金利引き上げに迫られる日銀

一方、日銀の政策決定会合は、米国のFOMCより少し遅れて今月18日、19日に開催されます。そこで利上げが行われるかは微妙だと思っていますが、政局が日銀の利上げに影響する可能性もあります。

そして、石破茂首相が9月7日に退陣を表明しました。次期自民党総裁の候補の一人と考えられる高市早苗氏は、以前は利上げに反対の立場をとっていました。一方、小泉進次郎氏は、日銀の立場を尊重するスタンスを示しています。

このことを考えると、この両者のどちらか、あるいは、他の人が自民党総裁になるにしても、日銀としては今後の不確実性を減らす意味でも、総裁選前に利上げをする可能性は十分にあると私は考えています。上げるとすると0.25%で、政策金利上限は0.75%となります。

日銀には利上げを行うべき理由がいくつかあります。

【図表】日本のインフレ率と現金給与総額

ひとつは、日本のインフレ率です。図表2にあるように、現状、代表的なインフレ指数である「生鮮除く総合」で、前年比で3%程度です。「新米なんか逆立ちしても買えない、ウチはこの先も古古古米の備蓄米です」といった嘆きもしばしば聞かれます。7月にインフレを加味した「実質賃金」が7カ月ぶりにプラスになりましたが、これは賞与の影響が大きく、秋以降には再びマイナスになる可能性は低くありません。6月までは6カ月連続で実質賃金はマイナスでした。よって、このままでは2025年通しての実質賃金はマイナスとなることが濃厚です。

これでは、GDPの半分以上を支える家計の支出が伸びるはずがありません。インバウンドによって支えられてきた百貨店の売り上げもついに今年に入って前年比割れとなっています。

実質賃金をプラスにするには、名目賃金を上げるか、インフレを抑えるかのどちらかですが、日本では春闘などで春に賃上げが行われることが多いため、期中での賃上げは望み薄です。そうなれば、インフレを抑制するしかありません。

しかし、現状、日本の政策金利は0.5%で、これではインフレを抑えることはできません。来春にはさらに多くの商品の値上げが確実視されています。またガソリンの補助金やガソリン減税に関しては現在議論中ですが、一方ではその財源を他の税に求める動きも出ており、それでは家計は一向に豊かになりません。朝日新聞が8月24日付で報じた「ガソリン減税の代わりに新税、政府検討 車の利用者から徴収する案」といった記事に対してはネットで1万件以上の主に大反対の声がたくさん寄せられたという。国は早急な利上げによるインフレ抑制が必要です。

車に関しては、車両価格308万円の普通車を13年間使用した場合の自動車関連税負担総額は65万円超ですが、アメリカでは3万円弱で、日本の負担はアメリカの23.4倍(日本自動車工業会=JAMAの試算)とのことで、食費を中心とした物価高騰とともに、国民の怒りは限界に達しているのではないでしょうか。

金融資産も目減りが続く

また、日本の個人金融資産は約2200兆円ありますが、そのうちの預貯金は約1000兆円です。現状の預金金利では、3%のインフレ率よりも大幅に低く、日本全体では年間数十兆円目減りし、家計は損をしています。もちろん、これは望ましい状態ではありません。

これらのことを考えれば、利上げは必要です。政府は1000兆円を超える国債を発行しており、利上げが財政を悪化させることを心配する人もいますが、国債の半分以上は日銀が保有し、日銀が利上げで得られる金利は、政府に還元させることもできます。

借り入れの多い企業が大変という声も聞きますが、長年低成長を続ける一つの大きな原因であるゾンビ企業が淘汰されやすくなるのはむしろ望ましいのではないかと私は考えます。

M&Aなどをうまく活用すれば、ゾンビ企業もより強い企業と一緒になれますし、そこで働いている人たちもより良い企業に転職できるのではないでしょか。

いずれにしても今週のFRBと日銀の動きに注目です。

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