ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する大阪大の坂口志文特任教授=6日午後8時7分、大阪府吹田市
◆―― 大阪大特任教授「非常に名誉」
【ストックホルム共同】スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を、体内の過剰な免疫反応を抑えるリンパ球の一種「制御性T細胞」を発見した坂口志文大阪大特任教授(74)と米国の2氏に授与すると発表した。坂口氏の発見は、アレルギーや自己免疫疾患などの治療や、がん免疫療法、臓器移植後の拒絶反応に関する研究に発展している。
昨年平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に続き日本の受賞は2年連続で、30人・団体となった。生理学・医学賞は18年の本庶佑京都大特別教授(83)以来7年ぶり、6人目となる。
授賞理由は「免疫応答を抑制する仕組みの発見」。同研究所は「研究分野の基礎を築き、がんや自己免疫疾患などの新たな治療法の道を開いた」と評価した。坂口氏は、大阪大の自身の研究室前で報道陣に「非常に名誉に思います」と述べた。
米の2氏はメアリー・ブランコウ・米システム生物学研究所シニアプログラムマネジャーと、フレッド・ラムズデル・米ソノマ・バイオセラピューティクス科学顧問。
坂口氏は、体を病気から守る免疫システムのうち、侵入した病原体などの異物と認識されたものを攻撃するT細胞を研究。正常なT細胞の中に、過剰な攻撃が体に害を与えないよう、抑制する役割を担うものがあることを発見した。
1995年、働きを弱めたり強めたりして免疫を制御するT細胞の同定に成功。2000年に制御性T細胞と命名した。
授賞式は12月10日にスウェーデンで開かれる。賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億7千万円)を3氏で均等に分ける。
坂口 志文氏(さかぐち・しもん) 1951年1月19日、滋賀県長浜市生まれ。76年京都大医学部卒。83年京都大で博士号取得、医学博士。米ジョンズ・ホプキンズ大、米スタンフォード大などを経て、99年京都大再生医科学研究所教授。2007年同研究所長。11年大阪大免疫学フロンティア研究センター教授、16年特任教授。17年大阪大栄誉教授。08年慶応医学賞、12年朝日賞、日本学士院賞、15年カナダのガードナー国際賞、17年スウェーデンのクラフォード賞、20年ロベルト・コッホ賞など受賞。09年紫綬褒章、17年文化功労者、19年文化勲章。74歳。
【ノーベル生理学・医学賞】ダイナマイトの発明で知られるアルフレド・ノーベルの遺言により1901年に始まった賞。「前年に人類に最も貢献し」「生理学、医学の領域で最も重要な発見をした人」に贈るのが、ノーベルの遺言だが、実際は数十年前の業績で選ばれることも多い。過去の受賞者や大学教授ら約3千人に推薦を依頼し、約1年かけて受賞者を絞り込む。日本からは過去に利根川進(87年)、山中伸弥(2012年)、大村智(15年)、大隅良典(16年)、本庶佑(18年)の5氏が選ばれた。
【制御性T細胞】体を病気から守る免疫細胞の一種。体内で免疫反応が過剰に働くのを抑える役割を持つ。胸腺で作られるため、英語「THYMUS」の頭文字をとってT細胞と呼ばれる。T細胞には、体内に侵入した病原体を攻撃する際の指揮官役となる「ヘルパーT細胞」、ウイルスに感染した細胞を殺して排除する「キラーT細胞」といった種類があり、制御性T細胞はブレーキ役を担う。きちんと機能しないと免疫が自分自身を攻撃する「自己免疫疾患」などが生じるが、働きを調整できれば、がんなどの治療に役立つと考えられている。