ブルーアーカイブ クローンティーチャー   作:セサミストリート

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男なら、守るために戦え


反撃の狼煙

「いや〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」

 

ホシノは机に上半身を乗せながら話し、アヤネが答える。今回の戦いでカタカタヘルメット団は撃退したが、あれで最後とは到底思えない。向こうが準備を整えば、再度こちらに仕掛けてくるだろう。アビドス高等学校を襲っているのは現状カタカタヘルメット団だけだが、そのヘルメット団が他の勢力をかき集めてまたここに来ることも考えられる。

 

「先生がいなかったら危なかった。今日のヘルメット団はいつもより過激だったし」

「というか殆ど先生がやっつけちゃったじゃん…あの噂は本当だったのね」

「噂?」

 

シャーレ奪還の際は戦闘に参加したが、俺としては噂されるようなことはしていないはず。もしかしたら、モモッターに上がっている動画のことだろうか。

 

「モモッターに上がっている動画ですよ。あのときの戦闘で先生が戦っていたことをキヴォトスの全員が注目してましたから☆」

「私も知ってる。『シャーレは武装組織?リーダーは外の世界から来た先生?』とか、『先生が生徒に対して発砲、連邦生徒会の真意はいかに?』みたいなのが多かった」

 

シャーレ奪還の時の映像が様々な噂が上がり、連邦生徒会や俺の所属するシャーレも良い噂が流れていないようだ。だが、銃を向けたからには、俺はそれ相応の対処をするしかない。結局は戦った者の言葉より第三者の言葉で人は操られるものだ。

 

「でも、これが大人の力…すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」

「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」

「パパ…か」

 

俺は普通の人間とは違う。一つの細胞を複製し、それを人の形にした生き物だ。無論、親というものは存在はしないし、俺の元となったジャンゴ・フェットはただのドナーに過ぎない…広く解釈すれば、父親とも取れるかもしれないが。

 

「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はそのへんでしょっちゅう寝てるでしょ!」

「そうそう、可哀そうですよ」

「可哀そう…?」

 

ツインテールの少女が、ピンクのロングヘアの少女にツッコミを入れる。この光景が彼女たちにとって日常なのだろう。

 

「あはは…少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します、先生」

 

先程まで緩かった雰囲気が、アヤネの一言でホシノを除いた全員の雰囲気が変わった。

 

「私達はアビドス対策委員会です」

 

『アビドス対策委員会』

正式名称は『アビドス廃校対策委員会』。アビドスが砂漠化により廃校の危機に立たされているアビドス高等学校を立て直そうとしている団体。連邦生徒会の記録によれば、多くのアビドス生徒が所属していたが、砂漠化によりアビドス地区は都市としてほぼ機能しておらず、人口が少ない。それにより正式な生徒会が消滅状態の為、今の5人のアビドス生徒が事実上の生徒会であるが、非公式であることも報告書に記されている。

 

「私は委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネです」

「お前があの手紙を書いたアヤネか、先程のオペレーターは見事だった。よろしく」

「ありがとうございます!こちらは同じく1年のセリカちゃんです」

「どうも」

「お前の戦闘は見事だったが、少々荒っぽかったな」

「…必死だっただけだし」

「2年のノノミ先輩とシロコ先輩」

「よろしくお願いします、先生〜」

「あのガトリングによる斉射は良かったぞ。今度あのガトリング貸してくれないか?」

「もちろんいいですよ!後でまた見せますね☆」

「さっき、道端で最初にあったのが、私」

「あのときはありがとうな、お陰で助かった」

「…ん。先生を助けるのは生徒として当たり前だから…あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

「そして、こちらは委員長の3年のホシノ先輩です」

「や〜や〜、よろしくね〜先生」

「ああ、よろしく」

 

全員の挨拶が終わり、次は俺が挨拶する。

 

「俺は『シャーレ』所属のアッドだ。戦闘があればいつでも俺に頼れ」

「いや先生を前に出すのはちょっと…」

「ん、なら私の隣で戦うべき。私が守る」

「ん〜…まぁ『先生』なら生徒のために戦うのは当たり前だよね〜」

「…できればお前たちが戦わなくていい状態がいつまでも続いてほしいと願ってる」

「…?なにか言いましたか?」

「いや、とにかくよろしくな」

 

俺は小声で願いを言葉にした。正直言って戦争で子供が兵士として戦うのは俺のようなクローンだけでいい。俺の将来は戦いでしか見いだせないのだから、将来も未来も希望も多く持っている子供が武器を手に戦うのは見たくない。

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません……」

 

アヤネは座りながら頭を下げ、他の生徒たちも頭を下げる。

 

「頭を上げてくれ。俺はただ自分のことをしたまでだ。それより、お前たちの所属している『対策委員会』とは何を目的として動いている?」

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるための有志が集った部活です」

「アビドスを…蘇らせる?」

「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒と言っても、私達5人だけなんですけどね…」

「他の生徒たちはどうした?」

「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして街を出ていった」

 

なるほど、ここまでは報告書通りだ。しかし、ほどんどがいなくなったとはいえ5人も在籍しているのは驚きだ。そういえば、2年前の対策委員会は2人しかいなかったが、その中の委員長の情報がほとんど残っていなかった。唯一残っていたのは、『ユメ』という名前のみ。彼女はどうなったのだろうか。

 

「学校がこのありまさだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われている始末なの」

「そうか…だが、よく今まで頑張ったな」

「何回かは『あの人』に助けてもらったけど、現状は私達だけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……」

「『あの人』…」

「もし『シャーレ』からの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね」

「だね〜。補給品も底をついてたし、流石に覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生」

 

ホシノは変わらず机に上半身を乗せながら話している。彼女は様々な所で寝ていると聞いているが、彼女は一体何をしているのだろうか。

 

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」

「いや、俺よりもお前たちが最後まで諦めなかったからだ。俺は何もしてないさ」

「またまたご謙遜を〜」

「…ところで、外にあるスターファイターのことなんだが」

「…!」

 

俺が外にあるN1スターファイターの話を出した途端、全員の雰囲気が変わった。特にホシノからは、殺意に近いオーラを感じた。

 

「…あの飛行機をご存知なのですね」

「あぁ、あれはナブーにしかない戦闘機だ。本来ならこの世界には作ることも存在していることはないはずだ…しかも、そのパイロットはマンダロリアンときた。おそらく何処かで手に入れたものだろう」

「ナブー…?どこよそれ」

「マンダロリアンは基本的にマンダロアで活動する種族だが、一部の派閥には賞金稼ぎや暗殺を生業としたマンダロリアンもいる」

「あの優しそうな人が暗殺者とは思えないけど…」

「…はっきり言ってマンダロリアンは危険な奴らが多い。同族を殺すことも躊躇わない奴らだ。お前達が何処までそのマンダロリアンを信頼してるかは知らないが、油断はしないほうがいい」

「…先生はマンダロリアンについてどこまで知ってるの?」

 

ホシノは変わらずオーラを放っている。どうやら俺がマンダロリアンの危険性を話したことに怒りを感じているようだ。

 

「そうだな…俺も詳しくはないが、大昔のマンダロリアンは他の星に戦争を繰り返し、勢力を増やした歴史がある。そして、彼らはマンダロアにしかない鉱石、ベスカーを加工したベスカーアーマーを身に着けて戦っている。そのアーマーは俺が持つ銃でも弾き返すほどの強度のあるアーマーだ。しかも奴らはどんな武器でも扱えるほどに戦闘に特化している」

「ふぅ〜ん…じゃぁ先生は実際にマンダロリアンに会ったことはないんだ?」

「…会ったことはないが、多くの兄弟たちがマンダロリアンに殺された」

「え…?!」

「先生のご兄弟が…!?」

「…まぁ、それは別にいい。戦争というのはそういうものだからな」

「…ごめん、先生」

「気にしなくていい。過ぎたことだ」

 

ホシノからオーラがなくなり、申し訳無さそうに謝る。他の4人も顔が暗くなっている。別にホシノが俺にあやまることはしていないのだが、どうやら俺の兄弟たちがマンダロリアンに殺されたことを知ったことに罪悪感でも覚えたのかもしれない。

 

「…ねぇ、あのヘルメット団が襲うことは今はないだろうけど、攻撃を止めるような奴らじゃないと思う」

「あ、あー!確かに!しつこいもんね、あいつら!」

 

シロコが話題を変え、全員の顔から暗さがなくなる。俺も悪いことをしてしまったな。

 

「そうですね…こんな消耗戦をいつまで続けなきゃいけないのでしょうか……ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……」

「問題?襲撃以外になにかあるのか?」

「あっ…い、いえ!そんなことはないですよ!ね、セリカちゃん!」

「そ、そうよ!何も抱えてないから!」

「……?」

 

アヤネとセリカが何故か慌てているが、むしろその行動が肯定に繋がってしまう。そこはうまく誤魔化せばいいんだが、まだまだ子供だなと感じた。そんな中、ホシノは手をあげた。

 

「そのことなんだけどさ〜、ちょ〜っと作戦を練ってみたんだー」

「えっ!?ホシノ先輩が!?」

「うそっ…!?」

 

ホシノの提案に、アヤネとセリカが驚いた。普段どんなことをしたら信じてもらえないようなことをしたんだ…?

 

「いやぁ〜その反応はいくら私でもちょこっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」

「…ホシノ、どんな計画だ?」

 

俺がその計画を聞くと、ホシノは立ち上がり、ホワイトボードに近づいて何かを書いていく。

 

「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこそういうサイクルが続いているからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって、今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

「奴らの前哨基地はわかるのか?」

「うん、最近見つけたばかりだよ」

「ふむ…」

 

ホシノの作戦は理にかなっている。消耗が激しい今のヘルメット団なら、こちらから襲撃しても大した抵抗は少ないはず。だが、そう簡単には行くとは思えない。

 

「い、今からですか?」

「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」

 

なるほどな、今からの襲撃はこちらの補給が十分だからこその作戦か。それならば、今からでも立つことができる。

 

「ふむ…確かに補給面はこちら側がなんとかしよう。存分に暴れてやろうじゃないか」

「先生ならそう言うとおもったよ〜」

「てか、何で先生が一番ノリノリなのよ…?」

 

補給が十分行き届いている中、俺達は戦える。できれば航空支援があればいいが、あまり贅沢は言えない。

 

「前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし」

「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

 

俺はブラスターを手に持ち、ヘルメットを身につける。周りも自身の銃や装備品の準備を始める。30kmぐらいならジェット・パックを使わずとも走っていけば問題ない。

 

「決まってるだろう?奴らに俺たちの、ひいてはアビドスの怖さを教えてやろうじゃないか」

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

「善は急げ、ってことだね」

「…わかりました。では、私はここで皆さんのサポートを行います。先生は…」

「俺も行く。前線の皆に怪我はさせないさ」

「ん、先生がいてくれたら安心」

「だから、何で先生がノリノリなの…?普通ここに留まるものじゃないの?」

 

確かに『普通』の『大人』なら、そうするだろう。ジェダイならともかく、武装することも武器を持つことのない人間ならアヤネと共にオペレーターとして活動すればいい。だが、俺は『兵士』だ。ならばすることは一つのみ。

 

「生憎だが、俺はコソコソするのが嫌いでね」

 

ブラスターを肩に担ぎ、ハンドブラスターをクルクルと回しながらホルスターに戻す。

 

「行くぞ、奴らを驚かしてやろう」

「はい〜それでは、しゅっぱ〜つ!」

 

アヤネを除いたアビドス生徒と俺はそれぞれの武器を持ち、ヘルメット団の前哨基地に向かう。

 

ーーーーーーー………

 

「……」

 

アビドス生徒と『シャーレ』の先生とやらが外に出た頃、銀色のアーマーを身に着けた『大人』が彼女たちを見ていた。

 

「…今の彼女たちなら大丈夫だろう。あの男が、あの子達にに対して危険になるなら…」

「その時は俺に任せればいい」

 

銀色のアーマーを身に着けた『大人』とは別の『大人』が男のもとに現れる。

 

「お前は…マンダロリアンか?」

「あのクローンは今は放っといていい。だが、お前にはまだやることがある」

「……何が言いたい?」

「『息子』が、愛しいだろ?」

「…っ!」

「『子供』はこちらで預かっている。下手なことはしないことだ」

「…グローグーは無事だろうな?」

「心配するな、彼はホシノの釣り餌になってもらう。すべて終れば解放しよう」

 

お互いにヘルメットをつけており、表情を読み取れないが、互いに敵意をむき出しているのは読み取れる。

 

「…俺に何を求めている?」

「あの『シャーレ』に手を出すな。それ以外は自由にすればいい」

「…お前、何者なんだ?」

「人に何かを聞きたいなら、まず名乗るものだろ?」

 

互いにホルスターに仕舞っているブラスターにいつでも撃てるほどの緊張感が周りを包み込む。

 

「俺を撃っても構わないが、その瞬間あの子が死ぬぞ?ディン·ジャリン」

「お前…!」

「ふん…『我らの道』ってところか?」

 

お互いに手をおろし、目の前の『男』は踵を返して飛ぼうとする。

 

「お前は…まさか…」

「…とにかく、今は大人しくすることだな」

 

『男』はそのまま飛び立ち、残ったのはディン·ジャリンのみになった。

 

「グローグー…」

 

ディンは愛する息子をおもいながら、彼女たちを見送った。

 




今回はここまで、遅くなり申し訳ありません。来年はできるだけ早く投稿するようにします!

さて、アッドが知らないところで別の組織が動き始めています。彼らは何を目的に動いているのか…?

では、フォースと共にあらんことを……

本編(原作)だと先生は生徒の足をなめたりする過酷(死刑!)な大人ですが、アッドもそうであるべきでしょうか?

  • 舐めるべきや
  • ん、アッドも過酷するべき
  • う〜ん…微妙!
  • そこまでしなくても…
  • やめなされやめなされ…
  • 解釈違い
  • やっても…変わらないかな?
  • なんだったらためてたものをさらけ出せ
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