ブルーアーカイブ クローンティーチャー   作:セサミストリート

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超えるべき壁は、壊すだけじゃない


戦士と陰謀

セリカはただ驚いていた。アッドがトリガーを引いた直後にジェット・パックで飛んでカタカタヘルメット団の上空から見たことのない手榴弾や銃で撹乱し、カタカタヘルメット団をあっという間に倒したからだ。

 

「す…すごい…」

 

アッドの周りはカタカタヘルメット団の殆どが気絶し、アッドはその中心で佇んでいた。

 

「……」

 

アッドは周りを確認しながら、セリカのもとに歩く。

 

「セリカ、無事か?」

「う…うん、平気よ」

「そうか」

 

アッドはセリカの安全を確認し、ヘルメットのバイザーを下ろして周りを見渡し始める。

 

「……」

「ね、ねぇ」

「なんだ」

「どうして私が襲われるのがわかったの?」

 

襲われるのが本人でもわからなかったのに、まるで知ってたかのようにセリカのもとに現れたのがわからなかった。

 

「あの店を出たときに違和感があった」

「違和感?」

「あぁ。普段なら大したことはないが、かすかに違和感があった。もしかしたらと思ってお前を見張っていたが、本当に襲うとは俺でも思わなかったがな」

「それだけでわざわざ見張ってたの?」

「そうだ」

 

セリカはまた驚いた。人間の感じる五感はよっぽどでもない限りは感じるはずがないのに、かすかな違和感でここまで動いていたからだ。これが、『兵士』としての本来の先生の姿なのだろうか?

 

「連中の目的は知らないが、ここは危険だ。すぐに移動するぞ」

 

アッドはバイザーを上げ、セリカに近づいて持ち上げた。しかもお姫様抱っこだ。セリカは急なことに一瞬固まったが、状況を理解した瞬間暴れ始めた。

 

「ちょ…ちょっと!!恥ずかしいじゃない!!歩いて帰るから離してよ!!」

「だめだ、我慢しろ。舌を噛むなよ」

「舌?ちょ、まっ、きゃぁぁぁぁぁぁ!!

 

アッドは暴れるセリカを抱えたまま夜空を背景に飛んだ。セリカは悲鳴を上げ、アッドにしがみついている。

 

「いやぁァァァァァ!!怖い!!降ろして〜〜〜!!」

「怖がることはないぞ、目を開けて見てみろ」

「……!!」

 

セリカはゆっくりと目を開け、周りを見る。そこには夜空に煌めく星の絶景が広まり、下を見ればアビドスの街が明かりで輝いていた。よく見れば、まだアビドスの街には人が歩いている。

 

「綺麗……こんなの初めて…」

「……」

 

アッドはそのまま飛び、アビドスの街を離れた。

 

ーーーーーーー………

 

「ここでいいか?」

「…うん、ここなら家に近いわ」

 

セリカの指示した場所に降り立ち、セリカを降ろした。何故か顔が真っ赤だったが、その理由は俺にはわからなかった。

 

「今回は無事で良かったが、次は気を付けろ。また襲われる可能性がある」

「わかってるわよ!その時は今度は私が倒すんだから!」

「勇ましいな。501大隊に相応しい」

「よくわからないけど、ろくでもないからお断りするわ…」

 

セリカと軽い会話をして、俺は帰ろうとする。

 

「ま、待って!」

「……?」

 

セリカに呼び止められ、俺は振り向いた。

 

「その…助けてくれて……ありがと

「…よく聞こえなかったな、もう少し大きな声で言ってくれないか?」

 

俺はわかりやすく耳に手を当て、聞こえない仕草をする。

 

「〜〜〜っ!だからっ!ありがとうって言ってるの!!」

「あぁ、無事で良かった」

「べ、別に認めたわけじゃないからね!?まだ怪しいんだから!!そこはわかってるわよね!?」

「…お前がいいならそれで構わない」

「ふんっ……じゃあね、おやすみ。『先生』」

 

セリカは軽く手を降ったあとに走り出し、アッドは姿が見えなくなるまで見送った。

 

(……先生、か)

 

俺は本当に『先生』とやらになれているのかわからなかった。この星に来てからは生徒を守るために自分が前線で戦っているが、果たしてそれでいいのか。

 

「……俺ができるのは、戦うことだけだ」

 

俺は自分に言い聞かせるように言い、夜のアビドスの住宅街を歩いた。

 

ーーーーーーー………

 

「……」

 

少し歩いていると背後から視線を感じ、歩くのをやめる。今朝感じた『違和感』のはるか上を行く『殺意』を俺の後ろで感じていた。

 

「…出てこい。俺は逃げも隠れもしないぞ」

 

話しながら右手をホルスターに置き、いつでも撃てる状態で警戒する。

 

「……」

 

後ろから足跡が聞こえ、ゆっくりと振り向くと、そこには本来この星にいないはずの人物がいた。

 

「…マンダロリアン」

 

銀色のアーマーと特徴的なT字のバイザーを装着したマンダロリアンの戦士が俺の前に立っていた。

 

「……」

「……っ!」

 

マンダロリアンはホルスターからブラスターを引き抜き、俺も同じくブラスターを抜く。お互いにブラスターを向き合わせ、いつ撃たれてもおかしく無い緊張感が周りの空気を支配していた。

 

「…一つ聞きたい」

「…なんだ?」

「お前はクローンか?」

「…だったら何だ」

「やはりそうか」

 

マンダロリアンは銃をおろし、俺もゆっくりとおろす。

 

「お前は誰だ」

「…俺は共和国のARCトルーパー、アッドだ。階級はキャプテン、今はシャーレに所属している」

「共和国は滅んだぞ?」

「何…!?」

 

共和国が…滅んだだと…?どういうことだ?まさか、分離主義勢力に負けたのか!?

 

「貴様……ふざけているのか!?共和国が…共和国が滅んだなんて嘘を言うな!!」

「正確に言えば共和国は銀河帝国に変わり、銀河を支配しようとした。その銀河帝国も滅んだ」

「なっ…!?」

「俺からすればお前は銀河帝国の残党と同じだ。違うか?」

「ふざけるな!俺は共和国に忠誠を誓ったARCトルーパーだ!たとえ名前が変わろうと銀河帝国など知らん!!」

 

俺はブラスターをマンダロリアンに銃口を向ける。マンダロリアンのベスカーアーマーじゃ俺のブラスターでは対抗できないが、それでも銃を向けずにいられなかった。

 

「…そうか、それを聞けてよかった」

「何…?」

「お前が少しでも帝国に関わっていたら、俺はお前を殺すつもりでいた」

「……」

「どうやらお前は違うようだ」

 

マンダロリアンは歩きはじめ、俺の横を通る。

 

「着いてこい」

「……」

 

マンダロリアンに招かれ、ブラスターをホルスターに入れ、後を追った。

 

ーーーーーーー………

 

俺とマンダロリアンは住宅街よりもさらに遠くの砂漠に埋もれた廃墟に着き、その中でも比較的砂に埋もれていない廃墟に入る。

 

「好きなところに座れ」

 

俺は近くに置いてある木箱の上に座り、ヘルメットを脱ぐ。

 

「ここが拠点か?」

「そうだ…よく敵地でヘルメットが脱げるな」

「俺はお前と戦うために来たわけじゃない」

「俺がまだ殺すつもりでいてもか?」

「なめるな、その時は返り討ちにするまでだ」

 

マンダロリアンも近くの木箱の上に座り、小型のランプで明かりを灯す。

 

「…まずは自己紹介をしておくか。俺はマンダロリアンのディン·ジャリンだ」

「…お前がアビドス高等学校を支援しているマンダロリアンか?」

「そうだ」

「…どうやってこの星に来た?」

「……」

 

お互いに黙り、沈黙が空気を包み込んだ。なんの機能も果たしていない窓から風が吹き、肌寒く感じた。

 

「…俺がこの星に来たのは3年前だ」

 

先に喋り始めたのはマンダロリアンだった。

 

「新共和国の依頼で、ある惑星の調査を任された」

「新共和国?」

「帝国との戦いに勝ち得た反乱軍の新しい名前だ」

「……」

「…その惑星には帝国軍の残党がいたことがわかった。ただの残党ならまだ良かったが、大規模の残党がその惑星に隠れていた。奴らからなんとか逃げようとしたが、ハイパースペースに入る前に船を撃たれて本来の座標に飛べず、気づいたらこの星にいた」

「つまり、望んでこの星に来たわけじゃないのか?」

「そうだ」

 

なんてことだ…俺はこのマンダロリアンが望んでここに来たと思っていたのに、事故でこの星に来てしまったのか。これではコルサントに帰る希望がないじゃないか。

 

「お前こそどうやって来た?ストーム·トルーパーならまだしも、クローン·トルーパーは今まで見たことがないぞ」

 

今度はマンダロリアンが質問する。

よく考えれば、このマンダロリアンの持つファイターでこの星を出たとしても、この銀河系の地図も座標もわからなければどこにも飛ぶことができない。

 

「…俺も似たようなものだ」

「というと?」

「俺は惑星エンドゥバの調査で来て、報告になかった遺跡を調べていたら遺跡に吸い込まれてここに来た」

「…そうか」

 

マンダロリアンは興味がなくなったのか、ランプに手を伸ばして明かりを調整する。

 

「お互い事故でここにたどり着いた、ということになるか」

「そうなるな」

「…なぜアビドスに肩入れする?」

「……」

 

マンダロリアンは腕を組み、なにか考える仕草をする。ヘルメットを被ってるので表情は見えないが、どこから話そうか、と考えているのがなんとなくわかった。

 

「…3年前、この砂漠でグローグーを助けたのがあの子達だ」

「グローグー?」

「俺の息子だ」

「……」

「だから助けることにした。それに…」

「……それに?」

「グローグーがあいつらを気に入ってるからだ」

 

なんとなくだが、マンダロリアンの声色が優しくなったのを感じる。それほどアビドスを気に入っているのだろう。

 

「…本当に3年前にここに来たんだよな?」

「そうだ」

「3年前のアビドスには、2人の少女がいただろ」

「あぁ、その2人に助けられた」

「その中の1人、『ユメ』という生徒は知っているか?」

「……あぁ」

「彼女はどうなった?なぜこのアビドスにも、キヴォトスにもいないんだ?」

 

3年前のアビドスは、たった2人しかいなかった生徒会が存在していた。その中でも特に情報がなかったアビドスの元生徒会長『ユメ』という少女は今でも謎に包まれている。

 

「……」

「…知っているんだな?」

「…あぁ、知っている」

「なら「彼女は死んだ」

「…っ」

 

死んだ。たったその1つの言葉がオレの心に突き刺さる。そのマンダロリアンは何も隠す素振りもせず、ただ淡々と言った。

 

「死因は?」

「わからない」

「…わからないだと?」

「俺がアビドスを離れているときに彼女は死んだ。ホシノだけが知っている。一度も話してくれたことはない」

「……」

「…どのみち、話すことはないだろう。彼女が死んだ後、ホシノは彼女のようなふりを続けている。俺が想像できないほどに、ホシノは今も苦しんでいるはずだ」

「……」

 

言葉が出なかった。親しい仲間を失った消失感も、絶望感も、その痛みを俺も知っていても、ホシノにとっては想像を絶するものだろう。

 

「…そう、だったのか」

「そうだ」

「…辛いな」

「クローンにもそんな感情があるんだな」

「…何が言いたい?」

「俺は一人、お前と同じクローンに会ったことがある。そいつは目的のためならどんな手段を使っても闘う男だ」

「そのクローンの名前は?」

「ボバ·フェットだ」

 

ボバ·フェット。俺たちクローンのドナーであるジャンゴ·フェットがなんの遺伝子操作をしなかった完全なクローン。ジャンゴ·フェットの死後、ボバ·フェットは賞金稼ぎになったと聞いている。

 

「ほぉ…ボバ・フェットは生きているのか」

「今はタトゥイーンの大名になっている」

「タトゥイーンの大名…?何があったんだ?」

「長くなるぞ」

「…遠慮しておこう」

 

正直に行って凄く気になるが、今はやめておこう。多分碌でもないはずだ。

 

「…本題を話そう、キャプテン·アッド。お前に聞きたいことがある」

 

長く話していたが、マンダロリアンの雰囲気が突如変わった。その変わり様に俺は少し驚き、警戒する

 

「…何だ」

「グローグーの居場所を知っているか?」

 

居場所?そんなの知っているはずがないだろう。ここに来てまだ数ヶ月しか経ってないのに。

 

「どういうことだ?」

「…1ヶ月前、グローグーが拐われた。様々な場所を探したが、どこにもいなかった」

「何だと?」

「…だが、拐ったと思う人物には会った」

「…誰だ?」

「…俺と同じ、マンダロリアンだ」

 

…またマンダロリアンか。この星はマンダロリアンの隠れ家か?

 

「だが、あのマンダロリアンは見たことがない。おそらく賞金稼ぎだ」

「そのマンダロリアンはなにか言っていたか?」

「…お前に手を出すな、と言っていた」

 

俺に手を出すな…?わからないな、なぜ俺にこだわる?シャーレとの接触を恐れてか、それとも別の目的があるからか?

 

「…だが、俺は黙って従うことはしない」

「……」

「俺だけではあの男にたどり着くことはできない、もっと人手がいる」

「協力しろというのか?」

「そうだ、一緒にグローグーを探してほしい。頼む。キャプテン·アッド」

 

この男は、本気で懇願した。それほどに息子を愛しているのだろう。父親としては、心配なはずだ。

 

「…わかった。引き受けよう」

「本当か?」

「ただし、1つ条件がある」

「……何だ」

 

マンダロリアンはどんな条件を突き付けてくるのか警戒した。ふと手を見ると、ブラスターに手を当てている。

 

「彼女たちに会え。心配していたぞ」

「……」

「息子の心配をしているのはわかるが、もっと彼女たちと話し合え。それができれば、俺も協力しよう」

「……わかった、そうしよう」

 

お互いに立ち、俺は右手を差し出す。マンダロリアンは一瞬固まったが、ゆっくりと俺の手を取った。

 

「よろしく、ディン·ジャリン」

「…我らの道」

 

こうして俺は、マンダロリアンと協力していくことを誓った。

 

ーーーーーーー………

 

「……失敗しただと?小娘一人を拐うこともできないのか?」

 

とあるビルの最上階に、2人の『大人』がいる。一人は全身機械。もうひとりはアーマーを着た男だ。

 

「どうやらシャーレが邪魔をしたそうだ」

「…格下のチンピラごときでは、止めることすらできんのか、あの男は」

「…どうするつもりだ」

「…ふん、手はいくらでもある」

 

男は受話器を手に取り、番号を打ち込む。

 

「目には目を、生徒には生徒を……専門家に頼むとしよう」

「……」

『……はい、どんなことでも解決します。便利屋68です』

 

電話に出たのは便利屋68だった。

 

「仕事を頼みたい、便利屋」

『……御要件は?』

「アビドス高等学校の生徒共を始末しろ。報酬は弾む」

『……いいでしょう。その依頼、便利屋68が受けましょう』

「こちらにはアドバイザーとして人をつける、その男の指示で動け」

『……構いませんわ』

 

男は受話器を戻し、アーマーの男に顔を向ける。

 

「今言った通りだ、便利屋68と協力して奴らを潰せ」

「…便利屋はどうする?」

「お前に任せる。煮るなり焼くなり、好きにすればいい」

「……」

 

アーマーの男は何も言わずに部屋を後にした。

 

「…さぁ、どう出る?『シャーレ』……」




はい!今回はここまで!ついにアッドとディン·ジャリンが対面!語られる真実。蠢く陰謀。さて、アッドとアビドスの生徒たちはどうしていくのか……?

では、フォースと共にあらんことを……

本編(原作)だと先生は生徒の足をなめたりする過酷(死刑!)な大人ですが、アッドもそうであるべきでしょうか?

  • 舐めるべきや
  • ん、アッドも過酷するべき
  • う〜ん…微妙!
  • そこまでしなくても…
  • やめなされやめなされ…
  • 解釈違い
  • やっても…変わらないかな?
  • なんだったらためてたものをさらけ出せ
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