ノーベル賞の坂口さん「考え抜くことが必要」 夫婦で巡った研究人生
「何かを成し遂げるには時間がかかる」。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文(しもん)さん(74)は、研究が逆風にさらされる中、米国を転々としながら夫婦で研究を続けてきた。
坂口志文さんは滋賀県の旧びわ村(現長浜市)で育った。琵琶湖にも伊吹山にも自転車で行けるような自然に囲まれた環境だった。少年時代は「子ども向けの文学全集なんかを読んでいた」という。
父が校長を務めていた地元の高校に進学。父の影響で哲学に傾倒する一方、精神科医ビクトール・フランクルの「夜と霧」を読み、精神医学に興味を持った。母方の親戚に医師が多かったこともあり、京都大医学部に入る。そこで出会ったのが、免疫だ。自分を守るだけでなく、自分を攻撃することもある。「二律背反的でおもしろい」と、のめり込んだ。
関心を抱いた実験をしていた研究施設の門をたたき、米国でも4カ所の研究所を渡り歩いた。大先生の下につくよりも、同じテーマを独立した立場で研究する道を選んだ。
今も大阪大免疫学フロンティア研究センターに研究室を構える。坂口さんは学位論文の審査には厳しいという。
厳しいのには理由がある。制御性T細胞の研究を本格的に始めた1980年代は、免疫を抑える細胞は存在しないという考えが広がっていた。自身の研究成果も「10年間は見向きもされなかった」。だからこそ、坂口さんは「何かを成し遂げるには時間がかかると教えている。本当に一生をかけるものを見つけるには、考え抜くことが必要です」と語る。
妻の教子さんと二人三脚の日々
坂口志文さんの受賞を誰より待ち望んでいたのは、長年、研究生活を共にしてきた妻の教子(のりこ)さん(71)。「研究は苦しいから、性格が明るくないとできない」と話し、笑顔を絶やさずに研究室の若手に話しかけるムードメーカーだ。
皮膚科医でもある教子さんは…