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エクセルダイン(※9/30一部修正)

9/30一部修正
上沢駅のエレベーターを改めて視察した結果、「開業当時からあったものではない」可能性が浮上しました。今後文献調査を実施し、内容が断定でき次第お知らせします。

どうも、原稿(エレベーターノススメTheラストエピソード)の進捗がズルズルなめいはちです。
今日は原稿の箸休めを兼ねて、エレベーターの機種に関してマニア間で蔓延っている「誤った情報」に物申す記事を書いてみました。

第一回はフジテック社製「エクセルダイン」についての誤った情報をほぼ30年エレベーターを追い続けているめいはちが独自調査を基に真実を突き止めていきたいと思います。

まず、エクセルダインとはどんなエレベーター?

フジテック株式会社が1984年 (昭和 59年)11月に開発・発売開始したVVVFインバータ制御の交流エレベーターで、2000年頃まで製造販売されていました。
【補足説明】VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)とは、可変電圧可変周波数を意味する言葉で、インバータ装置などの電力変換装置において、出力交流電力の周波数と電圧を任意に制御する技術

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こういうエレベーター
(ボタンのフォントや開閉ボタンの表記などが
何種類かありますが年代との因果関係はありません)

2020年に保守部品の供給が終了され、近年急激に減少

元々フジテックのエレベーターはリニューアル(改修工事)が早い段階で行われる傾向があるためこのエクセルダインも2010年代前後から徐々に数を減らしており、2020年にはエレベーターを構成する各種器具類や保守部品のメーカー供給が終了。「壊れたらアウト」の状態となってしまい近年更に個体数を減らしています。
(※それでも一定数現存しているのは撤去機の部品を流用だの本当は隠し持っているだの様々な説があり、「壊れたらアウト」は理論値みたいなもんです。)

というわけで、そんなエクセルダインについてネット上のエレベーターマニアが「間違った」解釈をしている項目について切り込んでいきたいと思います。

前期型・後期型の解釈が間違っている!

エレベーターにはこのエクセルダインによらず、製造年の長さなどで仕様が異なるものが数多く存在し、このエクセルダインにも存在します。(厳密には前期後期存在するか怪しいのですが、その理由は後述。)

ですが!

ネットでエレベーターマニアの上げた動画や解説を見ていると明らかに間違った説明のものがとてつもなく多いのです。

ロゴマークの色が違いらしいけど・・・

エレベーターマニアの間では、操作盤上の「FUJITEC COMPUTER CONTROL」ロゴがシルバー地に赤いものが前期型ブラウン地に薄黄色のものが後期型と言われているようですが…

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これが前期型と呼ばれるもの
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こちらは後期型と呼ばれるもの
確かに書いてある内容こそ一緒だが別物

これ、ガセネタ(ウソ)です。

実は今掲載した2枚の写真、実は

  • 前期型と紹介したもの:大阪ベイタワー(1993年3月開業)

  • 後期型と紹介したもの:西友岡崎店(1992年10月開店/大店法プレートは1989年)

開業時期としては約半年差とは言え、逆転しています。

では、なぜロゴマークの色が違うのか?

結論から言うと、ロゴマークの色が違うのは製造時期の違いではありません。では、何が違うのかというと…

操作盤の材質の違いにより、ロゴマークが2種類存在するのです。

操作盤の中央部に樹脂が採用されているものは「シルバー地に赤いロゴ」

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一方、操作盤すべてがステンレス製のものは「ブラウン地に薄黄色のもの」

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開閉ボタンや定員のところが英語表記になっていますが、
これはこのエレベーターだけの特別仕様
です。

前期型・後期型の見分け方は別に存在する(?)

「(?)」と書いたのは、実際のところ機能部や意匠に大きな差は存在しないので、一緒のものとして見ても差し支えないということです。(実際、フジテックの見解としてはロープ式1984~2000年全てEXDNと判別してるそうです)
あくまで「年代がはっきりわかる違い」として認識して頂ければと思います。
そんな「本当の後期型(?)エクセルダイン」はこちら。

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一見、大きな違いはありませんが…
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なんと!ロゴマークが違います!
ついでに「COMPUTER CONTROL」表記も無くなりました。

1994年~95年に社長が交代した際にロゴが変更されたと言われていますが、現在その根拠となる資料が出てこない為詳細は不明確です…。
しかしこのロゴマーク変更は1991年に登場し、同じく2000年まで生産されたエクセルダインの後継機「エリシオ」でも起きていますので確証性は高いです。

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旧ロゴエリシオ
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新ロゴエリシオ
(先述した後期型エクセルダインと同じ施設にあったもの)

ロゴだけで見たらこんなやつも…

たまたま見かけただけなので何もかもが謎に満ちたエクセルダインを一度だけお目にかかったことがあります。

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一見普通のエクセルダインですが…
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なんと!ロゴマークが金色!!

明確な情報はありませんが、2000年に開業したアピタタウン稲沢B館に同様のロゴマークが採用されていることから、2000年の製造終了寸前に設置されたものではないかと思われます。

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アピタタウン稲沢B館のエレベーターにあるFUJITECロゴ。
2000年頃から数年間に設置された一部エレベーターには
この様な重圧感のあるロゴマークが付けられたようです。

という事で、エクセルダインの前期型・後期型というものは(厳密には)存在せず全て同じ。だが、ロゴマークが新・旧異なる点で明確な年代差を判別できるため、そこで前期型・後期型の区別が可能。というお話でした。

ちょっと待った!「エクセルダイン」じゃないエクセルダイン?が存在した(※そうじゃない可能性が出てきた為、現在調査中)

なんだよエクセルダインじゃないエクセルダインって。それは神戸市営地下鉄西神山手線上沢駅にあるエレベーターを調査している時に発覚しました。

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一見「エクセルダイン」に見えますが…

実はこのエレベーター、開業当時からエレベーターが設置されている駅なのですが不自然なことが発覚したのです。

  • 上沢駅の開業が1983年6月17日

  • エクセルダインの発売開始は1984年11月

つまり、エクセルダインが発売される前から既に存在するエレベーターという事が判明したのです。
エクセルダインが登場する前の機種は「ロイヤルスーパーダイン」という機種でした。

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デザインが全然違うし、インバーター制御でもない。

つまり、上沢駅のエレベーターはエクセルダインの意匠を纏ったロイヤルスーパーダインという可能性があるのです。
しかし、そのエレベーター実機に増設と思わしき部分が発見された為、現在近隣駅を含めた調査の準備を進めております。今後記事と異なる事実が判明した場合は速やかに修正していきます。

では、なぜそんなこと言えるのか。エクセルダインとの明確な違いが存在したんです…!

ここが違う!その1

エクセルダインは操作盤下にある保守用スイッチを格納するサービスキャビネットと呼ばれる部分に「マーク+解説」でエレベーターの簡単な説明が表記されています。その内容は

  • エレベータの中は禁煙です

  • 乗り過ぎをブザーで知らせます

  • 幼児には保護者が付添ってください

この3つが大きめのイラストと共に表記されていますが…

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操作盤の種類に関係なく同じ表記。

しかし、上沢駅のエレベーターは・・・

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ご覧の通り、表記が全然違います。

ここが違う!その2

エクセルダインの操作盤中央部、用途・定員・積載表記のすぐ下~行先ボタンまでは、上から順番に

  • インターホン、スピーカーユニット(音声案内がある場合ここから再生)

  • 非常ボタン(大型)

  • ひらくボタン(大型・漢字や英語表記もアリ)

  • しまるボタン(大型・漢字や英語表記もアリ)

という順番です。

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多少の表記違いはありますが、その順番や位置は全て同じ。

しかし、上沢駅のエレベーターは違います・・・

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  • 非常ボタン(大きくない)

  • インターホンユニット(スピーカーは天井、音声案内も天井から流れる。)

  • 開閉ボタン(大きくない、横並び)

似てるようで全然違います。

このことから「エクセルダインの意匠をしたロイヤルスーパーダイン」という事が言えるのですが、実際のところエクセルダイン発売当時の油圧式エレベーターはインバーター制御ではなかった、つまりロイヤルスーパーダインと同様のバルブ制御(油量で調節する古い制御)だったため、機能面での違いは大きく存在しないのです(恐らく)。
今度新機種(エクセルダイン)が出るから、そのボタンや器具類をお試し採用してみましょうか~という事だったのではないかと推測できますがその真相は定かではありません。たぶんそういうことなんだと思います。
駅開業後の増設機である可能性が浮上した為、そうではない可能性が高まって参りました。お詫びして訂正致します。

最後に:「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」という機種名も誤用していることに注意が必要です。

「ロイヤルスーパーダイン インペリアル」という機種名は「フジテック60年の歴史 夢は壮大 想いは想いは熱く」という社史に登場するエレベーターマニアの多くが知る機種名なのですが、これの誤った呼び方する方がめちゃくちゃ多いんです…
結論から言うと正しくは「ロイヤルスーパーダイン」です。

https://www.fujitec.co.jp/common/fjhp/doc/top/img/corporate/%E5%A4%A2%E3%81%AF%E5%A3%AE%E5%A4%A7%20%E6%83%B3%E3%81%84%E3%81%AF%E7%86%B1%E3%81%8F.pdf

「第 2 章 独創技術への挑戦」の92ページ~94ページ冒頭にかけてその問題箇所が存在します。

1978年(昭和53年)12月、マイコン制御エレベータ「ロイヤルスーパーダイン」が誕生する。当社では、世界に先駆けて標準型エレベータにマイクロプロセッサを搭載することに成功したのである。

フジテック60年の歴史 夢は壮大 想いは熱く 92ページ 第2章「独創技術への挑戦」より

「ロイヤルスーパーダイン」は分速120mまで商品化されたが、1981年(昭和56年)12月には分速150mの「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」も実用化された。交流電源を使って分速150mという速さのマイコン制御エレベータを完成させたのは、当社が世界初だった。

フジテック60年の歴史 夢は壮大 想いは熱く 93~94ページ 第2章「独創技術への挑戦」より

この様に、「ロイヤルスーパーダイン」に続けて「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」という別の機種が登場します。
しかし、この部分以降に「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」という呼び名は登場しません。
そして、読み進めていくと興味深い箇所があります。

マイコン制御エレベータ「ロイヤルスーパーダイン」の開発後も、当社では更なる技術革新を目指した。半導体技術の急速な普及は、産業界全体に大きな影響を及ぼしており、それをエレベータにも応用していったのである。その大きな成果が、1984年(昭和59年)11月に開発したVVVFインバータ制御の交流エレベータ「エクセルダイン」であった。これは、従来の「ロイヤルスーパーダイン」を基本に技術面の大幅な向上を図ったもので、電力変換部にインバーターを導入し、複数のマイコンで分散制御する新方式だった。

フジテック60年の歴史 夢は壮大 想いは熱く 115ページ 第2章「独創技術への挑戦」より

つまり、ロイヤルスーパーダインの後継はエクセルダインであるということがこの文章から証明されるわけです。

では、「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」とは何なのか。もう一度93ページの記述を見てみましょう。

「ロイヤルスーパーダイン」は分速120mまで商品化されたが、
1981年(昭和56年)12月には分速150mの
「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」も実用化された。

フジテック60年の歴史 夢は壮大 想いは熱く 93ページ 第2章「独創技術への挑戦」より抜粋

要するに、「分速150mのロイヤルスーパーダイン」が「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」という特別な名前を冠していたということなんです。
しかし実際の資料には「ロイヤルスーパーダイン」の画像が使用されているため、それを見たエレベーターマニアが誤解し、誤った呼び名が広まったのではないかと思われます。
フジテックですら実際の画像をもってこれない位には「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」というものは個体数極めて少ない幻のエレベーターと言っても過言ではないのでしょうかね。

結論:ロイヤルスーパーダイン・インペリアルは…

存在はするが、分速150mに限った幻のエレベーターということです。
誤った情報が流れた理由は「文章をきちんと理解せずに発言した人達」と「実際のロイヤルスーパーダイン・インペリアルではなくロイヤルスーパーダインの画像を掲載したフジテック」の両方がアカンと言う訳です。

めいはちは今後もこんなエレベーターに関するあれこれを独自研究で解明していきたいと思います。(完)

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