「枕営業はみんなやってる」芸能事務所トップの性暴力 20代女優の後悔…もう一度立ち上がるために
偶然巡ってきた出演チャンス 誓った再起
実家に戻ったが、親にも打ち明けられない。でもそんな目に遭っても、芸能の世界から離れられない。ずっと憧れていたからだ。ある演劇場でアルバイトを始めた。 しばらくたった頃、取材に訪れていたテレビ局のプロデューサーから声をかけられた。 「何か表現の仕事はしないんですか?東京でやったらいいですよ」 食品関係のアルバイトをしていた際は、別のテレビ局からロケ番組に誘われ、出演した。その時、こう思った。 「やっぱり楽しい」 再び上京したが、どこかの事務所に所属するのは不安。フリーで俳優活動を再開した。 同時に激しい後悔に襲われた。被害直後になぜ、周囲の人に相談し、助けを求めなかったのか。なぜきっちり制裁を与えなかったのか。 心の中で誓った。 「二度とあんな目に遭ってたまるか。強くならなくちゃ」 フリーだから、仕事を得るために直接、「男性」たちと渡り合わなければならない。あの社長のように「仕事のために寝ろ」というような言動をする人もいる。その都度、「NO」と強く言い返すしかない。
「ハラスメントはしません」
仕事はなかなかもらえない。数年間はグラビアやバラエティーの仕事が多かった。あるグラビア撮影会では、ファンの男性たちから過激なポーズを要求された。不快感を覚え、応じなかった。 以前の自分とは変わってしまったと思う。映画で性被害のシーンを見ると気持ち悪くなる。もし、自分にそんな役が回ってきてもできそうにない。プライベートでも、男性の下心に気付くと急に苦手意識を持ってしまう。人付き合いに支障が出ている。 「私はハンディを抱えている。でもそういう弱さがあると認めることも、強さなのかもしれない」 そんな風に思えるようになった。 芸能界では性被害を巡る問題が後を絶たない。ただ、声を上げる人たちがいることで、表沙汰になるケースが目立つようになった。加害者に対する世間の目も、確実に厳しくなってきていると感じる。 オーディションを受けにいった時、事前にこんな説明をされることも増えた。 「ハラスメントや威圧的なことはしません」 審査の担当者を少人数にし、圧迫感を減らしているとも聞いた。