LLMの本質について
今のChatGPTなどの生成AI(LLM)は、これまでのAIに比べ、圧倒的に人間を超えるような知能を見せており、多くの人間はAIに自身の仕事を奪われないか恐れ慄いている。
私自身、Webエンジニアリングを生業にしているが、特にClaudeによるコーディング能力にはとんでもないものを感じていて、正直これから自分の仕事がどうなるのかに対して不安も感じていた。
とはいえ、いたずらに不安を感じるだけではしょうがないので、今のAIについてしっかりと知ることが大切だと思い、オライリーの「LLMのプロンプトエンジニアリング」という書籍を読み始めた。
その書籍の著者はGitHub Copilotの開発者であり、そこで非常に面白い記述を見つけた。
それは「LLMの本質は常にドキュメント補完にある」というものだ。
今の生成AIはまさに人間のような知性を感じさせるところがあるが、結局のところ、あくまで「ドキュメント(テキスト)の補完」を行なっているに過ぎない、という話なのである。
Appleの発表した論文でも、LLMにおける推論はあくまで「パターンマッチング」でしかないかもしれない、と述べている。
人間は「言語」を用いて思考をし、コミュニケーションを取る。
そのため、言語をそれらしく扱う存在を見た時に、私たちはそれに「知性」を感じてしまう。
それが、実際には「ドキュメント補完」や「パターンマッチング」を行なっているにすぎなかったとしても。
(ただし、それは史上最も高度な補完やパターンマッチングである)
従って、現在のLLMは「ドキュメント補完」と「それを巧みに組み合わせるエージェントワークフロー(プロンプトエンジニアリング)」によって、「高度な知性」を表現しているのである。
これを理解することができれば、単純なこの延長線上にはAGIがやってこないことがわかる。
(また別のブレイクスルーが必要になりそうだ)
ドキュメント補完によって事足りてしまう作業やタスクに関しては、やはりAIに代替されてしまうのは間違いないだろう。
ただ、今のAIの仕組みを知り、最大限有効活用しようとする姿勢があれば、それは私人間の力をより活かしてくれる最高のパートナーとなる。
今後もAIをはじめとした様々な技術の進化がやってくる。
次に何か大きな発展が起きた時は、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という孫子の言葉のように、まずはその対象を知ることから始めていこう。


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