元ネットフリックス広告マンがフェスで見つけた商機
ブランドの仕掛け人は、元ネットフリックスの広告ディレクター、マイク・セサリオ氏だ。
刈り込んだ髪と整えたあごひげに、カジュアルなファッションが似合う40代。いかにも人好きのする彼のアイデアの原点は、2009年の音楽フェスティバルでの意外な光景にあった。
米CNBCのインタビューに応じたセサリオ氏は、当時をこう振り返る。デンバーに住んでいた彼は、友人のバンドのステージを見ようと音楽フェスティバルに駆けつけた。
モンスターエナジーがツアーのスポンサーだったため、ミュージシャンたちはモンスターの缶を持ってステージ上に現れたが、実はこっそりと中身をエナジードリンクではなく水に入れ替え、演奏中の水分補給に利用していたという。
「なぜマジメな水しかないのか?」
スポンサー事情のほか、バンドのイメージ戦略も影響していた可能性がある。同音楽フェスはパンクロックバンドが集まっており、アーティストとしては健康的なミネラルウォーターを客前で飲みづらい。
セサリオ氏はCNBCに対し、「なぜ健康的な商品に関して、もっと面白くてクールで、そして型破りなブランディングがないんだろうと考え始めた」と語る。「最も面白くて記憶に残る型破りなブランディングやマーケティングはこれまで、すべて(エナジードリンクなどの)ジャンクフード向けだった」
そして2014年、砂糖入りエナジードリンクの健康リスクについての公共広告キャンペーンに携わっていた彼は、「エナジードリンクをからかうスタント(パロディ)として、缶入りのウォーターというものを出してみる」というアイデアを思いついた。クライアントには却下されたが、セサリオ氏は自由時間にこのコンセプトを練り続けた。
同氏はCNBCに対し、当時からヒットの確信があったと語る。「もしも知り合いが店でこれを見かけたら、間違いなく手に取って『これは何だ?』と思うはずだ」「そして、誰かが手に取った時点で、ほぼ勝利したも同然なんだ」
ファンの心を掴む「ルール破り」のブランド戦略
なぜ消費者は「死の水」という不吉な名前の商品に魅力を感じるのか。その答えは、既存の常識を覆すブランドのPR姿勢にある。
マーケティング会社オレンジPRのミーガン・ドリアン氏は、ガーディアン紙に対し、「この厳しい時代において、消費者はルールを破るブランドを熱烈に求めています」と指摘する。同氏によれば、ファンは「次は何が来るのか?」という要素を楽しんでおり、リキッド・デスのゲリラマーケティングは特にZ世代に響いているという。
環境問題への取り組みでさえ、同社は型破りな遊び心を忘れない。米アトランティック誌によると、リキッド・デスは「death to plastic(プラスチックに死を)」をモットーに、リサイクルが容易なアルミニウム缶を使用しているとPRしている。
だが、教科書的に環境保護を訴えることはなく、CMにはポルノスターを起用した。随所に性的なメッセージとのダブルミーニングを仕込んだユニークな動画で視聴者の話題をさらった。