北米

2024.08.14 12:00

米国で広がる「学校でのスマホ使用」禁止、カリフォルニア州でも

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そのほか、ここ1年でオクラホマ、ワシントン、カンザスバーモント、コネチカット、バージニア、メリーランド、アリゾナなどの州で授業中の携帯電話使用を禁止する法案が提出された。ユタ州のスペンサー・コックス知事は、今年初め、同州全体で教室内での携帯電話の使用を禁止することを支持すると述べた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事も来年規制を提案する考えという。

全米教育統計センターによると、2021-2022学校年度に学業以外での携帯電話の使用を制限していると回答した学校は77%だった。非営利団体コモンセンス・メディアの調査では、10代の若者の約97%が学校内で携帯電話を使用していることが明らかになった。

学校での携帯電話の使用制限を求める声が近年高まっているのは、携帯電話の使用が増えるにつれて、SNSが青少年に悪影響を及ぼしていることが研究結果で示されているためだ。米シンクタンクのピュー研究所が4月に行った調査によると、米国の高校教師の約72%、中学教師の約33%が授業中に携帯電話で注意力が散漫になることは「大きな問題」だと回答している。

全米で携帯電話の使用制限を求める声が上がっているにもかかわらず、制限に反対しているのは「緊急時に携帯電話が必要」と主張する保護者がほとんどで、その一方で実際に使用を制限するのは難しいという学校関係者もいる。

米国の公衆衛生政策を指揮するビベック・マーシー医務総監は6月のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「SNSは青少年の精神衛生に重大な害を与える可能性がある」と指摘し、SNSプラットフォームに警告の表示を義務づけるべきだと述べた。マーシーは2023年にも、「重大なリスク」が証拠で示されているとして、SNSの使用が青少年の精神衛生に与える影響について警告を発した

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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北米

2024.06.18 13:30

SNSにタバコと同じ「警告文」を、米公衆衛生トップが提言

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米国の公衆衛生政策を指揮するヴィヴェク・マーシー医務総監は、SNSにタバコと同様の「警告文」をつけるべきだと訴えた。

マーシー総監は、米国時間6月17日のニューヨークタイムズ紙への寄稿で、「ソーシャルメディアは青少年の精神衛生に重大な悪影響を及ぼす可能性がある」という警告ラベルを各プラットフォームに貼ることを義務付けるべきだと主張した。

このラベルは、タバコ製品に義務付けられているものと同様のものになるという。マーシー総監は、SNSにタバコ製品と同様の警告ラベルを貼ることで「人々の意識を高め、行動を変えることができる」という研究結果や、警告ラベルによって親が子どものSNS利用を監視したり制限したりするようになる可能性があるとする調査結果があることを指摘した。

マーシー総監はまた、SNSプラットフォームの無限スクロールや自動再生などの「依存性を高める機能」を禁止する法律の制定や、プラットフォームが子供からセンシティブなデータを収集することを禁止し、自社製品の健康への影響に関するデータをすべて開示することを義務付けることなどを提案した。さらに、学校や保護者、小児科医に対して、学校での携帯電話の使用を禁止するか、特定の時間帯での使用を禁止し、子供たちやその保護者に対してSNSのリスクについて話すよう呼びかけた。

2019年の研究では、10代の若者が1日に3時間以上ソーシャルメディアを使用した場合、うつ病や不安などのメンタルヘルス上の問題のリスクが高まることが示された。また、2022年の10代を対象とした調査では、回答者の約半数が「SNSの利用によって、少なくとも時々『孤独で孤立している』と感じることがある」と回答し、46%が「自分の体についてより悪い気分になることがある」と回答していた。

SNS企業の経営陣は1月に、議会で自社の製品が若いユーザーに与える影響について証言した。メタのマーク・ザッカーバーグCEOとスナップのエヴァン・シュピーゲルCEOは、ソーシャルメディア上で被害に遭った子供たちの親たちに謝罪した。しかし、ザッカーバーグは「これまでの科学的研究では、SNSの利用と若者のメンタルヘルスの悪化との因果関係は示されていない」と主張した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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AI

2024.07.28 14:00

デジタル時代の子どもたちを守るAI、その実例と展望

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我々の生活のすべての側面にテクノロジーが浸透するデジタル時代。我々のなかで最も脆弱な存在、つまり子どもたちの保護は、新しい次元にシフトし、新たな課題に直面している。

こうしたなかで人工知能(AI)は、希望の星として浮上している。AIは、単に進歩のためのツールではなく、複雑なオンライン世界における保護者として、活躍を始めつつあるのだ。

子どもたちにとってもっと安全な環境を作るために、AIがどのように活用されているのか、実際の応用例と、将来への展望を紹介しよう。

AIはデジタルな遊び場の守護者

インターネットは、学習や人とのつながりに役立つあらゆるリソースとチャンスを提供する一方で、若いユーザーにとってのリスクもはらんでいる。AIテクノロジーは、そうしたリスクに対して、用心深い守護者として介入する。人間のモデレーターだけでは不可能な規模とスピードで、オンラインコンテンツを監視・分析するのだ。

AIは、有害なコンテンツをフィルタリングし、性犯罪の脅威を検知し、教育リソースを提供することで、デジタルな遊び場の守護者として機能し、子どもたちにとって安全で成長できる空間であり続けることを保証する。

有害コンテンツの検知とフィルタリング

児童保護におけるAIの最もわかりやすく、かつインパクトのある応用例の一つが、有害なオンラインコンテンツの検知とフィルタリングだ。

グーグルやメタのような企業は、洗練されたAIアルゴリズムを採用しており、毎日何百万もの投稿・画像・動画をスキャンして、子どもにとって有害になる可能性のあるコンテンツにフラグを付けて削除している。これらのシステムは、膨大なデータセットに基づいて不適切な素材を認識するよう訓練されており、子どもたちが行き来するデジタル空間で性的搾取や虐待がないことを保証している。

ネットいじめにAIで対抗

ネットいじめはオンライン社会に蔓延する問題であり、数え切れないほどの子供や青少年に影響を与えている。AI技術は、積極的な解決策を提供し、テキストメッセージ、電子メール、SNSでのやりとりの中でいじめ行為を特定する。

インスタグラムのようなプラットフォームは、攻撃になりそうなコメントを投稿前に検知し、ユーザーに再考を促すAIツールを導入している。このようなAIの応用は、ネットいじめを未然に防ぐだけでなく、若いインターネットユーザーのあいだで優しさと反省の文化の育成を促進する。

児童の性的虐待と闘うAI

児童搾取との極めて重要な闘いにおいて、AIはかけがえのない味方となっている。米国NPOのThornや、全米行方不明・被搾取児童センタ(NCMEC)などの団体は、AIを活用して児童の人身売買や性的搾取の被害者を特定し、救出している。

Thornが提供するAIツールのSaferは、テクノロジー企業が児童性的虐待のコンテンツ(CSAM)を特定し、プラットフォームから削除するのを支援する。これらのAIシステムは、画像や動画を大規模に分析することで、被害者の迅速な特定を支援し、被害者の救出と、加害者の逮捕につなげている。

安全なネット利用習慣を育む教育に役立つAI

子どもたちを守るAIの役割は教育にも及んでおり、安全なネット利用習慣を育むためのガイドの役割を果たしている。

グーグルが開発した、AIを利用したゲームのInterland(インターランド)は、子どもたちに対して、魅力的でインタラクティブな方法で安全にインターネットを利用する方法を教えている。子どもたちはゲームプレイを通じて、フィッシング詐欺の見分け方、個人情報の安全性、責任あるインターネットの利用方法などを学び、オンラインで自分を守るための知識を身につける。
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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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