「“トレパク”特定班が凄すぎる」「次から次へと発覚」 江口寿史氏の“パクり”問題、ネタ元女性と和解も「取り下げラッシュ」が起きるワケ
法に触れないことは必要条件だが、十分ではない。広告・宣伝においては何よりもイメージが大切だ。今回のような疑惑が生じた時点で、撤回になってしまうのは必然的なことである。 江口氏のXの投稿文を見ていても、この辺の意識が希薄だったように思えてならない。 模倣、あるいは盗用なのか、あるいは(“パクり”ではない)独自の創作物なのか――というのは、明確な基準があるわけではなく、判断が難しい。だからこそ、既存の創作物に「できるだけ似ないようにする」ということが重要になる。
筆者が広告会社に勤務していた際も、「これは○○に似ているから、修正してください」のようなやり取りを何度か目にしたことがある。 盗用疑惑が巻き起こった有名な事例として、アートディレクター・佐野研二郎氏デザインの東京2020オリンピックの公式エンブレムがある。 佐野氏がデザインしたエンブレムが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴと似ていることがインターネットで指摘された。その後、同劇場のロゴをデザインした、オリビエ・ドビ氏とリエージュ劇場が、国際オリンピック委員会(IOC)を相手取り、エンブレムの使用差し止めを求めて提訴した。
最終的には、佐野氏から取り下げの希望を受け、東京五輪・パラリンピック組織委員会はエンブレムの使用中止を決定した。 リエージュ劇場のロゴは商標登録を行っておらず、商標権の侵害には当たらないと考えられていた。また、両者はそこまで類似しておらず、著作権侵害にも当たらない可能性が高かった。 しかしエンブレムが取り下げられたのは、違法行為を行ったからではなく、日本国民から支持が得られなかったからだ。 今回の江口氏の問題と同様に、東京五輪エンブレムの盗作疑惑が浮上した際に、佐野氏の過去作品に関して多数の“パクり”疑惑が取り沙汰された。
指摘の多くは、根拠に乏しいものだったが、サントリーのノンアルコール飲料「オールフリー」が行ったキャンペーンの賞品のトートバッグが、第三者のデザインをトレースしていたことが発覚。 佐野氏自身は本件について把握しておらず、スタッフが行ったものだと説明したが、同氏が監修したデザインであることには変わりがなかったため、問題があったことは確定した。それがエンブレムの撤回へと波及することになったのだ。 本件は2015年に起きた事案だが、10年を経て同じような問題が再燃したということになる。