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斉藤徹教授出版記念講演~だから僕たちは、組織を変えていける~(全5記事)

心理的安全性が低い職場は「空気を読み過ぎる部下」にも問題がある 「やる気に満ちたやさしい組織」を作るための2つの要素

ビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)は、オンラインのみで経営の学士資格を取得できる、日本唯一の大学です。今回は、BBT大学主催で行われた、経営学部教授・斉藤徹氏の 『だから僕たちは、組織を変えていける やる気に満ちた「やさしい組織」のつくりかた』刊行記念講演の模様をお届けします。社員のエンゲージメントが高い「やさしい組織」をつくるために、一人ひとりできることは何か。今まで斉藤氏の30年近い起業家経験から得られたエッセンスが1冊にまとめられています。本記事では、やさしい組織を作るために必要な「心理的安全性」と「使命感」について語られました。

経営学で一番注目されているキーワード「心理的安全性」

斉藤徹氏(以下、斉藤):ここから第2部になります。やる気に満ちた「やさしい組織」の作り方のお話です。本ではこの「関係・思考・行動」とお話をするんですが、今日は一番難しい「関係の質」にフォーカスをします。安全な対話で、関係の質を変える。それも「関係の質」の中でも最も重要な1つのテーマにフォーカスをしてお話をします。

それは、ビジネスの世界でバズワードになっている「心理的安全性」です。これを世界に広めたのはGoogleです。プロジェクト・アリストテレスという4年間の生産性改革プロジェクトで、彼らが「すごいチームにはどういう共通点があるのか」ということで、さまざまな人を巻き込んで、すごいお金をかけて調べたわけです。

その結果わかったのが、心理的安全性でした。彼らは5つの提唱をしたんですが、その中で最も重要なものが心理的安全性だったんです。言葉はちょっと難しいんですけれども、一言で言うと「ざっくばらんな雰囲気」です。自然体の自分をさらけ出せるような環境のことです。なんでも言えちゃう、みたいな環境ですね。

心理的安全性は今、経営学で一番注目されるキーワードの1つです。Googleより前に提唱したエドモンドソンという女性教授がいるんですが、その人の論文の引用が年々増えています。非常に多くの研究が進んでいて、チームの業績向上とかプロセス改善とか意思決定の質とか学習の促進とか、さまざまなものに良い影響を与えることがわかってきています。

「心理的安全性が低い場」にある4つの不安

斉藤:「心理的安全が低い場」はどういうことかというと、不安が出ちゃうんです。その不安はどこから出るかというと、対人関係のリスクなんです。対人関係のリスクが健全な仕事を阻害してしまう環境のことを「心理的安全性の低い場」と言います。

エドモンドソンは、不安は4つあると言っています。みなさんの職場はどうですか。「こんな単純なこともわからないの?」と言われちゃいそうな、「無知への不安」とか。「こんな簡単なこともできないの?」と言われちゃいそうな、「無能への不安」とか。

もしくはちょっと毛色が違うんですけども、「自分だけ悪目立ちして、仲間はずれになりたくないな」(という「邪魔への不安」)とか。「すごくうまくいってる人間関係なのに、自分だけここで反対できないよな」という「否定への不安」とか。

こういう不安が職場では渦巻いてます。常に評価されてる意識も強いので、なかなか職場でありのままの自分をさらけ出すべきじゃないと思われているんです。

例えばこういうことです。なかなか気難しい上司が、本でも読んで「心理的安全性」という言葉を仕入れてきたんでしょう。部下に「うちの課の中の心理的安全性、どうなってる?」とポンと言う。そうすると部下は「いや、いい感じだと思いますよ」って言うんだけれども、実際には言葉の意味がわからない。

「前に聞いたかもしれない。でもそんなこと質問したら『聞いてないのか』って言われちゃいそう」とか、無知や無能への不安がすごく渦巻くんですね。こういうケースでは上司のサイドに問題がありますけれども、実は上司だけじゃないんです。

部下が空気を読みすぎてしまうという問題もある

斉藤:例えば優しい上司が言葉を優しくして「うちの課ってみんな本音で話せてるかな?」って言った時に、部下が「そう思います」って言うんだけれども、実は同僚がいろいろ陰で愚痴を言っていたり。問題があると本人も思っているんだけど、ちょっと言いにくいよなぁ、とか。

これは邪魔とか否定への不安から、部下が空気を読み過ぎちゃうケースです。上司のほうが確かに影響力が大きいのでフォーカスされるんだけれども、部下にもけっこう問題があるんです。

どういう場がいいのかというと、「うちの課って、みんな本音で話せてるかな?」と言ったら「課題もあると思いますよ」と。「いいところもあるけど課題もあると思う」「もっと良くしたいので、これをしてみませんか」というのが、理想のチームです。お互いに本音を話せて、より良くしようと共創できる関係です。

ちょっと図式を変えてみると、こんな感じです。最初に見たような場は、「持論を戦わせる場」です。ガンガン自分の意見を通したい感じの場は、もちろん心理的安全性が低いです。

同じぐらい問題があるのが、「空気を読み合う場」です。価値を作るよりも人間関係を大切にして、空気をお互いに読み合ってしまう。仲良しクラブみたいなものも、パッと見た感じすごく仲良くていい感じで、みんなが笑顔なんだけれども、実は空気を読み合ってるということも往々にしてありますね。

乾きすぎても湿りすぎてもダメ。本当に良い関係は、「本音で共創する場」のこと。いい塩梅が必要になってくるんです。いろんな人がいろんなことを言う、それによって価値が生まれるんだという価値観を持っていて、みんなが価値を生み出したいと思う。そういう関係です。

心理的安全性だけではなく「使命感」も大切になる

斉藤:だから実は心理的安全性だけじゃなくて、使命感も大切なわけです。使命感がなくて心理的安全性が高いのは、コンフォートゾーンですね。満足している社員が、なんでやる気のある社員より生産性が低いかというと、このコンフォートゾーンにいる人たちの生産性が低いからなんです。

本当に良い場、最初にお話した3倍のパフォーマンスを出す場は、このラーニングゾーンです。心理的安全性が高くて、かつ社員一人ひとりがやる気に満ちている組織。つまり「やる気に満ちてやさしい組織」です。

でも僕もそうですけど、チームにもご機嫌な時と不機嫌な時があるんです。チームにも集団的知性がある。つまりチームにも、人間のような「知性的な心」があるんです。みなさんのチームはどうですか? ずっとご機嫌な状態が持続していますか? なかなか難しいですよね。

心理的に安全かつ使命感を持つような状態は、例えば「こういうふうな言葉づかいをしたらいい」とか「こういうようなミーティングの進め方をすればいい」のような表面的なテクニックでは継続しないんです。例えばバッと悪いことが起きたり、非常にパフォーマンスが落ちてしまったり、なんらか外的要因によって結果が下がったり、そういう時でも心理的安全性を高く保つためには、本質的なアプローチが必要になるんです。

組織を問い直す、6つの質問

斉藤:僕が5年前から一緒にやっているZ世代の「チームdot」とか、500人ぐらいの卒業生がいる私塾の「hintゼミ」があるんですが、それは今お話ししたような「学習する特別な土壌」を持っているんですね。いろいろ失敗しながらここまできて、両方とも本当にすばらしい土壌になったんですけれども。入ってみると本当に特別な土壌なので、「なんでこういう場ができるんですか」ってよく聞かれるんです。

それは5年間いろいろ試行錯誤してきた実績と、あとhintゼミでは3ヶ月に1度、新しく70名ぐらいの方が入って数百社と対話をしているんですね。そこで心理的安全性を高めるためのいろいろなお話をしています。

そのノウハウを集約した「心理的安全性を持続的に高めるメソッド」をようやくできたので、今日はそれをお伝えしたいと思います。

さて、そのノウハウをお話しする前にみなさんに質問をさせてください。今から6個言いますので、そのうち「どれが自分に当たるかな」と考えてもらえますか。

まず、みなさんの職場では「本音やプライベートを隠すほうがいいと考えている人の方が多い」でしょうか。2つ目に、みなさんの職場では「ビジネスライクな判断とか人付き合いが推奨されている」でしょうか。3番目に、「職場では会話が少なくて、お互いに何を考えてるかよくわからない」という状態でしょうか。

4番目に、「人間関係が重視されて異論を言いにくく、関係はいいんだけれどもなかなか変化も起きにくい」。5番目に、「議論はすごく進むんだけど場がヒートアップしてしまって、先手必勝でマウントの取り合いのようになってしまう」。6番目は「扱いが難しい人がいて、その人が入っちゃうと場が盛り上がらずにあきらめムードになってしまう」。

どうでしょうか。みなさんの組織はどれが当てはまりますか? ぜひチャットに「うちは1と2と3だなぁ」とか「3と4かな」と書いていただけるとうれしいなと思います。

白崎雄吾氏(以下、白崎):徹さん、ありがとうございます。みなさん、いかがでしょうか。けっこうバラけていますね。「全部」って方がいらっしゃいますけど(笑)。

大学院生が経験してきた「やさしい組織」

斉藤:(笑)。ではここで西岡さんとザッキーに。

白崎:そうですね、西岡さんとザッキーにも聞いてみましょうか。ちなみにこのお二人はどなたでしょうと思われると思うんですが。西岡津世志さんはのちほどご紹介しますが、BBT大学が公式のYouTubeチャンネルを作ってまして、そこでモデレータを務めていただいてます。

また柴崎さんもそうなんですが、徹さんの「幸せ視点のイノベーション」の授業を履修した学生さんでもあります。そういった意味で非常に関係性もありまして、今日お越しいただきました。また西岡さんは、お世話になってる方もいらっしゃるかもしれませんが「夢を語れ」というラーメンチェーンのファウンダーでもいらっしゃいます。西岡さんの組織はどうでしょう?

西岡津世志氏(以下、西岡):もしかしたら僕はマウントを取っているのかなって思ったんですけど(笑)。でも基本的に僕は代表を降りてから議論に入らないようにしているので、どれかを選ぶのは難しいですね。

斉藤:今はすごくいい感じなんですね。ちなみに西岡さんは以前、とあるラーメン屋さんでいろいろ修行されていたじゃないですか。その時は?

西岡:僕の師匠は基本的に「楽しければいい」的なところがある人だったので。営業中とかひたすらお客さんをいじって僕らを笑わすような、「ちゃんと仕事してんのかな」っていう(笑)。でもラーメンがおいしいから結果を出していました。小さかったので組織と言うのかわからないですけど、そういう意味ではいいところが詰まっていて、勉強させてもらってたことが多かったです。

斉藤:いい組織にいらっしゃったんですね。

西岡:「富士丸」というラーメン屋さんで、今さらに伸びているお店なんですけど。なので今はグループとしても、みんな元気にやっています。

斉藤:さすがですね。ザッキーにも聞いてみましょうか。

教わる側が感じた「言いやすい環境作り」

白崎:柴崎さんは高校を卒業してすぐBBT大学に入学して、この間の4月に大学を卒業して、今はうちの大学院の学生さんです。BBT大学在学中にデリハートという会社を立ち上げられて、すばらしい取り組みをしています。みなさんぜひ柴崎さんの活動にもご注目いただきたいなと思います。莉菜さん、いかがですか?

柴崎莉菜氏(以下、柴崎):はい、ありがとうございます。私のデリハートはパティシエさんとお客さまをおつなぎしているサービスです。パティシエさんとやり取りをしているのですが、「パティシエさんごとに関係性が違うな」としみじみと感じていました。

人によってはやはり「お客さまに喜んでもらいたい」という同じ共通の目的があるからこそ、それに向けてのやり取りがヒートアップしていくパティシエさんもいるんですけど。中には「技術はあの方のほうが上だから、あの方の意見のほうがいいかもしれない」とけっこう控えめに言う方もいて。パティシエさんごとに私との関係性も違うなって思って聞いてました。

斉藤:なるほど。ちなみに例えばアルバイトとか、ザッキーの会社以外の組織で働いたことはあるの?

柴崎:私、バイトはしたことがなくて。高校生の時から自分で事業をしたいと少しずつやってたので。ただ1件、飲食店を何店舗もやりたいと思っていた時期は、バイトではなく修行というかたちで、2ヶ月ほど牛丼屋さんに入っていたことはありました。

斉藤:なるほどね。その牛丼屋さんはどう?

柴崎:牛丼屋さんには「店舗展開したいです」というお願いをしに行ったので、私は全部教えてもらいたいという立場で、「吸収できることは全部吸収したい」という勢いあふれる感じでした。その方たちのほうが上だったけど、自分から見たらけっこう言いやすい環境にはあったので、そういう環境を作ってくださっていたんだなと思いますね。

斉藤:ちょっと、ザッキーと西岡さんは別の次元の人ですね(笑)。

白崎:そうですね、ちょっと聞く人を間違えたかもしれないですね(笑)。

本音で語り合うために、「自分にとって都合の悪いことを言おう」

白崎:徹さん、それこそ僕も研修で担当することもあるんですけど。大手・ベンチャーさまざまありますけど、やはりこの1~6の部分に課題を持たれてる企業さまの相談が圧倒的に多いです。今日参加いただいている方も、そこに対する課題感をいろいろお持ちですね。

関係性の質を高めたらいいことは頭ではわかっているし、そうするために「ストロークを増やす」とか「あいさつをちゃんとやっていこう」とか、みなさんいろんなことをやられていると思うんですけど、なかなかどうしてもうまくいかない。本音をさらけ出すのが重要なんだけど、「本音をさらけ出すってどうことなのか」とみなさん日々苦悩していらっしゃるんじゃないかなと思っています。

ちなみに1個だけ、「本音で語り合うとはどういうことなのか」について、僕がもう少しブレイクダウンして「こんな考え方をしてみたらどうだ」とお伝えしていることがあります。

「自分にとって都合の悪いことを言おう」。そうすると行動に移しやすい、言動に移しやすい。1つの考え方ですけどね。自分にとって都合が悪いけど、そういったことを本音で言える組織って素敵なんじゃないかなと思っています。

斉藤:すばらしいですよね。

白崎:はい、みなさんもそれだったら行動に移しやすいんじゃないかなって思って。いや、もちろん難しいんですけど。

斉藤:そうですね、自分にとって都合の悪いことは、素の自分の弱みをさらけ出すのに近いようなことですね。あともう1つは、人を傷つけちゃうかもしれない、人の意見の否定に聞こえちゃうかもしれないようなことを場に出すのも、同じぐらい難しいですね。

白崎:同感です。

斉藤:難しいことですが、こういうことが両方ともできないと、心理的安全性の高い場とは言えない。

白崎:そうですよね。

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事業成長に宗教 (パーパス) は必要か(全4記事)

社員が会社に熱狂する“宗教的組織”のつくり方 パーパスを組織に浸透させる3つの要素

【3行要約】
・多くの企業がパーパス経営を掲げるも、組織への浸透に課題を抱えており、単なる言葉の共有だけでは社員の行動変容につながりません。
・株式会社GOの松田健氏は社員を熱狂させる企業をつくる「パーパス・ディープニング」というフレームワークを開発しました。
・経営学者の入山章栄氏、株式会社Sworkersのはやまり氏と共に、社員が熱狂する企業は何が違うのかを語り合います。

前回の記事はこちら

パーパス経営に必要なプロセスとは

はやまり氏(以下、はやまり):例えば私が今から松田さんに、「このパーパス・ディープニングの指導を会社で受けたいです」と言ったら、具体的には何から始めるんですか?

松田健氏(以下、松田):(スライドを示して)まず、詳細の図がこうなっているんですね。何をやるかというと、まず左側。ヒアリングをめちゃくちゃやるんですよ。

はやまり:何を聞くんですか?

松田:先ほどインタビューをしたと言ったじゃないですか。もう本当に、産業医の方とか、ヒアリングのプロたちにやり方をめちゃくちゃ聞いたんですよ。

はやまり:あー! なるほど、なるほど。

松田:あとは僧侶の方とか、すごくおもしろい方にいろいろインタビューをした結果、彼らは対象相手の内省をめちゃくちゃ引き出すのと、対象相手に自分のことを客観視させているとわかったんですね。

はやまり:なるほど。

松田:なので、例えば、はやまりさんの会社のパーパスを作るとすると、はやまりさんに徹底的にインタビューをしていくということで、先ほどのものをベースに、僕がヒアリングのやり方をフォーマット化したんですね。

自分について語らせる「アイデンティティ・ワーク」

入山章栄氏(以下、入山):これはたまたまなんですけど、僕は『ハーバード・ビジネス・レビュー』で、『世界標準の経営理論』という連載を復活させたんですね。本も何年か前に出したんですけど。

(2025年)7月10日発売号で「アイデンティティの理論」というのをやっているんです。ぜひ読んでいただきたいんですけど、なんでかというと、アイデンティティは大事じゃないですか。まさに自分たちが何かわからないと熱狂しないので。

はやまり:まさにそうですね。

入山:実はそこで一番大事なのは、日本だとあまり知られていないんですけど、アイデンティティ・ワークなんですよ。簡単に言うと、自分のことを語るという作業です。

はやまり:え!? 意外に、めちゃくちゃ難しいですよね。

入山:そう、やらないじゃないですか。これは日本全体で(言えることですが)、ぜんぜんやらないんですよ。「自分は何をしたいのか?」「この組織で何が幸せか」「どうやって生きていきたいのか」とかって、そういう(ことを考える)時間はないでしょ?

はやまり:ないですね。

入山:でも、それが一番重要で、実はグローバルとか、海外のビジネススクールもけっこうやるんですよね。

「日本の会社にはwillがない」

はやまり:え、どういう自己紹介をするんですか? 私はこの会社で働いていて……。

入山:「はやまりさんは、何をして生きていきたい人ですか?」みたいなことですね。

はやまり:なるほど。挑戦する人を増やして、その方たちが、より世の中で活躍する姿が見たい。

入山:「見たい」と言っているんでしょ? だったら、はやまりさんはたぶんいろいろやっているから、けっこう言語化できるほうだと思うんですよ。だけど、他の会社はあまり(やりたいことを言語化する文化が)ない。リクルートぐらいなんですよ。「お前は何をやりたいの?」という文化があるから。

はやまり:あー、確かにそうですね。

入山:とにかく形式知化するためには、自分のことをひたすら語ることがすごく重要です。これ、ほとんどの企業はやっていないもんね。

松田:そうですね。この研究の間も「日本の会社にはwillがないよね」という議論を、先生とすごくしていて。やはり高度経済成長期に、会社の船頭に従って、自分のwillを消してやっていくことが効率的だったので、そういう人が多いんじゃないかという話をしていました。

“会社に合う人材を育てるべき”という誤解

入山:だから、自分の会社に都合のいい人材を育てようとするから。

はやまり:(笑)。なるほど。

入山:自分の意思とかは持たせないんですよ。

はやまり:まぁ、意思を持たれて反発されたら「ちょっと面倒だなぁ」みたいなのは、ありますよね。

入山:会社に合った人材に染め上げようとするから。そうすると、熱狂が生まれない。

はやまり:ちなみになんですけど、松田さんは入山先生に先ほどのような「あなたは何をしたい人なんですか?」という質問を投げかけられたら、どう答えるんですか? 

松田:そうですね。僕はクリエイティブをずっとやっているんですけど、クリエイティブって、今の日本では地位が低いと思っているんですよ。

日本はやはり、目に見えないものを信じるのが、他の国に比べて弱い気がしていて。僕らも前にスタートアップの経営者の方と「ブランディングをやりましょう!」と始めたら、「今はブランディングみたいな、お金のある企業がやるものをやるフェーズじゃないだろう」と、投資家の方に止められたことがあったんですよ。

はやまり:えー!?

松田:要は、事業の成長に直接関係のないものだと思われているんですよね。僕はクリエイティブによって、事業成長を加速させられると思っているので、それを世の中に証明したい、みたいなことがwillとしてあった。だから、こういうフレームワークを開発したところがあります。

パーパス・ディープニングにおける信仰化フェーズ

入山:(スライドを示して)マツケン先生、この、もう1個のフェーズのほうはいかがでしょう? 

松田:もう1個のフェーズはですね……。

入山:こっちは超重要なんですよ!

松田:そうなんですよ。

入山:こっちは、日本の会社はほとんどやっていないです。

はやまり:みなさん、ぜひスクショしてください。

松田:インタビューをしていっても「これこそが重要である」みたいなことをずっと言われていて、パーパスを組織に実装していくフェーズなんですよ。ここで、僕がどういう仮説を立てようかなと思った時に、先生から「相互作用儀礼連鎖理論」と、もう嚙みそうな名前の理論が……。

入山:世界の経営学には、Interaction Ritual theoryという儀式の理論があるんですよ。儀式って、大事じゃないですか。実は、儀式はちゃんと理論化されていて「まさにこれだよね」という話になったんだよね。

松田:そうなんですよね。

入山:宗教と一緒です。

熱狂の源泉となる「教典・儀式・象徴」

松田:そこの論文をめちゃくちゃ読み漁ってかたちにしたのが、まさにこれです。パーパスを組織に落としていくためには、教典と儀式と象徴の3つが大事である。教典というのは、いわゆるパーパスを頭で理解するためのものですね。例えばブランドムービーを作ったり、カルチャーデッキを作ったりするじゃないですか。

はやまり:それが教典に入るんですね。

松田:はい。それで、頭でパーパスを理解する。(次に)この儀式というのが特に大事で、体感するもの。例えば表彰とか。

はやまり:表彰ですか?

入山:だから宗教系の(イメージが)強い会社って、リクルートさんとかTOPGUNとか、すごく大きいイベントを国際フォーラムなどでやるんですよね。それでめちゃくちゃ盛り上がる。あとね、眼鏡のOWNDAYSですよ。OWNDAYSは完全に宗教ですよね。

はやまり:えー!? めちゃくちゃ気になります。

入山:イベントが超絶すごいですよ。

はやまり:行ったことあります?

入山:いや、画像で見ただけですけど、すごいですよ。

はやまり:どんなイベントをやられているんですか?

入山:いや、もうね。「アッハー!!」みたいな。

はやまり:(笑)。

入山:みんな泣くらしいですから。

はやまり:え!? それは何泣きですか?

入山:いや、感動泣き。

はやまり:やばい!!

松田:それで、儀式を体感して頭と体で理解して、初めてパーパスが自分のものに腹落ちする。それがロゴや、いろんな象徴的なものと結びついて組織の一体感が深まっていくのがこのフェーズなんです。

はやまり:なるほど! じゃあ結局、ロゴとか、毎日見るものが象徴として……。

松田:そうです、名刺とか。スタートアップとかでも、よくお揃いのTシャツを着たりするじゃないですか。

はやまり:あー! あれも象徴なんですね。

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