ブルーアーカイブ クローンティーチャー   作:セサミストリート

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突如として思いついたものです…


存在意義

時刻は2350。この時間は本来は寝ているんだが、今日は特に眠れなかった。基本的に共和国軍にいたときはいつ招集が起こるかわからないため、ほとんど眠れなかったことが多い。長くても1時間ぐらいだ。眠れないときはこのシャーレのオフィスで一人窓から外の景色を見ている。キヴォトスの夜はとても明るく、夜中でも明るい。その光景はいつか見たコルサントの夜景に似ている。しいて違うのは、空には惑星が飛んでないぐらいだ。

 

「…誰だ」

 

ふと後ろから気配を感じ、声をかけた。今俺を撃ったとしても、このアーマーが守ってくれる。ブラスターでも出さない限りは、この世界では俺は最強のアーマーで守られている。

 

「あら、私を感じてくださるのですか?流石はあなた様ですわ」

 

振り返ると、そこには着物のような制服を纏い、狼のような動物の仮面をつけた少女がいた。

 

「お前は…狐坂ワカモか」

「名前まで覚えていただけるなんて…!なんて幸せなことなのでしょうか」

 

前に地下室であったときは少女とは思えない殺意を感じたが、目の前のワカモはくねくねしている。ほんとにあのときのワカモかと疑う。

 

「どうやってここに来た?ここは厳重な警備がされているはずだ」

「お慕いしている貴方様に会うためなら、セキュリティなど無いにも等しいですわ」

 

平然と答えているが、言っていることは犯罪者のそれだ。どうやってここまで掻い潜って来たかはわからないが、どうやら目的は俺のようだ。

 

「あの時のリベンジにでも来たのか?」

「そんなことはしませんわ。ただ、あなた様にお会いしたかっただけです」

 

ワカモはゆっくり近づき、俺の目の前に立つ。この距離ならいつでも絞め上げることはできるが、ワカモは武器を持っていない。戦う意志がないのであれば、俺はワカモに傷つけることはしない。それより、近づいた途端またくねくねしはじめたんだが、何がしたいんだ?

 

「…よろしければ、お顔を見せていただけませんか?」

「何?」

「あの時はあまり長く見ることは叶いませんでしたが、私はあなた様をもっと近くで見たいのです」

「…俺の顔を見たところで、何も出ないぞ?」

「いいえ、私が見たいのです…だめ…ですか…?」

 

突然の要求で少し驚いたが、俺はヘルメットを脱いだ。俺の顔には無数の傷があり、目と鼻の間には大きな一本の傷がある。仲間にはよく自慢しながら見せているが、戦争でできた傷を子供にはあまり見せたくはない。

 

「…これでいいか?」

「はい。では、私もこの面を外しましょう」

 

そういってワカモは面を外した。ワカモの顔はとても幼くみえ、目に描いている赤い化粧は大人のような雰囲気を醸している。そして、ワカモの瞳はまるで黄金のような輝く目をしていた。

 

「それが、お前の顔なのか」

「…何かおかしなところはありますか?」

「…俺の知っている中では、お前はとても美人だ」

「あなた様もお美しい顔をしています…よろしければ、触れてもいいでしょうか?」

 

いやまて、触れる?この顔を?美しい?…ワカモの感性は一体どうなってるんだ…?まぁ、触れて気が済むなら、構わないが。

 

「…好きにしろ」

 

ワカモは少し沈黙し、両手で俺の顔に触れる。ワカモの指の感触が柔らかく、まるで綿に触れているかと感じる。また手から感じる暖かさは、今まで感じたことのない優しさを感じる。俺の大きな一本の傷をワカモの指はゆっくりとなぞっていく。少しだけこそばゆいが、何故か心地よく感じた。

 

「この傷は、誰がつけたのですか?」

「戦闘中にできた傷だ。誰かにつけられたものじゃない」

「…あなた様は、いつも戦ってきたのですね」

 

ワカモは何故か悲しそうな顔になる。もしかしたら、戦争で戦う俺の姿でも想像したのか?

 

「…そう生まれたからな」

「え…?」

「俺は…戦うために生まれた軍隊のただの人間だ。俺が死んでも、替えはいくらでも効くさ」

「そのような悲しいことを仰らないでください!あなた様は…目の前にいるあなた様は、このシャーレの欠かせないお方なのです。そのような悲しいことを…仰らないでください。私は…目の前のあなた様をお慕いしています。あなた様の代わりなど、愛することはできません…!」

 

ワカモは涙目で俺に言う。確かにこのキヴォトスにはカミーノのようなクローン技術も設備もない。もし俺が死んだら、俺自身も、この世界も終わってしまう。そう考えると『クローン』としての俺より、『現在』を生きる俺は、誰よりも欠かせない存在になっている。

 

「…すまない」

「いいえ、私も少し熱くなってしまいました…申し訳ありません…」

「いや、自覚してなかったんだ。もう簡単には死ねないことが」

「もし死にたくなったとしても、私もお供します。決して離れませんから」

 

ワカモの手が俺の手を握る。ワカモの手が強く握っているが、全く痛くない。それどころか、この細い指が、手が、いつも銃を持っているとは疑わしいぐらいだ。

 

「…時間も遅くなりました。私はこれで…」

 

ワカモの手が離れ、面をつける。いつもの姿に戻ったワカモの目からは、前より赤く光っている。そして後ろを向き、歩き始める。

 

「待て、ワカモ」

「はい、何でしょうか?」

 

ワカモは振り向き、頭を傾げる。ちょっと可愛いと思ったのは、多分気のせいだろう。

 

「来るならいつでも来い。ここはお前のような生徒でも自由に使ってもいい」

「まぁ…!でしたら、いつでもお会いできますわ!」

「…まぁ、好きにすればいい」

「うふふ…わかりました。では、今度はもっと明るいときにお伺いしますわ。あなた様」

 

そういってワカモは、暗い廊下に消えていった。

 

「…考えを改めないとな」

 

ワカモが言ったように、俺はこの世界で一人しかいない。その俺が死んだら、この世界は消えてしまう。そうならないためには、もっと力をつけなければいけないな。

 

 

本編(原作)だと先生は生徒の足をなめたりする過酷(死刑!)な大人ですが、アッドもそうであるべきでしょうか?

  • 舐めるべきや
  • ん、アッドも過酷するべき
  • う〜ん…微妙!
  • そこまでしなくても…
  • やめなされやめなされ…
  • 解釈違い
  • やっても…変わらないかな?
  • なんだったらためてたものをさらけ出せ
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