氷河期世代は本当に「正社員になれなかった」のか?データから見える「意外な実態」とは
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● 「バブル期は誰でも大手に行けた」と 「氷河期は大手少数」は共に間違い ただ、俯瞰してみればバブル期(1988〜1992年)の大手企業就職数の平均は年約11.7万人弱であり、氷河期の平均約10.4万人との差は1割程度と、かなり小さい。「バブル期は誰でも大手に行けた」、「氷河期に大手はごく少数」という話はどちらも「偽り」とおわかりいただけただろう。 「大手企業の新卒採用数」をさらにさかのぼると、80年代前半までは年3.7〜7.4万人程度であり、この数字は氷河期よりはるかに少ない。大学定員の差を考慮しても、なおまだ少なさを感じるだろう。 過去の就職環境を見てくると、「バブルの一時期」こそが「異常値」であり、それ以前と比べるなら、氷河期もむしろ悪くない状況だったと言えるかもしれない。 ● 氷河期世代の卒業後は 本当に「正社員は程遠かった」のか? 続いて、氷河期世代の卒業後を追うことにしよう。 最悪期(2000年卒)には、大学を卒業しても無業・フリーターになる人が14万3000人超もいた。彼・彼女たちは、引用したいくつもの氷河期世代記事が書くように、その後、「何社も何社も非正規を続け、正社員は程遠かった」のか? 今度はこれを調べていくことにする。 こちらは、厚生労働省の就業構造基本調査に実に細かいデータがある。とりわけ、2012年と2017年の調査は、氷河期世代のその後がわかるように、「卒業してから何年後に初職で正社員になれたか」にあたる項目がある。加えて2012年調査では、「初職」「現職」の関係までわかるので、初職が非正規で、そこから現職では正社員になれた人の数も把握できる。 この2つの調査を併せて、「氷河期のどん底=2000年に卒業した大卒男女のその後」を分析したのが図表5となる。数値をたどっていくことにしよう。
まず、2000年卒業者には、14万3000人の無業・フリーターが存在した。このうち初職で正社員になった人をトレースすると、卒業後、1〜3年(未満、以下同)で4万3000人、3〜5年で1万3600人、5〜10年で1万6300人、10〜17年で1万1800人。 加えて、卒業12年後までに非正規等から正社員になった人が2万5000人。合計すると、卒業後12年以内(=35歳まで)でも9万7900人、17年以内(=40歳まで)に10万9700人が正社員化している(卒業年が23歳と仮定する、以下同)。 ● 大卒の多くは35歳までに 不安定雇用を脱している このほかに、起業や相続等で経営者・役員になった人たちもいるので、「起業・相続等」も示した。こちらの総数も、35歳までで1万人、40歳までで1万1700人となる。 両者を合計すると、非正規や無業・フリーターなどから脱出できた2000年大卒男女は、35歳までで10万7900人(無業・フリーターのままは3万5100人)、40歳までだと12万1400人となる(無業・フリーターのままは2万1600人)。 (※ただし、学校基本調査では「無業・フリーター」14万3000人以外に「死亡・不詳」という括りがあり、前記の就業構造基本調査には不詳から正社員化等をした人も算入されている可能性がある。だが、その人数は不明なので、ここでは14万3000人を母数としておく) 新卒時に就職が厳しかった氷河期世代も、その不運に甘んじることなくチャレンジし続けた結果だろうし、政府の「本気の施策」も大いに奏功したはずだ。
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