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DNA鑑定信頼揺らぐ、佐賀県警に特別監察へ 警察不祥事は10年で最悪

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佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)の元職員=懲戒免職=によるDNA型鑑定の不正を巡り、警察庁は原因を究明するため8日から県警へ特別監察に入る。不正は捜査の要となる重要な鑑定に対する不信感を生じさせた。警察の懲戒処分は過去10年で最悪の水準で推移しており、信頼回復には組織全体で規律を引き締める必要がある。

特別監察は重大な不祥事が起きるなど警察の規律保持のために必要と判断された場合に実施する。今回は警察庁の監察部門に加え、科学警察研究所のDNA型鑑定の専門家ら約10人の態勢を組んだ。不正が長期に及んだ経緯や再発防止策を検証する。

警察庁によると、特別監察は記録が残る2011年以降で5例目という。厳しい姿勢で臨む背景には、捜査の生命線であるDNA型鑑定の信頼性が揺らぎかねないという危機感がある。

DNA鑑定は人の血液や汗などから検出されるDNAの塩基配列を分析し、容疑者や被害者を特定する。1989年に実用化され、個人を識別する確率は当初「千人に1人」程度だった。技術の進展で現在は「565京人に1人」に向上した。

警察庁によると、2024年の実施件数は約25万4千件となり、05年(約2万5千件)からの20年間で10倍に増えた。事件現場から検出されたDNA型はデータベースに蓄積されており、未解決事件の突破口にもなりえる。最も重要な客観証拠の一つだ。

それだけに佐賀県警の不正による波紋は大きい。県警が公表した調査結果によると、元職員による不正は17〜24年に約130件確認された。鑑定書類の日付の改ざんが多いが、実施していない鑑定をしたように虚偽報告した重大な不正も9件あった。

県警は元職員を懲戒免職としたうえ、虚偽報告などについては虚偽有印公文書作成・同行使や証拠隠滅などの疑いで書類送検した。

未実施の9件を県警が再鑑定したところ、DNA型は検出されなかった。県警や地検は「捜査や公判に影響はなかった」と説明する。しかし「身内の調査は信用できない」という声は強く、県議会は2日、独立した第三者による調査を求める決議を出した。

警察庁の楠芳伸長官は2日の記者会見で「DNA型鑑定は客観証拠に基づく適正な捜査の重要な柱の一つで、信頼を確保することが極めて重要。今回の不正は国民の信頼を損なうもので重く受け止めている」と述べた。

警察庁は特別監察の結果を踏まえ、各都道府県警に対する定期的な監察でもDNA型鑑定の適正な実施を項目に加えることを検討する。警察幹部は「特別監察を通じて問題点を洗い出し、警察全体で徹底した再発防止策を講じる必要がある」と話す。

警察の懲戒処分、25年上半期は154人

警察庁によると、2025年1〜6月に全国で懲戒処分を受けた警察官や警察職員は、前年同期比40人増の154人と過去10年で最多だった。異性関係の問題に加え、窃盗や詐欺などといった犯罪への関与も目立った。

捜査を巡る問題も相次ぐ。25年6月には、機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)に対する警視庁公安部の捜査を違法と認定した東京高裁判決が確定した。警視庁が8月にまとめた報告書では「捜査指揮の不存在」が現場の暴走につながったと結論づけた。

神奈川県警は9月、川崎市で発生したストーカー殺人事件を巡り、現場の署員らが危険性を過小評価し不適切な対応に終始したなどとする検証結果を公表した。

一連の不祥事を受けて警察庁の楠長官は9月、都道府県警の本部長を集めた臨時会議で「組織の規律自体が目に見えないうちに、少しずつ緩んできているのではないか」との懸念も示した。

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