「“トレパク”特定班が凄すぎる」「次から次へと発覚」 江口寿史氏の“パクり”問題、ネタ元女性と和解も「取り下げラッシュ」が起きるワケ
それでも事前に気付くことができないのは、上記の1、5の理由からである。事前にあらゆる創作物を調べて、相違を確認して是非を判断することは、実質的に不可能なのだ。 江口氏の件にしても、今でこそ特定が相次いでいるが、逆に言うと、現在まで気付かれることなく放置され続けていたということになる。 それでは、解決策はあるのだろうか? 古いCMのキャッチコピーを借りると「臭いにおいは元から絶たなきゃダメ」である。つまり、制作段階でトレースやオマージュを禁止する――ということだ。逆に言えば、現状ではこれくらいしか有効な対策は見当たらない。
上記の3で挙げたように、以前は著作権や肖像権に対する意識が厳しくなく、チェック機能も不十分であったため、現在では問題になるような行為が流されていたり、発覚されなかったりした。 クリエイターが以前の感覚が抜けないまま、つい模倣や盗用に当たる行為をやってしまった――ということが起こりえる。 江口氏のXへの投稿文を見ても、上記のようなことだったのではないかと思う。 ■問題が発覚した後の最善策 また、問題が発覚した場合も、クリエイター本人が正直に企業側に伝え、情報を公開し、問題行為があったら謝罪を行うのが最善の対応策だ。
江口氏は沈黙を続け、第三者が相次いでトレースを指摘する状況になっているが、これは好ましい状況ではない。 自ら先手を打って対応すれば、特定活動も沈静化するし、批判も収まりやすい。過去の事例を見ても、過ちを認めて謝罪を行った人は、創作活動を続けることができている。 筆者は子供の頃、江口寿史氏の『すすめ!! パイレーツ』や『ストップ!! ひばりくん!』に親しんできたし、江口氏デザインのミスタードーナツのノベルティ「パパリンコグラス」を集めていた。
それだけに、今回の“トレパク”問題が起きたのは非常に残念に思っている。やってしまったことをなかったことにすることはできないが、せめて後始末はしっかりやってもらいたいと願っている。
西山 守 : マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授