話は戻りますが、鹿児島県警内の疑惑に関連し、徐々にメディアの追及が警察庁長官にまで及ぶようになると、警察庁も危機感を募らせたようです。鹿児島県警の野川本部長は、長官訓戒だけですまなくなり、最終的に、本来の任期を全うせず、2024年11月13日付けで自動車安全運転センター総務部長に異動させられました。

 それ以前の5日付け人事で同庁長官官房付に異動していたことからも、あきらかに左遷人事と思われます。鹿児島県議会が百条委員会を開くことが濃厚になったとみて、唐突に、特別監察を実施し、聞き取りなどを実行したうえで、野川本部長は、捜査情報を漏らしたとして曽於署の巡査長が地方公務員法違反の疑いで逮捕、起訴された事件に関し、5月20日にも警察庁による口頭厳重注意の処分を受けていました。ただ警察としては、処分より左遷という形で事件隠蔽の事実を矮小化、誤魔化したとみるのが順当でしょう。

 しかし、最大の問題、本田元警視正の国家公務員法違反の容疑は撤回されず、さらに、昇任試験を控えていた受験者の警察官(本田元警視正の息子)にメッセージアプリで口述試験の質問内容を伝えた疑いでも起訴され、まだ裁判が続いています。

内部告発者はこんな理不尽な目に

 このように、世間体を考えて、一応改善や処分は行ったものの、内部告発者には、厳しい未来がまっているという現実は、実際に多々存在します。

① 大阪トヨペット(2006年):販売手法に不法な点ありと告発した従業員が、突然10日間自宅待機を命じられる。通報窓口を担当していた弁護士から会社側に告発者の名前が漏れていた。→結果的に、告発者の告発は認められ、告発者も会社に復帰した。

② トヨタ車体精工(2006年):トヨタ自動車グループのトヨタ車体精工で労災隠しと偽装請負が発覚。告発したのは派遣会社の従業員だったが、この会社が破産手続きを開始、従業員はトヨタ車体精工が契約社員として雇用することになるが、告発した男性とその同居人の女性労働者は採用から除外された。

③ 三菱重工業(2004年):同社神戸造船所に勤務する社員が、複数の社員が建設業法上の監理技術者資格者証の不正取得をしていると社内コンプライアンス委員会に投書。するとその後、それまでの業務とは無関係の雑務を担当させられることに。

④ オリンパス(2007年):上司による他社人材の引き抜きに関しコンプライアンス違反の疑いがあるとして、社員が社内のコンプライアンス室に内部通報。その後、内部通報した社員は報復人事を受ける。社員は会社を提訴、裁判で勝利するも、会社は報復人事を続行。さらなる裁判の末に会社と和解が成立。

⑤ 宮城県の食品加工業者(2015年):食品加工業者がタラバガニの賞味期限を偽装。元従業員による証拠付きの告発を受けて保健所が立ち入り検査するも、「今は店頭販売をしていない」という従業員の説明を真に受け退散。その後、食品加工業者では犯人捜しと証拠隠滅が図られる。しかし地元紙の記者が立ち入り検査がたった1分ほどだったことなどを県に通報して事態が明るみに。会社は一転して偽装を認めた。

⑥ トナミ運輸(1974年~2017年):業界の闇カルテルを社員が新聞社に告発。すると当該社員はその後、27年間も閑職に置かれた。

⑦ 千葉県がんセンター(2010年):歯科医師の医科麻酔研修が不十分だと考えていた麻酔科医が、センター長に上申。すると手術麻酔の担当から外されたり、通勤困難な勤務地への異動を勧められたりしたことがきっかけで退職。

⑧ 雪印食品(2002年):BSE問題対策として政府が進めた「全頭検査前の国産牛肉買い取り事業」に関し、雪印食品の社員が、豪州産牛肉を国産牛の箱に詰め替えて産地を偽装、農林水産省に買い取り費用を不正請求していた。不正行為の現場となっていた西宮冷蔵の社長は、雪印に対して、農水省に謝罪すべきと進言するが拒否されたため、事実をマスコミに暴露。事実が明らかになり、雪印食品は経営が悪化、解散することに。一方、告発した西宮冷蔵も取引先が撤退するなどして休業状態に追い込まれた。