Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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アウトロー(便利屋68)&アウトロー(アーサー・モーガン)


時代を超え、善を以て悪を払う その3

 

「あははっ、そぉーれ!」

 

連なる銃声に交えて、ムツキの無邪気な笑い声と共に背負ったバックから取り出され投擲される無数の爆弾。

それらは闇夜に紛れ、敵の集団の足元に飛来。

銃撃に夢中になって足元に転がって来たソレに気付かぬ敵たちが居る中で、一人が血相を変えて叫んだ。

 

「にげ──」

 

だが既に時遅し。その場一帯が爆ぜた。

瞬く間に爆音と黒煙が周囲へと広がり、灼熱が空へと向かって煌々とそのきらめきを放った。

止む事を知らない銃声。霧散しつつある黒煙の中を銃弾が駆け抜けていく中、一際大きい影が黒煙の中で姿を現す。

そしてその中からショットガンを手にした少女が黒煙を突き破る様に飛び出した。

 

「消えてください…!消えてください…!消えてください…!」

 

「何だ、こいつ…!?撃て、撃ちまくれッ!!」

 

襲い掛かる銃弾の嵐。

しかし彼女は止まらない。被弾しているにも関わらずそのまま敵陣のど真ん中へと突撃しショットガンを連射。

近距離で放たれる散弾が敵に向かってまた一人、また一人と喰らつき、そしてまた一人、また一人と再起不能に追いやっていく。

拠点近くに乗り込まれた挙句、驚異的な耐久力とショットガンを乱射して味方を再起不能へと追いやっていくハルカを前に敵はその照準を前線で大暴れを繰り広げるハルカへと向けようとしていた。

それは洋館のバルコニーで銃撃を繰り返していた者達も同様だったらしく後方からすぐ下にいる彼女へと向ける。

だが──

 

「うちの社員はやらせないわよ」

 

そんな事、彼女…陸八魔アルが許す訳がない。

愛銃『ワインレッド・アドマイアー』を片手で構え、スコープを覗く事も無く発砲。

放たれた弾丸は闇夜を駆け抜け、バルコニーにいた敵の頭を直撃、そのまま再起不能へと追いやった。

地面に崩れる仲間の姿、後方からの狙撃、前線で暴れる存在。

どちらを優先すべきかと僅かながらに誘拐犯グループの攻撃の手が緩まってしまう。

そしてそれを見逃す程、彼女は決して甘くはない。

 

「ふふっ…良い的ね」

 

この程度の敵なら狙いを定めるまでもない。

不敵な笑みを浮かべる少女と共に赤で彩られ、金色の装飾を施した狙撃銃は夜空の下で火を吹いた。

 

「…!」

 

デモンズロアと名付けられた拳銃はサイレンサーを付けていなければ、正しく悪魔の咆哮とも言うべき轟音を鳴り響かせてしまう。

とは言えサイレンサーを付けていたとしてもその咆哮は一発撃つ度に敵を怯ませ再起不能へと追いやるのは、ある意味で"悪魔"らしいとも言えるだろう。

その銃を愛用するカヨコは社長たるアルの指示の元、謎多きカウボーイ…アーサー・モーガン(タキトゥス・キルゴア)の傍について援護射撃を行いつつ、周囲の状況を事細かく分析していた。

 

「思った以上に数が少ない。幾らかは中に引っ込んで籠城を選んだ感じか」

 

今でも激しい銃撃戦をしているにも関わらず、敵の行動にある程度の予測を立てるカヨコ。

その台詞を聞いていたアーサーは撃ち尽くした銀のキャトルマンリボルバーの弾倉に弾丸を装填しながら尋ねる。

 

「仕込みの際に調べたのか?」

 

「まぁね」

 

「…大したもんだ」

 

常識も、武器も、戦い方も全てが違う。

これがキヴォトスという世界であり、今自分が居るこの世界はキヴォトスである。

今更ながらと言うべきか、これまで何度も感じてきた感覚と言うべきか。

六発装填し終えた銀のキャトルマンリボルバーをホルスターに収め、今自分がどこにいるのかを再認識しながら肩にかけたボルト式ライフルを手に取り、槓桿を操作して初弾を装填。

構えた同時にアーサーはバルコニーに現れた敵増援部隊に対して発砲開始。

引き金が引かれ、ライフルの銃口から弾丸が飛び出す。

交差する弾丸の嵐の中を駆け抜け、その一発はバルコニーにいた敵の頭に直撃。

直撃を受けた敵は何処からの攻撃か認識する事も無く後ろへ倒れ、地面に崩れた。

 

「なっ!?…くそ!アイツだ!あのカウボーイ野郎を狙え!」

 

敵陣でショットガンを乱射し大暴れするハルカほどではないにしろ、比較的前線に近い場所からの攻撃。

撃たれた位置からある程度の予測を立てた敵の一人が周囲の仲間に向かって、アーサーを狙う様に指示を飛ばす。

その指示に従う様に敵が持つ銃の銃口が身を隠すアーサーとカヨコへと向けられようとしていた。

敵の攻撃が一気にこちらへと向いた。味方から射撃があれど、集中砲火を浴びて動けなくなるのは不味い。

 

「!…タキトゥスさん、下がっ──」

 

そう判断したカヨコはアーサーに退避を促そうとする。

そこに攻撃が自身に向けられようとしているにも関わらずライフルのボルトを動かして、排莢と次弾装填を行いすぐさま攻撃へと打って出るアーサーの姿が彼女の目に映った。

敵は一人じゃない…複数いる。

カヨコからの目からしてもアーサーの今の行動は無謀にしか見えなかった。

引っ張ってでも下がらなくては。

そう思い手を伸ばそうとした時、カヨコの視界に驚くような光景が映った。

 

「…っ」

 

響き渡る銃声。ボルトが動く度に飛び出す薬莢。

流れる様に次弾装填、そして発砲。放たれた弾丸が次の獲物に襲い掛かり、意識を刈り取る。

これで二人目。そのまま三人目の頭へと目掛けて発砲。

三度目となる射撃と放たれた弾丸。その一発は狙った敵を襲い掛かり、地に沈める。

 

(残り二発)

 

あの時代で、愛用している二丁のキャトルマンリボルバーと同じ位に愛用してきたライフル。

それがどうしてか、このキヴォトスにあった。

それ故か、アーサーには手にしているライフルの残弾数が手に取る様に感じ取れた。

ボルトの後退から前進。排莢から次弾装填を済ませると、ほんの僅かにアーサーは意識を集中させた。

標的は二つ。狙うは頭。研ぎ澄まされた一瞬、銃声はゆっくりと鳴り、銃弾はゆっくりと飛び交う。

手にしたライフルを腰だめで構えたと同時に、二発の銃声が連続して木霊した。

 

「がっ…」

 

「ぐぁ…!」

 

僅かな誤差あれど、端から見れば同時とも言える様なタイミングで二人の敵が戦闘不能に陥った。

これでバルコニーにいた敵は排除された。敵が少くなった事は普通に喜ぶことなのだろうが、アーサーの射撃を近場で見ていたカヨコは先ほどの光景が未だに信じられずにいた。

 

(ボルトアクション式での連射に加えて、この命中精度…腰だめで撃ってもこれって…)

 

やはり普通ではない。銃弾飛び交う現場で目の前にいる男にカヨコは己の判断は間違いではなかったと感じた。

この男は警戒すべきだ…そう思った時だった。

 

「信用しろとは言わん。寧ろ信用されるとは思ってすらない」

 

「…気づいてたの?」

 

「ああ」

 

ライフルの右側面に備えられた大型ハッチを開き、弾を装填しながらアーサーはちらりとカヨコを見た。

その目を見て、アーサーはやはりなと胸の内で頷く。

赤い瞳に見え隠れする『警戒』の存在が確かにそこにあった。

 

「今は敵を片付ける事と捕まっているハルノを助ける事だけに集中してくれ」

 

「分かった。…一つだけ聞いていい?」

 

「何だ?」

 

「…こうして戦っているのは何のため?」

 

その問いに僅かながらにアーサーは固まった。

こうして戦っている意味は何なのだろうかと、そもそもにして疑問に思った事すらなかったのだ。

終わらない贖罪の為、ろくでもない大人によって犯罪に巻き込まれた子供を助ける為、このキヴォトスという全く知らない世界で右も左も分らない自身に手を差し伸べてくれた恩人の為。

少し考えれば理由なんぞ幾らでも湧いて出てくる。だというのに…

 

「…さぁ、何のためだろうな」

 

その理由を紡ぐための言葉を彼は口にはしなかった。

 

──最後くらい何かしたいんだ…──

 

──頼む──

 

あの場所で、父の形見とも言える帽子を託しながら彼へそう言ったように。

このキヴォトスでも、そうしたい。戦う理由など、それしかないのだから。




更新が遅くなってしまい申し訳ねぇ…。
仕事の忙しさに加えて、熱中症に近い目にあって体調崩しておりました。
漸く執筆の時間が取れたのは良いものの本調子ではない為、書きたい内容が纏まらず、次回に持ち越しです…お兄さん、許して…。

感想の方も拝見しております、返信できずに申し訳ない。

今回では便利屋68とアーサーを描きましたが、次回はカイナ農場学園の面々の戦闘と洋館内へ突撃かなぁ…(一話で纏まる自信は皆無に等しいですが)

ではでは次回ノシ
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