法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

高市早苗氏のデビュー書籍を国会図書館デジタルコレクションの無料送信サービスで読むと、当初の本人は「米連邦議会立法調査官」という肩書を思ったよりアピールしていない気がした

 1989年に出版され当時は評判となった『アズ・ア・タックスペイヤー : 政治家よ、こちらに顔を向けなさい』だが、Amazonで検索すると新品としては入手できず、今は中古でも出ていない。

 転売目的だろう過剰なプレミア価格がつけられたページもヒットするが、国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスに登録されていることに気づいた。
アズ・ア・タックスペイヤー : 政治家よ、こちらに顔を向けなさい - 国立国会図書館デジタルコレクション
 登録さえすればインターネットで無料で読める。スキャンでとりこんだ画像そのままだが、内容を確認するだけなら支障はないだろう。


 まだ精読はしてないのだが、実のところタレント本のような読み味で*1、当時は軽く見られていた下の立場から政治家を叱り飛ばすような内容。
 そのため自身の優秀さをアピールするよりも、謙遜というより率直に能力不足を自認して*2松下政経塾から体当たりで米国議員の部下になった経緯を書いている*3
 そこで目指した米国議員が、当時女性初の女性大統領候補と目されていた民主党のパトリシア・シュローダー氏だった。高市氏が自民党総裁になって「ワークライフバランス」を捨てると宣言した現在と通じるように、シュローダー氏の政治的理念よりも、女性初の大統領候補というところと、あくまで「女性」という枠組みで仕事ができていることに注目している*4

 パトリシア・シュローダー、アメリカのコロラド州選出の民主党の下院議員であり、史上初の女性大統領候補でした。
 女であることを捨てず、しかし女であることに甘えることなく、仕事をこなしていく素敵な人、というのが私が受けた最初の印象でした。

 そして最初の立場が、あくまでインターンだったことは明記している*5インターンでも競争率が高かったらしいが高市氏は「ゴミのようなインターン生活」と書き、そこから「立法調査官」になれたと説明しているが、その肩書があくまで議員事務所内の役職とわかるようには書いている*6
 いずれにしても、すでに高市氏のキャリアからすると立法調査官という肩書をそれほど重視する必要はない気はした。米国議員事務所スタッフという説明で政治家の出発点としては充分だろう。マスメディアもそうするべきではないか。


 ちなみに、国会図書館デジタルコレクションで高市氏の父親である高市大休氏が簡単に資料も見つけた。
大阪商工名録 1978 - 国立国会図書館デジタルコレクション
 トヨタ関係の東久の営業マンだったことは知られているが、1978年の時点で資本金1億円で従業員296人の大阪営業所代表となっている。
 高市早苗氏が大学に入る前にその立場になっていたと考えると、富裕層というほどでもないし大半の自民党議員とは比べようもないが、当時の一般庶民よりは生活に余裕があっただろう*7

*1:当時らしくエイズと結びつけたカジュアルなホモフォビアが書かれた部分には閉口した。49~50頁。

*2:当時の民主党顧問弁護士と会話することはできたが、「私のタドタドしい英語」といったくらいの語学力だったらしい。45頁。

*3:42頁以降。

*4:14~15頁。

*5:52頁等。

*6:66頁。

*7:自著内でも米国からインターン合格のFAXを受けとるために「父が勤める会社」に押しかけたことが言及されている。46頁。