胎児性水俣病患者の訪問入浴介護 申請却下した水俣市の決定「違法」

今村建二
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 胎児性水俣病患者の金子雄二さん(70)が申し込んだ訪問入浴介護のサービスの利用申請を却下したのは、手続きに不備があり違法とする裁決を熊本県水俣市が出した。金子さんは、市に改めて審査した上で利用を認めるよう要望した。

 金子さんと、支援を続ける加藤タケ子さん(75)、金子さんの保佐人を務める中島潤史弁護士が8日、記者会見を開いた。

 2022年に胃ろうの手術を受けた金子さんはヘルパーによる24時間介護が必要になった。入浴も介護が必要になったため、自宅で支援員が入浴介助をしてくれる、市の障害者支援事業としての訪問入浴介護の利用を24年3月26日に申請した。

 金子さんは週2回のペースで入浴介護を受けており、申請が認められれば、1回あたり1万3千円の利用料を自己負担なしで使えるはずだった。

 だが、市福祉課はわずか2日後に申請を却下。金子さん側は24年6月、決定に問題があるとして、市総務課に行政不服審査請求をした。

 市福祉課は「サービスは原則65歳未満が対象」「介護保険に同様のサービスがある」ことなどを理由にした。

 一方、母親の胎内で有機水銀の被害を受け、生まれながらに重度の障害を負った金子さんは「自らの障害は水俣病が原因で、高齢で生じたものではない」と主張し、介護保険を利用しないで生活してきた。そうした「個人の尊厳」「思想信条の自由」なども根拠の一つとして、市の決定取り消しを求めてきた。

 9月30日付の裁決では、市福祉課の決定は取り消されるべきだとされた。しかしその根拠は、金子さんの申請を却下すると判断した理由が本人に示されていないという、手続き上の問題だった。

 市福祉課は、今後、金子さんに改めて却下した理由を説明するとし、その後の対応については「市長と協議する」としている。

 一方、金子さん側は「改めて審査をやり直す義務を市は負うことになった」と主張。7日に金子さん本人が市役所を訪れ、「本人の意向を十分に聴取した上で、サービスの利用を認める」ことを求める要望書を提出した。8日の会見で中島弁護士は「却下理由を書き直した上で再び却下するような形式的対応は許されない」と話している。

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この記事を書いた人
今村建二
水俣支局長|水俣病・環境担当
専門・関心分野
地方政治、環境