リキッド・デスの過激なPR活動は他にもある。ガーディアン紙は、スーパーボウルで「魔女」を雇い、観客席から片方のチームに呪いをかけさせたエピソードを紹介。同紙が引用した専門家は「成功の要因は全て巧妙なマーケティングにある」と分析し、こうしたゲリラマーケティングが娯楽を重視するZ世代にヒットしていると述べている。
ブランドが愛される秘訣は「自分が楽しむこと」
リキッド・デスの成功の秘訣は、若者に響くこうしたジョークにある。企業と消費者の関係性を捨て、あたかも内輪ネタを共有する親しい仲間同士のような、対等かつ親密なイメージを打ち出した。
同社のクリエイティブVPアンディ・ピアソン氏は、フード・インスティテュート誌に対し、「もし私がリキッド・デスで何か学んだとしたら、それは『自分が楽しんでいれば、人々も一緒に楽しんでくれる』ということだ」と語る。
同誌によれば、アメリカ人の16%がリキッド・デスを飲んだことがあり、そのうちZ世代とミレニアル世代が約80%を占めるという。
こうしてリキッド・デスは、CNBCが指摘するように、ブランドの「クールな」名前とデザインを好む若者から、子供にエナジードリンクよりも健康的な飲み物を飲ませたい母親まで、幅広いファンを獲得することに成功したのだ。
健康が退屈である必要はない…枠を超えた発想で勝利した
リキッド・デスは、ミネラルウォーターの枠を超えて展開しつつある。
ブルームバーグによると、同社は昨年アイスティーを発売し、Amazonでボトル入りアイスティー売上1位を獲得した。フレーバーウォーターでは「キラー・コーラ」「グレーブ・フルーツ(グレープでなく墓を意味するグレーブ)」といった商品を展開している。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同社が来年1月、エナジードリンク市場に参入すると報じた。カフェイン量は100ミリグラムに抑えており、最近の新興ブランドの約半分だ。
セサリオ氏は同紙に対し、カフェイン競争に傾倒するエナジードリンク業界を尻目に、「正気の」カフェイン量に保ったと語っている。水をあえて不健康にマーケティングした後は、エナジードリンクを健康的にプロデュースするという逆の行為で意表を突く。
パンクバンドが隠れて飲んでいた水から生まれたアイデアは、ミネラルウォーターが健康的でなければならないという既存の価値観を覆し、新たな市場を創造した。リキッド・デスの挑戦は、健康志向の商品が陥りがちな「退屈さ」への挑戦でもある。
日本でもスーパーの棚を見渡せば、健康的すぎて食べる前から味の悪さを想起してしまう商品や、いかにも年配層をターゲットにしており若者が敬遠してしまう商品は多い。あえて「ワル」を狙うイメージ戦略の可能性を、私たちは見逃しているのかもしれない。