるんだから……!」
「こうやって変にプレッシャーをかけてしまいそうだったなのでコハルちゃんにはまだ秘密にしていたのですが、こうなった以上は仕方ありませんね」
補習授業の方に関しては私の方では如何ともしがたいから応援する事しか出来ないな。合格を目指して頑張って欲しい。
「アズサもそんなに自分を責めないで」
「先生……?」
「元々の原因はきっと、信じられなかった事の方だよ。ナギサがもっと補習授業部達の事を信じていたら。ミカがもっとナギサの事を信じていたら。お互いがお互いを深く信じられていたら、みんなが退学の危機に瀕する事は無かったはずだからね」
「そう、かもしれませんね。元より信じるという行為そのものが難しい事です。ですが、アズサちゃんは本心を語って、謝ってくれました」
アズサは本来スパイであり目立つべき存在ではない。であるにも関わらず補習授業部という注目を浴びる組織に属する事になり、そこで真面目に授業に取り組んでいた。
「それはどうしてか。――私には分かります。補習授業部での時間があまりにも楽しかったから。そうですよね?」
「――!」
そうしてアズサはまだまだ学びたい事や行きたいところがあると話し、ハナコもまた何やら事情を抱えていたようで、補習授業部を通じてハナコも学園生活を楽しめるようになったとの事だった。
「ですから、アリウスの問題を一人で抱えないでください。私達や先生も居ます。それにもう一人、セイアちゃんと先生の応援に呼ばれたこの方も今はいますから。みんなで試験も合格して、ナギサさんを守りましょう」
――やはりハナコはセイアの事を知っていたのか。という事はセイアは既に目覚めているという事になるな。裏から先生を補佐するつもりだったのか。
「――そういえばずっと気になってたんだけど」
「どうしました?コハルちゃん」
「このもう一人の大人の人、だれ?」
ようやくそのツッコミが来たか。あまりにも普通に話が続くものだからどうしたものかと思っていた。
「あ、あはは……私は一度だけ会った事がありますから。それにモモトークでお友達からお話しを聞いたりもしますし」
「私もセイアちゃんに教えて頂いて知っていましたし、それに元々ゲヘナにヘイローの無い大人の男性が風紀委員会で精力的に活動している、という話はトリニティでもとても有名ですから」
「また私だけ何も知らなかったの!?もうなんなのよ!バカ!」
やはり私の存在はトリニティでも知られてるか。まぁ怨敵ゲヘナに訳の分からない大人が居たらそりゃ気になるよな。しかしヒフミの方は私は会った記憶がない。一体どこで出会ったんだ?
「改めて自己紹介しよう。私はゲヘナの風紀委員会で活動している者だ。今回は先生の要請により内密でトリニティに侵入してここまで来ている」
「阿慈谷ヒフミって言います!よろしくお願いします」
「浦和ハナコです。セイアちゃんから色々と♡聞いていますよ。うふふふ……♡」
「し、下江コハル……アズサをいじめたら許さないんだから!」
ハナコが何やら意味深な事を言っている。もうここまで来たら何を聞かされたのか大体想像がつく。――お前トキタイプかよ、セイア。
「よろしく頼む。しかしヒフミ。私は君と会った記憶はないんだが、どこで会っただろうか」
「えっ、あー……そういえば私あの時は……そう!へ、変装していたので!だから貴方が覚えていないのは無理もないかと……」
変装?そのような特技があるとは思わなかったな。もしやその特技が原因でナギサに疑われたという事だろうか。それならば納得だな。諜報活動にはぴったりな特技だ。
「ヒフミはほら、アビドスでカイザーと戦った時に――」
「せ、先生!」
アビドス……?カイザーとは確かあの歯ごたえの無い鉄屑共の名前だった気がするが。
――あっ。まさかあの変わった頭装備の紙袋を被っていた――!
「ま、まさか――君がファウストなのか……!?」
「その名前は恥ずかしいのでやめてください!」
存在だけは聞いていたが、こんなところに居たのか。覆面水着団の首領――!