「枕営業はみんなやってる」芸能事務所トップの性暴力 20代女優の後悔…もう一度立ち上がるために
脱げと迫った社長 襲いかかる「肉の塊」
そして夏。社長からこんなことを頼まれた。 「アルバイトで家の掃除をして」 「そんなことまで?」と思ったが、世話になっている手前断れない。「その日は脱毛サロンに行くので、その帰りなら行けます」と応じてしまった。 社長宅に到着し、尋ねた。 「どこを掃除すればいいですか?」 返ってきたのは、身の毛もよだつ言葉。 「脱毛したのなら見せろ」 「無理です」と即答したが、言い返された。 「有名な映画監督が『脱いで』と言えば、俳優はみんな目の前で脱ぐぞ」 頭が混乱した。俳優魂が試されているのかとも思った。恐怖と混乱で絶句して固まった。 その後のことは「巨大な肉の塊が襲ってきた」というイメージしか覚えていない。どうやって家に帰ったのかも、その日の夜に眠ることができたのかどうかも思い出せない。 直後から、自宅に長時間いられなくなった。部屋にいると、天井や壁が迫ってくるような幻覚に襲われる。外に出て近くの公園を歩き続けた。歩いていても涙が止まらなかった。
被害届出せぬまま退所決意 加害者の一言に動揺
相談は誰にもできなかった。今まで「身一つで挑んできた」という思いがあるからだ。頭の中でさまざまな考えが巡った。 「どうしよう。実家に帰るしかないのかな」 「そもそも俳優に向いていなかったのかもしれない」 警察に被害届を出すことも頭をよぎったが、できなかった。口から何か言葉を発することさえ怖くなっていた。 うまく整理できないまま、最終的にこう考えた。「なかったことにしよう」。今思えば、心が壊れないよう、自分を守るためだったのだと思う。 性被害から少したって、社長にはメールで「辞めます」とだけ伝えた。 しかし、すぐに事務所に呼び出された。契約上は、途中で辞める場合には違約金を支払わなくてはならず、さらに退社後は一定期間、同じ芸名での芸能活動が禁止になる。 そうした意思確認の場だったのかもしれないが、加害者である社長との一対一は絶対に無理だと思った。スタッフの同席を要求し、その場で「辞めます」と宣言した。 社長は黙って聞いていたが、スタッフが所用で席を離れたとたん、こう言った。 「あのこと?」 突然の一言に動揺し、精神がおかしくなりそうになっているサクラさんを前に、おもねるように言った。 「今、時代劇のいい役の話が来ているんだよ」 サクラさんは無言でその場を立ち去った。