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衛生管理は「徹底している」

ただ、イカサマ的でグレーな露店があると言っても、どの店も徹底している要素が食品の衛生管理だ。

テキヤが最も恐れるのは、食中毒を出すことである。というのも縁日では、様々な場所からテキヤが出張してきて露店を出す。

他所から商売に来たテキヤを旅人といって、ニワバの親分をはじめ若い衆=世話人(その祭りを仕切る責任者)が世話をする。この世話人も、よその土地に商売に出向けば、旅人となる。だから、よそのニワバで商売をして、食中毒など出してしまうと、そこの親分の顔に泥を塗ることになるので、過分なほど気を遣うのだ。

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中でも注意を払っているのが食中毒。焼き鳥の肉も、ソーセージも、イカ焼きのイカも、一度ボイルして火を通して冷凍し、それを縁日当日に運び出し、クーラーボックスに入れて保管するなど、食中毒を防ぐ努力が日々行われている。

加えて保健所も度々巡回しては、露店の衛生状態を確認している。筆者も保健所から指導を受けたことがある。ジャガバターを担当した際、お客から「バターが多い」の「もっとバターを塗ってくれ」だの注文が多かったので、三寸の前にバターを置いてセルフサービスにした。

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これに対して、保健所から「衛生上好ましくないので、注文の都度、バターを塗って提供するように」と注意されたことがある。そのくらい、テキヤは厳しい監視の下、営業しているのだ。

世間のイメージとは裏腹に、我々の想像以上に衛生的なものへと進化していたテキヤの世界。だが、グレーな商売がまったく消えたわけではない。その背景には、真っ当に商売に励む「なり手」の不足があるかもしれない。

つづく【後編記事】『「若者の入門はゼロ…」祭りのテキ屋が抱える《ネットで叩かれる》より辛い「後継者不足」の現実』では後継者不足に悩むテキヤ業界の現状を明らかにする。

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