田中圭のブログだと思って、別人のブログを読み続けていた話。
私は田中圭の顔が大好きで仕方のないファンだった。
過去形のようになっているが、田中圭が口いっぱいにご飯を頬張る姿はいまだに好きである。
遡ること20年。
スローダンスというドラマが放送されていた。
深津絵里と妻夫木聡が主演の青春群像劇。
フジテレビの月9だった。
ヘミングウェイというおしゃれなカフェでコーヒーを飲む姿がなんとも素敵で、私のあこがれだった。
そしてそこには、ウォーターボーイズで最高に可愛かった田中圭が、少しだけ大人になって出ていた。
子犬のように無邪気な笑顔と、隠しきれないやんちゃさ、そしてほんの少しの儚さ。
まさに私の好きな田中圭を凝縮したドラマだった。
私はその後、進学し一人暮らしを始めた。
そして学業にバイトにくたびれた夜、眠りにつく直前の布団の中で『田中圭オフィシャルブログ』に出会ったのだ。
圭くん、ブログやってる…!
運命を感じた。
これを運命とするならば、世の中は運命しか存在しない。
それでもその日から私の日常は、少しだけ色鮮やかになった。
ブログでの田中圭は実に自然で、気さくだった。
人気若手俳優なのに、ざっくばらんに自分のことを話し、人生についての悩みや、葛藤までブログに書き記していた。私も学生ながらに深く共感したものだ。
いつの日か、田中圭が「あー彼女ほしいなー」とブログに書いた日があった。私は、ぎゃああーー!と興奮し、ベッドに倒れ込み、その日はなかなか寝付けず、夜な夜なmixiを更新した。
芸能人なのに!あんなに格好いいのに!彼女いないんだ!!!やばい!!どうしよう!!
私はとても能天気で、やばい!で多くの物事を表現するタイプの阿呆だった。
田中圭は、ブログに自分の写真を載せなかった。
俳優さんはそんな安売りはしないのだ。当時の私は何も疑問に感じなかった。むしろプロ意識があって素敵じゃないか。
そして私はいつのまにか、ブログを通して田中圭の中身、人間性がどんどん好きになっていた。
人気若手俳優としてテレビや雑誌にでる日々。それは私が想像する以上の多忙さに違いない。
それなのに毎日マメにブログを更新する真面目さが彼にはある。たまにある誤字すらも愛おしい。
自然体でさ、気さくで、飾らないんだよ。とにかく中身がいい。本当に人っていうのは顔だけじゃないんだよね、私は田中圭の中身が好きなんだ。
友人達と集まるたびに、私は田中圭についてこう熱弁していた。
田中圭オフィシャルブログを読み始めて、どのくらいの月日が経ったのだろう。
その日のブログでは、田中圭が「今日の俺です!」といって画像をあげていた。
え!!珍しい!やばい!今日絶対mixi更新する!!
私は誰からも求められていないmixiの更新を胸に誓い、アメブロの鬼の改行に耐え、画像を見た。
見た。
そこには、見知らぬ男性が
少しはにかんだ笑顔で映っていた。
え、誰・・・?
誰??
だれだれだれだれ、まじでだれ?
どこからどう見ても、私の知る田中圭ではなかった。
スタッフさん??田中圭的ギャグ?もう〜おちゃめ!そう思いたい一方、何かがおかしいと気づく。次第に冷静になった私は、今までのブログを読み返した。
一日一日遡りながら、圭くんとの日々を思い出す。
ああ、この日は私もバイトで注意されてつらかったな。
圭くんも少しだけ仕事のことで落ち込んでいたね…
この日は初めての現場って書いていたね。私もこの日は初めての早番シフトだった日。記念日だね…
いや、違う違う!そうじゃない!!
あれ、よく読むとなんかここも、ここも確かに俳優業としては少しおかしいか…?でも現場は?現場なんて言葉、撮影現場以外に使うことはない…はず…
いや、工事現場、医療現場、事故現場、そうだな、あれ、ちょっと考えただけでも沢山出てくるな、あれ…
あれ…まじで…誰…!!!?誰??
幾度となく押し寄せる、誰?誰?誰?の波。
ずっとブログを読んでいたにも関わらず、今まで一度も開いたことのなかったコメント欄をその日初めて開いた。
そこには、今日は本当いい天気ですね~!私も今日はお弁当にしました~!などの朗らかなコメントに混ざって、あなたは俳優の田中圭さんじゃないんですね?勘違いしておりました。さようなら。と、一見冷静そうに見えて強い怒りが滲むコメントがあった。
私はベッドに突っ伏した。
初めての絶望だった。
田中圭は、見た目じゃない中身がいいんだ!あの日友人達を前に熱弁した私。腹を抱えて笑う友人の姿が見える、幻覚か
晴れの日も雨の日も、私を元気づけてくれていた田中圭はどこに行ったのだ、そして誰だったのか。
いや、誰だったのかも何も、わかっている。
あの写真で、はにかんでいたあの男性なのだろう。
きっと俳優・田中圭をしっかりと追っていたファンからしたら、ドラマの撮影やスケジュールなど、いや多分もっと根本的なところから、初見で田中圭のブログじゃないと判断できていたはずだ。そもそも事務所からの案内ではないブログなど、見ていない可能性の方が高い。
それに田中圭という名前は、そんなに珍しいものではない。
田中という姓も、圭という名も、全然珍しくない。
彼はきっと、普通にただの田中圭だったのだ。
じゃあ、オフィシャルとは?
何かしらのオフィシャルだったのか。
それかなんとなく名前の横にオフィシャルと書いていただけかもしれない。それは自由だ。
もしかしたらオフィシャルも名前の一部だったのかもしれない。それならば田中オフィシャル圭の方が語呂も良さそうでおすすめしたいところだが、それは田中オフィシャル圭が判断する事であって、私がとやかく言うことではない。
彼はもう1人の田中圭。
自分の身の回りに起こる事実を書いていたに違いない。なりすますのならば、もっと上手く出来たはずだ。そして写真は載せないだろう。
きっと私が勝手に俳優・田中圭の顔を想像しながら、都合よく田中圭要素を補填して読ませて貰っていたのだ。彼の日常を。
私は、田中圭の顔が好きだ。
無邪気にご飯を口一杯頬張る田中圭の顔が好きだ。
それでもたまに思い出す。
あの時の田中オフィシャル圭よ、
当時は突然の君の登場に死ぬほど戸惑い、
携帯電話を放り投げ、絶望してしまったけれど、
あの頃の私を元気づけてくれていたのも
まぎれもなく君だった
ありがとう。
あれから20年弱の間、私は田中圭好きな人を見つけては当時のブログを知らないかと聞き込みを続けている。
その度に不憫がられ、慰められ、最後は失笑されている
そしてあのブログを知る人には、未だ出会えていない。
あれは私が見た夢か、幻か
それでも願わずにはいられない
田中オフィシャル圭
どうか今もどこかで、元気でいておくれ



コメント
32はじめまして
Fuuと申します😊
ぐいぐい引き込まれました。
やっぱり人って、自分が見たいように見てるし、聞きたいように聞こえるもんだなーと。
面白い😆
私のマガジンにも登録させて下さいね。
Fuuさん
はじめまして、コメントありがとうございます!
本当に自分が見たい田中圭だけを見ていたんだと思います笑😂長年私の黒歴史としてあり続けたものがこうして皆さんに笑ってもらえて本当によかったです!マガジン登録も嬉しいです!ありがとうございますー!
こんにちは!この記事が好き過ぎて何度も読んでます😂この、ジワジワくる感じ、、たまりません!
田中オフィシャル圭という名付けのセンスも素晴らしすぎるー!笑
かないろさん
はじめまして!好きすぎて何度もだなんて!!😂😂笑
ありがとうございます!うれしいです〜!いまだに見つからない田中オフィシャル圭…!!まだ探してます!