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『論理トレーニング101題』に惨敗して得たもの

前回紹介した野矢茂樹『論理トレーニング101題』の問題を全て解きました。

惨敗。ボロボロでした。8割がた間違えました。

前回も書いたか忘れましたが、接続詞には7つくらいの役割があります。それら7つはメモしていますが、見ながらでないとどれがどの役割をするのか理解してません。

本書の後半は文章の論証や批判になっています。接続詞の役割や文章の論理構造を分かった上で、文章のおかしいところを指摘する問題設定です。問題の解説も、論理構造のつながりを示した上で、論証しています。

後半になるにつれ、問題は難しくなるはずですが、よくわからないことに比較的解けています。

特に、論証する上で前提となる演繹・推測はよくできてました。演繹・推測の基礎となっているのは「逆・裏・対偶」で、高校数学で習っていたこともあったからだと思います。

正解率が高かったのは、単に「順序を入れ換えたり、意味を反対にすればいいんだ」と機械的に処理していたこともあると思います。本来は文の意味を考えるべきところなんですが、かえって考えない方が問題は解けています。それだと意味がないんですが...。

本題となる演繹と推測の意味ですが、

演繹は「前提が間違っていなければ、必ずその結論が導かれること」で、推測は「前提を事実と認めることで、結論の説得力を増すこと」です。

演繹は必ず結論が導かれるのに対して、推測は説得力が増すだけで、決定的になることはありません。

この問題の正答率が高かったのはミステリーをよく読んでいる影響があるのかもしれません。推理は演繹と推測を織りまぜて成立します。推理の途中で入る突っ込みは「批判」です。

容疑者の1人が「こういう可能性はどうなの?」みたいなつっかかりを探偵役にします。ストーリーで必ずあるできことです。それを探偵役が説明し、クリアにすることで、細かい点も考慮されていることが読者や物語の登場人物にも伝わり、推理の説得力が増します。

他の可能性を確かめるために出てくる「批判」ですが、必ずしも反対意見を述べているわけではないです。これは初めて知りました。一般的に「批判=反対」と捉えられがちですが、反対意見を述べることは「異論」です。

では、「批判」とはなんなのか?

それは、「出された意見(立論)に対して、論証部分に対して精査すること」です。つまり、筋の通っているか確認することで、相手の意見に反対するわけではありません。

しかし、結果として批判が反対につながることはあります。

「あなたの話は筋が通ってないので認められない」ということです。

逆に、筋が通っていなくても反対に回らない場合もあります。

これは「結論には賛成するけど、そこまでの道筋が納得いかない」という場合です。

前者はいわゆる論破というやつでしょうか。

論破は、筋が通っていないことを根拠に意見に反対します。それが一般的なイメージの「批判」だと思います。

本書が書かれた2001年に、「論破」という言葉自体はあったかは分かりません。しかし、改訂版が出版されたら触れられるような気がしています。

さて、論証に対して「批判されること=対立」という構図が、私はどうも頭をよぎってしまいます。

だから、「それって(論証(考え方)が)おかしいですよね?」と言われたら論破されるように感じる。

もし、結論には賛成なら、自分なりにおかしい点を補足し、筋が通るように整えることで、両者決裂にはならないのではないでしょうか。

批判が異論と捉えられるようになったのは、もしかしたら日本人の気質も関係しているのかもしれません。完璧に白黒つけず、あいまいにすることの悪い面が出ているのだと思います。批判を通して「あなたの意見に反対ですよ」ということを暗に示している。

おそらく、「受け入れてくれるなら、なんの疑問も持たれずにスッと主張が通る」という前提があるからでしょう。

本書には、批判に対する批判のトレーニングもあります。すなわち、主張の抜け穴を見極めた上で、そこに対して正確に批判できているのかを訓練するものです。

他にも論証について、「隠れた前提」を見つけ出す課題もあります。文章には書かれていないが、論証には必要な情報。しかし、書かれないのは、読者が自動的に補完できる内容や、文章が冗長になり読みづらくなることを考慮しているからです。

「隠れた前提」と「批判」について知ったことで、「批評とはなんだ?」という疑問が浮かんびました。確か、以前に書いたことを思い出して、読み直しました。

ここで書いていた批評の意味は以下の3点つです。

・作品について論じること。
・作品を取り巻く社会情勢について論評すること。
・語られてもおかしくないのに、語られていないもの。

そもそも、批評と批判は違うのかもしれない。確かに、ここで書かれている「社会情勢」や「語れてもおかしくないのに、語られていないもの」は、批判ではないと思う。

なぜなら、ここで書いている批評の定義は、隠れた前提について書いているからです。

この2つの定義が意味するところは、「作品の裏のメッセージは?」とか、「キャラクターのあの行動の意味は?」とか、ごくごく当たり前に、なんの違和感もなく受け入れられていることを「なぜ?」と深掘ることだと思う。

少なくともここで書かれている批評の定義は批判とは異なっていると考えます。

しかし、文学新人賞の評価(正しい単語が出てこない。総評? 批評?)は批判と呼べるものだと思いました。

新人作家のミステリー作品を読むと、あとがきに、その作品がどういう賞でどんな評価を受けたのか、が書いてあるものもあります。そこには、最終候補に残った作品についても触れられていることがほとんどです。

最終候補の作品は、「登場人物の深掘りが足りない」「殺人の動機が納得いかない」「風呂敷を広げすぎて畳めていない」「トリックの現実味がない」などなどの評価が書かれていることが多いです。

そんな評価を受けながらも、「題材はよい」とか、「ミステリーの方向性はいい」と、筆者の力不足で書けていないことを指摘しつつも、作品の目のつけどころはいいことが書かれていることも少なくない。

これはダメ出しをしつつも、作品は褒めている。「この設定ならこう書くべき!」みたいな異論はない。結論は指摘せず、あくまでも結論に至る過程について述べているだけ。

だから、私はこれを批判だと思っている。

以前、批評に書いたことも踏まえて、異論と批判と批評の違いについて理解が深まった気がします。今後も、批評や書評の定義に書いているものがあったら、適宜確認していたい。

本書の最後には、まさに批判と異論がごちゃ混ぜになった結果、パニックになっていることを的中させる警句が書かれています。

私が授業で機会あるごとに学生に言っていることを、最後に述べておきたい。論理トレーニングの成果は、親、兄弟、友人、恋人、そしてとりわけ配偶者に対して無分別に発揮してはいけない。(1)初心者がうかつに論理的分析力を発揮して批判すると、(2)少なくとも現在の日本社会においては、人間関係を損ねるおそれがある。刃を研ぎ澄まし、懐中に忍ばせておく。そして、ここぞというときに抜くのである。どういうときが「ここぞ」なのか。残念ながら、本書はそこまでめんどうを見ることはできない。読者諸氏のご自愛を願ってやまない。

野矢茂樹『論理トレーニング101題』 p148

ネットには「なるほど」と思いつつも、言い過ぎな意見もある。まさにこの例だったりするんじゃないだろうか。じゃあ、どうやって他人を傷つけずに訓練すればいいのか。

私は、noteに書いた膨大な持論に対して論理トレーニングを行えばいいと思っている。そうすれば傷つくのは自分だけ。もちろん、自分も傷つくことを嫌がる人もいる。

しかし、自分に対して批判することは自分を見つめ直す機会になるのではないだろうか。

ただし、批判が合っているかどうかはChatGPTに聞いて確認する。なぜなら、本書の問題を8割方まちがえる現在の私には、論理があっているか確認することはまず不可能だからだ。

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