「枕営業はみんなやってる」芸能事務所トップの性暴力 20代女優の後悔…もう一度立ち上がるために
2015年のはじめ、当時20代だった中山サクラさん (仮名)は東京のある芸能事務所に合格した。芸能界は子どもの頃からの目標。地方の高校を卒業後、進学せずにアルバイトをし、東京へ行く資金を貯めた。 オーディションを受け、憧れの世界にやっとたどり着いた。そう思った。 しかし、充実した日々は半年もたたずに崩れる。社長から性暴力の被害に遭ったためだ。 「なかったことにするしかない」。警察に届けず、周囲にも相談せずに口をつぐみ、後になって苦しんだ。今は後悔している。 「あの時、誰かに打ち明ければよかった」 芸能界では、性暴力に関するニュースが後を絶たない。取材を受けたのは、自分と同じ境遇に置かれた人に伝えたいからだ。「今も悩んでいる人がいると思う。誰かに打ち明けていいんだよ」(共同通信=宮本寛)
「枕営業なんて普通」 社長の態度に抱いた違和感
サクラさんが芸能界を目指したきっかけは、ミステリー映画の子役の演技に魅了されたこと。幼い頃から両親との折り合いが悪かったこともあり「私も、あの子役のように『違う人生』を演じてみたかった」。 東京の芸能事務所に合格し、20 代で東京での生活が始まったが、その年の春頃、社長の様子がおかしいと感じた。何がおかしいのかを説明するのは難しい。でも、ほかの俳優に接する態度とは、何かが違う。 事務所が開いたお花見でのこと。同僚の俳優らと話していると、スタッフに呼ばれ、こう言われた。「社長が『サクラと話したやつは仕事から外せ』と言っている」 意味が分からなかった。 サクラさんは、社長が「やり手」だと思っていた。演技指導のワークショップ代も支払ってくれていたし、仕事も次々に取ってきてくれる。感謝はしていたものの、その後も「普通ではない」と感じることが続いた。 プライベートで友人とディズニーランドへ遊びに行っただけで怒られた。「なんでそんなところへ行くんだ。俺と一緒にいた方がプロデューサーたちに会えるだろ」 干渉はエスカレート。しまいには「携帯見せて」とも。 気付けば事務所内で「社長のお気に入り」とうわさされていた。社長は普段からこんなことも公言していた。 「枕(営業)なんて普通だから。みんなやっている」「仕事のバーターでみんな俺と寝る」 「芸能界ってそういうところなのかな」とも思ったが、その都度思い直した。 「やはり普通ではない」