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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」
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悪魔の写真家

『メフィ、一つ仕事を頼めるか?』


表向きは見張りと会話しながら静希はメフィに言葉を飛ばす


あまりこの手は使いたくはなかったが背に腹は代えられない、状況が状況なのだ


監視がついている以上静希達はあまり大きく動けない


この中で一番隠密行動に適している静希がマークされている以上隠れて内部に侵入することは事実上不可能


監視がなければ裏に回って鏡花に裏口を作ってもらうこともできたが、その策はすでに潰えている


だからこそこの手を使う


『あら、シズキが私に頼みごと?』


『あぁ、この建物の中にある召喚陣を撮影してきてほしい』


静希のトランプは自由自在にコントロールできる、メフィの入ったカードとデジカメの入ったカードを中に入れれば撮影は可能だ


遠隔で出してある程度時間が経ったら遠隔で回収すればいい


『ふぅん、で、ご褒美は何かしら?』


これだ、静希がこの手を使いたくなかった理由の最たるものがこのメフィの反応である


何度も言うようになるが静希とメフィの間に交わされた契約は対等契約


命令はなく、指示もできず、互いにお願いや頼みをすることしかない


そしてその行動には当然対価が求められる


だれだって何の得もなく行動はしたくない、そういうことだ


メフィの場合、何かお願いを聞く代わりにご褒美よこせとつまりはそういうことだ


『この場合、どれくらいの褒美をあげりゃあいいんだ?』


『そうね、一晩抱き枕になってもらおうかしら』


どんなご褒美だと突っ込みたいのは山々だが、今は我慢するしかない


ケチくさい悪魔だと思うのだが悪魔とはそういうものだ


契約により力を貸せばそれ相応の対価が必要になる


メフィの場合それが魂や金銭などではなく静希とのスキンシップや食事などの内容に終始する


もっとも静希にしてみればその方がダメージが大きいのだが


『わかったよ、一晩だけだ、それでいいんだな?』


『よっしゃ、いいわよ、その仕事引き受けましょう』


少なくとも一晩の安眠を失う程度で任務が楽になるのであればそれに越したことはない


悪魔と強制的にではあるが契約してからこういうことがあるのは半ば覚悟していた


『カメラの使い方はわかるな?内部で解放したらカメラで何枚か写真を撮ってくれ、三分後に回収するからカードはちゃんと持っておけよ?』


『了解、フラッシュつけといた方がいいわよね』


『中は暗いだろうからな、んじゃ頼むぞ』


見張りの死角からスペードのQとカメラの入ったトランプを建物内部に射出し、階段下の部分で解放する


無駄話もそろそろ限界だ、切り上げて別の場所に行くことにしよう


「それじゃ石動、次の場所に案内してくれよ」


「あぁ、じゃあ南西部の召喚所に行こうか」


全員で見張りにありがとうございましたと礼をしながらその場を離れる


どれくらいのものが撮れるかなどは不明だが、どんな内容でも構わない


「ちょっと静希、いいわけ?中に行かなくて」


状況を大体把握している鏡花が眉をひそめているが、静希も何もしていなかったわけではない


「あぁ、ちゃんと写真家に依頼したよ」


「写真家?」


「あぁ、気まぐれだけど多分何とかなると思う」


できるなら召喚陣の全貌が写されているのが好ましいが、撮影者が悪魔だ


契約に従ってしっかり仕事をしてくれることを願おう


少し歩くと先ほど見張りが立っていたのと同じような建物が見えてくる


どうやら南西の召喚所についたようだ


見張りはおらず、誰でも自由に入ることができるようだ


「ここまで露骨に対応が違うとさすがに引くわね」


「そういうなよ、ばればれでも隠したいんだろ?」


鏡花どころか陽太から見ても何かを隠したがっているのは見え見えらしく、半分呆れさえ入っていた


それは静希も同じことだ、事情をほとんど知らない石動でさえこの異様さに気付いているだろう


静希はそのことにわずかにではあるが違和感を覚えた


建物の中に入り、地下に降りるとそこは村長の家の地下のような円状の空間が広がっている


足元には複雑な文様と形を描く光る陣があった


召喚陣、エルフたちにそう呼ばれる足元に描かれたそれは、地下であり暗闇である空間を淡い緑色の光で照らしていた


今まで見たことのない不思議な光景に静希達は息をのむ


神聖というものを感じたことなど、静希達は一度たりともなかった


神々しさなどは絵画などの芸術的なものでしか表現できないと思っていた


だが現に目の前に一種の神々しさを放つものが存在する


輝きというにはあまりに儚く、今にも消えそうでありながらも力強い、なんとも矛盾を抱えたその光に静希達は目を奪われていた


「これ、写真とかとっていいのか?」


「構わないと思うぞ、私も記念に写真を撮ってもらったことがある」


写真というキーワードに静希は南東の召喚所に置いたままにしているメフィのことを思い出す


そろそろ三分ほど経過する


静希は遠隔でトランプの近くにいるメフィと、彼女に持たせたデジカメをそれぞれ回収し手元に引き寄せる


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