Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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──突撃──


時代を超え、善を以て悪を払う その5

外から差し込む月明かりだけが唯一の光源となって廃れた洋館の廊下を照らす。

照らされた廊下。そんな中をカイナ農場学園の三人は駆け抜けていく。

突撃してから数分後。遠くから聞こえる銃声と怒号が嫌でも耳に入ってくる。

それは自分達と同じようにこの洋館に突入し、主犯格とその取り巻きに灸を据えるべく一人で相手取る事を選んだアーサーが戦闘を開始した合図でもあると理解せざるを得なかった。

後ろ髪を引かれる様な感覚が通路を駆け抜けていく度にその強さを増し、思わずその脚を止めそうになってしまう。

それでも彼女達は無理やりでも止まりそうになる脚を動かす。

大事な友人が待っているから。ここの何処かに囚われていて、自分達が助けに来てくれるのを待っているのだ。

 

「居たぞ!カイナのガキ共だ!」

 

「大人に喧嘩売るとどうなるか教えてやれッ!!」

 

通路を駆け抜ける三人の前を誘拐犯グループの一味が塞ぎ、一人が吐いた台詞にクロカの表情が険しくなる。

 

(先に仕掛けたのあなた達でしょうに…!!)

 

思わず銃のグリップを握る手に力が籠る。

吹き出しそうになる怒りに一瞬囚われそうになるも、持ち前の冷静さが彼女を落ち着かせる。

この場では撃つこともままならないと判断し、近くの壁に退避して銃撃をやり過ごそうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でしたら、私達を怒らせたらどうなるか教えましょうか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…!?」

 

まるで底冷えするような冷たい声が場を支配した。

一体誰がそんな声を出したのか。そんなの探さずとも分かっている。

 

「ハ、ハヅキ生徒会長…?」

 

「あーあ…」

 

クロカがハヅキの名を口にし、ハヅキの後ろで立っていたセツラは誘拐犯グループの一味に同情の声を漏らした。

これから何が起きるのか、容易に想像出来たからだ。

 

「セツラ、クロカ。ここは私が受け持ちます」

 

「…やり過ぎるなよ」

 

「それは──」

 

無理です。

その言葉と同時にオーバーファイアが火を吹いた。

静まり返ったその場を突き破る様に響いた銃声。それはやがて一種の暴力へと昇華し、恐怖へと転じた。

圧倒的な連射力に加えて、.338ノルママグナム弾という強力な弾丸を吐き出す軽機関銃による掃射。

木製の壁なら容易く貫通する弾丸は、壁の向こう側に身を隠していた敵ごと無力化。

木端微塵に吹き飛び、僅か数秒程度で壁がただの木片へと成り果てる。

銃声と地に落ちた薬莢の音が、まるで獲物を探しているかのように響く。

叫び声や苦痛に悶える声すらも上げることもなく次々と仲間が倒れていく光景を前に敵の内の一人の表情には焦燥感が生まれ始めていた。

 

「しょ、正面は無理だ!回り込め!裏に回るんだ!」

 

「りょ、了解!」

 

耳を塞いでいたくなるような銃声。

そんな音に交えて、一人が味方に対してハヅキの裏を取る様に指示。

前と後ろの二つの方向から挟み込むようにして銃撃すれば幾らヘイロー持ちの生徒と言えど、無力化する事が出来る。

幸いにも人数だけなら自分達が勝っている。

火力でどうにかなると思い上がった子供を教育してやろうじゃないか。

頬に冷や汗を流しながらも薄気味悪い笑みを浮かべて、味方が後方から攻撃してくれるのを待ちながらハヅキからの銃撃から何とか耐え忍ぶ誘拐犯たち。

だが、そんな笑みは直ぐに絶望の表情へと染まった。

 

「このガキ…がっ…!?」

 

接近して取り押さえようとしたのだろう。

ハヅキの背後を取ったオートマタが襲い掛かるが、ハヅキはまるでそれを最初から見抜いていたかのように、そして後ろにも目が付いているのではないかと思えてしまうくらいの正確さでオーバーファイアの銃床でオートマタの顔面を殴った。

強烈な一撃にオートマタの顔面が砕け、銃はその手から離れ同時にその体は後ろへとよろめくとハヅキが動いた。

見向きもせず左手を伸ばしオートマタを掴むとそのまま前へと引き寄せ、片腕でその体を羽交い締め。

そしてハヅキはまるで即席の盾と言わんばかりにオートマタを自身を守る為の盾代わりにして、銃撃を繰り出し始めた。

 

「なっ…!?」

 

襲って来た相手をあろう事か盾の代わりとして利用する。

生徒会長たる存在がそんな非人道的行為を行うと言うのか。目の当たりにした光景を前にして誘拐犯らは思わず、そんな感情を抱いた。

その感情を読み取ったのか、或いは偶然なのか。それが定かではないものの、銃撃を繰り返すハヅキは崩れることの無い笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「言いませんでしたか?…私たちを怒らせるとどうなるかって」

 

「っ…」

 

「つまりこう言う事なんですよ。片や銃撃に晒され、片や即席の盾代わりになるだけ……さぁ、続けましょうか」

 

変わらぬその表情は穏やかな笑みが浮かんでいる。だが、目は据わっていた。

ただただ酷く、あの声と同じくらいに底冷えする程にその瞳の奥は冷たかった。

笑顔に隠されたソレは攻撃の証、ひいては研ぎ澄まされた牙を剥いた瞬間の証。

味方が次々と倒れていく中で、誘拐犯の一人は今になって自らの行いを悔いるのであった。

 

(ああ…神よ…)

 

最も、その声は神には届かない。

 

 

 

一方でセツラとクロカは立ち塞がる敵を薙ぎ倒しつつ、とある場所へと向かっていた。

 

「おい、こっちであっているのか!?」

 

「はい!この先に廊下を抜けた先にある大広間に地下に繋がる落とし戸があるみたいです!そこに攫った者達を閉じ込めていると言っていました!」

 

「信用していいんだな!?」

 

「私の銃を顔面に突きつけられて、嘘や余計な事を言えばその顔面に弾を叩きつけられる状況じゃ素直に吐いてくれますよ!」

 

大声で叫びながら駆けていく二人が目指しているのは、大広間にある落とし戸。

その落とし戸の先は地下となっており、誘拐犯グループによって攫われた生徒たちがそこに監禁されているというのだ。

その情報を薙ぎ倒した敵の一人を説得して仕入れた(脅して吐かせた)二人は今そこへと駆け抜けていた。

幸いと言うべきか、アーサーとハヅキが孤軍奮闘しているというのもあって駆け抜ける二人の前に敵一人いない。

 

「タキトゥスさん、会長…」

 

この洋館にはまだ半分ぐらい敵が残っている。

ハヅキにはヘイローがある。多少程度はどうにかなるが、アーサーは違う。

一発でも当たれば致命傷。当たり所が悪かったら死亡にも繋がるのだ。

 

「着いたぞ、大広間だ。…それであれが落とし戸だな」

 

「鎖に南京錠を使っているみたいですが…随分とガサツというか、どうしてこんな中途半端な状態に?」

 

大広間の中央部。

そこには確かに落とし戸があった。クロカが言ったように鎖と南京錠を使っている辺り、何かをこの落とし戸に閉じ込めておきたいのが分かる。

だが不可解なのが、南京錠のロックは外れており、鎖は緩まった状態で放置されている事にあった。

自分達が思っている以上に普段から使用していないのだろうか。

そう思われた時、セツラの表情が変わった。

 

「…まさか!?」

 

浮かび上がってしまった最悪な展開。

そうであってくれるなと胸の内で叫びながら、南京錠と鎖を蹴り飛ばし落とし戸の持ち手に手を掛けるセツラ。

勢いよく落とし戸を開き、下へと続く階段へと我先へと駆け出して行った。

らしくない行動に唖然としながらも、ただ事ではないと感じたのかクロカも急いで彼女の跡を追いかける。

 

「セツラ、一体どうしたんですか!?」

 

直ぐにセツラに追いついたクロカは叫ぶように問いかける。

しかしセツラはその先を見つめたまま、微動だにしない。

そしてゆっくりと口を開いた。険しい表情を浮かべながら。

 

「…クロカ、これを見ろ」

 

「え?……ッ!?」

 

ずっと奥へと続く通路と無数の牢屋。

頼りない照明だけが此処を照らす唯一の光源。それが返ってこの場所を不気味な空間へと変貌させていた。

誘拐犯グループはここで攫った生徒を閉じ込めていた。

ならばここに自分達が探している友人が居てもおかしくない筈だろう。

 

「どうして…」

 

だが──

 

「どうして…誰もいないのですか……?」

 

そこには誰一人とていなかった。

怯える声も、その息遣いも…何一つ聞こえなかった。

只々広がるのは全ての牢の扉が開けられたまま放置され、もぬけの殻と化した空間だった。

 

 

ハヅキによる単独での大暴れ、落とし戸の先にあったもぬけの殻と化した牢獄を見つけたクロカとセツラ。

そんな三人の状況を知る由も無く、アーサーは立ち塞がる敵との激しい銃撃戦を繰り広げていた。

これほどまでに激しい銃撃戦はピンカートンの連中とやり合った以来かも知れない。

そう思えてしまう程に、銃撃戦はよりその激しさを増す一方だった。

 

「何処だ、クソ猫!」

 

壁から体を出し、怒声と共にアーサーは腰だめで構えた銀のキャトルマンリボルバーを連射する。

六発、全弾発射。それら全てが相手に食らいついて、意識を奪っていく。

これで何人目か。数えるのも億劫になる程の敵を片付けてきた。

次第に敵の抵抗は激しくなり、前に進むのも一苦労と言った所。

だが、こうして敵の抵抗が激しいと言うことは探している奴の近くまで来ているに違いない。

 

「他はどうでも良い!奴に用がある!」

 

ハンマーをハーフコックへ、そしてラッチを展開。

シリンダーを回転させながらエジェクターロッドを動かして空薬莢を排莢、そして次弾装填。

幾度も、本当に幾度もと言える程に繰り返された銃弾の再装填。

こういう状況下でも、その手は決して震える事無く、正確かつ確実に薬室へと弾丸を装填していく。

とは言え、リロードにはやや時間が掛かる。

攻撃できない時間を減らしたいのであれば、セミオート式ピストルやM1899ピストルか、或いは自分が生きていた時代にはなく、そしてキヴォトスに普及している最新式の銃が良いかもしれない。

あっちの方が早々に装填を終えて、今頃攻撃に打って出ている事だろう。

だがそんなものは此処には無い。もしあったとしても、弾の規格が合うかどうかすら分からないのだが。

 

(流石に弾が怪しいか…!)

 

もうすぐそこまで来たと言うのに、残弾数が心許なくなってきた。

一人一人、丁寧に掃除してきたのだ。当然弾丸も減りもする。

そんな時だった。単身での突撃してから二丁のキャトルマンリボルバーとボルト式ライフルのみで戦ったアーサーだったが、ふと肩に下げていた銃の存在に気付いた。

銀のキャトルマンリボルバーをホルスターに収め、肩に下げたそれ…ポンプ式ショットガンを手に取った。

木製ストックに長い銃身、下部に備えられた筒状のチューブマガジン。

閉所や近距離の敵に対しては、絶大な威力を誇る銃である。

生前のアーサーも良く使った銃であり、閉所での戦闘や馬に乗って逃走する際は追っ手を退ける為に良く使っていた。

とは言えキヴォトスに流れ着いた際や山羊の店主の店で買い物した際には持っていなかった銃を何故持っているのかと言うと、単純に偶然にも見つけて、そのまま借用しただけの話である。

 

「出てこい、クソ猫!カウボーイ野郎が来てやったぞ!!」

 

身体を壁から出して、フォアエンドを動かして初弾を装填したと同時に引き金を引くアーサー。

キャトルマンリボルバーよりも大口径な銃から放たれた一撃が敵をいとも容易く吹き飛ばすと、敵の前線が崩壊し始めた。

それを好機と見たアーサーは身を隠していた壁から飛び出し、じわじわと距離を詰めながらショットガンを連射。

銃声が鳴る度に、敵がまた一人、また一人と散弾によって吹き飛ばされていき、フォアエンドを動かす度に飛び出した薬莢がまるで倒した敵を数えるかのように地面に転げ落ちていく中で、ふと静けさがそっと訪れた。

嘘の様な静けさ。足音も、怒声も、銃声も訪れない静けさが場を支配する。

 

「…打ち止めか」

 

自身が思っていた以上に早く敵の排除を片付けたと判断したアーサーは上へと続く階段を上る。

階段を歩く度に古びた床の軋む音が響く。

そのまま階段を上り切りると、奥へと続く廊下の先にある扉があるのが見えた。

その向こう側から聞き覚えのある声がアーサーの耳に届いた。

 

「な、何で銃声が聞こえねぇんだ…?おい、どうなったんだ!?誰でも良い!答えろ!!」

 

見つけた。間違いなく奴がいる。

迷う事もなく扉の前まで歩み寄ると、アーサーは静かに銀のキャトルマンリボルバーと黒のキャトルマンリボルバーをホルスターから抜いた。

そっと撃鉄を起こし、突入するタイミングを計る。

 

「…ふぅ」

 

軽く息を吐く。再び静けさが訪れる。

そんな時間がどれだけ流れただろうか。三十秒?一分?それとも十分?

長い様で短い様な一時が流れた時、アーサーは動いた。

 

「!」

 

意を決したかのように、振り上げた足で扉を蹴飛ばして室内で突撃する。

乗り込んだ先に居たのは、あの猫の獣人。

その獣人へと向かって、二丁のキャトルマンリボルバーへと突きつけた時、表情が険しくなりながらもアーサーは口を開いた。

 

「また会ったな、猫野郎」

 

銃を突きつけた先。

その先には探していた猫の獣人と頭に銃を突き付けられ、人質に取られ天使の様な羽を生やした少女の姿がそこにあった。




作者「ようやっと体調が良くなったで」

身体「喉の痛みと鼻炎のプレゼントやで」

作者「ふあっ!?」

身体「後も熱もプレゼントや」

作者「ふあっ!?!?」



更新が遅くなって申し訳ありません。
前に体調を崩し、やっと良くなったと思いきやお盆期間中での仕事に加えて、無理が祟ったのか再びかつ盛大に体調をぶっ壊しておりました。

さぁて…次回で終わり…で行きたいなぁ。
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