「看護系」教育機関が窮状訴える 入学者減で運営難、閉校も 熊本
熊本県内で看護師などを養成する教育機関が窮状を訴えている。玉名市にある私立の九州看護福祉大は入学者が減少し、大学存続のために公立化を要望。このほど市の検討委員会が報告書をまとめた。県医師会も各地の看護学校の運営が厳しく、とくに准看護師の不足が深刻だとして対策を求めている。
九看大は1998年に設立され、看護や社会福祉など5学科がある。県北地域の4年制大学として地域社会への貢献も重視されているという。
各学科の入学定員は看護学科100、社会福祉学科80、リハビリテーション学科60、鍼灸スポーツ学科40、口腔(こうくう)保健学科50の計330人。だが看護学科を除く4学科は入学者の定員割れ傾向が続き、現在は5学科で4年間の定員1320人に対して在籍者は1203人にとどまる。特に口腔保健学科では充足率が6割を下回る。
大学を運営する学校法人の熊本城北学園は昨年1月、公立化の要望書を市に提出した。少子化や学生の国公立大志向の影響で定員割れが増え、「運営資金の約8割を学生の納付金に依存する本学にとって厳しい状況」と説明。「地域で大学を存続させるため」として公立化を求めた。
これに対して市は、地元の経済団体や他大学の研究者らで構成する「玉名市九州看護福祉大学の公立大学法人化検討委員会」を設置。今年8月まで5回の検討会を重ねた後、9月24日に報告書をまとめ、委員長を務める佐々木浩・玉名郡市医師会会長から市に提出された。大学が持つ経済波及効果や経常収支の見通しなどが分析された上で、公立化のメリットとリスクを指摘した。
メリットとして「志願者増や国からの地方交付税が見込まれる」などとする。一方で「看護専攻科がある地元高校への影響や、市の責任や経営悪化時の財政支援の増加」といったリスクを指摘。学科再編や定員見直しを求めている。
蔵原隆浩市長は「受験者は国公立志向が強く、志願者増が期待できる」と公立化に前向きだ。入学者がアルバイトで地元の飲食業や小売店を支えている側面も指摘。一方、看護科がある県内の高校などには、入学者を奪われる懸念もあるとし、慎重に検討するという。
市の調査では、公立化した他地域の大学では入学志願倍率が増え、地域外からの入学者も増加する傾向がみられたという。公立大学の設置団体である地方自治体には、国からの地方交付税が増額され、自治体から大学に対して運営費を出せるとしている。市は「パブリックコメント」で意見を募り、12月中に判断を示す。
県内の看護学校も厳しい。県医師会は9月24日に記者会見し、とくに地方部で准看護師の不足が深刻だと訴えた。県内で准看護師を養成できるのは、各地域の医師会が設立している7校だけだが、ほぼ定員割れ。昨年度は7校で計306人を募集したが、191人しか受験せず、大半を合格としたが入学者は162人だった。369人が入学していた2013年度と比べると、半分以下に減っている。7校のうち5校は准看護師だけの養成所だ。
看護師が国から免許を受けるのに対して、准看護師は都道府県の免許。どちらも幅広く患者の世話や診療の補助にあたるが、看護師が自らの判断で業務を進められるのに対して、准看護師は医師や看護師からの指示が必要。准看護師は「やりがいがあり、地元で働ける利点もある。だが、給与面などの処遇が悪く、他の職業へと流れている」と、この問題を担当する県医師会の金沢知徳副会長。国などに処遇改善を求めている。
天草郡市医師会が設置する天草准看護高等専修学校は2027年3月末で閉校する。県医師会は天草地域での准看護師不足に拍車がかかることを懸念している。
県医師会のまとめでは、県内の看護師は増えているが、准看護師の減少分を補えず、全体では4年間で740人減に。看護師は約950人増えたが、准看護師が1700人近く減ったためだ。新規の就労者が少ないため休職者の再就職も呼びかけられ、高年齢化が進んでいるとも。
県医師会は九看大の動きにも注目。「卒業生が県外へ流出せず、地元で働ける対策を」と注文する。