実際の犯罪報道について意見を持つとき、まず何を調べるといい?
1.この記事の目的と言い訳
1-1 この記事で何すんの?
先日、お笑い芸人さんが外国人の起訴・不起訴に関するnoteを投稿して話題になっていた。同noteへのコメントでよく目にしたのは、主張への賛否よりも、そもそもの前提事実が間違っているのではないかという指摘だった。
この芸人さんだけでなく、SNS上には犯罪と刑罰に関する様々な見解が飛び交っている。その中には、「気持ちはわかるんだけども、前提が間違ってるんだよなぁ」というものがかなりある。社会問題に対して疑問や怒りを持つことはまったく悪いことではないが、存在しない問題に対して怒るのは、永久機関を作ろうとして河原の石を積み上げるようなあまりにも無意味な行為であろう。人生は3度しかない(諸説あり)のだから、虚構に対して激怒している暇はないはずである(なお、私はビアンカとフローラの両方を選べないことに激怒したことがある)。
そこで、SNS上での前提を欠いた意見に対して、ある程度専門知識があると思しき人たちから「ちゃんと事実確認した方がいいですよ」とリプがついたりする。しかし、そもそも専門的な訓練を受けていない人はそんなことを言われてもどこで何を確認したらいいのかわからないだろう。そこで、この記事では、「罪と罰について知りたければここを見ろ」「絶世のイケメンを見たければ私を見ろ」という事実確認方法を紹介したいと思う。
1-2 言い訳
んで、主に専門知識のある方への言い訳をしておきたい。この記事では一般人が簡単にアクセスできるものを紹介するので「裁判記録を閲覧しろや」とか「基本書読めや」とか「団藤、団藤、雨、団藤。雨、雨、団藤、雨、団藤」みたいな要求はしない。だから、専門家や法学を学んでいる人にとっては物足りない情報になると思う。また、例外的な事象や制度にはあまり触れないことにする。ここでの紹介はすべて「原則として」という限定がついていることにしてほしい。あまり専門的に細かいところを突っ込みすぎるのも良くないゾ。
2.起訴・不起訴の現状について知りたい
のび太「ドラえも~ん、この国の起訴率を知りたいよ~」
ドラえもん「テッテレー、『犯罪白書』~」
2-1 犯罪白書で刑法犯の起訴率を確かめるよ~
犯罪とその処遇の状況について知りたいならばまずもって『犯罪白書』を見るべきである。『犯罪白書』は毎年ジャスティス省( a.k.a.法務省)が出している白書で、犯罪と処遇に関する様々なデータが見やすく掲載されている。
インターネットの検索エンジンで『犯罪白書』と入力すれば、誰でも無料で閲覧できる。しかも、HTML版もPDF版も(近年はEPUB版も)公表されているので、使いやすい。ちなみに紙媒体で入手すると枕にも使える。大学時代の私は犯罪白書を寝よだれでビショビショにしたことがある。
試しにお笑い芸人さんがnoteで言及していた外国人が日本人に比して不当に不起訴になっている旨が事実かどうか確認しておこう。まず、刑法犯全体の起訴率を見てみよう。令和5年には36.9%らしい。
2-2 来日外国人の起訴率を確認するよ~
次に、来日外国人被疑事件の令和5年検察庁終局処理状況を見てみよう。
左側が全終局処理人員で、刑法犯は36.9%の起訴率である。さっき確認した数と一致している。次に来日外国人の終局処理人員の刑法犯の起訴率を見てみよう。刑法犯で41.1%のようだ。つまり、令和5年の来日外国人の刑法犯起訴率は全体よりも高い。というわけで、「外国人の起訴率は日本人のそれよりも低い」というのは間違いだということになる(特別法では外国人の起訴率が低いが、数としてはほとんど入管法違反のようだ。これは不起訴からの退去強制で処理しているのかもしれない。退去を強制しているのなら起訴に比して不当に軽い扱いというわけでもないだろう。薬物については覚醒剤は起訴率がやや低く、大麻は高い。薬物事犯を特に緩くしている等の特別な取り扱いがあるわけではなさそうだ)。
とはいえ、数字はあくまでも数字なので、個別の犯罪の情状はここからは読み取れない。というわけでここから、「外国人が不当に起訴されている」という逆を読み取るのもあまりよろしくなさそうである。表を見てみると外国人犯罪の半分弱くらいは窃盗のようで、この窃盗の起訴率が5割を超えて全体を引き上げているようにも見える。それがどういう意味を持つのかは、ここからは読み取れない。わからないことは「わからない」としておこう。とりあえず、「外国人の起訴率が低い」とは言えないことが誰もが無料ですぐにアクセスできる公的な統計から明らかになった。
なお、警察で取り扱われた刑事事件は例外(微罪処分)を除いて原則として全件検察官に送致されているので、検察までいかない事件が大量にあるからそこで統計から漏れてるんだ、みたいな話にもならない。
とにかく、調べるのに10分もかからないから、犯罪とその処理関係の事実に言及するときは、いちど『犯罪白書』を確認する癖をつけておこう。
3.逮捕について知りたい
「月にかわって、お尻おっきいよ~!」
3-1 逮捕の統計みるよ~
逮捕についての誤解もかなりあるので簡単に触れておこう。まず、愛しの枕、『犯罪白書』の統計を見てみる。
これで、犯罪をした者が全員逮捕されているのではないということがわかる。むしろ刑法犯は全体で身柄率が35.9%であり、逮捕されていない者の方が多い。犯罪者はみんな逮捕されると思っていると、逮捕報道に対して専門家(特に弁護士)が「逮捕せんでええじゃないの~」とポストしがちなのが理解できない。そもそも犯罪の処理は逮捕しないのがデフォルト設定であり、次項で述べる要件がある場合にのみ例外的に逮捕されるというシステムなのである。「〇〇を逮捕しろ」というと(しつこい)法律系アカウントがいろいろ突っ込んでくるのもこれで理解できるだろう。
ちなみに、「逮捕されていない≒身柄がとられていない」は、犯人がわからなくて迷宮入りしているという意味ではない。被疑者はきちんと判明して立件しているし、なんなら裁判にもかけるが、自宅から裁判所に歩いて(あるいはLuupで)来てもらうというくらいの意味である。
刑罰は裁判所が裁判で決めるものであって、捜査機関が決めるものではない。捜査は裁判所がちゃんと判断するための準備をしているにすぎない。だから捜査の途中で行われる逮捕も、必要なければしない(できない)のだ。 のだ!(ちょい詳しくは次項)
3-2 制度について調べるよ~
逮捕に関する事実関係については、『犯罪白書』を見ればいいが、逮捕の制度はこれでは理解できない。そこで使えるのがe-govの法令検索である。E-govというのは「エグいおじさんVサイン」の略ではなく、電子政府という意味であり、電脳空間に存在する日本政府である。というわけで、これも公的情報なので基本的に信頼していい。もしあなたが無政府主義者で政府の情報はすべて信じないというのならばそれはそれでいい。そういう人は逮捕にも反対するだろうからである。
E-govにアクセスすると、法令検索というアイコンがあるのでクリックする。すると検索ボックスがでてきて色々な法令が検索できるようになる。逮捕について書いていそうなのは(憲法を前提としつつ法律では)刑事訴訟法だろう(このあたりは専門家でなくても予想できる大人に育ってほしい)。そこで、刑事訴訟法を見てみる。
刑事訴訟法君は、199条あたりから逮捕の話を早口でし始める。199条は刑法だと……という話は置いといて、刑事訴訟法君の話を聞いてみよう。199条1項本文は「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。(但書き略)」という。つまり、捜査機関(検察と警察)のおじさんとおばさんは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」に「裁判官のあらかじめ発する逮捕状」により逮捕できるということだ。だから、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がなかったり、裁判官が逮捕状を出さなかったりしたときには逮捕できない(この他に現行犯逮捕とあれやこれや議論のある緊急逮捕があるが、このnoteでは省略するでごわす)。
そいじゃ、裁判官はどんなときに逮捕状を出すのか。反対から問えば、捜査機関からの逮捕状の請求を裁判官が断るのはどんなときか。刑事訴訟法君は199条2項に「裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項及び第201条の2第1項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。」と定めている。この但書きにある「明らかに逮捕の必要がない」の具体的な意味をもう少し知りたい。
「逮捕の必要」について定めた条文を探すのは、ちょっと知識が必要だ。というのもこれは最高裁判所が制定した「刑事訴訟規則」というものに書かれているからだ。だから、どんなときに逮捕の必要がないのかは刑事訴訟規則を読まなくてはならない。
裁判所のサイトで刑事関係の規則集を見て、そこから刑事訴訟規則をクリックしよう。
刑事訴訟規則ちゃん143条の3は、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。」という。
つまり、簡単にいえば、裁判官さんは逃亡と罪証隠滅のおそれがない場合のように逮捕の必要性が明らかにない場合は逮捕状の請求を却下するというわけだ。前項の終わりごろでも述べたとおり、逮捕は刑罰でもなんでもなくて、今後行う予定の裁判で証拠と被告人がちゃんと裁判に出てくるように確保する制度くらいの位置づけなのである(ほんとは、逮捕の後の被疑者勾留、起訴の後の被告人勾留ってのがあるけど今こまかいことを気にすると大変だから横に置いておこう)。だからこそ、証拠隠滅もできないし逃亡もできないような人を逮捕しているニュースが流れてくると専門家(特に弁護士)のみなさんは「逮捕する必要性があるのかよ~」とポストする。実際、『犯罪白書』でみたように、逮捕せずに処理することも普通に行われているのだし、受ける刑罰は罰金程度の軽い罪しか犯していなくても逮捕されたら職を失ったりなんだりと人生にかなり大きなダメージを受けるので、逮捕に対して「逮捕しなくてもいいじゃないの(≒逮捕しなくても裁判できるなら逮捕せずに裁判して処罰すればいいじゃないの≠処罰しなくてもいいじゃないの)」という意見が出てくるのはよくわかる。
4.判決の報道があった裁判の内容について知りたい
残暑ざんしょ。
「裁判の報道があった。怒りたい!」という人も結構いるだろう。おすすめは一度冷静になることである。
4-1 マスコミ報道は意外と〇〇
第1に、マスコミの事件報道は一般の人が思っているよりもずっと不正確である。起訴前だとだいたい警察発表をそのまま流しているので、客観的事実(事件が起きたこと、発生日時、発生場所、被害者の数、被疑者検挙の有無など)に関しては多くの場合正確である、しかし、もちろん被疑者に有利な情報(事件の裏にある被疑者に同情すべき事情、極めつけは被疑者が真犯人ではないのではないかと疑わせるような情報)は警察からは流れて来ないので、マスコミ報道には乗らない。つまり、報道のニュアンスが全体として警察寄りになっていることが多い。冤罪のときに取り返しがつかなくなるのも、こういう報道姿勢が影響している。袴田事件でも足利事件でも報道は本当にひどかった。
判決報道は、判決を聞いた記者さんや事件によってはマスコミ用に配られた判決要旨を受け取った記者さんがまとめるわけだが、要約のポイントが間違っているのではないかと思われる記事が結構ある。また、記者さんが正確に書いているとしても、読者の方で受け取り方を誤ることがある。判決(や裁判の中での主張)には、検察官の主張、被告人(弁護人)の主張、その両者の主張を聞いたうえでの裁判所の判断が書かれているが、これらをきちんと区別して読まないと理解を180度間違えたりする。だから、報道を一読して受ける印象からストレートに怒りを惹起すると、存在しないものに対して怒ることになりかねない。
4-2 まだ3回の裏だったり(あと自分は試合を見ていない)
第2に、日本の刑事裁判は三審制だという点である(とはいえ、事実審とか法律審とか事後審とかいろいろあって簡単ではない。単純に同じ裁判が3回できるわけではないよ)。報道された裁判は、最終判断ではないことがある。野球の試合をみて3回の裏が終わったところで「試合結果がおかしい」と怒ってもあまり意味がない。もちろん、地裁判決が圧倒的におかしいこともあるし、それが確定することもあるので最終的には怒ってもいいが、とにかくまだ試合が終了していないことは頭の片隅に置いておいた方がいい。
そのときに、「自分は証拠を見てない。当事者と裁判所は証拠を見ている」ということを忘れないようにしよう。「証拠を見たプロの判断よりも証拠を見ていない自分の判断の方が正しい」こともありうるかもしれないが、「一見すると変な判決に思えるが、証拠をみたプロが言うからにはもしかしたら自分が知らない理由が何かあるのかもしれないな」くらいの自制心があってもバチは当たらないだろう。
4-3 判決は誰の意見なんや?
第3に、大きな事件はたいてい合議制で行われているという事実がある。合議制というのは3人の裁判官が合議して行う裁判である。刑罰に死刑か無期の可能性があったり故意行為によって人が亡くなっている場合は裁判員裁判(3人の裁判官と6人の裁判員による裁判)である。納得いかない判決を出した裁判長の顔写真を出してああだこうだ言うポストを見かけることもあるが、もちろん裁判の責任者は究極的には裁判長だとしても、裁判長の個人的見解が判決にそのまま反映しているわけではない点に注意しなくてはならない。裁判員裁判ならば、民間から選ばれた裁判員の意見も反映しているのだから、それをすべて裁判長の責任にするのはなかなかにむずかしい。
また、裁判は当事者主義というのをとっていることも知っておくといい。当事者主義とは、裁判の当事者が審判対象の設定や立証を主導する訴訟構造で、裁判の当事者とは攻める検察官と守る被告人をいう。裁判所の判断は、当事者が設定した審判対象(刑事裁判においては、検察官が起訴状に訴因を明示した公訴事実を記載していて、その訴因が審判対象となる。実務では広く審判対象を公訴事実と呼ぶこともあるみたいだがまあそれはそれであって、本noteの論旨に影響はない)の範囲に限定される。たとえば、当事者である検察官が(殺意のない)傷害致死罪で起訴したのに、当事者ではない裁判官が勝手に「殺意がありそうだから殺人罪にしよう」なんてことはできない。裁判所は、検察官が決めた審判対象について、当事者である検察官と被告人(弁護人)が出した証拠と彼らの主張の範囲内でだけ判決をすることができる。暴走自動車のニュースに「なんで危険運転致死罪じゃないんだ。この裁判官はおかしい」というコメントがついているのを見たことがあるが、検察官の起訴が自動車運転過失致死罪だったので、裁判官はぜんぜんおかしくないニュースだった。じゃあ、検察官がおかしいのかというと、検察官は捜査機関でもあり証拠を見つつ警察や被害者の意見を聞いたうえで法に照らして起訴をしている。ただニュースを見ただけの人よりは正しい判断をしている可能性は高そうだ。でもまあそれでもおかしい可能性はなくはないから、事実関係を確認したうえで怒るのはいいと思う。
あと、起訴判断や判決の元になっている「前例主義」が批判されることもあるし、その批判は理解できるけれども、前例主義は公平の要請であるということも知っておくといい。同じ事件でも2月の東京地裁と6月の大阪地裁でぜんぜん違う判決が出るなら裁判は運ゲーになってしまう。尊属殺人罪を違憲としたり、(旧)強制わいせつ罪にわいせつ意図は不要であるとしたりと、前例はいつか破られる必要があるが、破られるべきことが明白になるまでは、「判断者が誰であっても、全国一律で統一された法的判断がなされる方がいい」と裁判官や検察官が考えている方が法治国家的ではありそうだ。
ちなみに、マスコミに裁判官の顔写真が出るのは、裁判官だけの写真撮影タイムがあるからである。注目される裁判員裁判のときは、開廷する前に裁判官だけが登場しての撮影タイムがあり、その後改めて今度は裁判員を伴って裁判官が入廷してくる。TikTokに流したい光景である。
4-4 そこに愛はあるんか?
第4に、外野の怒りは被害者を傷つける可能性がある。あなたがニュースを見て怒っていても、実は被害者が何らかの理由で被告人を許していたり、もう騒いでほしくないかもしれない。民主国家なので公的判断を批判し、騒ぐ自由はあるけれども、それが被害者を傷つけないかは一度考えた方がいい。
不起訴の理由を全部開示せよという主張も、被害者を傷つけるものである可能性がある。なぜなら不起訴の理由は、時に被害者のプライバシーやセンシティブな情報に触れるものだったりするからである。この前、SNSで示談を責めているポストを見たが、示談を責めるというのは被害者を決断を責めるという意味もある。気を付けた方がいい。
4-5 違う意見も大事だよ~
第5に、直接の民意をあえて反映させないのが司法の役割のひとつだという忘れてはいけない。人類は、魔女狩りや人民裁判、リンチなどの大失敗を繰り返してきた。このような失敗を繰り返さないために、刑事事件の解決を国家に任せ、三権のひとつとして司法権を民意を直接反映する立法府などから独立させる国家制度をつくった。そうであるならば、そもそも司法は、本来的に今の国民が望んでいない判決を出す機能が求められているということである。誤解がないように補足しておけば、民主国家なのだから司法が国民の意見から乖離することは許されない。しかしここでいう、国民の意見とは長期的に熟慮された国民の賢慮のことである。つまり、「感情に流されないで法と証拠に基づいて事件を裁いてほしい」「公平で公正に裁いてほしい」「冤罪を出さないでほしい」という民意が司法を正当化している。反対に「あいつはむかつくから殺そう」「法を無視してもいいから復讐したい」「今俺は怒っている。俺の怒りを収めるように判決しろ」という国民の短期的な意見から距離を置くのが司法の本来的な役割である。あなたが怒っている判決は実はそういう国民の賢慮に支えられているものなのかもしれない(それはつまり現行の法律と裁判に出てきた証拠に基づく合理的判断ということである)。
とはいえ、裁判所の判断が間違っている可能性もあるので、一度冷静になって考えてからそれでも怒りたいなら、事実関係を調べたうえで怒るといいと思う。
それでも私は、「有罪にしろ」という方向では怒らないようにしている。「有罪にしろ」というのは「あいつ(被告人)の人権を制限・剥奪しろ」ということであり、公にそう表明するにはやはり直接証拠を見る必要があると考えるからだ。証拠を精査しないで「あいつの人権を制限・剥奪しろ」と公に言える人は、相当に勇気のある人だと思う。
4-6 判決の手に入れ方
前置きが長くなったが判決の調べ方である。
第1に、裁判所のウェブサイトに公開されることがある。裁判所の判例検索システムで一度探してみるといい。
第2に、裁判所ウェブサイトに掲載がないときは、データベースか雑誌で探すことになる。データベースは民間の有料データベースがある。
データベースは、LEX/DB、D-1Law、Westlaw Japanが御三家だろうか。専門家はだいたいこのうちのひとつまたは複数を使っている(私はLEX/DBとD-1Lawを使っている)。
データベースが有料だと使えないという人もいるだろう。だが安心してほしい。公共図書館の中には有料データベースを契約して利用者に提供しているところもある。たとえば、東京都立中央図書館はD1-Lawを、大阪府立中之島図書館はWestlaw Japanを入れているようだ。近くの図書館に判例データベースがあるか一度調べてみるといい。なお、放送大学の学生は所属の学習センターでD1-Lawを利用することができるようだ。
雑誌については疲れたから省略することにする。判例時報とか判例タイムズとかあるんだよ。あるんだぜ。
なお、裁判所ウェブサイトにもデータベースにも載っていない未確定の判決文については、プロでもないかぎり気軽には入手できない。データベース登載までは判決言い渡しから時間がかかる場合があるので少し待つのもいいだろう。
5.オリジナル刑罰を思いついた!
白髪を抜いています。毛~抜(けーばつ)
ここまで書いて、もう疲れてしまった。最後っ屁をしておく。
「日本は刑が軽すぎる」という意見がある。私は大陸ヨーロッパと比較する限り日本の刑が軽すぎるとは思わない(むしろ強盗と放火はびっくりするほど重いと思う)が、比較対象に選ぶ国によっては日本の刑が軽いように見えるかもしれない。当たり前の話だが、刑が重い国と比較すれば日本の刑は軽く、軽い国と比較すれば日本の刑は重い。で、時々、「〇〇を切り落とせ」とか「〇〇してやれ~」みたいな独自の刑罰を主張するポストを見ることがある。
その時は、憲法はもちろん、あわせて世界人権規約(自由権規約:B規約)を一度参照すると良い。外務省が第3部を訳して公表しているのでこちらもアクセス簡単である。
一見すればわかるように「18歳未満への死刑」とか「理解できる言語での通訳を付さずに刑罰を科すこと」とか「身柄拘束されている者を非人道的に扱う」とか「弁護人をつけさせずに欠席裁判する」とかはB規約違反である。これに違反する刑罰や刑事手続は、(あなたがリベラルなら)「人権の観点から認められないものである」のであり、(あなたが保守派なら)「日本の国際社会での地位を危うくし国益を損ねる」ものである。あなたの政治的立場によってお好きな理由付けを選んで良い。とにかく、日本の法律だから好き勝手に決めていいわけではないということを知っておいてほしい。B規約に反する刑罰を主張されても、それは現実的でないので「あーあー聞こえない」というしかないのである。
日本はB規約の一部に解釈宣言や留保を付しているので必ずしも文字通りではないことには注意が必要である。が、明文で決められていることを破るような宣言や留保ではないのでやはりB規約を読んでおくといいと思う。
議定書の方は第1も第2も日本には関係nainai
ちなみに、なんで憲法じゃなくてB規約を読めと言ってるかというと、本当は憲法の理解が大事なんだけど、憲法には細かいことが書いていなくて「憲法を理解するには法学をきちんと勉強しなさい」みたいになり、本noteの趣旨から外れてしまうからである。余裕がある人は腰を据えて憲法を学んでほしい。余裕がない人はB規約の条文でいこう(独自の見解)。
6.疲れた
逃避のためになんとなく書き始めたノートが長くなってしまった。疲れたよ、パトラッシュ。パトカーが猛追してるのがほんとのパトラッシュ。
最後にいつもの注意書き。このnoteの内容を信じてはいけない。


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