この日の午後の2時間はホームルームになっている。ちなみに一之瀬とは、今まで通りにもどった。あの日(第25話)の翌日。朝一に制服姿でオレの部屋を訪れ、謝罪された。一緒に朝食を食べてから登校した。
教室には大量のプリントを持った星之宮先生が入って来ると説明を始める。
星乃宮「まずは、9月から10月の初めまでは体育祭に向けて体育の授業が増えるよ!怪我には気をつけてね!時間割の変更と体育祭のプリントの配布が終わり次第始めるね」
そう言って各列の先頭の生徒にプリントを渡し始めた。
星之宮「みんなー全員手元にプリントは届いている?ではこれより体育祭の説明を始めるわよ。まずは――」
体育祭という言葉を聞いた途端、一部の生徒から悲鳴が上がった。柴田や安藤のように楽しみにしてそうな生徒もいるが、運動メインの行事となると毛嫌いする生徒も多い。モチベーションの維持が面倒だ。
しばらく説明が続き、いくつか疑問も出てきたころで説明が終わった。
星之宮「ここまでのところで質問はある?」
神崎が手を挙げて質問を始めた。
神崎「体育祭は特別試験ですか?」
星乃宮「違うわよ。ポイントは入るけど、どう考えるかは君たち次第かなー」
神崎「紙には2組と書かれていますが、どうやって分けるんですか?」
星乃宮「AクラスとDクラス対BクラスとCクラスだよ」
神崎「わかりました」
柴田「げっ、龍園たちと一緒かよ」
白波「怖いんだけど...」
網倉「元気を出しなよ」
安藤「チームワークはなくなったっと」
一之瀬「ちょっと待ってよ、みんな!」
柴田「なんだと、一之瀬」
一之瀬「龍園が協力しないって誰が決めたの?龍園くんはCクラスだけで戦うつもりでいたとしてもやりようはあると思うよ」
津辺「帆波ちゃんが言うなら」
神崎が質問していた内容は全て生徒会の方で把握はしていたが、思った以上に動揺があった。客観的に考えれば、Dクラスと一緒の方がマイナスになることを気がつかないとは。ただ1つ言えることは、紅白対抗で白組が勝つことはない。オレ1年がどうやっても赤組の上級生には堀北学と南雲雅がいるからだ。
体育祭
・ルール及び組分け
全学年を赤組と白組の2組に分けて行われる対戦方式の体育祭
内訳は赤組がA・Dクラス、白組がB・Cクラス
赤組対白組の結果が与える影響
・組対抗
負けたクラスは-100cp
・学年別順位
1位 +50cp
2位 変動なし
3位 -50cp
4位 -100cp
・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)
各個人競技で1位を取った生徒には5000PPの贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える
(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で2位を取った生徒には3000PPの贈与もしくは筆記試験で2点に相当する点数を与える
(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で3位を取った生徒には3000PPの贈与もしくは筆記試験で1点に相当する点数を与える
(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
学個人競技で最下位を取った生徒には−1000PP
(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験で−1点を受ける)
・反則事項について
各競技のルールを熟読の上遵守すること。違反した者は失格同様の扱いを受ける。
悪質な者については退場処分にする場合有り。それまでの獲得点数の剥奪も検討される。
・最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た生徒には10万PPを贈与。
・学年別最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒3名には各1万PPを贈与。
・種目の詳細
全員参加種目
1.100メートル走
2.ハードル競争
3.棒倒し(男子限定)
4.玉入れ(女子限定)
5.男女別綱引き
6.障害物競走
7.二人三脚
8.騎馬戦
9.200メートル走
推薦参加種目
10.借り物競争
11.四方綱引き
12.男女混合二人三脚
13.縦割りクラス対抗リレー
14.3学年合同1200メートルリレー
生徒会で事前に説明されていたからわかってはいたが、生徒会で内容は把握しているが、メンバー決めに時間を割きたい。無駄な時間をロスしないためにいくつか質問した。1日でやるには多すぎる。どうやら他の生徒も同じ感想らしい。
渡辺「多くないか、これ?てか、1日でできねぇだろ」
浜口「確かにそうですね。普通は3つとか4つですよね...1日でできるのか疑問です」
星乃宮「そこはちゃんと考えてるのよ。組体操やダンスはなくて、純粋に体力、運動神経を争うの」
運動が苦手な生徒の心中を代弁したが、抵抗むなしく簡単にあしらわれた。二宮なんかは既にぐったりしていた。
星乃宮「非常に大事なことで、参加表ってものがあるの!参加表には全種目の...あーもうめんどくさ。これに誰が何に参加するかを書くの。提出は体育祭1週間前から2日前の昼休み終了まで。綾小路くんがわかってると思うから、これは任せるよ」
教師がこんなのでいいのだろうか。よりによって一番大事なものだぞ、これは。あとで、説明する必要がありそうだな。星乃宮がオレの席まで来て参加表を置いた。
一之瀬「私からも1ついいですか。もし当日体調不良、または怪我などで参加できない場合はどうなりますか?騎馬戦やリレーはできなくなってしまうと思うんですが」
星之宮「全員参加の種目において欠員が出た場合は失格。騎馬戦なら騎馬が1つ少ないところからスタート。二人三脚ならパートナーが不在の生徒も失格という風になる。だからこそパートナーは健康かつ頑丈なものを選ぶが大事かな」
一之瀬「推薦参加種目の場合は違うということですか?」
星之宮「うん。欠員している生徒に代わって代理を立てることが出来る。しかし、このルールでは自由に生徒を変えることが可能になるためペナルティがある。選手1人の代理につき10万ポイントを払わないといけなくなる。これを高いとみるか安いとみるかは君たち次第ね。欠員がいるものの払えない場合は当然ながら失格ね」
一之瀬「わかりました」
救済措置はある。しかし10万ポイントはなかなか大きい、今は少しでも貯蓄しておきたいところではあるがいざという時はやむを得ないだろう。オレが生徒会に入ったときはその話は既に終わっていた。間に合っていたら代走のポイントを減額する案を出してもよかったんだけどな。
星之宮「この後全校生が体育館に集まって集会が行われるんだけど、そこで他クラス・他学年と話し合いをするから時間に遅れないように行動してね。って、一之瀬さん。生徒会に入ってるんだから、綾小路くんか一之瀬さんに説明してもらったほうが良かったわ。本番の1週間前までに指定された用紙に記入し、提出してね」
星乃宮が余計な一言をこぼすと、メンバー表をオレに渡し教室の後ろに歩いて行った。つまり、あとは自分たちで好きにしろということだろう。推薦種目の出場制限の有無をなどの質疑応答が一通り終わりいよいよメンバー決めが始まった。
柴田「どうやって決めんだよ」
上位をとれば、次の試験の点数稼ぎになるため、それを欲している柴田がストレートにいうとはやく決めろと言外に言ってきた。まあ、柴田は身体能力が高く学力もクラスの平均より上だからそれなりに出しても支障はないのだが。
綾小路「勝ちに行く編成でいく」
一之瀬「運動が苦手な生徒は完全に勝てる可能性がないってこと?」
綾小路「そういうことだ。おそらく借り物競争なら身体能力はそこまで関係ないからそこは身体能力では決めない。体育祭はポイントを稼ぐ絶好の機会になる」
二宮「私は運動が苦手だから、綾小路くんたちが推薦種目を引き受けてくれるのなら助かるかな」
二宮の肯定の意見でだいたいの方針は固まろうとしていたが、簡単には決まらなかった。
白波「それで大丈夫なの?干支の試験で負けたじゃん」
白波が反論した。だが、これは予想の範囲内だ。一之瀬を信仰するあまり、オレがリーダーをしてるのが気に食わないのだろう。別に今に始まったことではないから気にしていないが。
綾小路「お前に勝てる策があるのか?」
白波「帆波ちゃんが仕切れば勝てるよ」
その言葉に心底呆れるしかなかった。干支の試験は捨てたようなものだが、まだ焦る時期でもないし慌てる理由がない。それに対して、白波はかなり動揺していた。それに一之瀬頼みとは情けない。それにオレはいつも勝率100%を狙ってるわけでもない。
綾小路「オレに楯突く挙句、人任せとはな。無責任だと思わないのか?」
白波「綾小路くんは勝てなかったじゃん」
白波の批判にオレは周りを軽く見渡してみる。白波に便乗するような生徒はいなさそうだ。自分からクラスの不穏分子だと名乗ってどうするのだろうか。
姫野「くだらな。何かと思えば、文句ばかりでうるさいんだけど。綾小路に勝ってから批判すれば?クラス下位の成績の白波が言っても説得力ないし誰もついてくるわけないじゃん」
そんな声が一番後ろから聞こえた。姫野なりの思うところでもあったのだろうか。
一之瀬「そうだね。私は綾小路くんがリーダーでいいと思ってるから。推してくれるのは嬉しいけど、ごめんね千尋ちゃん」
一之瀬の返事に白波は絶望な表情をした。この場でそんな白波に構う生徒は網倉くらいだった。
ちょうど、チャイムが鳴りぞろぞろ教室から出て行き、体育館に向かった。
全校生徒の顔合わせが目的の集会は体育館で行われる。集まったのは総勢400人を超える生徒と教師。全員が集合していることを確認しその場に腰を下ろすように指示がある。
隣は1年Cクラス、その向こうに2年3年のB・Cクラスが並んでいる。
つまり白組の生徒たちだ。向かい側を見るとAクラス、Dの連合からなる赤組の生徒たち。その中でも、やはり堀北兄や南雲の存在感は別格だった。
そして前に数人の生徒が出てくる。その中には同じ生徒会の2年Bクラスの桐山もいた。
石倉「俺は3年Bクラスの石倉だ。今回白組の総指揮をとることになった。1年!体育祭は非常に重要なものになるということを肝に命じておけ。体育祭での経験は必ず活きるときが来る。特別試験ではないからといって手を抜くな。学校での生き残りを懸けた重要な戦いになる。俺たち白組は1つのチームとして勝ちにいく!その気持ちを強く持て!それだけは全員の共通認識としてもっておけ!」
先輩の鼓舞で白組の士気は上がる。
石倉「俺からは以上だ。それでは各クラスで競技の話し合いを行ってくれ」
視線を横に向けると意外なことに赤組は堀北兄が仕切るわけではないようだ。それに今回はAクラスと共闘ということで2年3年のDクラスはやる気満々という表情をしていた。
龍園「おい、綾小路」
龍園が取り巻きたちをつれてオレに話しかけてきた。
綾小路「何だ。話し合いに来たというわけではなさそうだな」
龍園「クク、よくわかってるじゃねえか。俺たちは善意で去ってやるぜ。そもそも俺が協力を申し出たところでお前たちは信じられないだろ。なら俺たちがここにいる理由はもうない。行くぞお前ら」
Cクラスの龍園は早々にこの場を離れていった。
赤組のほうに目を向けると、AクラスとDクラスは葛城と平田が握手を交わしている。だが、視線は自然と葛城と平田の奥に座ってる少女に向いた。Aクラスの坂柳だ。彼女は足が不自由で椅子に座っているが周囲とは異なる空気を醸し出しているため、誰も話しかけようとしない。坂柳もオレに気づき会釈をしてきた。夏休みに自己紹介をしただけだが頷き返した。
赤組の上級生のほうでも動きがあった。
南雲「堀北先輩、勝負しませんか?」
堀北兄をはじめ3年Aクラスのメンバーは結構呆れていた。
学「またか、いったい何をもって勝負とする?」
南雲「そうですね、最後の男女混合1200メートルリレーとかどうですか?俺たちに確実に勝てるメンバーを選抜しておいてくださいね」
学「俺たちは常に全力でやる。その勝負受けてもいいが。なぜいつも俺なんだ?」
南雲「それは俺より上なのは堀北先輩しかいないからですよ」
学「他にも身体能力に優れた生徒はいると思うが」
南雲「俺なら大丈夫っすよ。1年でも相手になりそうなのは綾小路だけですよ。それに先輩は今年が最後なので、綾小路を相手にするのは来年にします」
綾小路の名前に1年のAクラスやDクラスの身体能力の自信を持ってる生徒たちを
学「お前が綾小路をそう評価するのか知らないが、俺や綾小路ばかり見ていては足元救われるぞ」
南雲「大丈夫っすよ。そういう奴らは今まで、返り討ちにしてきたしこれからもしていくんで」
学「そうか」
放課後、柴田に遊びに誘われるが先約があったため断った。深く追及されて朝比奈先輩とご飯に行くと言うとクラスの女子にゴミを見る目で見られた。何故だろう。気にしたら負けだと思い、急いで教室を出た。
朝比奈「お待たせ~」
綾小路「待ってませんよ」
朝比奈「行こっか」
昇降口で合流して朝比奈先輩とケヤキモールに向かっていると、バッタリと会いたくない奴と目が合ってしまう。
学「綾小路か」
綾小路「ああ、昨日ぶりだな」
橘「またあなたは!あれほど言ってるじゃないですか!」
朝比奈先輩からすれば訳が分からないだろう。何故堀北生徒会長がまたオレに声をかけてくるのか。何故オレが生徒会の先輩であり、生徒会長にため口で話しているのか。3年と1年、さらに言うとオレが生徒会に入ってまだ1ヶ月。生徒会長が同じ生徒会とはいえ、下っ端に挨拶以外で気にかけてるほど生徒会長は暇ではない。
朝比奈「え?何であの堀北先輩が親し気に話しかけられてるの?生徒会に入って1ヶ月くらいしか経ってないよね?」
腕を引っ張って後ろを向き、耳元でそう尋ねてくる。
綾小路「1学期にちょっと絡まれたんだ。別に仲のいい先輩ってわけじゃありません」
朝比奈「それならなんでため口なの!?」
すると後ろからゴホンと咳払いが聞こえた。
主は橘だ。
学「今日は先客がいるようだな。用件はまた今度伝えることにしよう」
そう言って生徒会長は隣を通り過ぎようとする。
綾小路「別に構いませんよ」
そう声をかけると2人は足を止めてこっちに向き直した。
朝比奈先輩は勢いよくペコリとお辞儀をする。その挙動が少し慌てていて面白かった。オレとは正反対な態度だ。おそらく先輩との付き合い方としては正しいのだろう。
学「まさか2年Aクラスの朝比奈と一緒にいるとはな」
綾小路「どうだろうな。今日は誘われた」
朝比奈「気分ですよ、気分!」
そして、目線で合図をしてきた。一目見てそう確信したこの生徒会長も、今までの経験上、信用できるとすぐに感じたようだった。
綾小路「で、話とは?」
学「ああ、坂柳理事長が無人島試験では見事な立ち回りだったと言ってた」
綾小路「理事長が?そうか、確かに受け取った。ありがとうございますと伝えておいてもらえないか?」
頭の中で理解が追い付かなかった。何故、理事長が出てくる。面識もないのに、試験結果が良かっただけで称賛するだろうか。しかもBクラスは2位だったのにな。それに苗字が坂柳とは、まさかな...
学「あぁ、しっかり伝えておく。まさかあの方までお前に期待しているとは思わなかった。やはり生徒会に入って正解だな」
橘「会長!?」
朝比奈「すごい!」
緊張した空気から一転、先輩たち2人によってだいぶ緩和された。
綾小路「本当に仕方なくだ。来年がどうなっていようとも今年はあんたに馬車馬のように動いてもらう方がいいと判断した」
朝比奈「え、待ってよ?あ、ちょっと待って!失礼なことばかりすみませんでした。失礼します!」
朝比奈先輩に腕を引っ張られケヤキモールへ歩き出す。
朝比奈「理事長と会長と知り合いなんてすごいじゃん!そのうえ、雅も気にかけてるし」
南雲に気にかけられてることは聞きたくなかった。
綾小路「理事長と面識はありませんよ。南雲に目をつけられたのは事故としかいいようがないですね」
朝比奈「でも綾小路くんできないわけじゃないでしょ?」
オレの評価が勝手に上がっていくのは結構だが、無理難題だけは押し付けないでもらいたい。
そして、体育祭へ向けて多忙な日々が始まる。
朝比奈先輩やっぱり可愛い