ワクチンで人為的感染の「ヒトチャレンジ試験」 開発迅速化へ政府検討 倫理で課題も
さらに日本の企業や大学とともにCHIMを含めた協力を模索していく考えを示し、「ワクチン開発には、政治的なサポートが必要。国レベルで協力体制を求めていきたい」と話した。
■開発競争、政府の施策が鍵
新型コロナでは治験に時間がかかったことが、早い段階で開発に着手した米ファイザーなど欧米勢に対して日本勢が出遅れた原因だった。
独自開発のワクチンについて昨年6月に承認を得た塩野義製薬は、ベトナムで1万人以上を対象に自然感染に対する発症抑制効果をみるプラセボ比較試験を実施。流行株が変異するなどして十分なデータが得られず、ウイルスの働きを抑える中和抗体価を他社製と比較してデータを補った。
このためCHIMは国内でも選択肢として浮上している。ただ、政府の同推進計画は「倫理的にも安全性の観点からも課題が指摘されている」と記載。製薬関係者は「CHIMと自然界では感染状況が違うため、体内での免疫の働き方が変わり、データの有効性に疑問も出ている」と話す。
世界保健機関(WHO)は20年5月、CHIMを許容する場合の倫理基準を公表。試験は高い科学的正当性を備えねばならない▽見込まれる利益がリスクを上回ることが合理的に期待されるものでなければならない-など8項目を示した。日本がCHIMを導入する場合は、政府が厳格な制度設計やリスク管理の対策を講じることが不可欠になる。
厚労省はCHIM以外にも治験期間の短縮に向けて、基礎研究と治験を並行的に行うなどの取り組みを進めている。世界との競争に打ち勝つワクチン開発体制をつくれるかどうかは、政府の施策が鍵を握っている。
■「エコシステム」築いたベルギー
ベルギーには、米ファイザーや米ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスのノバルティスといった世界的な製薬企業が製造拠点や研究所を置いている。万博のベルギー館では「ベルギーは世界最大のワクチン製造工場です。毎日150万回分のワクチンを160カ国に供給しています」と紹介している。新型コロナ禍には、45億本以上のワクチンが同国で製造されたという。