高市新総裁で国民民主、連立の第1候補に 小泉氏に接近の維新は後退
自民党総裁に高市早苗前経済安全保障相(64)が選出されたことで、連立政権の枠組み拡大に向けた協議にさっそく変化が生じている。党役員人事や組閣に向けた動きが本格化するが、挙党態勢に配慮するあまり、旧態依然の体質も浮かび上がる。15日にも召集される臨時国会では、野党がまとまりを欠くなかで、高市氏が首相に選出される見通しだ。
「政権の枠組みとか、いろんな政策協議の話も出ているが、丁寧にやっていくべき話だ」。国民民主党の玉木雄一郎代表は5日、福島県郡山市で記者団の取材に対し、自公との将来的な連立に含みを持たせた。
高市氏は前日4日の総裁就任会見で、連立の枠組み拡大について「憲法改正や外交・安全保障、財政政策などに関して議論し、お互いに納得できたら、そういう形がつくれるとうれしい」と意欲を示した。背景には、少数与党国会で法案や予算案への賛成を得ようと野党の主張をのみ込んだ石破政権の苦い経験がある。
高市氏が連立候補と見定めるのは国民民主だ。玉木氏も「信頼関係の醸成の程度に応じて連携の選択肢は増える」と否定していない。
自民内で連立の最有力候補と目されていたのは日本維新の会だった。党勢回復の糸口を探る維新なら引き寄せやすいとの読みがあった。維新も、小泉進次郎農林水産相が勝利するとみて、「副首都」構想や社会保険料引き下げを実現する好機ととらえた。
9月24日、東京・永田町の国会図書館。維新の遠藤敬国会対策委員長は、小泉氏の後見人でもある菅義偉元首相に頭を下げた。「創価学会の抑え役をやってください」
菅氏は、自民が連立を組む公明党の支持母体・創価学会に太いパイプを持つ。自公と維新は国政選挙のたびに、維新の本拠地・大阪でぶつかり合ってきた。大阪を「発祥の地」とする公明は特に、維新の連立入りに強い拒否感があるため、「小泉総裁」を前提に連立協議の地ならしを菅氏に依頼した。
小泉氏自身も8月に大阪・関西万博の会場を視察。吉村洋文代表(大阪府知事)が全日程に同行する厚遇を受けた。維新には、臨時国会の首相指名選挙で小泉氏の名前を記入するという声もあった。
ところが、総裁に選出されたのは高市氏。小泉氏は4日夜、維新の幹部に電話で「力が及びませんでした」と謝罪した。
埋没の懸念から自民と維新の接近を警戒し、「数合わせ」などと牽制(けんせい)を続けていた国民民主。高市総裁の誕生で、連立の第1候補に躍り出た。高市氏の側近は「候補者調整が必要な選挙区が維新よりも少ない」と背景を解説。高市氏を支持した萩生田光一元政調会長は、国民民主の榛葉賀津也幹事長らとの交渉は「俺がやるべき仕事だ」と周辺に語る。
国民民主の幹部は、チャンス到来とばかりにほくそ笑む。「高市氏側と維新に目立ったパイプはない。連携相手はうちしかない」
自民と国民民主には、接近の過去もある。岸田政権時の2022年、当時の麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が中心となり、玉木氏や榛葉氏と連立に向けた水面下の協議を進めたが頓挫した。
国民民主は今回、自公とは政策協議を通じて付かず離れずの関係を維持し、数カ月かけて連立入りを判断する青写真を描く。
一方で国民民主はこれまで、ガソリンの旧暫定税率の廃止や「年収の壁」引き上げを訴え、政権を突き上げることで支持を拡大してきた。中堅議員は「自民と一緒になれば支持者が離れるリスクがある」と懸念する。支持団体・連合の関係者も「(傘下の労働組合の)組織内議員は、誰も連立についていかない。党が分裂するだけだ」と突き放す。
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- 【解説】
国民民主党の連立入りの可能性は、岸田政権の時代から囁かれていた。自民、公明の組織的な基盤が衰退していくなかで、連合の民間産別を組み入れることを狙ったこの仕掛けは、麻生元総理が主導していたといわれる。だが連合側が強い拒否反応を示し、話がすすまないまま岸田政権は終わり、後継の石破政権下では麻生氏が主流から外れたこともあり、頓挫していた。そして昨年の総選挙で国民民主党が躍進し、与党が過半数割れに陥ったことで構図は変わり、自民党は維新との連立に傾いていた。仮に小泉進次郎あるいは林芳正のどちらかが総裁に選ばれていたら、維新との連立がすんなりとすすんでいたことだろう。 ところが予想外に高市早苗氏が総裁に選ばれたことで、ふたたび構図が一変した。麻生氏が復権し、連立工作の主導権を握ったからだ。岸田政権は、麻生、岸田、茂木による三頭政治といわれていたが、高市政権では岸田氏の影響力は退き、麻生氏の総理総裁に対する影響力はより強まっている。だから国民民主党との連立工作がふたたび浮上するのは当然の成り行きといえるだろう。 だが、事はそう簡単にはすすまない。 まず、連合はやすやすとは連立に応じることはない。連合の支援政党は立憲民主党と国民民主党だが、これが与野党に分かれることで政治力は格段に落ちる。連合が求める賃上げ、介護・医療などエッセンシャルワーカーの処遇改善といった喫緊の課題について、高市政権は応じる構えは見せるかもしれない。だが連合の政治力が低下すれば政治的交渉力は低下し、諸課題のなかで後回しにされていくことになりかねない。そもそも高市総裁の財政拡張、減税志向は連合の方針とは相いれない。 また、続投が決まっている連合芳野会長が、昨年の自民党大会に参加したさいに選択的夫婦別姓を訴えたことは記憶に新しい。芳野会長は立憲、国民の協力を繰り返し強調しており、芳野執行部が国民民主党の連立入りに首を縦にふることはまずありえない。むしろ、賃上げやエッセンシャルワーカーの処遇改善をはじめ、連合の方針に比較的親和的だった石破政権よりも、高市政権に対決姿勢を強めていくのではないだろうか。芳野会長のイニシアティブを踏みにじってでも与党入りしようとするならば、記事にあるように、党が分裂するだけだろう。 なお、1994年から2年続いたの村山-橋本政権下では、連合の産別は与野党に分かれている。だが当時は社会党と民社党という、連合結成前の政党の枠組みが残っていたなかでの連立だった。他方今回は民主党から分裂した二つの政党が与野党に分かれることになるので、30余年にわたり融合が進んでいた連合の組織をビリビリと引き裂くことになる。連合30余年の歴史は、異なる歴史を歩んできた産別同士をつないでいく苦闘の歴史でもあった。ひとときの政局で、先人が刻んできたこの営為を台無しにするような選択が許されるはずがない。 このような状況を踏まえたうえで、あとは玉木雄一郎代表の判断である。 昨年総選挙と今年の参院選において、国民民主党は財政拡張と減税を掲げて躍進した。ポピュリズムの追い風に乗ったわけだが、この政策は石破政権の政策とも、連合の方針とも相いれないものである。高市総裁の誕生もまたポピュリズムの風を推進力にしており、この点では玉木国民民主党の路線は親和性が高くみえる。 だが、事実上麻生政権になるといわれている高市政権において、国民民主党の政策がそのまま通るとは思えない。麻生氏は総裁選前に財政規律と反ポピュリズムの姿勢を明確にし、高市総裁の下の幹事長に、同じく財政規律派の鈴木俊一元財務大臣を送り込んでいる。したがって、国民民主党が連立入りをすれば、これまでの政策を180度転換しかねない事態に陥る可能性がある。ポピュリズムの推進力を失った国民民主党は、連立政権のなかでただのコマとして扱われ、使い捨てられていくかもしれない。麻生氏は連立入りの条件として大臣級のポストを国民民主党幹部に用意するかもしれない。それに党の分裂覚悟で応じることは、国民民主党の終わりを意味する。終わりを覚悟に連立に踏み切るかどうかは、玉木代表の判断にかかっている。
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