深い眠りに落ちていた私は、キャノンさんに叩き起こされて目が覚めました。それは、他の一般客に配慮して大音量にならないよう必死に抑えているのが伝わる、凄みと切迫感のある声でした。最初は寝すぎたかな?と思いましたが、長く寝た感覚が全くなく、時計を見るとまだ朝の10時半。いったい何が起きたのかと問うと、「掲示板見ろ!日本の得点が無効になってる!」とのこと。
最初は何のことか全く理解出来ませんでしたが、言われた通り掲示板を見ると、ものすごい量の投稿がされていました。どうやら、何らかのマスター判断が発生し、それに対して各国の人員が抗議や質問をしているという構図のようです。
そしてそのマスター判断が書かれた投稿を読むと・・・忘れもしない、時間は9時24分。日本の襲撃報告から、およそ3時間半後です。書き込んだのは、マスターの常駐さん。
「今朝のリトルボーイの移動にも問題があったようで、それに関するマスター判断です。
その結果、襲撃点を57560ptsから0ptに修正します。」
もう、全くわけが分かりませんでした。マスター判断は絶対ですが、その判断が下された理由を聞いても「 さすがに詳しく説明してしまうと不利益を与えてしまう可能性があるので終戦後に説明となります」のみで、どのような状況で日本による襲撃が行われ、なぜこのような判断が下されたのかを決して教えてくれませんでした。これではセンソウ参加者一同誰一人として納得出来ません。当事者である日本のメンバーも、マスターから判断理由の説明を受けていないか、少なくとも納得のいく説明はされていないようで、この判断の是非を決める裁判をしようと言い出す程でした。
マスター判断には従わざるを得ませんが、参加者の誰一人として納得できないような筋の通らないものなら、それはただの権力を乱用した横暴です。終戦間際にして、参加者からマスターへの質問と抗議が殺到し、常駐さんがそれを飄々とかわし、他のマスターは傍観しつつ全く関係のないギャグを投稿するという大荒れの様相を呈してきました。もう我々西ドイツとしても、終戦まで残り2時間を切った中で渋谷から出動しようにも、確たるアテもなく、時間が足りなさすぎました。今から御嶽山駅に戻ったところで、駅について少ししたら終戦です。どこか余裕のある国に爆弾をもらってもらうにしても、一度籠城命令が下されたのに今更終戦までに動ける西ドイツ国民はこの4人以外ほぼ皆無であり、それでは罰ゲームを回避できる見込みはなく、ダントツの最下位である我々が浮上するには、順位の近いソ連かメキシコに撃つしかありませんでした。
もう事実上、この謎めいたマスター判断が覆されることを祈るしかありませんでした。キャノンさんが外交で必死になんとかならないか道を探してくれていましたが、ただ時間だけが虚しく、残酷に過ぎていきました。この、どれだけ祈ろうが、時計をいくつ壊そうが、決して捕えることが出来ず、淡々と同じ速度で過ぎていく時間。時間の絶対の規則性を、これほど残酷に感じたことはありませんでした。
昨日ソ連に撃たれ、ギリシャによる裏切りでさらに撃たれて一度絶望した心を奮い立たすことは出来ました。しかし、その絶望から救われ、安堵した心がもう一度どん底に突き落とされた時、そこからもう一度気力を絞って這い上がろうとするのは、最初の時よりも何倍も困難です。何より、そもそも時間が足りなさ過ぎました・・・
結局、我々は最後まで僅かでも可能性のある方策を見出すことが出来ず、マスターと議論しようにも議論にさえならず、2008年12月26日12時00分、センソウ2008は予定通り終戦を迎え、我々が持っていた2つの爆弾はルール通り爆発し・・・我々は無情にも、敗戦国となりました。
私は申し訳なさで一杯でした。そもそも、マスター判断以前に昨日私が不注意から撃たれる愚を犯さなければ、こんなことにはなっていませんでした。西ドイツ国民のみなさんには、いくら謝っても謝り切れない思いでした。我々に課されるはずの罰ゲームの内容がどのようなものになるか、その発表が何よりも恐ろしく感じました。
今回の日本による襲撃の詳細と、それに伴うマスター判断に関しては、夜に開かれる講和会議で発表されることになりました。その講和会議の前に、この件に関して各国リーダーとマスターで話し合いたいという提案が参加者から出されるなど、終戦を迎えても依然として不穏な空気が漂っていました。
我々4人は渋谷を離れ、それぞれの帰途に就きました・・・。
こうして、西ドイツのセンソウは、やり切れぬ思いを抱えたまま、静かに終わりを迎えたのです。
14/12/23 22:19

