氷河期世代は本当に「正社員になれなかった」のか?データから見える「意外な実態」とは
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とまれ、公的データで、「大学卒業時点で無業・フリーターだった人は、30代前半までに約75%が不安定雇用を脱し、40歳時点だと不安定就業者は卒業時点の約15%」となっていることが確認できる。「卒業時点の不遇のせいで、熟年でも非正規」という人は、大卒者には少ないことがわかるだろう。 ● 不安定雇用を脱せた人は データより実際もっと多い? 実はこの推計は、不安定雇用を脱せた人が実際よりも少なめに出ている可能性が高い。実数はもっと多いだろう。以下、その理由を書いておく。 まず、前記データでは、非正規雇用から正社員化した人の数が2012年(35歳当時)までしか把握できない。40歳までにはさらに正社員化が進んだものと思われる。 また、「正社員になるまでにかかった期間」の区分が、「10〜17年」という大きな区切りでしか見られない。この数字はすべて「35〜39歳」に入れるしかなかった。本来であれば、「10〜12年」は「30〜34歳」にカウントすべきであり、そのため、30代前半に正社員・経営者となった人の数が下振れしている。 加えて、就業構造基本調査は、全体的に数字が小さめに出る傾向がある。例えば、2000年卒の大卒者数(大学院進学を除く)を文科省の学校基本調査と比べると、就業構造基本調査は6.3%ほど少ない。 学校基本調査は「ほぼ全量調査」であり、就業構造調査はサンプル調査なので、正確さは前者に軍配が上がる。たぶん、就業構造調査がサンプルをウェイトバック(調査数を現実の数に割り返して伸ばす)する作業の中で、基準とした項目の特性により、詳細項目でバイアスが生まれたのだろう。 専門的な話はこれくらいにして、ともかく、こうした「控えめ」な推測で見ても、超氷河期に大学を卒業した大卒者の8割近くが、30代前半までに不安定雇用を脱していたことは確かだろう。
海老原嗣生
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