ブルーアーカイブ クローンティーチャー   作:セサミストリート

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己の信念は、時に足枷になりかねない


未知との遭遇

シャーレの建物に突入し、俺とリンは地下に続くエレベーターに乗る。この狭さは少し窮屈を感じるので、気を紛らす為にブラスターライフルの調整をする。正直なところ、俺はじっとしているのは苦手だ。

 

「リン、地下にはどれくらいに着くんだ?」

「あと数分で着きます」

 

エレベーターに乗るまで待ち伏せや奇襲はなかったが、何故か妙な気配を感じる。地下に何かあるのだろうか?

 

「…先生、1つ聞いてもいいですか?」

 

リンは俺の顔を見て質問してきた。何故かランコアみたいな怖い顔をしているが…

 

「何だ?」

「どうして先生は戦うのですか?」

 

リンの質問の意図はわからないが、どうやら俺が戦う理由を知りたいらしい。とはいえ、俺がクローンであることは言わないほうがいいだろう。無駄な混乱を生むだけだ。

 

「そうだな。俺は戦うために生まれたからな」

「戦うため…?」

「あぁ、共和国の勝利のため、まだ見ぬ子供たちの為に戦っている。ここに来る前はな」

「…そうなのですね」

 

リンは不服そうに、体をエレベーターの扉に向けた。

 

「…先生、今回の奪還に関しては先生の力があってここまで来れました。ですが、これからは先生は戦わないでください」

 

リンの顔は見えないが、体が震えているのがわかる。何を怯えているのだろうか?

 

「…すまない、それはできない」

「何故ですか?戦闘は全て生徒に任せればいいじゃないですか?」

「俺はそれが気に食わない。第一『大人』は子供を守る存在のはずだ」

 

俺はリンの肩を掴み、俺の方に向かせる。この際だからはっきり言っておいたほうがいい。

 

「いいか、俺は『大人』であり『兵士』だ!これからもそれは変わらない!さっきも言ったが、俺は戦うために生まれたんだ。この学園都市の問題が戦いで解決するなら、俺は全力でお前たちを守る。そのためなら、命は惜しくはない!」

「馬鹿なことを言わないでください!先生がいなくなってしまったら、残された私達はどうするんですか!?そんなことは絶対に私は認めません!」

 

俺とリンの意見が噛み合わず、リンは俺を睨みつける。本当はこんなことはしたくないが、俺には戦いが全てなんだ。

一般人にはわからないだろう。戦場で生き残ることの難しさを、目の前で仲間(兄弟)を失う喪失感も。俺はこのキヴォトスの子供達に知ってほしくないし、幸せになってほしい。

そんなことをしているうちに、エレベーターは地下に止まった。

 

「…この話はまたあとだ。今は目の前のことに集中するぞ」

「…わかりました。こちらです」

 

リンを先導させ、目的地の部屋に向かう。この話は多分、一生理解できないだろう。『兵士』として生きる俺と、幸せの中で生きるリンとでは…

 

「ここが目的地の部屋です」

 

リンが指を指した場所は、1つの扉だ。見たことがない扉で、どうやって開けるのかわからない。

 

「…待て」

 

リンが開ける前に、扉の先に誰かの気配を感じ、俺は止めた。

 

「…ん…こ……なの……せんね…こわ…にも……」

 

扉越しで聞こえづらいが、声からして中には一人だけのようだ。

 

「リン、そこで待て。俺がいいと言うまで出てくるな」

「何を言って…!」

「命令だ」

 

俺はヘルメット越しでリンを見て、肩に手を置く。連邦生徒会の代理人がここで大怪我したら、俺では対処できないからだ。

 

「…わかりました」

 

リンは扉から少し離れた所で身を隠れた。俺はリンの安全を確認して、ブラスターライフルを背中に背負い、ブラスターピストルに持ち替えた。

 

「…よし」

 

俺は扉を蹴っ飛ばし、声の主にブラスターピストルを向ける。

 

「動くな!」

「…!」

 

部屋にいたのは、前に戦ったワカモだった。ワカモは驚きながらも銃口をこちらに向けて撃ってきた。弾はヘルメットに当たり、ヘルメットは地面に転がった。

 

「くっ…!」

 

俺は衝撃で後ろに倒れるが、後転してもう一度ワカモにブラスターピストルを構え直す。

 

「もうここまで来たのですか、生徒会の子犬たちもしつこ……あら?」

 

ワカモは俺の顔を見て、固まってしまった。お互いに武器を構えている為、油断はできないがとりあえず自己紹介はしておこう。

 

「俺はアッドだ。どうやってここに入った?」

「……」

 

自己紹介はしたが、全く反応がない。仮面をつけているからどんな表情をしてるのかもわからない。何とも奇妙な奴だ。

 

「あら、あららら……」

 

ワカモは銃を下げ、俺をジロジロ見て近づいてくる。その姿には、少し不気味さがある。

 

「…何を見ている?俺が珍しいか?」

「……」

 

質問してみたが、全く反応がない。というか、どんどん近づいてくる。何だこいつ。

 

「あ、あぁ……」

 

近づいて来たと思ったら、今度は体をくねくねし始めた。少し気持ち悪いな。離れてほしい。

 

「どうやってここを知った?何処から情報を手に入れた?お前の雇い主は誰だ?」

「……」

 

情報を聞き出そうにも、全く反応がない…いや、反応はしてはいるがくねくねしてるだけで、全くこちらの話を聞いてない。

 

「し…し…」

「…し?」

「失礼いたしましたー!!」

「な、待て!」

 

ワカモは一目散に逃げ出し、止めようとするも既に走り去ってしまった。残ったのは俺だけだ。

 

「…何だったんだ?」

 

不審に思いながらも、ヘルメットをかぶり直し、周囲に罠が仕掛けられてないかバイザーで確認し、リンを呼んだ。

 

「お待たせしました。何かありましたか?」

 

俺はリンにワカモがいたことを話そうとするが、面倒になったので言わないことにした。

 

「何でもない。気にするな」

「…そうですか」

 

リンは近くにある机に近づき、机の上にある何かを手にした。

 

「ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています。幸い、傷一つなく無事ですね」

 

リンは手に持った『何か』をこちらに差し出した。

 

「受け取ってください」

 

リンから差し出されたものは、薄いホロカムのような通信端末だった。

 

「それは?」

「これが、連邦生徒会長が先生に残した物、『シッテムの箱』です」

 

この通信端末の名は『シッテムの箱』というらしい。何故だかわからないが、この通信端末を何処かで見た記憶があるし、名前も聞いたことがある。

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも、システム構成も、動く仕組みもすべてが不明…連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生のもので、先生がこのタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」

 

連邦生徒会長は俺がここに来ることがわかっていたようで、ここに『シッテムの箱』をおいていったようだ。重要な物なら確かに誰の目にも着かないここなら最適だろうが、もう少し場所を選んでほしいものだ。それはともかく、俺はリンから『シッテムの箱』を受け取った。

 

「私達では起動すらできなかったものですが、先生ならこれを起動させられるはずです」

「……」

 

リンの説明に、俺は少し疑問を感じた。誰も起動できなかった物を俺に渡しても起動できる保証はどこにもないからだ。

 

「…では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています。邪魔にならないよう、外にいますね」

 

リンは俺に『シッテムの箱』を手渡し、部屋の外に出てしまった。

 

「…起動ボタンは何処だ?」

 

渡された『シッテムの箱』は、見たことがない通信端末で、何処かにスイッチがあるはずだが、どこにもに見当たらない。今度製造会社がわかったら文句を言ってやる。

 

「……」

 

スイッチを探すのをやめ、タブレットの表面を触ってみる。するとひとりでに電源が入り、画面に文章が映し出される。

 

Connecting To Crate of Shittim…

システム接続パスワードをご入力してください

 

「…パスワード?そんなもの知らないぞ」

 

ディスプレイに映し出された文字に困惑し、どうしたものかと頭を傾げる。すると、不意に脳裏に文字が浮かび、そのまま文章にして入力する。

 

……我々は望む、7つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

「…いまのは何だ?」

 

脳裏に浮かんだ文章は全く知らない、どこで知ったのかもわからない筈なのに、何故か覚えている。もしかしてこの通信端末にフォースが宿っているのか?

 

……

接続パスワード承認。

現在の接続者はアッド、確認しました。

 

『シッテムの箱』へようこそ、アッド先生。生体認証及び認証書作成のため、メインオペレーションシステA.R.O.N.Aに変換します。

 

「…アロナ?」

 

どうやらパスワードはあっていたようで、ディスプレイからまた文字が出てくる。何とも奇妙な通信端末だ。

画面が切り替わり、映し出されたのは見たこともない部屋で、ひとりの少女が机の上にうつ伏せで居眠りしている。

 

「くぅぅ…くぅぅ…」

「…」

 

俺は目の前の出来事に驚き、しばらくディスプレイを見つめる。

 

「むにゃぁ…カステラにはぁ…いちごミルクよりぃ…バナナミルクのほうが…」

 

少女は眠っており、聞いたことのない言葉をうわ言で話している。

 

「くぅぅ…えへっ…まだたくさんありますよぉ……」

「……とりあえずこいつを起こすか」

 

俺は意識を取り戻し、ディスプレイで寝ている少女を画面越しで突いてみる。

 

「うにゃぁ…まだですよぉ…しっかり噛まないと……」

「…全く起きないな」

 

つついても起きないので、今度は端末を揺らしてみる。

 

「あぅん……でもぉ…」

「…これでもだめか」

 

揺らしても全く起きないので、もう一度つついてみる。しかし、こんな所で眠っているとは、呑気なものだ。

 

「むにゅ…んもう…ありゃ?」

 

少女は体を起こし、こちらに顔を向ける。少女はまだ眠そうだ。

 

「ありゃ…ありゃりゃ……え?あれ?あれれ?せ、先生!?」

「やっと起きたか」

 

少女は俺をジロジロ見た後、驚くような仕草を見せる。感情豊かで少し驚いている。

 

「この空間に入ってきたっていうことは…ま…ま…まさかアッド先生……!?」

「そうだ。お前は誰だ?」

 

少女は俺のことを知っており、自己紹介が省けたと俺は思った。しかし、名前を言ってないはずなのに、何故こいつは知ってるんだ?

 

「う、うわぁぁ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」

 

そっちに時間の概念があるのか…?兎に角、少女の話を聞こう。

 

「うわ、わあぁ?お、落ち着いて、落ち着いて…」

 

…この感じ、どこかで見たな。

 

「えっと…その…あっ、そうだ!まず自己紹介から!私はアロナ!この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

少女は落ち着きを取り戻し、自己紹介を始めた。少女の名前はアロナ。この『シッテムの箱』のAIみたいな存在だ。

 

「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーーっと待っていました!」

 

どうやら長い間ここに俺を待っていたようだ。その割にはぐっすり寝ていたような…。

 

「寝ていたんじゃなくてか?」

「あ、あうぅ…も、もちろんたまに居眠りしたりしたこともあるけど…」

「その割にはよく寝ていたんじゃないか?」

「あぅぅ…」

 

アロナは顔を赤くし、恥ずかしがっている。AIにしては、感情表現が人間のそれに近い。中々面白いな。

 

「すまない、少し意地悪だったな。これからはよろしく、アロナ」

「はい!よろしくおねがいします!まだ体のバージョンが低い状態でして、特に声帯あたりの調整が必要ですが…」

 

ディスプレイで話しているから音声の調子が悪いと思っていたが、どうやらアロナ自体のバージョンが低いらしい。どうなってるんだこのシッテムの箱は?

 

「これから先、頑張って色々な面で先生のサポートしていきますね!」

「それは心強いな。何ができるんだ?」

「それは秘密です!見てからのお楽しみってことです!」

 

アロナは口に手を当てて、わかりやすく内緒のポーズをする。本当に感情表現が人間そのものだ。

 

「あ、そうだ!形式的ではありますが、生体認証を行います!」

「どうすればいいんだ?」

 

アロナは画面でもじもじしている。何というか、面白い子供だ。

 

「うぅ…少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです…こちらの方に来てください」

「画面に近づけばいいのか?」

 

アロナの指示に従い、ヘルメットを取って顔を画面に近づける。画面に写った俺の顔は、一本線の傷以外にあちこちに傷がある。あまりこの顔をみてほしくはないが…

 

「もう少しです…さぁ、この私の指に、先生の指を当ててください」

「あ、あぁ…」

 

顔じゃなかったのか…顔じゃないならそう言ってくれ、少し恥ずかしくなったぞ。とりあえず、アロナの言う通りに指を出してみるか。

 

「うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

「指切り…?何だそれは」

「え!?先生、指切り知らないんですか!?」

「あぁ、知らない」

「えぇ……?」

 

アロナは困惑して驚いている、そんなに驚くか?俺の世界だと約束なんて裏切りの前借りみたいなものだから、約束なんて意味のないことだ。

 

「兎に角、これで生体情報の指紋を確認するんです!」

「…スーツ越しでもできるのか?」

「ふっふーん、私には全てお見通しです!まぁ、画面に残った指紋を目視で確認するのですが…すぐ終わります!こう見えて目がいいので!」

 

AIに目があるのかは兎も角、とりあえず待ってみるか。

 

「どれどれ……?」

 

アロナは指を離し、画面に映る俺をじっと見つめる。

 

(う〜ん…よく見えないかも……まぁ、これでいいですかね)

 

アロナは困ったような、納得したような表情をコロコロ変える。本当に出来てるのか不安になるぞ。

 

「はい!確認終わりました!」

「…本当に確認したのか?時間もかかったし困った顔をしていたぞ?」

「そ…そんなことありません!」

「そうか?俺のところは1秒もかからずに承認できたんだが」

「わ、私にはそんな最先端な機能はないのですが…そ、そんな能力がなくてもアロナは役に立ちますから!?目でも十分確認できますから!」

「…まぁ、アロナがそういうなら、それでいいんだか…」

 

なんだろう、このポンコツ感。少し心配になるぞ。ハッキングなれたらものの数秒で情報を抜き取られるんじゃないか?

 

「…全然信じてない顔ですね…うぅ…」

 

アロナは泣きそうな顔でこちらを見つめる。そんな目で俺を見ないでくれ…

 

「いや、俺はアロナを信じる。期待しているぞ」

「本当ですか!?なら、頑張らないといけませんね!」

 

泣きそうな顔から笑顔に変わり、俺は安堵した。というか、AIが泣くってそれこそ最先端な気もするが…

 

「そういえば、先生はどうしてここに来られたのですか?」

「そうだな…何処から話そうか…」

 

遠い銀河からこの星にきた、なんてアロナは信じないだろうし、取り敢えずリンと会ったところから話そう。

 

ーーーーーーー………

 

「なるほど…先生の事情は大体わかりました」

(信じるのか…このAIはチョロいところがあるな…)

 

所々嘘を交えながら話したが、全部信じたのは驚いた。

 

「連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった…」

「そうだ。その連邦生徒会長についてどのくらいわかる?」

「そうですね…私はキヴォトスの情報を多く持っていますが…連邦生徒会長については殆ど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのか…」

「そうか…」

 

どうやら連邦生徒会長の情報はほとんど残ってないらしい。唯一わかるのは、連邦生徒会長という少女がいただけだ。まるで雲のような存在だ。

 

「お役に立てず、すみません…」

「気にしなくていい、元々連邦生徒会長は首席代行官のリンでも殆どわかってなかった位だからな」

「はい…ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決出来そうです」

 

連邦生徒会長のことは今は置いておき、目的であるサンクトゥムタワーの問題をアロナは解決できるらしい。

 

「アロナ、サンクトゥムタワーとは何だ?」

「え、先生サンクトゥムタワーを知らずにここに来たのですか?!」

「あぁ、教えてくれ」

「はい…この学園都市『キヴォトス』を管理する中枢部、いわば司令塔みたいなものです。本来は連邦生徒会長が制御権を持っていましたが、突如行方不明になり、制御権が誰にもなかった状態だったんです…」

「そうだったのか…なら、早く修復しないとな」

「はい!それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お持ちください!」

 

アロナは修復に専念し、真面目な顔になる。すると、部屋から音が聞こえた。音が消えたときには、暗かった部屋が明るくなった。

 

「電力が戻った…?これがアロナの能力か」

「サンクトゥムタワーのadmin権限を習得完了……先生!サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました!今サンクトゥムタワーは私アロナの統制下にあります!」

「…つまり?」

「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも当然です!」

 

アロナの作業が無事に完了し、サンクトゥムタワーは俺の支配下になった。要は、評議会最高議長(パルパティーン議長)と同じ地位を手に入れたようなものだ。

 

「先生が承認さえすれば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます!」

「なら、制御権を連邦生徒会に移管してくれ」

「即答ですか!?でも…大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても…」

「どの道俺では全てを扱えることはできない。それに、今まで統括していた連邦生徒会の方がやりやすいはずだ。まぁ、リンなら上手くやるさ」

 

それらしいことは言ったが、正直なことを言うと、俺はキヴォトスを支配する気は毛頭ないし、何なら外の俺が扱える代物ではないと判断したからだ。

 

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」

「あぁ、頼む…リンにも説明しておくか」

 

ーーーーーーー………

 

「…えぇ、わかりました」

 

リンは部屋に戻り、『シッテムの箱』より小型の通信端末で誰かに連絡していたが、程なくして終わった。

 

「先生、サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められます」

「それはいいニュースだな」

 

リンは制御権の確保がわかり、安堵している。やはり子供は笑顔が一番いい。

 

「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝します」

 

リンは頭を深く下げて、俺に感謝の言葉を述べた。

 

「頭を上げてくれ、俺は何もしてないさ。感謝を言うなら助けてくれた4人に言えばいい」

「ですが、ここまでたどり着けたのは先生の指揮があってこそです。あまりご謙遜なさらないでください」

 

確かに奪還の作戦や指揮をしたのは俺だが、それを素早く実行し、制圧できたのはリンやユウカ達だ。指揮官が指示をしても、部下が動かなければただの木偶の坊に過ぎない。その点このキヴォトスの生徒たちは俺より優れている。

 

「ここを攻撃した不良達と停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」

「そこはリンに任せる、だが、出来れば穏便に頼む」

「…善処します」

 

絶対穏便に済ませる気はないな…『討伐』の時点で穏やかではないのはわかっていたが。

 

「それでは『シッテムの箱』は渡しましたし、私の役目は終わったようですね…あ、もう一つありました」

「何だ?」

 

目的である『シッテムの箱』と『奪還』で終わったと思ったが、まだやることが残っているようだ。

 

「ついてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介します」

 

俺はリンに付いていき、地下の部屋を後にした。

 

ーーーーーーー………

 

「ここが、『シャーレ』のメインロビーです。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることができましたね」

 

部屋の前に着き、リンは扉を開けて中に入った。壁に貼ってある『空室、近々始業予定』は誰が書いたんだ?そんなことを思いながら、俺も部屋に入っていく。

 

「そして、ここがシャーレの部室です。ここで先生のお仕事を始めるといいでしょう」

「ほぉ…」

 

部屋の中は荒れていると思っていたが、とてもきれいにまとまっており、清潔感溢れる部屋だった。机の上には見たことのない紙がタワーのように置いており、少しでも揺らすと倒れそうだ。奥の方は見たことのない武器が壁に掛かっており、触れようとしたらリンに怒られた。リンが帰ったらバラして調べるとしよう。

 

「それで、俺はここで何をすればいいんだ?」

「…シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない…という強制力は存在しません」

「それで?」

「キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です」

 

つまり、俺が入れと命令すれば所属する部員は増え続けることになるのか。連邦生徒会長は中々面白い部活を作ったものだ。

 

「面白いですよね、捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も触れていませんでした…つまり、何でも先生がやりたいことをやってもいい…ということですね」

「何でも…か」

 

権限だけでもすごいが、特に命令がなく自分の好きなようするのは俺としては少し困るな…待てよ、となると俺が指名すれば、501軍団のような部隊も作ることができるのか?

 

「…本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。私達は彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力はありません」

「…一応聞くが、どんな問題があるんだ?」

「そうですね…今も連邦生徒会に寄せられてくる苦情…支援物資の要請、環境改善、落第生の特別授業、部の支援要請などなど…」

「…よく今まで対応できていたな」

 

連邦生徒会がどこまで対応していたかは知らないが、それだけの問題を子供達だけで解決していたのは驚きだ。

 

「…もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」

 

…何か嫌な予感がするぞ。

 

「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください。全ては、先生の自由ですので…」

「…了解した」

 

やっぱり嫌な予感は的中した。とはいえ、今まで子供達が対応できていたのに、『大人(兵士)』の俺が弱音を吐くわけにはいかない。ここは頑張るしかないな。

 

「それではごゆっくり、必要な時には、またご連絡いたします…そういえば、先生はスマートフォンをお持ちですか?」

「スマート…?コムリンクならあるぞ。そうだ、リンに渡しておく」

 

俺はリンにコムリンクを渡した。リンは奇妙な顔つきでコムリンクを見ている。

 

「あの、これは…?」

「コムリンクだ。何かあればそれで連絡してくれ」

「…分かりました。後でスマートフォンと『先生』専用のスーツをご用意しますね」

 

…スーツ?スーツとは何だ?

 

「この格好じゃだめか?」

「あまりにも目立ちますので、後で持ってきますね」

「これならすぐに戦と」

あ·と·で、持っていきますね?

「…わかった」

 

相変わらずリンの顔は怖いな、特に黒いオーラが見えたときは要注意だ。下手したらオロさるかもしれない。

 

「では、外の暇な…護衛をしている方々にも説明しましょう」

「そうだな、行こうか」

「はい、アッド先生」

 

…もうツッコむのも辞めておこうと思い、俺とリンは外で待っているユウカ達のもとに向かった。

 

ーーーーーーー………

 

「えぇ、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」

 

リンの説明にユウカは通信端末で誰かに連絡し、程なくして終わり、リンの説明に納得してくれた。

 

「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど…すぐ捕まるでしょう」

「ああいう輩は逃げ足が速いからな、そう簡単には捕まらないだろう」

「…何か同じ経験をしているような話し方ですね?」

 

俺は様々な戦いでグリーヴァス(ブリキの大将)ヴェントレス(シス卿)と遭遇したが、殆どはジェダイとの戦いで逃げられている。多分ワカモも似たようなものだろう。

 

「…まぁ、気にしなくていい」

「そうですか…では、私達はここまでです。後は、担当者に任せます」

 

ハスミは深く頭を下げたが、正直なことを言うと、俺はそういうのは苦手だ。

 

「それにしても、爆発や銃撃でボロボロだったはずだが、結構きれいになっているな」

 

周りを見渡すと、建物の修復や怪我人の搬送で殆どがきれいに治っている。

 

「まぁ…あれくらいはいつものことですから」

「…」

 

いつも戦っているのか…?ここはマンダロアの内戦でも再現してるのか?

 

「兎に角、お疲れ様でした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

「そうだといいな」

 

あまり有名になりたくないという本心は隠しておこう。

 

「みんなお疲れ様、ありがとうな」

「いえ、面白い体験をさせてくださったので、私も楽しかったです。ここでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。アッド先生」

「この戦術は今後の自警団にいかしてみます。本当にありがとうございました」

「私も、風紀委員会に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃったときは、ぜひ訪ねてください」

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?アッド先生、ではまた!」

 

ユウカ達と握手をし、全員がそれぞれの学園に戻っていった。全員が見えなくなった頃に俺はシャーレのオフィスに戻った。

 

ーーーーーーー………

 

「……」

 

シャーレの部室の反対側のビルに、ワカモはアッドを見ていた。

 

「あぁ…これは困りましたね…」

 

ワカモが呟いていると、背後に『男』が近づいてきた。

 

「あら、いらしてましたのね。てっきり逃げたと思いましたわ」

「……」

 

『男』は何も言わず、ただアッドを見つめていた。

 

「この結果はあなたの計画通りなのですか?」

「……」

 

『男』は答えないが、ワカモには少しだけ頷いたように見えた。

 

「まぁ、あなたの計画なんてどうでもいいです。ですが、あのお方には手を出さないでくださいまし?」

「……」

 

『男』はまた答えず、その場から離れていった。

 

「アッド先生…フフ…フフフ…ウフフフフ…♡」

 

ワカモはひとしきり笑ったあと、何処かに行ってしまった。まるで誰もいなかったかのように…

 

ーーーーーーー………

 

俺はオフィスに戻り、近くにおいてあったソファーに身を預けた。先程まで感じていなかった疲労感が一気に押し寄せ、体が起き上がらなくなっていた。

 

「この程度で疲れていたら、キャプテンに怒られるな」

 

近くに置いてあった『シッテムの箱』を手に取り、アロナを呼び出した。

 

「あはは…なんだか慌ただしい感じでしたが…ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした。アッド先生」

「あぁ、アロナもお疲れ様。今日は色々ありすぎた…」

 

ダブレットの向こう側にいるアロナは笑顔でこちらに話している。なぜかはわからないが、少しだけ疲れがなくなった気がした。

 

「はい!でも、本当に大変なのは、これからですよ?これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決するんですから!単純に見えても決して簡単ではない…とっても重要なことです!」

 

アロナはわかりやすく目をキラキラさせている。この笑顔に答えるのは一つだけ。

 

「そうだな、すぐにでも取り掛かろう」

 

俺が弱音を吐かず、この世界の子供達を守ることだ。結局はやることは変わらない。今までは共和国に勝利をもたらすために戦ってきたが、このキヴォトスの子供達を笑顔にするのが今の俺の『大人』としての責務と義務がある。

 

「はい!キヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします!アッド先生!」

「これからよろしくな、アロナ」

「はい!それではこれより、連邦捜査部『シャーレ』として、最初の公式任務を始めましょう!」 

 

 

いつか必ず戻る。それ待っていてくれ。ヘイロー、ホールテール。

 

                episode 0 完




やっとここまで来ました…次からは原作に沿って話を作っていこうと思います!もしかしたら、あのキャラが登場するかも?

では、フォースと共に在らんことを…

本編(原作)だと先生は生徒の足をなめたりする過酷(死刑!)な大人ですが、アッドもそうであるべきでしょうか?

  • 舐めるべきや
  • ん、アッドも過酷するべき
  • う〜ん…微妙!
  • そこまでしなくても…
  • やめなされやめなされ…
  • 解釈違い
  • やっても…変わらないかな?
  • なんだったらためてたものをさらけ出せ
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